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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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19.優しい王

「動かないでください」

「あ、あなた」

集が銃を供奉院に突きつける。

「あなたを裏切った復讐というわけ」

「違ぇよ。供奉院」

「あなたまで」

集の後ろに隠れていた俺も姿を出す。

「僕のことはどうなってもいい。いのりとシオンの居場所を教えてください」

「あの女の!?」

ピピピ!!

供奉院の持っている電子端末が鳴る。

『全部隊に通達。桜満ハルカ博士が重大な反逆行為を起こし逃走中。各員、発見しだい逮捕されたし。繰り返す.....桜満ハルカ博士が重大な反逆行為を起こし逃走中。各員、発見しだい逮捕されたし』

桜満ハルカ博士って.....集の母さんだよな。

「........集」

「この話は後で......供奉院さん」

集が銃をさらに突きつける。

俺たちは車の後ろに乗り込み身を潜める。
供奉院も車に乗り込み持っていた電子端末で何かを調べている。

外にいる白服の男が供奉院が乗る席の窓を叩く。
供奉院が窓を開ける。

「同志アリサ、何処へ?」

「桜満博士を追います。ガイには私から報告します」

供奉院はオートインセクトが操縦する車を発進させる。

「待て!!ガイ様を呼び捨てに!!」

俺たちは車が発進してからちょっと経ったあとに起き上がる。

「発見したら、桜満ハルカと話をさせて。いいわね」

「それがいのりとシオンの居場所を教える交換条件ですか」

「彼女ならガイの計画を知っているはず。.......あの人を知りたい、彼の過去も、望みも、弱みも、痛みも、全て」

沈黙が続く車内......集がおもむろに口を開く。

「ハルカは本当の母親じゃないんだ。父さんと再婚して、でも.....すぐ、父さんは死んじゃって.......それでも、僕をずっと育ててくれた」

「........親.....か」

俺の親はあの日.......全ての時が止まった日.......ロストクリスマスに失った。




「やっぱり無理なんだよ、あのガイとやり合うなんて」

「お前悔しくないのかよ!」

「でも、大雲さんもやられたっていうし」

「連絡が取れなくなっただけよ。今、アルゴが確認に行ってる」

大雲が死ぬわけない。絶対にね。

「アルゴが戻ってきたぞ」

その声を聞き、私たちは外へとアルゴを迎えに行く。

「クモっちは一緒じゃないの?」

ツグミが心配そうに聞く。
そこにいるのは、桜満博士、倉地さん、アルゴの3人に大雲の姿は見当たらない。

「..........一緒だよ」

アルゴが小さな声で口を動かす。

「えっ!?......でも」

「..........一緒なんだ」

「えっ!?......ウソ.....でしょ」

アルゴの言葉を聞かずとも察してしまう。

「ごめんなさい。私を護って」

「そ、そんな.....」

大雲が死んだ......ウソでしょ!?

泣き出すツグミをこちらに寄せる。

「クモっち......」




「どうぞ」

桜満博士にコーヒーを渡す。桜満博士がトランクを開け、その中身を見ている。

「ありがとう」

「それを使えばガイと戦えますか?」

トランクの中身は"ヴォイドゲノム".......シュウが手にいれてしまった罪の力.....人の心を形に紡ぐ力....."王の能力"

「少なくとも同じ力は手にはいるわ。でも、全身の遺伝子から夥しい拒絶反応が起こる可能性があるわ」

そんな力をシュウは......

「酷い人間よね。シュウには使わせたくないくせに......誰かには使って欲しいと思っているのよね」

「少しだけわかります。あたしもシュウが力のせいで苦しむの見てきましたから」

「それだけじゃないわ。もし、もう一度使えば......おそらくあの子は死ぬわ」

シュウが死ぬ!?

「それだけ危険なものなの」

桜満博士はトランクを閉める。

「大丈夫です。私たちにはもう一人.......苦しいはずなのに、苦しむ顔も見せず笑顔のあいつがいますから」

絶対にあいつは生きてる.......私に勇気をくれたあいつなら.....

ドォォオン!!

外で爆発音が鳴り響く。




「遅かったみたいね」

車の外に広がる風景は火の海。
綾瀬......みんな。

俺は車の扉を開け、疾走する車から飛び降りる。集も車から飛び降りている。

「待ちなさい!!桜満集!!茨壊!!」

「行くぞ、集!!!」

「うん!!!」

火の海と化す建物に向かい俺と集は走り出す。

待ってろよ、綾瀬、みんな!!!




