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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百四十五話 二人のティエリア

                 第百四十五話 二人のティエリア
 月に入ったロンド=ベルは。早速宴会をはじめた。
「飲め飲め!」
「食え食え!」
口々に叫んで飲み食いしている面々だった。
「どんどんな!」
「楽しくやろうぜ!」
「ところでアンドレイさん」
その中で勇がアンドレイに声をかけるのだった。アンドレイは丁度ビールを飲んでいるところだった。
「前から思ってたんですけれど」
「言いたいことはわかるよ」
アンドレイは微笑んで彼に応えた。
「何か僕達もね」
「雰囲気とか似てますよね」
「最初見た時びっくりしたよ」
微笑んで述べるアンドレイだった。
「僕に似てる人がいるなって」
「そうですよね。俺も驚きましたよ」
「全くですよ」
サイもこの話に入って来た。
「勇さんの時も驚きましたけれど」
「世の中そっくりな人がいるものだって思ったけれど」
「まさかこっちの世界にもだなんて」
「全くだ」
イザークが三人のその言葉に頷いたのだった。
「俺も御前を見て驚いたぞ」
「俺か」
「そうだ、御前だ」
宗介に対する言葉だった。
「性格が全然違うのに何故同じ人間に思えるのだ?」
「俺もそれが不思議だ」
そしてそれは宗介も同じであった。
「他にも大勢いるからな」
「というかあんた達ってそういう人何人いるの?」
かなめが彼等に突っ込みを入れた。
「トウジ君にトマーシュ君にそのドモンさんにって」
「ガンダムが多いな」
「その通りだな」
「俺もそれ思ってたんや」
今度はそのトウジが出て来た。
「何かこの部隊って俺そっくりの奴多過ぎやろ、ホンマに」
「俺自身も本当に俺が喋っているのかわからなくなる時がある」
イザークは真剣な顔で述べた。
「そうじゃないか、ダイゴウジさん」
「全くだ」
気付けばガイもいた。
「何がもう何なのかな。わからん」
「私もそういえばだ」
「だよなあ」
今度はノインとリョーコだった。
「貴官とは他人の気が全くしない」
「馬も合うしな」
「私だってね」
今度出て来たのはミスティだった。
「前から思ってたけれどマリーメイアちゃんが」
「よく間違えられますよね」
マリーメイアも彼女に応えて言う。
「いつもですけれど」
「全くよ」
ニナも困った顔になっていた。
「私なんかウィンダムの声聞いてガトー!?って思ったことあったし」
「あっ、そういえばニナの声って」
今度はコウが言ってきた。
「カズミちゃんにもそっくりだよね」
「それもいつも言われるのよね」
さらに困った顔になるニナだった。
「あとシ=アエンにも」
「何気に声似てる人多いのよ、私達って」
ミスティは少し苦笑いになっていた。
「それも大人から子供までね」
「いいことじゃないか」
コウはそのミスティ達に笑って告げた。
「俺なんか俺だけだから。寂しいよ」
「そうよね。一人だと確かに寂しいわよね」
ニナがそのコウを慰めて言った。
「やっぱり」
「そうなんだよな。俺も誰かいて欲しいんだけれどね」
「本当にいないのね」
次に彼に突っ込みを入れたのはレトラーデだった。
「やっぱりそれはねえ」
「寂しいよ。それにさ」
「それに?」
「野菜だの噛ませだの言われるし」
何故かこんなことも言われているというのだった。
「噛ませ王子ってさ。どういうことかな、これって」
「それはあれだな」
ここでコウに言ったのはドレルだった。
「私と同じだ」
「ドレルさんと?」
「私も下着がどうとか言われることが多い」
「ああ、トランクスですね」
それを聞いて何となくわかったレトラーデだった。
「そうですよね」
「それだ。私も下着はそれだが」
何気に自分の下着のことまで言ってしまったドレルだった。
「しかし。それを言われるとやはりあまりいい気はしない」
「じゃあコウさんはベジタブルっていうのは」
「だから人参が嫌いなんだよ」
さりげなくそういうことにしてしまうコウだった。
「カカロット・・・・・・じゃなかったキャロットとかね」
「俺も何か飲茶を前にすると微妙な気持ちになるな」
「僕もねえ。天津飯を見ているとね」
今度は宙と万丈が出て来た。
「好きなことは好きなんだがな」
「どうも複雑な気持ちになるんだよね」
「まあそれを言ったらきりがないけれどね」
アムも出て来たのだった。
「私だってそういうことないわけじゃないし」
「けれどやっぱあれだよ」
コウの今度の言葉は微妙に抗議めいていた。
「主役が出て来るまで時間稼ぎとか噛ませ犬っていうのは好きになれないな」
「何だかんだでコウエースだよ」
「気にするな」
プルとプルツーがコウに告げてきた。
「心配しなくていいよ」
「コウがいて助かった戦いも多いしな」
「そうだったらいいけれどね。俺も流石にアムロ中佐には勝てないけれど」
「あの人は別です」
美久がこう突っ込みを入れる。
「一体今まで何機撃墜してるんですか、あの人って」
「それを言われると」
「どれだけなんだか」
皆もうそこまで数えきれないのだった。
「千機?二千機?」
「一万いってるんじゃ?」
「もっとでしょ」
アムロは言うまでもなくロンド=ベル最高のエースである。これまでの激戦の分だけ多くの敵機を撃墜しているのは皆が知っていることなのだ。
「それこそもうどれだけなのか」
「わからない位に」
「そういう人と比較しても何にもならないわよ」
レトラーデがまたコウに突っ込みを入れる。
「天才なんですから」
「それにニュータイプ能力もトップクラスですよ」
ウッソはアムロを心から尊敬している。だからこそん言葉だった。
「あの人だけは本当に」
「化け物っていうか」
「超人なんだから」
それがアムロだった。とにかくロンド=ベルといえば彼なのだ。
「そんな人と自分を比べない」
「コウはコウよ」
ミスティとニナが二人で彼を慰めた。
「自分のやれることをすればいいじゃない」
「そうそう」
こう言ってコウを慰めるのだった。とりあえず彼は気を取り直すことができた。
その間にも宴は進んでいる。今度はボスが言っていた。肉をむしゃむしゃと食べながら。
「思うんだわさ」
「それで何を思うんでやんすか?」
「一体」
そのボスにヌケとムチャが突っ込んだ。
「いきなり言いやしたけれど」
「どうしたんですか?」
「あたしの出番が少ないわよん」
彼が言うのは自分の出番のことだった。
「最近。どう思うだわさ?」
「別に普通でないでやんか?」
「そうですよ」
彼等にしてはそうなのだった。
「別に」
「どうってことないですよ」
「じゃああたしの気のせいだわさ?」
「多分」
「そうですよ」
彼等から見ればそうなのだった。別に普段と変わりない。
