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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百十一話 四十年前の記憶

                  第百十一話 四十年前の記憶
ロジャーが街の謎を解くことになった。しかしここでロンド=ベルの面々はふとあることに気付いたのだった。
「そういえばですね」
「どうしたの?」
チュクルがテセラの声に顔を向けた。20
「いえ、私達のこの世界も」
「ええ」
「一万二千年前の記憶は全くないですよね」
彼女が言うのはこのことだった。
「そうですよね」
「それは仕方ないわよ」
その意見にシルヴィアが応える。
「だって。天使達に滅ぼされたから」
「それはそうですけれど」
しかしテセラはそれでも言うのだった。
「同じですよね。記憶がないのは」
「それはそうね」
それはシルヴィアも認めるしかなかった。
「言われてみれば」
「考えてみれば奇妙な一致ね」
麗花も言う。
「私達とパラダイムシティのこの一致も」
「どういうことかしら」
つぐみも話に入って来た。
「このことって。一体」
「とりあえずこの街の記憶がないことから調べないとわからないんじゃ?」
ジュンはぼんやりとした感じだが述べた。
「やっぱり」
「そうなるんですね」
エイナは今までのやり取りを聞いて困ったような顔になっていた。
「となるとやっぱりここは」
「ロジャーさん次第だな」
マリンは言った。
「ここは。やはり」
「それと潜入しているメンバーだけれど」
ジェミーも言う。
「彼等に期待しましょう」
「一応今ミヅキさんがいるけれど」
ルナが述べた。
「斗牙はいいとしてあの馬鹿二人もいるし」
「ああ、アポロとエイジね」
「何であの二人なのよ」
シルヴィアに応えながら顔を思いきり顰めさせる。
「よりによってあの二人はないでしょ。喧嘩とか食い逃げとかしたらどうするのよ」
「その為に万丈さんがいるんじゃない」
だがその彼女にボビーが言う。
「安心なさい。しかも王子様もいるわよ」
「そうね。お兄様がいたら大丈夫ね」
シルヴィアはシリウスの顔を思い出して安心した顔になる。
「それなら」
「そうよ。艦長はちゃんと人を選んでるわよ」
今回の人選はジェフリーが行っている。
「ちゃんとね」
「それに宙もいる」
ジャックは彼の名を出した。
「何かあってもすぐに対処できる」
「鋼鉄ジーグの力で」
雷太もそれに続く。
「やってくれるか」
「若しあの時みたいに変なマシンが出ても大丈夫」
ボビーのオカマ口調は相変わらずである。
「さあ、私達はとりあえず男の子のお話でもしましょうかしら」
「男の子っていっても」
ルナは腕を組んで難しい顔になった。
「うちの部隊ってねえ。何か」
「個性派ばかりです」
つぐみはそれがいささか困っているようだ。
「もう一人一人凄い個性の持ち主で」
「っていうか個性弱い人間いる?」
ミーナは真剣な顔で皆に問うた。
「戦わない人達だって」
「アズラエルさんだってかなり」
彼もまたかなり濃い人間である。
「あれだし」
「あそこまで行くともう変態でしょ」
こうまで言われるのだった。
「食べるものも変だし言うことも趣味も何もかも変だし」
「あれで大グループの総帥だからねえ」
「向こうの世界も大変ね」
他にも色々なメンバーの話に興じる。とにかくその彼女達も含めて個性派揃いのロンド=ベルであった。
その頃パラダイムシティではエイジがアポロと共に並んで歩いていた。赤髪の男二人が並んで歩いているだけでも目立つがそれだけではなかった。
「これ食うか」
「いらねえよ」
アポロはエイジに食べ物を差し出す。それはかなり大きなパンだった。
そのパンを食べながらエイジに差し出すのだった。だがエイジはそれを断るのだ。
「今はよ。いらねえよ」
「今はかよ」
「腹が減ってねえんだ」
エイジは言う。
「だからな。今はいいよ」
「そうかよ」
「しかしよ」
エイジは街を見回しながら言う。
「本当にニューヨークそっくりだな」