砲撃が続く火の海の中、私たちは逃げる。

「お.....い....てっけ....」

魂館くんが寒川くんの背中で途切れ途切れの声で言う。

「黙ってろ。俺はもう、誰も見捨てたくはない」

「八尋」

銃撃が止むことはない。

「ダメ、誰とも連絡が取れない」

ツグミが通信を取ろうとするが取れないようだ。

「戻るしかねぇ」

「でも、戻ったら挟み撃ちに会うよ!」

「ならどうしろっていうだよ!!!」

アルゴが声をあげる。

この状況を打開する方法は.......私の膝の上にあるこのトランクの中にある。

「.......すまない」

「桜満博士、私に"ヴォイドゲノム"を使ってください」

その場にいる皆が驚いている。

「私は以前、シュウとカイから立ち上がる勇気と力をもらいました。だから今度は自分で立ち上がりたいんです。例え、ガイと撃ち合うことになっても」

「綾姉、いきなりなんで」

「大丈夫、前から考えてたの。お願いします」

桜満博士が"ヴォイドゲノム"を取り出そうとする.....と

「させませんよ」

トランクが撃たれ中に入っている"ヴォイドゲノム"がエスカレーターから下の階に落下していく。

銃を撃ったのは......嘘界

「製造されたアンプルは3つ。残りはどこにあるのかずっと探していたのですがやはりあなたでしたか、桜満博士」

嘘界の後ろからエンドレイヴが現れる。

「あれは私が頂戴します」

「それでどうするの!」

「私はね、見たいんですよ。あの不可思議かつ崇高な光を。きっとあの光の向こうには真理がある。そのためなら私は何だってして見せるでしょう」

私は嘘界の隙をつき、"ヴォイドゲノム"を取りにエスカレーターへと向かう。

「一生語ってなさい!!」

エスカレーターに辿り着き、手すりを使い滑り降りる。

「このおてんばさん!!!」

エスカレーターを下り、"ヴォイドゲノム"まであと少し。

「渡しません!!」

"ヴォイドゲノム"が投げられたナイフによって飛ばされる。

"ヴォイドゲノム"は飛ばされ、何かにあたり止まる。
"ヴォイドゲノム"が止まったのは、ここにはいない人物の元に渡った。
ここにいるわけがない......彼がここにいるわけがない。

"ヴォイドゲノム"を拾ったのは........シュウだ。




これが全ての始まりの力......"ヴォイドゲノム"

「シュウ!!」

「シュウ!!」

ハルカと八尋が叫ぶ。

「返して、シュウ!!それが何だかわかってるの!?」

「もちろんだよ、綾瀬。全てはここから始まったんだ。これはやっぱり僕が受けるべき罪なんだ」

「違う!!それは私たちの罪よ!!二度目はないのよ、シュウ!!ヴォイドの力があなたを殺すわ!!」

「ありがとう、母さん。本物の親子じゃなくても、僕は母さんといれて良かった。今は本当にそう思うよ。.......でも、これは僕に出来る唯一のことだから」

「シュウ!!!」

母さんが叫ぶ。

「ダメぇぇぇぇ!!!」

綾瀬も叫ぶ。

僕は何も躊躇せず、"ヴォイドゲノム"を刺す。

「うっ......う......ぐっ......」

激しい痛みが体を襲う。
僕の罪がこの程度の痛みで償えるわけがない......

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

体を一筋の光が包み込む。

ーーずっと逃げてきたんだ。
ーー......でも、僕は......
ーー今こそ僕をさらけ出す!!!

自らの体に左手を差し込む。
これが.....これが、僕のヴォイド。

僕の体から出てきたヴォイドは......右腕。
その姿はまるで壊の右腕の様に結晶化している。右手に無数のエメラルド色の線が光出す。

「王の誕生に祝砲を!!!」

「ゴメン、綾瀬」

右手で綾瀬のヴォイドを引き出す。
するとエメラルド色の綾瀬のヴォイドが僕の足につく。

「......シュウ」




「ついに自分を使ったのか、集!!」

集の右腕は俺の右腕の様に結晶化している。
足には綾瀬のヴォイドと思われるヴォイドがついている。

「壊、君の力も貸してくれないか」

「当たり前だ」

処刑剣とロンギヌスを同時に取り出す。

「構いません、全弾ぶち込みなさい!!」

「来るよ、壊」

「おう!!」

俺たちを囲むエンドレイヴが俺たちに一斉発砲!!

集は空中に飛び上がり、銃弾を避ける。
俺は銃弾を処刑剣とロンギヌスの紋章の盾で防ぐ。

続いてミサイルが俺と集を襲う。

飛んでくるミサイルを俺のヴォイド......時を戻す腕でミサイルの時を発射される前に戻す。
ミサイルの時は戻ったが爆破の時は戻らない。
エンドレイヴに戻った瞬間にミサイルは大爆発する。

俺たちで全てのエンドレイヴを破壊する。

すると、壁が破壊され巨大なトレーラーが現れる。

そのトレーラーは綾瀬に向かい一直線に進んでくる。

「綾瀬!!!」

綾瀬の元まで走る。

「集!!!」

綾瀬の元に辿り着くと同時に俺のヴォイドで時を戻すのではなく......止める。

「うおぉぉぉぉ!!!!」

集が空中から颯太のヴォイドでトレーラーの運転席に穴を開ける。

「殺せるんですか、あなたに?」

「僕は決めたんです」

集が八尋のヴォイドで突きつける。

「みんなのためにこの身を汚しきるって」

「入ってくる。私の中に他人の心が......ヴォイドの光がぁぁ!!!」

綾瀬を避難させ、止めていた時を動かす。

トレーラーは横に逸れて壁に激突し、大爆発する。

「シュウぅぅぅ!!!」

「大丈夫だ、綾瀬」

燃え盛る炎の中から人影が現れる。

「見て、シュウの体!」

ツグミの声に注目する。

「キャンサー!?」

集の首のあたりには、キャンサーの後が

「さっきまでなかったのに!?」

「俺のだ、俺のキャンサー何だ」

「じゃあ、シュウのヴォイドは!?」

集のヴォイドは、全てを集めて引き受けるヴォイド......人の強さも弱さも、光も闇も......すべてを

「それがお前の選ぶ道なんだな、集」


 
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