「いつも出撃してるし」
「っていうかロンド=ベルはいつも全員出てるし」
それだけ圧倒的な数の相手をいつもしているということでもある。
「別に」
「変わらないですよ」
「こうして出て来ることが少なくなってないだわさ?兜の奴と比べたら」
「俺かよ」
甲児がここで出て来た。
「そりゃ俺は結構出てるけれどよ」
「せめて兜と同じ位顔を見せたいだわさ」
「贅沢言いやがるな、また」
甲児はそんなボスの言葉を聞いて少し呆れていた。
「ボスはかなり出てる方じゃねえかよ、最初の方からいるしよ」
「せめて主役になりたいだわさ」
「それせめてじゃねえぞ」
豹馬が今のボスの言葉に突っ込みを入れた。
「っていうかボスはまだ出てんじゃねえかよ」
「そうだわさ?」
「そうだよ。気付けよ」
少し怒った声になっている豹馬だった。
「鈍いのかよ、そういうのに気付かないなんてよ」
「御前が言うか!?」
「鈍いって」
皆今の豹馬の言葉には呆れて突っ込みを入れてしまった。
「私はわかったわ」
「私もだ」
ソーマとカティは呆れた顔になっていた。
「それでも気付かないなんて」
「何処まで奥手なのだ、あの男」
「あの、豹馬よ」
パトリックは呆れ果てながらもその豹馬に声をかけた。
「もう少しだけな。周りを見たらどうだよ」
「周り?どういうことだよ」
「あのな、誰か見てるかもしれないだろ」
当然ながら彼にもわかっていることだ。
「だからな。ほんのちょっとだけな」
「誰がって。健一かよ」
「本気で言ってんだよな」
今の言葉に唖然となるパトリックだった。
「今の言葉も」
「何でこんな時に嘘つくんだよ」
やはり何一つわかっていない豹馬だった。
「そんな必要ねえじゃねえかよ」
「こりゃ駄目だ」
パトリックも流石に匙を投げてしまった。
「ちずるちゃんも可哀想にな」
「だから何でちづるが可哀想なんだよ」
「今のでもわからないのか」
グラハムもその口を大きく開けてしまっていた。
「ここまで鈍感な人間は見たことがないぞ」
「困ったことね」
遥も完全にお手上げだった。両肩を竦めさせて首を引っ込めての言葉にそれが出ている。「ちずるちゃんの春はまだまだ先ね」
「とりあえず応援はしてるけれど」
ボビーは当然ながらちずるの味方である。
「これは前途多難どころじゃないわね」
「全く」
「別世界の私達でもすぐにわかったのに」
「わからない方がどうかしています」
温厚なシホにすら言われる始末だった。
「本当にちずるさんが可哀想です」
「気付かないんだな」
「絶対に」
皆このことをあらためて認識するのだった。
「これじゃあ本当に」
「何時になるかしら」
「まあとにかく」
「これ食べよう」
「あれっ!?これって」
皆目の前にある奇妙な料理に気付いたのだった。
「何かな」
「鰻!?」
「何メートルもある鰻?」
見れば細長い何かを丸ごと煮たものであった。
「そんなのいるのかよ」
「こっちの世界でもそんなのいないけれど」
「それは蛇だ」
ここで皆に話してきたのはグン=ジェムだった。
「ニシキヘビを丸ごと煮たものだ」
「ニシキヘビって」
「そんなものまで」
「これが実に美味い」
グン=ジェムの言葉である。
「それこそ一度食えばな」
「俺はあまり」
「私も」
皆蛇料理に対しては極めて消極的であった。
「美味しいの?本当に」
「外見気持ち悪いし」
「だからこれが美味いのだ」
しかしグン=ジェムはそれでも言うのだった。
「実にのう」
「それじゃあ食べてみる?」
「そうする?」
皆彼の言葉を聞いているうちにその考えにもなった。
「美味しいっていうんなら」
「不安だけれど」
「これが美味いんだよ」
「さ、最高だ」
ゴルとガルはこう言う。
「他にも海亀だってあるしよ」
「に、鶏みたいな味」
「海亀?」
「何でもあるんだな」
ヒメと勇は海亀まであると聞いて思わず言った。
「海亀食べるの」
「しかも鶏みたいな味って」
「あれっ、本当だ」
「蛇だって美味いよ」
今食べたのはスティングとアウルだった。
「海亀だってさ」
「かなりいけるぜ」
「鰐もあるからな」
「そっちもどうだい?」
ジンとミンはそちらを皆に勧めてきた。
「大きいから肉もかなりある」
「遠慮せずにね。やりなよ」
「おお、それじゃあな」
「どんどん頂くよ」
スティングとアウルはその鰐のステーキも頬張りだしていた。
「爬虫類って案外食べやすいよな」
「そうだね」
「そんなに言うんだったら」
「それじゃあ」
皆暫し顔を見合わせたがここは食べてみることにしたのだった。
実際に食べてみると。これが結構いけたのだった。
「あっ、確かに」
「いけるわ」
「美味いじゃねえか」
食べてみてそれを実際に確認したのであった。
「本当に鶏みたいな味だし」
「脂身も少ないし」
意外といい肉なのだった。
「結構以上にいける?」
「そうよね」
「わしの言った通りだろう」
グン=ジェムは今度はロブスターを殻ごと食べている。恐ろしい歯と顎である。
「わかればさあ」
「よし、どんどんやるか」
「そうね」
皆その爬虫類の料理も食べていくのであった。そうしてこの楽しい宴会を過ごすのだった。
宴会が終わった次の日。ロンド=ベルにある知らせが入った。
「新入り?」
「補充兵?」
「そうだ。君達への助っ人だ」
フィッツジェラルドからの言葉だった。
「君達へのな」
「補充兵っていうか追加?」
「そうだよな」
話を聞いてこう言い合う彼等だった。
「どっちかっていうと」
「それですよね」
「そう言った方が相応しいか」
フィッツジェラルド自身もそれを認めるのだった。
「とにかくだ。そのメンバーだが」
「はい」
「誰ですか?」
「パイロット達に艦艇のクルーだ」
それだというのである。
「悪いが艦艇はない」
「ああ、それは必要ありませんぞ」
兵左衛門が彼に告げるのだった。
「何しろ今我々は多くの艦艇がありますからな」
「だから大丈夫だというのだな」
「はい」
こう答えるのだった。
「ですからそのことへの心配は無用です」
「わかった。ではそのことについてはだ」
「そうお考え下さい」
艦艇についてはこれで話を終わるのだった。
「そういえば我が軍って今」
「結構船持ってるよな」
「そうよね」
皆そのことにも気付いたのであった。
「マクロスだって三隻もあるし」
「セフィーロからも三隻」
NSXや童虎達のことである。
「他にも一杯あるし」
「全部で何隻だったかしら」
「二十五隻?」
「随分と増えたわね」
「それだけあれば確かに問題ないな」
一太郎がここで頷いた。
「流石に」
「そこにパイロットですか」
「それで補充クルー」
「補充クルーはプトレマイオス2に行ってもらう」
また述べるフィッツジェラルドだった。
「それでいいか」
「はい」
スメラギはすぐに彼に返答した。
「こちらは是非共です」
「是非か」
「今プトレマイオスも人手が足りませんので」