「ニューヨーク!?」
アポロはエイジの言葉にパンをかじりながら応えた。
「何処だよ、それ」
「何処だよって知らねえのかよ」
「ああ。全然な」
こう言葉を返す。
「何の街かな。何処にあるんだよ」
「アメリカにあるだろうがよ」
エイジは呆れた顔でアポロに返す。
「っておめえアメリカに行ったことあるよな」
「あったか?」
「あったかって戦いで通ったりもしてるだろ」
「そうだったか?」
「御前何も知らねんだな」
あらためてアポロに対して呆れる。
「一体どんな生活してたんだよ」
「止めておけ」
シリウスがエイジに言ってきた。
「この男には何をい言っても無駄だ」
「無駄なのかよ」
「ああ。無駄だ」
彼は言うのだ。
「全くな。無駄だ」
「そうか?」
しかしエイジはシリウスのその言葉には首を捻る。
「こいつはこいつで色々あるからよ」
「何故そう言える」
シリウスにとってはわからないことだった。
「私はこの男の破天荒さに辟易しているのだが」
「俺だってそうだしよ」
今度はこうシリウスに述べた。
「だからよ。別に」
「いいのか」
「全く構わねえよ。全然な」
「そういえばタイプこそ違うが」
シリウスはここであらためてエイジを見た。
「二人共似ているか」
「似てるか」
「髪の色だけではない」
それだけではないというのだった。
「その他にも。似ているな」
「へっ、それでまた色々と言われそうだぜ」
こう言って悪態めいた言葉を出すエイジだった。
「しかしよ。本当によ」
「そうだな。似ている」
シリウスもエイジの言葉には同意する。
「あの街にな」
「その通りだね」
万丈もその話に頷いた。
「ニューヨーク、しかもマンハッタンに似ている」
「そうだな」
シリウスも万丈の言葉には素直に頷いた。
「そのままと言ってもいい。しかし違う街だ」
「ニューヨークには独特の趣きがある」
万丈もまた言う。
「けれどこの街にはまた別の趣きがあるね」
「何だ?この感覚」
アポロはパンをかじったまま述べた。
「この感覚。何だ?」
「どうしたんだよ」
エイジがその彼に問う。
「何かあったのかよ」
「この感覚は機械だな」
彼は言った。
「生き物の感触はしねえぜ。何でだ?」
「!?機械」
シリウスはその言葉に反応した。
「今機械だと言ったな」
「あちこちに感じるぜ」
アポロはまた言った。
「この街にな。それしか感じねえ」
「そういえばドモンも言ってたな」
シリウスはアポロの言葉を聞くうちにまた述べた。
「同じようなことを」
「この街はおかしいな」
アポロの顔が懐疑的なものになった。
「偽物なのかよ。まさかと思うけれどな」
「偽物の街」
万丈もまた呟く。
「若しかしたらだけれど」
「どうしたんだ?万丈」
宙が彼に問うた。
「そこにも大きな謎があるのかもね」
「謎!?」
「まず四十年前から先の記憶がないね」
万丈もまたこのことを話した。
「それに今のアポロ君の感覚」
「ああ」
「どうもね。一緒なんじゃないかなって思うんだ」
「一緒!?」
「同じだってね」
万丈は言葉を言い替えてみせた。
「思うんだけれどね。僕は」
「同じか。過去がないのと機械の感覚は」
「さて、それを調べる方法だけれど」
万丈はここで顔をあげた。
「僕の考えるところ」
「それは何だ?」
「今ロジャーさんはある場所に向かっている」
彼は言った。
「そこにあるね。少なくともキーの一つが」
「じゃあ俺達もそこに行くか」
「うん、そうしよう。そこは」
彼等はある場所に向かった。その頃ロジャーは車で街のある場所に向かっていた。彼が運転するその車の隣の席にはドロシーがいた。
「ねえロジャー」
「何だ、ドロシー」
「これから会うアレックス=ローズウォーターだけれど」
「彼のことか」
「どういった人間なの?」
「評判はよくない」
まずはそのアレックスという人物についてこうドロシーに話すのだった。
「彼の経営するパラダイム社は事実上この街を支配しているが」
「ええ」
「その手法は強引だ」
批判する言葉だがそれは表情にも顔色にも出さず話している。
「彼自身もあまりよくない噂が多い」
「そうした人なの」
