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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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銃と弾丸

残り時間がゼロになった途端目の前が真っ白になり、次の瞬間には俺は林の中に立っていた

「さて……どこにいるんだ?」

林の中。障害物になる木が多くあり見通しが悪い。特徴といえばそれぐらいだ。俺の武器との相性はかなりいい。ピースメーカーは少々射程距離に難があるからな。最大装填弾数も六発しかない。まだ、手札を使うわけにはいかないし、この十二発で仕留めたいところだ

ポケットの中にあるピースメーカーを握りながら目を閉じる。どうせ見えないんならいっそ視覚を閉ざす。必要ない感覚を削ることで他の感覚を活性化させる。嗅覚も触覚も味覚もいらない。必要なのは聴覚。敵が動くその音だけ

しばらくは風が地面に生えた草を揺らす音しか聞こえなかった

「……?」

数分後、俺はちょうど真後ろから違和感を感じた。音が増えたのではなく、消えたのだ。言うなれば風で草が揺れる音で満たされた空間にぽっかりと空いた空白

つまり、プレイヤー

俺は目を開けて、軽く笑みを浮かべるとタイミングを計る。最も効果的に衝撃を与えられる瞬間を

「なっ!?」

俺が振り向くのとそのプレイヤーが立ち上がるのはほぼ同時だった。俺が気付いているとは思ってもみなかったらしく一瞬動きが止まる

その間に二、三歩すでに動いている。そのプレイヤーは全身迷彩色の服で手にはアサルトライフル。腰には二つのプラズマグレネード

やがて硬直から覚めたそのプレイヤーは膝立ちになるとアサルトライフルの銃口をこちらに向けた

俺は複数の弾道予測線が俺を貫くと同時にポケットに突っ込んでいた手を抜き放つ。もちろん持っているのはピースメーカー

数瞬遅れてアサルトライフルが火を噴いた。当たる弾数は八。残りは後ろに流れるようだ

「っ!!」

戦いに加速している俺の眼にはその銃弾の軌道がはっきり見えた

飛んでくる銃弾にピースメーカーの銃口を向ける。ピースメーカーの銃口から伸びる剣をイメージ。一発目は、ピースメーカーの弾速がわからないためほぼ正面から撃つ。口径はあちらの方が上らしくかるくダメージを負う。だが、それだけ。ピースメーカーの弾速を完全に把握した俺は続く七発の銃弾を横から撃つ感じで軌道を変える。某緋弾の言葉を借りれば"弾丸撃ち"

残り弾数。左が三。右が一

「嘘だろ!?」

敵プレイヤーはアサルトライフルを捨てると胸ポケットに手を突っ込む

リロードしている暇はないと思っての判断だろう。加えてピースメーカーの性能を知ってるのだろう。威力が決定打になり得ないということを

「させねぇよ!」

ピースメーカーは旧式のリボルバー式拳銃だ。威力はこの世界では弱い分類に入るだろう。それこそブレイクポイントにマガジン一つ全てを撃ち尽くさなければ倒せないレベルで。相手もそれがわかっているのかまだあきらめていない

だが……俺の狙いはプレイヤーの体ではない

放たれた銃弾は過たず狙った場所に直撃した。そう、相手の腰のプラズマグレネードに

軽くて強力。そんな便利なアイテムがなんのリスクもないわけないだろ

小さく散った火花。そして、一瞬遅れて盛大な爆音と閃光をもってそれは爆発した

静かに息を吐く。そして目の前に勝利した旨の文字が現れ元の控え室に転送された

「っと?」

部屋の一つの面に広がる画面群。その画面内では多数のプレイヤーが戦闘を繰り広げていた。戦闘モニター。俺の戦いを見ていた人もいるようで俺が帰ってくるとどよめきが生まれる。どこの所属だ?等の声を無視しながら、俺はモニターを流し見する。探しているのはもちろんシノンとキリト