プトレマイオスはそうだったのだ。
「宜しければ是非御願いします」
「わかったそれではだ」
「御願いします」
「それで大統領」
カティがフィッツジェラルドに問うてきた。
「それですが」
「うん」
「そのクルーは誰でしょうか」
このことを彼に問うたのである。
「一体。誰でしょうか」
「アニュー=リターナーという」
「アニュー=リターナーですか」
「志願兵なのだがな」
それだというのだ。
「今回そちらに配属されることになったのだ」
「志願兵をすぐに?」
「配属だって?」
皆これを聞いて首を傾げさせた。
「またえらい冒険だな」
「そうよね」
「いきなりうちになんて」
「私も決定した事情はよくわからないのだが」
「よくわからないとは」
「コンピューターが最適と判断し」
まずはコンピューターなのだった。
「そしてそのうえで人事部が決定したことだ」
「そうなのですか」
「それでですか」
「そうだ」
だからだというのである。
「これで納得してくれるだろうか」
「まあそれは」
「コンピューターと人事部が決定したことなら」
「我々には」
反対する理由がないというのである。
「それで構いません」
「それでは」
「受け入れてくれて何よりだ。それでだ」
「はい」
「次はパイロットのことですね」
「彼等は私が選んだ」
パイロットについてはそうなのだった。
「私自身でだ」
「閣下がですか」
「では誰が」
「全部で七機だ」
まずは機体の数が告げられた。
「そしてパイロットも七人だ」
「七人ですか」
「わかりました」
「少ないだろうか」
フィッツジェラルドはそのことを気にしているようだった。
「七人では」
「いえ、それは」
「別に」
だがロンド=ベルはこのことについてはこう返すのだった。
「むしろ充分な程です」
「七人もいれば」
「そうか。それならいい」
彼等の言葉を聞いて幾分かほっとしたようであった。
「そう言ってくれるのならばな」
「はい。それでそのパイロットと補充のクルーは」
「何時到着ですか」
「今日の午後だ」
今日だというのである。
「月の君達のいる基地に到着する」
「機体も一緒でしょうか」
「そうだ」
それもだというのである。
「即戦力だ。期待していてくれ」
「七人か」
「誰だろうな」
「モビルスーツ乗りかね」
パトリックはこう予測を立ててみた。
「若しかしてな」
「モビルスーツは足りていませんか?」
そのパトリックにハワードが問う。
「それはもう」
「そうだな」
「確かにな」
ハワードの言葉にダリルとジョシュアが頷く。
「だから別にな」
「もういらないと思うがな」
「他の機体では?」
テッサはこう予測するのだった。
「それがフルメタルかどうかはわかりませんが」
「どちらにしろ午後わかることですよね」
かなめは簡単に考えていた。
「じゃあすぐじゃないですか」
「それもそうね」
「確かに」
皆かなめのその言葉に頷いた。
「若しかしたらまたボン太君かも知れないけれど」
「それはない」
宗介がそれを否定する。
「流石にな」
「ないかしら」
「ボン太君はもう充分にいる」
だからだというのである。
「だからだ。もう来ない」
「何か論理がおかしかねえか?」
「なあ」
皆今の宗介の言葉を聞いて言う。
「変なこと言うよな」
「かなりな」
「まあボン太君って本体に量産型が五体もいるけれど」
実はそれだけいるのである。
「もういざって時はマクロスから出てくれるし」
「いつも楽しくやってるぜ」
「ああ、いい奴等だよな」
何時の間にか彼等と仲良くなっているマグアナック隊であった。
「俺達もダイダロスで待っている時間長いからな」
「カトル様が御呼びするまでな」
「そういえばマグアナック隊も」
「そうよね」
皆彼等についても気付いたのだった。
「戦死する人いないよな」
「今まで一人もね」
戦死者がいないのだった。
「怪我する人もいないし」
「不死身なのかしら」
「そうえいばマイクのお兄さん達も」
「減らないし」
彼等も全員健在なのだった。
「うちの部隊って激しい戦争ばかりだけれど」
「そうそう人は死なないんだよな」
「俺一回死に掛けたよ」
ここでトールが言う。
「本当にさ、あと一歩で」
「僕もそうでしたね」
次に言ったのはニコルだった。
「よく生きていたと思いますよ」
「人間って滅多に死なないのかしら」
「おそらくはな」
マイヨが妹であるリンダに対して答えていた。
「私も生きていたしな」
「そういえば兄さんも本当に一度月から地球に逃れて」
「あれ普通死んでるんじゃ」
「そうだよなあ」
皆その時のマイヨの話を思い出していた。
「運がよかったっていうか」
「生命力が強いっていうか」
「あの変態爺さんは何をやったら死ぬのかしらね」
アスカがここでもマスターアジアのことを忌々しげに言った。
「何かこっちの世界にも来たし。変態仮面忍者と一緒に」
「変態仮面忍者!?」
「っていうと」
「あの自称ドイツの忍者よ」
アスカは彼にも強烈な拒否反応を持っているのだった。
「何よ、あの非常識な設定と能力は」
「気にしたら負けじゃないかな」
ビリーがそのアスカに告げる。
「やっぱり」
「気にしたら負けとかそういう問題じゃないわよ」
アスカはそれでも力説する。
「本当にね。次元まで超えるし」
「私もああいうふうになりたいわ」
レイはここでこんなことを言った。
「あの方に少しでも近付きたいし」
「なあ、レイってよ」
「まさかとは思うが」
剣人と弾児がそんなレイの言葉を聞いて皆に尋ねた。
「おっさん好きなのか?」
「そして桁外れに強い男が」
「そうみたいなのよ」
めぐみが彼等の問いに答える。
「どうやら」
「マスターアジアには一目惚れだったな」
「あの使徒を素手で倒した時でごわすな」
「あれは凄かったね、本当に」
一平に大次郎、日吉もいた。
「思えば長い憧れだ」
「一時敵になった時でも慕っていたてごわすし」
「本気だろうね」
「そこまで魅力的な人なのか」
マリンはかなり真面目に考えていた。
「そのマスターアジアって人は」
「究極のド変態よ」
しかしアスカはこう言うのだった。
「もうね。車より速く走るし素手でモビルスーツも一撃で破壊するし」
「待って、その人本当に人間なの?」
スメラギが速攻で突っ込みを入れた。
「宇宙人とかサイボーグじゃないわよね」
「ええ、人間です」
健一がスメラギに対して答える。
「紛れもなく」
「世の中物凄い人がいるわね」
流石にスメラギも今の健一の説明を聞いて首を捻っている。
「素手でモビルスーツって」
「それどころか素手でATフィールド破壊しますけれど」
今度言ったのはルリだった。
「エヴァにもあるあれを。それで使徒というのを一撃で」
「人間ではないですね」
留美は話を聞いてこう結論を出した。
「それは明らかに」
「一応生物学的には人間です」
だがルリはこう答えるのだった。