「私もあまり好きではない」
こうもドロシーに話す。
「どうにもな。だが今は会わなければならない」
「この街の謎を解く為にね」
「彼はこの街を支配している」
またこのことを言う。
「ならこの街を知っていて当然だ」
「その謎のことも」
「支配するには知らなくてはならない」
ロジャーは真理の一つを言葉に出した。
「だからだ。彼は間違いなくこの街の謎を知っている」
「それで会いに行くのね」
「とはいっても話してくれるかどうかわからないが」
このことに関しては決して楽観してはいなかった。
「むしろ」
「むしろ?」
「その謎を突き止めようとする私に何かをしてくるかも知れない」
やはりアレックスを信頼してもおらず好意も抱いてはいなかった。
「その可能性も低くはない」
「そうなの」
「だが。それでも行く」
決意は変えなかった。
「私は。そしてこの街の謎を解こう」
「わかったわ。それじゃあ」
ドロシーは無表情で彼の言葉に頷いた。そうして二人でそのアレックスの屋敷に向かった。屋敷に着いた二人は応接間に案内された。そこは何もかもが白い部屋だった。白い壁には老人の大きな肖像画がかけられている。そして屋敷の主であり街の支配者でもあるアレックスと会うのだった。
「ロジャー=スミス君だったね」
「はい」
ソファーに座っているロジャーはアレックスの言葉に応えた。
「そうです。私がこの街のネゴシエイターの」
「話は聞いているよ」
アレックスはロジャーより先に言ってきた。
「君のことはね」
「そうですか」
「そして今日は何の用かな」
アレックスの方から彼に問う。
「僕のところに来たのは」
「この街のことです」
ロジャーは単刀直入に彼に告げた。
「この街のことで気になることがあるのですが」
「気になること?」
「はい、そうです」
また言うロジャーだった。
「この街はまず外から隔絶されています」
「そうだね」
「そして四十年前の記憶がありません」
このことも彼に話した。
「何故でしょうか。私がそれが気になっていまして」
「それで僕のところに来たのかい」
「その通りです」
また彼に率直に述べた。
「貴方なら何か知っているのかと思いまして」
「僕がか」
「貴方はパラダイム社の経営者です」
ロジャーはこのことも彼自身に話した。
「この街に大きな影響力を持っているパラダイム社の」
「だから僕がこの街の謎を知っているというのだね」
「違いますか?」
アレックスの目を見て問う。
「貴方なら御存知と思うのですが」
「トマトだね」
「!?」
今の言葉はロジャーにはわからなかった。
「トマト!?」
「いや、何でもない」
だが彼はロジャーに今は語らなかった。
「何でもない。失礼したね」
「そうですか」
「しかし君は前にここに来たと思うのだが」
またアレックスから先に言ってきた。
「確か。そうだったのではないのかな」
「私がここに!?」
「そんな気がするが」
「いえ、それはありません」
ロジャーはそれは完全に否定した。
「私はここに来たのははじめてです」
「あれ、そうだったかな」
アレックスはそれを聞いていぶかしむ顔になった。
「そんな気がするが」
「まさか。それは」
「だが。一つ言っておくが」
アレックスはあらためてロジャーに言ってきた。
「僕はその二つのことについて知らない」
「知らないのですか」
「確かにこの街は外の世界と隔絶されている」
彼もそれはよくわかっていた。
「そして四十年前の記憶がない」
「それはその通りです」
「何も知らないのだよ」
彼はさらに話す。
「僕は何も」
「そうだったのですか。それでは」
「悪いね。何も知らなくて」
アレックスはこうロジャーに告げてきた。
「それで話はこれで終わりかな」
「はい」
またアレックスの言葉に頷いた。
「それではまた」
「ではまた機会があれば」
アレックスは表面上は紳士的に彼に応じた。
「仕事を頼みたい。それでいいかな」
「はい、それでは」
「その時に」
これで話は終わった。ロジャーはアレックスに挨拶をして屋敷を後にした。そうして自分の家に愛車グリフォンで帰る。その時にまたドロシーが声をかけてきた。
「ロジャー」