「おっ……いたいた」

右上から下に三。左に五いった場所にキリトが戦っている画面があった

「……バーサクしてるなぁ」

キリトが相手の銃弾を全て光剣で迎撃している様子が映っている

「キリトは……余裕そうだな」

何というか当たった相手に同情すら感じる。キリトは公式チートだし……

そんなメタなことを考えながらシノンの戦闘画面を探す

「……見つけた」

キリトの画面とはそう遠くないところにシノンの画面はあった

「狙撃銃か」

シノンの手に握られているのは巨大な狙撃銃。今は地面に伏せて敵を待ち構えているみたいだ

「あなたも応援?」

声をかけてきた背の高い男が一人。俺の容姿はまことに不本意だが初見で男と見破るのは不可能に近い

「ナンパですか?」

「違います!シノンが戦っている画面を見ていたようだったから……」

長い銀灰色の髪をかきあげる男

「なんでシノンが戦っている画面を見ているとわかったんだ?」

「シノンの戦っている画面の辺りをみて狙撃銃ってつぶやいてたので」

「なるほど。そうだな……さっきの質問に答えるなら俺はトーナメント参加者だ」

そう答えるとなぜかその男は困惑した様子を見せた

「……その姿で俺はやめた方がいいと思うよ?せっかく可愛いアバターを手に入れたんだし……」

「……はぁ……」

俺は黙って、もはやお馴染みの名刺の様なカードをその男に投げる

「リンさん……ですか。そして……男……」

なんだその世の中の不条理を見たような表情は。俺自身も不条理だと思ってるからそんな眼で俺を見るな

「リン。早かったわね。……あれ?シュピーゲル、あなたも来たの?」

シノンが戦いから帰還した。どうやら俺が男と話し込んでいる間に戦いを終えていたらしい

「うん。シノンの応援にって思って」

顔を緩ませるシュピーゲル。端から見れば恋する男子そのものだ。眼に危うげな光が宿ってなければ

「ありがと。それにしてもリン。あなた、私よりも早かったのね」

「俺は近接速攻型。シノンの遠距離狙撃型よりは、勝つにしても負けるにしても早く終わる確率が高いからな」

そうね、と微笑むシノン

「シノン。彼との関係はなんなの?」

シュピーゲルはこちらを睨みながらシノンに問いただす

「ライバルよ」

一瞬の迷いもなくそう言ったシノン。俺はそれに喜びを感じた。強い者からライバル宣言されるのはやはり興奮するものだ

「そう……」

腑に落ちないような表情を見せるがシュピーゲルは引き下がる。そのままシュピーゲルは壁の方へ歩いていった

「そういえばキリトは?」

「ん、そういえば……」

シノンの言葉に辺りを見回しキリトを探す

「お……。いたいた」

端っこの方で椅子に深く腰掛け顔を伏せているキリト。が、明らかに様子がおかしい

「どうした、キリト?」

顔を上げたキリトは恐怖にうち震えていた

「……シノン。すまないがちょっとあっちに行ってくれないか?」

シノンは一つうなずくと向こうの壁の方まで歩いて行った

それを確認すると俺は再度キリトに問いかけた

「どうした、キリト?」

「死銃は……」

「死銃がどうしたって?」

「死銃はSAO生還者、それも……」

「レッドプレイヤー、ってか?」

「知ってたのか!?」

「何となく気配でな」

自分でも人外地味てきたのはわかるよ?気配読みとか……

「そうか……」

「あの戦いは仕方がなかったことだ」

そう言うとキリトはこちらをにらみまわりも気にせず叫んだ

「リン!!お前は人の命を何だと思ってる!!」

「ならおまえはあそこにいたすべての人の命を救えたというのか?」

「それは……」

あくまで冷静に。俺の問いかけにキリトは答えを窮した

「殺らなければ殺られていた。その中で、別に自分だけがそんな幻想を抱いて死んでいきたいというなら俺はかまわない。でもな」

俺は言葉を切ると初めてキリトをにらむ

「それが原因でまわりのやつが、仲間が死んでいくのには耐えられない。確かに人を殺した。俺だって三人。この手で奪った。でも、俺はそれ以上の数の命を救った。もちろん殺した三人のことは覚えている。贖罪もしよう、謝罪もしよう。だが、後悔だけは絶対にしない。なぜなら俺は自分の手で救った命が必ずあるのだから」

モニターを見るとちょうど一回戦がすべて終わったところだった。もうすぐ二回戦だな

「勇者であるおまえには小をすて大を救う考えは理解できないかもしれないが……。だが、忘れるな。おまえに救われたやつもいるってことを」

そう言うと俺を光が包み込んだ

……これがご都合主義というやつか
 
 

 
後書き
蕾姫「初試合+αでした」

リン「明らかにαの方が重かったよね?なんか俺、どこぞの赤い傭兵化してたし……」

蕾姫「無限に剣を内封した世界でも使ったろか?」

リン「いろいろな意味で問題だろ……」

蕾姫「今回は見てのとおりリンがキリトにいろいろ言う回です。地味に私の持論を展開してますがご容赦ください。反論は結構ですが、感想には書かないようにお願いします。意見なんて人それぞれですしね」

リンは殺人に対する感覚は戦場でのそれです。殺される前に殺す。守るために殺す。そこに躊躇は存在しません。まあ、それには過去が絡んでくるわけですが、それはまた今度、ということで
大体想像はつくとおもいますが

リン「微妙に血なまぐさい場面だが、見捨てないでやってな?苦手なシリアスなのに頑張ってるんだ」

蕾姫「……」

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