「それは間違いありません」
「他にもBF団という人達がいましてねえ」
アズラエルまで出て来て言うのであった。
「ライオンロボ君とも互角で戦えたんですよ。生身で」
「そっちの世界は妖怪ばかりなのか」
シリウスも唖然であった。
「その様な輩がごまんといるのか」
「いえ、僅かです」
「流石にそんなにいません」
「マスターアジアやBF団みたいな人達は」
あちらの世界の面々の言葉である。
「いませんから」
「安心して下さい」
「僕は工場を一個たった一人に壊滅させられたことがありますので」
しかしアズラエルはまだ言うのであった。
「あれは怒るよりも唖然でしたね」
「確か暮れなずむ幽鬼だったな」
アルトが言った。
「あれは」
「もう二度と御会いしたくないですね。死んでくれていることを心から祈っています」
「それでそこのボスがまた凄かったんですよ」
「もう何でもありの超人で」
ビッグファイアのことも話されるようになった。
「私達は戦ってないですけれど」
「大変な戦いで」
「向こうの世界も実に大変なのだな」
レイヴンは今はレイヴンであった。
「そこまで恐ろしい世界だとは」
「全くよ。それでだけれど」
ここでルナは話を変えてきた。
「その新入りの人達を出迎えましょう」
「ええ、それじゃあ」
「その準備も」
進めるのだった。程なくしてその新規加入のメンバーが来たのであった。
「宜しく御願いします」
「はじめまして」
「お世話になるわ」
少年と眼鏡の背の高い女、それと黒い肌の少女だった。
「俺はミストです」
「アンジェリカといいます」
「シェルディアよ」
「へえ、まずはこの三人か」
「宜しくね」
「確か君達はだ」
サンドマンが彼等の挨拶を受けながら述べた。
「軍属ではなかったな」
「ええ。何かロンド=ベルにはそういう人も多いって聞いたんで」
ミストが明るい声でサンドマンに答えてきた。
「かなりほっとしてます」
「私達は三機で一組です」
「それで御願いね」
アンジェリカとシェルディアも応えてみせてきた。
「俺が乗っているのはレヴリアス」
「セルケリウスです」
「セリウスツーよ」
三人はその愛機のことも皆に話した。
「頑張らせてもらいますから」
「宜しくです」
「そういうことでね」
まずはこの三人であった。彼等がロンド=ベルに加わったのだ。
そして次は。
「ランド=トビアスだ」
「メール=ビーターよ」
ガタイのいい中年の大男と小柄な少女の組み合わせだった。
「俺も軍属じゃねえけれどな」
「宜しくね」
「やっぱり軍属じゃないのも多いな」
「そうね」
皆二人の言葉を聞いて言った。
「うちってやっぱりそうした人間が集まるんだな」
「そうみたいね」
「宜しく頼むな」
「仲良くしてね」
「しかしこの組み合わせって」
「何か」
皆二人をあらためて見てから言うのだった。
「美女と野獣っていうか」
「可愛い女の子とおっさんっていうのが」
「おうよ、俺は力なら誰にも負けないからな」
そのランドの言葉である。
「それは覚えておいてくれよ」
「うわっ、凄い力瘤」
「確かに」
皆彼のその腕の力瘤を見た。確かにそれはかなりのものだった。
「何ていうか」
「言うだけはあるわね」
「俺の乗ってるのはガンレオンだ」
それだというのである。
「まあ荒っぽい戦いだが宜しくな」
「ああ、それはわかるわ」
「確かに」
皆ランドの今の言葉にも納得した顔で頷くのだった。
「もう外見だけで」
「何ていうか」
「さて、そして後は」
「誰かしら」
「今度は軍属のメンバーだ」
言ってきたのはカティだった。
「連邦軍の中でも厳選されたエリート部隊だ」
「エリート部隊!?」
「っていいますと」
「グローリー=スターという」
カティはその部隊名も告げた。
「それがその部隊の名前だ」
「グローリー=スターまで来たのか」
「まさかとは思いましたが」
その部隊名を聞いてこちらの世界の軍属の面々が鋭い顔になった。
「彼等まで参加するとは」
「大統領も本気ですね」
「えっ、そんなに凄いのかよ」
「そのグローリー=スターって」
あちらの世界の面々はそれを聞いて少し驚いた顔になった。
「何かすげえ部隊みたいだけれど」
「そんなにか」
「機体は僅か三機なんだけれどな」
パトリックがあちらの世界の面々に話をはじめた。
「それでもな。その三機が滅茶苦茶強いんだよ」
「あんたが言うって」
「不死身のあんたが」
実は彼もその生命力には定評があるのであった。
「じゃあ本当に凄いのね」
「その部隊って」
「ああ、洒落にならねえぜ」
パトリックはこうも彼等に話した。
「その連中が参加か。面白くなってきたな」
「言い替えればだ」
今度はまたカティが告げてきた。
「それだけ激しい戦闘が予想されるということだな」
「それは言えますね」
今のカティの言葉にパトリックが頷いた。
「あの三人まで来るなんていうのは」
「あれっ、それじゃあ」
「どうしてガルラ帝国の戦いには参加しなかったのかしら」
「だよなあ」
あちらの世界の面々はここでふと思ったのだった。
「それだけの部隊なら」
「何か他の任務があったとか?」
「それだ」
カティもそこを指摘した。
「実は地球でゼラバイアの相手をしていたのだ」
「ゼラバイアのですか」
「そういえば俺達が遠征に出ている間」
「そういうことだ」
こう答えるのだった。
「連邦軍もいたのだがな」
「その三機が加わるんですか」
「果たしてどうなりますかね」
「本当に」
そしてまたそれぞれ言うのだった。
「さて、何はともあれその三人で」
「一体どういった面子なのか」
「楽しみではあるわね」
こうした話をしているうちにその三人が来た。三人共黒い軍服である。
「デンゼル=ハマーだ」
「トビー=ワトソンな」
「セツコ=オハラです」
この三人だった。
「我々がグローリー=スターだ」
「うむ」
応えたのはカティだった。
「久し振りだな」
「そうですな。マネキン大佐」
ゼンデルは案外温厚な笑みを浮かべてカティに応えた。
「お元気そうで何よりです」
「これから最後の戦いに向かうが」
「イノベイターですね」
「そうだ。貴官達の力使わせてもらう」
「喜んで」
「まあ軽く行こうぜ」
トビーは気さくにロンド=ベルの面々に告げてきた。
「リラックスしてな」
「待て、ワトソン中尉」
デンゼルはその軽い彼を咎めてきた。
「過度にリラックスするのもよくないぞ」
「わかってますって。要はバランスですよね」
「わかっていればいいのだがな」
「それはしっかりしているつもりですよ」
また言うトビーだった。
「それでだ。おい」
「はい」
最後の一人セツコがトビーの言葉に応えてきた。
「セツコ=オハラです」
「うわ、また美人さんの参加かよ」
イルムがそのセツコを見て言った。
「いいねえ。やっぱり美人が揃うっていうのはね」
「そうやってすぐに女の子には目がいくのだな」