「何だ?」
「あの人のことだけれど」
「どうやら本当に何も知らないな」
彼は車を運転しながら述べた。
「彼はな」
「そう、知らないの」
「知っていれば顔にどうしても出る」
ロジャーは言った。
「目に出るものだ」
「そうなの」
「そうだ。しかし無駄ではなかった」
「無駄じゃなかったの」
「どういうことだ?」
ハンドルを握りながら考えていた。
「私が。あの屋敷に前に行ったことはない」
「ロジャーはあの人とは初対面ね」
「しかも彼の父親とも面識はなかった筈だ」
「父親?」
「そう。彼には父親がいた」
彼は言う。
「ゴードン=ローズウォーター」
彼はその名を出した。
「彼の父親でパラダイム社の創設者でもある」
「その人とは会っていたの」
「しかし記憶にない」
彼は言う。
「私は知らない。いや」
「いや?」
「覚えていない」
声に怪訝なものが宿った。
「そのことは。私も四十年前のことを知らない」
「ロジャーもなのね」
「何故ロンド=ベルがここに来たのか少しだけわかってきた」
彼は今度はこのことも考えた。
「運命なのかも知れない」
「運命?」
「この街の謎を解くべきだという。私の運命かも知れない」
「じゃあロジャーはその謎を」
「解くべきなのだ。間違いなくな」
「そう。じゃあロジャーはこれから」
「とりあえずは家に戻る」
今はそうするしかなかった。
「今は。それからじっくり考えよう」
「わかったわ」
そのまま家に帰るつもりだった。しかしそうはいかなかった。ここでまたマシンが姿を現わした。だが今度はベックのものではなかった。
「あのマシンは」
「私じゃない」
ドロシーはそのマシンを見て言った。
「私とはまた別のマシン」
「あれはシュバルツバルトか」
ロジャーは車から出ながらそのマシンを見ていた。
「死んだ筈だが」
「生きていただけね」
ドロシーはロジャーに対して素っ気無く述べた。
「彼も」
「何故生きていたのかは後で考える」
それは先送りにした。
「しかしだ」
「しかし?」
「今はあのマシンを止めることが先だ」
「貴方の依頼ではないのに?」
「既に彼等が出撃している」
見ればグラヴィオン達が出撃していた。ダイターンや鋼鉄ジーグ、アクエリオンも出ている。
「まさかこんな時に出て来るとはな」
「本当に時間を選ばないわね」
シリウスとシルヴィアがアクエリオンに乗っていた。アポロも一緒である。
「だが。このマシン」
「ええ、似てるわ」
二人はそのマシンも見ていた。
「ロジャーさんのマシンに」
「そうね。何故かしら」
「似てる?」
アポロは二人の今の言葉に顔を向けた。
「似てるのか?あのマシンが」
「そんな気がするな」
「ええ、それだけだけれど」
「そうだね。似てるね」
万丈が二人の言葉に頷いた。
「確かにね。謎がまた一つ出て来たかな?」
「だとしたら厄介ね」
ミヅキがそれに応える。
「ここでまた一つ出て来たなんて」
「さて、それはどうかな」
しかし万丈はそれには懐疑的だった。そして言うのだった。
「謎は幾つあっても一つの場合があるからね」
「ええ、そうね」
ミヅキはそれだけでわかった。
「そのケースもあるわね」
「そういうこと。だから厄介だって思う必要はないよ」
「?どういうことだそりゃ」
エイジは今の二人の会話に首を捻った。
「謎は幾つあっても一つだってよ」
「本当よね。どういう意味なんですか?」
ルナもわからずつい万丈に問うた。
「それって」
「つまり。根っこの問題なんだよ」
「根っこの!?」
「そう。枝は幾つもあるじゃない」
万丈は木に例えて話をはじめた。
「けれど幹や根は一つだよね」
「はい」
「それと同じだよ」
こう話すのだった。
「それとね。同じことなんだよ」
「枝は幾つでも根は一つ」
「そういうこと。さて、話はこれ位にして」
万丈は話を一旦切った。
「この訳のわからないマシンの相手をするとするか」
そして名乗りをあげた。
「やあやあ遠からん者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ」
あの名乗りであった。