だがその彼の横にリンがやって来た。
「全く。油断も隙もない」
「けれどよ。御前が一番だからよ」
そのリンに苦しい言い訳をするイルムだった。
「そこはわかってくれよ」
「どうだかな。だがいい」
「いいのかよ」
「御前にはその分働いてもらう」
こうイルムに告げるリンだった。
「次の戦いでな」
「へッ、言われずともそうするさ」
この言葉には笑って返すイルムだった。
「戦いになればよ」
「そういえば次の戦いだけれど」
「イノベイターは何処なんだ?」
「そうよね」
「一体何処に」
「攻めてくるのかしら」
皆でその話をする。しかしであった。
「あっ、最後の一人よ」
「来たわ」
その話をするのだった。その最後の一人は。
「はじめまして」
「あ、ああ」
「どうも」
「アニュー=リターナーです」
敬礼と共に名乗ってきた。
「どうぞ宜しく御願いします」
「ああ、こちらこそ」
「宜しくね」
ロンド=ベルの面々も挨拶をする。そのうえで皆囁くのだった。
「思ったより美人ね」
「そうだよな」
「結構以上に」
こう話すのだった。
「けれど何か」
「感情が見られないっていうか」
「お人形さんみたい?」
こうも話すのだった。
「レイちゃんとは違ってどうにも」
「何か感情を全く見せないっていうか」
「何者なの?」
皆でそのアニューのことを話すのだった。
「まあただ感情が乏しいだけかもね」
「そうかもね」
「特に気にすることはないな」
「そうね。そういうことね」
感じた違和感を消してそのうえで再びそのアニューに向かい合うのだった。
だがそこにはもう彼女はいなかった。既にプトレマイオスツーに入ってしまっていた。話は終わりそのうえで今後のことを話すのだった。
「それでだよ」
「今後のことよね」
「イノベイターだよな」
話は彼等に関するものになった。
「今のところ大人しいけれど」
「いや、大人しいっていうかさ」
「何処にいるの?」
そのイノベイターの所在地のことだった。
「今は姿が見えないけれど」
「出て来るのは間違いないけれど」
「それでも。本拠地がわかれば楽なのに」
口々に話す。
「本当にね。何処にいるのか」
「それすらもわからないなんて」
「それは大した問題じゃないわ」
だがここでスメラギが言うのだった。
「本拠地がわからないのはね」
「えっ、けれど」
「本拠地がわからないのならどうして」
「出て来たところを叩けばいいのよ」
彼女が考えているのはこういうことだった。
「相手が出て来たところをね」
「あっ、そうですね」
「それで追撃して」
彼等はスメラギの話からこれからのことを考えたのだった。
「そのうえで本拠地を見つければ」
「それでいいわよね」
皆それで頷く。それでいくことにしたのだった。
「よし、じゃあ」
「それで行きましょう」
「敵が来た時が勝負ね」
皆で話すのだった。
「よし、それじゃあそういうことで」
「まず敵を待ちましょう」
「そうだな」
まずは待つということだった。
「そしえイノベイターが来たその時こそ」
「決着をつけてやるわよ」
全員で言うのだった。まず彼等はイノベイター達を待った。やがて月の上空に一軍が姿を現わしたのだった。その軍勢は。
「来たな」
「イノベイターね」
皆で話すのだった。
「もう出て来るなんて」
「よし、とにかく来たから」
「出撃ね」
「その通りよ」
タリアが全軍に告げてきた。
「全軍出撃」
「了解」
「行きましょう」
皆で彼女の言葉に応える。
「そして一気に本拠地まで突いて」
「倒すぜ、あの連中」
「それでいいのよね」
「ええ、それでいいわ」
また皆に答えるスメラギだった。
「いいかしら。それじゃあ全軍」
「はい」
彼女の言葉にタリアが答える。
「行きましょう」
「最後の決戦ってやつですよね」
こうして全軍で月に上がった。既にイノベイターのグン全は戦闘体勢には入っている。激しい戦いが再び行われようとしていた。
すぐにロンド=ベルとイノベイターの戦いが始まる。そのイノベイターの軍勢は。
「なっ!?」
「何ここれでって」
「イノベイターの兵器って」
それを見ながらの言葉だった。
「ガルラ帝国と」
「それに連邦軍と同じ!?」
「そうよね」
こう話すのだった。
「じゃあ戦術はやっぱり」
「ガルラ帝国の時と同じかしら」
「連邦軍は?」
見れば確かにモビルスーツもあった。それもかなりの数だ。
「モビルスーツだけれど」
「どうということはない」
ここで言ったのは刹那だった。
「モビルスーツのことはモビルスーツに乗っている者が一番よく知っている」
「そうなるよな」
ロックオンが刹那の今の言葉に頷く。
「折角乗ってるんだからな」
「それじゃあ彼等についてもオーソドックスでいいね」
アレルヤはそれでいいのではと言うのだった。
「ここはね」
「そうだ。だから特に力を張ることもない」
ティエリアも何でもないといった調子だった。
「特にな」
「そうね。皆まずは魚鱗形に陣を組んで」
まずはこう告げるスメラギだった。
「そのうえで突撃を仕掛けるわ」
「突撃か」
「正面からですか?」
「いえ、違うわ」
正面からではないというのだ。
「左右からよ」
「左右から?」
「そうよ。二手に分かれて左右から攻撃するのよ」
それが今彼女の考えている作戦だった。
「わかったかしら、それで」
「ええ、まあ」
「何となくですけれど」
皆とりあえずは彼女の言葉に頷くのだった。
「じゃあそうやって」
「二手に分かれて」
「魚座みたいにね」
ここでこんなことも言うスメラギだった。
「そうやって攻めて」
「魚座っていうと」
「確か魚は二匹」
「そうだったわよね」
流石にこれは殆どの面子が知っていた。
「その二匹の魚が陣を食い破る」
「そんな感じかしら」
「そうよ」
彼等の言葉を聞いて微笑むスメラギだった。
「その通りよ。魚っていっても色々じゃない」
「はい」
「鮫になるのよ」
ここでスメラギが出した魚は鮫だった。
「今はね」
「鮫ですか」
「鮫みたいに敵に喰らいついて」
続いてこう言った。
「そうして全部食い尽くすのよ。いいわね」
「そう言われると過激ね」
「そうだよな」
皆スメラギの今の言葉にあらためて思うのでした。
「まあとにかく敵は今回も多いし」
「やってやるか」
「全軍二手に分かれて突撃!」
スメラギの指示が下った。
「それで敵を殲滅するわよ!」
「了解!」
その言葉通りにロンド=ベルは動いた。こうして戦いに入るのだった。
ロンド=ベルはそのまま激しい戦いに入る。敵を次々を倒していく。
「よし、このままいけるか?」
「今のところはそうね」
カミーユに対してファが述べる。
「じゃあこのまま行くか」
「勢いに乗ってなのね」
「とにかく敵の数を減らす」
今カミーユが考えているのはこのことだった。
「今は何かを守るって状況じゃないしな」
「月は連邦軍が守ってくれてるしね」
「だから俺達はイノベイターの軍に集中できる」
これは彼等にとっていいことであった。
「思う存分な」
「カミーユ、それはいいけれど」
ここでファは彼に言ってきたのだった。
「何かおかしくない?」
「おかしい?」
「ええ。イノベイターの方の指揮官が見当たらないわ」
「そういえば」
ファに言われて気付くカミーユだった。
「戦艦はかなりいるがイノベイターは」
「感じないわよね」
「ああ、全くな」
実際にカミーユもファも彼等の気配は全く感じていないのだった。
「そんなのは感じないな」
「どういうことかしら、これって」
「伏兵か?」
カミーユが最初に危惧したのはこのことだった。
「まさか」
「伏兵?」
「今まで何度もあった」
敵も馬鹿ではない、考えているということなのだ。
「今回もそれをしても」
「不思議じゃないのね」
「ああ、何を考えてるんだ?」
カミーユはあらためて怪訝な顔になった。その間にも前に来た敵をビームサーベルで両断する。戦いを忘れるということは全くなかった。
「敵は一体」
「!?カミーユ」
ここでフォウが彼に言ってきた。
「感じなかった!?今」
「感じた・・・・・・むっ!?」
その時だった。カミーユも感じ取ったのだった。
「このプレッシャーはまさか」
「ええ、来たわ」
ここでカミーユも感じ取ったのだった。
「彼等がね」
「そうか、ここで来たのか」
カミーユもわかったのだった。
「奴等が」
「何だとっ」
刹那は今戦場に姿を現わした四機のガンダムのうちの一機を見て言うのだった。
「貴様・・・・・・まだ生きていたのか」
「生憎しぶとくてな」
そこにいたのはアリーだった。ふてぶてしい笑みを浮かべている。
「まだ生きているのさ」
「くっ、あの状況でまだか」
「色々と手間がかかったがこうして立っているぜ」
ふてぶてしい笑みはそのままだった。
「残念だったな」
「いや、そうは思わない」
「それならそれでだ」
「やるっていうのかよ」
「今度こそ止めを刺す」
その言葉は冷静そのものだった。
「それだけか」
「やれるのならやってみるんだな」
アリーはこう言って笑って刹那の前にいた。
「本当に俺を倒せるんならな」
「やってやる」
「刹那」
沙慈が彼に声をかけてきた。
「油断しないで。こいつは」
「わかっている」
彼の言いたいこともわかっている刹那だった。
「こいつだけはな」
「それにまさかとは思うけれど」
ふと沙慈は思ったのだ。
「このガンダムのパイロット、僕の姉さんを」
「それはわからない」
刹那はそれはわからないと言うのだった。
「だが。有り得る」
「有り得る・・・・・・」
「この男は人を殺すことも破壊することも何とも思っていない」
「それがどうしたんだ?」
実際にこう言って返してみせるアリーだった。
「俺はそうやって生きてるんだ。何ともねえぜ」
「この男・・・・・・本当に」
「落ち着け沙慈」
今度は刹那が言う番だった。
「さもなければ死ぬのは御前だ」
「う、うん」
彼もまた刹那の言うことはわかった。こくりと頷く。
「そうだね。それはね」
「この男は俺が倒す」
刹那は言い切った。
「何があってもな」
「それじゃあ僕は」
「御前はサポートを頼む」
それを頼むというのだった。
「いつも通りな」
「いつも通りだね」
「そうだ、いつも通りだ」
また沙慈に対して告げたのだった。
「わかったな」
「うん、それじゃあ」
「行くぞ」
今ダブルオーのビームサーベルをあらためて構えた。
「この男を倒す。いいな」
「うん」
「なら俺もだ」
アリーのアルケーガンダムもその剣を抜いた。
「二人共倒してやるぜ」
「死ね」
一言言うと斬りつけてきた刹那だった。
「容赦はしない」
「おっと!」
だがその一撃はアリーによって受け止められてしまった。ビームとビームが激突する。
それにより凄まじい衝撃が走る。だが彼等はそれに動じてはいなかった。
「受けたか」
「しぶといのは俺の専売特許でな」
彼等の戦いもはじまった。その他にも三機のガンダムもいた。彼等はロンド=ベルに無差別攻撃を仕掛けていた。
「くっ、よけろ!」
「何だこの連中は!」
ロンド=ベルの面々はその無差別攻撃を何とか避けていた。何とか撃墜する機体だけは出さなかった。
だがダメージを受ける機が多く出ていた。それを見て動いたのはスティング達だった。
「行くぞ」
「ああ、あいつ等にだな」
「相手にとって不足はないよな」
「うん」
劾の言葉に頷く三人だった。
「あの連中を抑えないと戦局に悪影響が出るからな」
「それじゃあ俺達三人で」
「撃ち落とすってわけだな」
「行くわ」
「いいか」
劾はあらためて三人に指示を出す。
「一機ずつだ。だが油断するな」
「刹那達のガンダムとかなり違うな」
「そうだよね。何か殺伐としてるっていうか」
「雰囲気が」
これは直感で感じたことだった。
「特に何かあいつがな」
「あのガンダムだね」
「ステラが行く」
「いや、待て」
劾はここでステラを止めた。
「あのガンダムはとりわけ危険だ」
「危険?」
「見ていたが三機の中で一番無差別に攻撃を繰り返していた」
「そうだ、気をつけてくれ」
横からティエリアも言ってきた。
「あのガンダムは特に」
「それじゃあここは」
「作戦変更だ」
劾はここで判断を変えた。
「四機で行く」
「四機!?」
「四機で三機を相手にするっていうのかよ」
「それで行くの」
「そうだ、四機だ」
こう三人に告げるのだった。
「わかったな」
「了解」
「隊長がそう言うのなら」
「それで」
素直に従うことにした三人だった。
「これでいいんだな、ティエリア」
「うん。彼等はあまりにも危険だ」
劾の言葉に対して答えるティエリアだった。
「だから僕も行く」
「おい、三対五は幾ら何でもな」
「俺達にだって意地があるからな」
「止めて」
三人がティエリアにこう言ってきたのだった。
「それはいいさ」
「四機あれば充分だしな」
「ステラ達今までやれたから」
「君達なら大丈夫だとは思う」
ティエリアもそれはわかっているようだった。
「だが」
「だが。どうした?」
「僕の気にし過ぎか」
ここでこうも言うティエリアだった。
「ならやはり」
「助けには入らないのだな」
「そうさせてもらう」
結局それは止めたのだった。
「今は別の戦いに向かうことにする」
「悪いがそうしてくれよ」
「四機あれば充分だからね」
「御願い」
「うん。それじゃあ」
他の戦線に向かうことにしたティエリアだった。こうして四人で三機のガンダムと向かうことになった。
「来たな」
「四機か」
「何機いても同じよ」
ヨハン、ミハエル、ネーナはその四機のガンダムを見ても平気な顔であった。
「何機でもね」
「その通りだ」
ヨハンがネーナのその言葉に頷いた。
「それでは行くぞ」
「ああ、わかったさ」
ミハエルがヨハンの今の言葉に頷く。
「それならな」
「あたしはこのまま行くわ」
ネーナが最初に前に出た。
「それでいいわよね」
「好きにするといい」
ヨハンは彼女の好きにさせるのだった。
「それでは僕達はだ」
「フォローに回るか」
ヨハンとミハエルは冷静なままであった。そのうえで三機のフォーメーションに入る。それを見た劾も三人に対して告げるのであった。
「こっちもだ」
「フォーメーション組むんだな」
「まあ相手がそう来るのならね」
「わかったわ」
三人も彼の言葉に頷く。そのうえで向かおうとする。ところがここで。
「あれは・・・・・・」
「!?ルイス」
「どうした!?」
不意に声をあげた彼女にソーマとパトリックが顔を向けた。
「いきなり何が」
「おい、どうしたっていうんだよ」
「あのガンダムが!」
ルイスは何かに取り憑かれたかの様に叫ぶ。
「パパとママを!そして皆を!」
「皆!?一体何が」
「何があったんてんだよ!」
「あたしの左手を!」
最早彼女は止まらなかった。
「許さない!あいつだけは!」
「待て!」
持ち場からネーナのところへ向かう彼女をカティが止めようとする。
「ハレヴィ少尉、何処へ行く!」
「あいつは私が!」
だがルイスは彼女の言葉も聞こうとしない。
「あたしが!」
「アレルヤ!」
ソーマはその彼女を見て咄嗟にアレルヤに声をかけた。
「ルイスが!」
「わかっている」
アレルヤは冷静な声で彼女に答えた。
「どうやら今の彼女は」
「ええ、だから」
「何があったのかは僕は知らない」
彼の知らないことなのは間違いなかった。
「だが。止めないと大変なことになるな」
「そうよ。だから」
「ソーマ、君は持ち場を頼む」
自分も行こうとする彼女をここは止めた。
「僕が行く」
「御願いできるかしら」
「いや、僕が行く!」
しかしここで名乗り出た者がいた。
「僕が彼女を!」
「えっ、沙慈!?」
「どうして貴方が」
アレルヤとソーマは彼の声を聞いて咄嗟に問い返した。
「君はどうして彼女に」
「何があったの?」
「話は後で」
今は言えないというのだった。
「けれど僕は彼女を」
「待て」
ここでまた一人止めに入った者が来た。
「それは駄目だ」
「刹那!?」
沙慈は共にガンダムに乗る彼の言葉に顔を向けた。
「どうしてだい、それは」
「今はこの男の相手をしている」
「あっ・・・・・・」
言われてそのことを思い出したのだった。アリーのことを。
「この男をだ」
「そうだったね、僕は」
「ひゃははははは!俺のことを忘れるなよ!」
言いながらそのビームサーベルを鞭の如く縦横無尽に振り回してきたのだった。
「この俺のことをな!」
「くっ!」
「この男はあまりにも危険だ」
刹那はまた沙慈に告げた。
「俺達が離れることはできない」
「そうみたいだね」
忌々しいが、だった。沙慈もそのことを認めるしかなかった。
「こいつも。何があっても」
「行くぞ」
また告げる刹那だった。
「この男を倒す」
「うん」
沙慈もそれで納得した。そうして今はアリーと対峙するのだった。
「そのまま死ね!」
「来たぞ」
「うん」
刹那の言葉に頷いて応える。ダブルオーはそれを見てすぐに姿を消した。
「消した!?違うな」
だがアリーはすぐに察したのだった。
「そこか!」
「むっ」
自身の左にサーベルをやる。それを受け止めるダブルオーだった。
「読んだか」
「幾らでも読んでやるぜ」
アリーは不敵な笑みで刹那に返す。
「それで本当の戦争ってやつを教えてやるぜ」
「御前の戦争とはだ」
刹那はアリーの今の言葉に対して問い返した。
「殺戮や破壊のことを言うのか」
「そうさ」
悪びれずに返すアリーだった。
「それ以外の何がある?」
「わかった」
彼の言葉をここまで聞いての返答だった。
「では俺はだ」
「何をすると言うんだ?」
「貴様を倒す」
一言であった。
「そうして殺戮や破壊を楽しむ貴様をな」
「そうだね」
沙慈も刹那の言葉に応えて頷いた。
「この人は。こういう人は」
「この世にいてはならない」
沙慈に対しても告げた。
「絶対にな」
「だから刹那」
最早彼もアリーに対してその神経を集中させていた。
「戦おう、そしてこの人を」
「倒す。いいな」
「・・・・・・うん」
ルイスのことは気になるが今彼は彼の為すべきことがわかっていた。だからもう動かないのだった。
ルイスはそのままネーナのガンダムに突っ込んだ。そのビームサーベルで斬り掛かる。
「これで!」
「!?何よこいつ!」
ネーナはルイスの乗るそのティエレンを見て声をあげた。
「いきなりあたしの前に出て来て!」
「あんたのせいで!」
最早激昂し目が異様なものになっていた。
「パパとママは!」
「何か知らないけれどね」
ルイスの放つビームを左右に避けながら応える。
「あたしに向かって来るなんていい度胸してるじゃない!」
「ううっ!」
ネーナの攻撃を受けた。それにより左腕が吹き飛ばされた。
「敵なら容赦しないわよ!殺してあげるわよ!」
「死ぬはあんたよ!」
ルイスは愛機の左肩を吹き飛ばされてもまだ戦意を失ってはいなかった。
「殺してやる!絶対に!」
「じゃあやってみなさいよ」
ネーナも血走った目で返す。
「殺し返してあげるわよ!」
「うわあああああああああああっ!」
絶叫しながらネーナに再び斬り掛かる。
「殺してやる!殺してやる!」
「こいつ!」
今度は右足を吹き飛ばされる。しかしまだ突き進むルイスだった。
「あんただけは!絶対に!」
「この女!」
「待って!」
「落ち着けルイス!」
ソーマとアレルヤが叫んだ。アレルヤが二人の間に入った。
「今の君じゃ無理だ!」
「どいてよ!」
そのアレルヤにも叫ぶルイスだった。
「あいつは!あいつだけは!」
「だから落ち着くんだ!」
必死に彼女を止めるのだった。
「さもないと死ぬのは君だ!」
「死んでもどうだっていうのよ!」
最早ルイスの言葉は狂気の域に達していた。
「あいつのせいで!皆もあたしも!」
「一体何があったの?」
ソーマは見たこともないルイスの狂気に唖然となっていた。
「彼女に何が」
「わからない。けれど今は」
「ええ、そうね」
深刻な顔でアレルヤの言葉に頷いて答えた。
「何にもならないわ」
「本当に死んでしまう」
二人は彼女を死なせるつもはなかった。毛頭として。
「だからアレルヤ、御願い」
「うん、わかってるよ」
わかっているからこそ今ルイスを止めているのだった。
「何があってもね」
「ルイスを。御願い」
「今だ」
そしてこの時だった。劾がスティング達に告げた。
「あの先頭のガンダムの動きが変わった」
「そうだな」
「それじゃああのガンダムを」
「一気に狙え」
こう三人に命じるのだった。
「一機撃墜すればこちらのものだ」
「うん」
ステラが彼の言葉に頷く。アウルのアビスガンダムは変形しそのうえでビームを連射しながらネーナのスローネドライに対して突き進む。
「おい、ステラ!」
「ええ」
「御前も来い!」
こうステラにも声をかけるのだった。
「変形してな!食い破れ!」
「わかったわ」
ステラのガイアガンダムも変形し獣の姿になって襲い掛かる。スティングのカオスガンダムもまた変形してそのうえでオールレンジアタックをネーナに仕掛ける。
「どっちにしろあんたはとんでもない奴だしな」
それは感じ取っているスティングだった。
「ここで死んでもらうぜ!」
「おら、これでも喰らえ!」
そのスティングの援護を受けたアウルはネーナの手前で元に戻りその戟で斬り掛かってきた。
「さっさと死んじまえってんだ!」
「ステラ、行く」
ステラも突撃しながら集中攻撃を浴びせる。
「これなら」
「くっ、三機がかりですって!」
この三人の攻撃を受けてはさしものネーナも劣勢を否めなかった。
「あの女もまだ殺していないのに!」
「ネーナ!」
「ここは退け!」
その彼女にヨハンとミハエルが言ってきた。
「一機では相手をするのは難しい!」
「俺達と合流しろ!」
「くっ、けれど」
「いえ、合流する必要はないわ」
ここでだった。一隻の戦艦が戦場に来た。そのうえでニーナに対して告げたのだった。
「それはね」
「!?」
「戦艦!?」
「リボンズの命令よ」
女の声だった。
「ここは全軍撤退よ」
「へっ、面白いゲームだったのによ」
アリーはそれを聞いて軽く返したのだった。
「まあいいさ。それならな」
「そうよ。一時撤退して態勢を立て直すわ」
女の声がまたイノベイターの軍勢に告げた。
「わかったわね」
「ふん・・・・・・!」
その言葉を聞いて忌々しげに声を出すネーナだった。
「命令無視は許さないってことよね」
「そうよ。わかったら退きなさい」
またネーナに対して告げるのだった。
「わかったわね」
「わかったわ。じゃあ」
だがそれでも。ルイスに対して忌々しげな目は向けるのだった。
「今度会った時こそ。本当に殺してやるわ」
憎悪に満ちた目だった。その目でルイスを見てから戦場を後にするのだった。
ヨハンとミハエル、それにアリーもまた戦場を離脱していた。最後に残っていたのはその戦艦だけだった。女の声は今度はティエリアに告げてきたのだった。
「やっぱりそこにいたのね」
「君は一体何だ?」
「貴方よ」
くすりと笑って言ってきたのだった。
「貴方自身よ」
「!?何が言いたい」
ティエリアは今の女の言葉に眉を顰めさせた。
「僕自身だと。何が言いたい」
「言ったそのままよ」
しかし女の声はまだ言うのだった。
「私は貴方、貴方は私よ」
「僕はここにいる」
ティエリアは再び声に反論した。
「それで何故そんなことが言えるのだ」
「これを見ても言えるかしら」
ここで、であった。モニターに出て来たのは。
「何っ!?」
「まさか!」
「ティエリア!
ティエリアだけでなかった。誰もが驚いた。
「僕がもう一人だと!?」
「まさかあいつは」
「ああ、それしかない」
「同じ遺伝子を持っているのだから」
そこにいたのは間違いなくティエリアだった。だが声は女のものだった。
「それは当然よ」
「僕と同じだというのか」
ティエリアはその言葉を怪訝な顔で受けた。
「僕と。イノベイターでありながら」
「ふふふ、何故かしらね」
女は楽しそうに笑ってさえいた。
「それは」
「くっ、君は一体誰だ」
「私はリジェネ=レジェータよ」
「リジェネ=レジェータか」
「そうよ。覚えておくといいわ」
ここでも楽しそうに言うのだった。
「貴方とこうして出会えたのだし」
「何か色々とあるみたいだな」
「そうだよな」
このことはロンド=ベルの面々も察した。
「何かよくわからないけれどな」
「それはな」
「さて、ティエリア」
また楽しそうに言うリジェネだった。
「これからも宜しくね」
「生憎だが僕は君と付き合うつもりはない」
きっとした顔になって言い返したティエリアだった。
「だが君は必ず倒す」
「一応話は聞いたわ。それじゃあね」
ここまで話してそのうえで姿を消すリジェネだった。彼女が姿を消すとイノベイターの軍勢も姿を消した。後にノコツのはロンド=ベルの面々だけだった。
「一時月に戻るか」
「そうですね」
「戦いは終わりましたし」
皆今のグローバルの言葉に応えた。
「それじゃあここは」
「月に」
「全軍集結」
まずは戦闘により散開している彼等を集結させた。
「そのうえで月に帰投する」
「了解」
「わかりました」
皆それを受けて集結にかかった。それにより撤収に入るが二人動かない者がいた。
「あの女・・・・・・」
ルイスはまだ血走った目でそこにいた。
「パパとママ、それに皆を」
「ルイス・・・・・・」
その彼女に沙慈が声をかけた。
「行こう、もう」
「沙慈・・・・・・」
「戦いは終わったよ」
「いえ、まだよ」
だがルイスの目は血走ったままだった。
「あの女。あの女を」
「いや、帰るぞ」
ここで刹那も彼女に言ってきた。
「帰るぞ。戦いは終わった」
「まだ、私はあいつを」
「次の戦いで倒せばいい」
こう彼女に言うのだった。
「いいな。次の戦いでだ」
「次の戦いで」
「そうだ」
有無を言わせぬ口調だった。
「それは今ではない。わかったな」
「・・・・・・ええ」
ここでやっと頷いたルイスだった。
「じゃあ私も」
「帰ろう、ルイス」
沙慈は今度はさらに優しい声をかけた。
「いいね」
「ええ」
彼の言葉にも頷いた。そのうえでようやく撤収に入るのだった。
そしてティエリアもまた。彼は難しい顔で残っていた。
「ティエリア」
「いいかな」
その彼にロックオンとアレルヤが声をかけてきた。
「戦争は終わったぜ」
「もう帰ろう」
「わかっている」
一応こう頷きはするティエリアだった。しかし。
「それでも。あの女は」
「リジェネ=レジェータだったな」
「あの女だね」
「あの女。一体」
彼はその難しい顔で言うのだった。
「何故僕と同じ。それに」
「イノベイターの方にいるかだな」
「それだよね」
「何故だ」
まだ難しい顔になっていた。
「あの女。本当に何者なんだ」
「少なくとも今はわかるものじゃないさ」
「いても仕方がないよ」
彼等は言うのだった。
「だからな。帰るぜ」
「それでいいね」
「わかった」
いても仕方のないことだった。ならばここでやるべきことは一つだった。
「帰ろう。僕も」
「ああ、そうしよう」
「じゃあ帰ろうか」
「わかった。それじゃあ僕もだな」
こうして彼も撤収に入った。イノベイターとの初戦はまずはロンド=ベルにとっては幸先よい快勝と言っていいものだった。だがそこで味わったものは決して心地よいものではなかった。彼等にとってイノベイター達との戦いで見えるものは何か。それすらも考えさせられるものだったのだ。

第百四十五話完

2009・8・29 
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