「世の為人の為パラダイムシティの謎を解くダイターン3.日輪の輝きを恐れぬのならかかって来い!」
「パラダイムシティの謎か」
しかしその名乗りに対してマシンに乗る男は意外な反応を見せてきた。
「それを解くというのだな」
「むっ!?」
「ならばそうするといい」
「何っ、あいつ!」
エイジはモニターに出た彼の姿を見て驚きの声をあげた。
「包帯で顔を包んでやがる。何だありゃ!」
「こっちの世界にもこんな奴がいやがったのかよ」
エイジは驚いていたが宙は冷静だった。
「本当に色々なのがいやがるな」
「ってあんた冷静じゃねえか」
「向こうの世界じゃ色々な奴がいたからな」
「そんなに色々いたのかよ」
「何回か話してないか?」
宙はエイジの言葉にこう返した。
「こちらの世界のことは」
「そういやそうだったか?」
「けれどそんなに変な人のことは聞いてないわよ」
ミヅキが話に加わってきた。
「マスターアジア以上の人はね」
「流石にこっちの世界にはあんな人いないけれど」
ルナが言った。
「けれどあんなのがいたの、宙さん達の世界って」
「まあな。いないわけじゃなかった」
宙はルナにも述べる。
「結構以上に大変だったな」
「そうだったの。そっちの世界も洒落にならないのね」
「ああ。しかし今は」
話を戦いに戻してきた。
「こいつを早く何とかしないとな」
「そうね。さあ、行くわよ!」
ルナは威勢のいい声をあげてそれを斗牙にもかけた。
「いいわね、斗牙!」
「うん、じゃあ」
「正面から来ます」
エィナが言った。
「ここは」
「うん、こうする!」
拳を繰り出してシュバルツのマシンの動きを止めた。攻撃を受けたシュバルツはまだ倒れていない。そしてこんなことを言うのだった。
「四十年前のことを知れば」
「!?また四十年前!?」
「貴様等はその時後悔するだろう」
「後悔!?」
リィルはその言葉に目を止めた。
「どうして後悔を」
「さてね、けれど彼が四十年前について何かを知っているのは間違いないね」
万丈はそのリィルにこう述べた。
「それなら。少し」
「待ってくれ」
ここでロジャーの声がした。
「遅れて済まない」
「ロジャーさん」
「この男はシュバルツガルトという」
ロジャーは彼の名を仲間達に教えた。
「私とは昔から因縁のある相手だ」
「そうだったんですか」
「昔からといってもそれができたのはこの前のことだが」
こうルナ達に話す。
「しかし。四十年前のことを知れば後悔するというのか」
「その通りだ」
シュバルツはロジャーに対しても答える。ロジャーは既にビッグオーに乗っている。
「ロジャー=スミス。貴様もまた」
「私も?」
「頼まれた筈だ」
こう彼に言うのだった。
「四十年前のことを。頼まれた筈だ」
「私が。頼まれただと」
ロジャーは彼の言葉に眉を動かした。
「何時の間にだ。それは」
「覚えている筈だ」
しかしシュバルツはロジャーの言葉に答えはしない。
「それもまた」
「どういうことなのだ」
ロジャーにはわからないことだった。
「私が頼まれ。覚えているだと」
「だが。言っておく」
シュバルツはまた彼に言ってきた。
「それを知れば後悔することになる」
「後悔か」
その言葉がロジャーの脳裏に残る。
「そうだ。その四十年前の記憶」
「本当にそこにこだわるね」
万丈もシュバルツのこのことに気付いた。
「尋常じゃないまでにね」
「そこにある秘密を知れば貴様は後悔する」
「生憎だが私は後悔することを恐れてはいない」
しかしロジャーは言うのだった。
「何故なら」
「何故なら?」
「人は生きている中で必ず後悔を積み重ねていく」
こうシュバルツに言い返す。
「そしてそれを乗り越えて生きているものだからだ。だから私は後悔することを恐れてはいない」
「そう言うのか」
「何度でも言おう」
ビッグオーを動かしながらさらに言う。
「このことを。何度でもな」
「ならば。後悔するのだ」
シュバルツもまたロジャーに対して告げる。
「この街の謎を知り。そのうえで」
「行くぞシュバルツ」
ロジャーはさらにビッグオーを動かしシュバルツと戦闘に入った。
「少なくともここで貴様を倒す」
「来るのだロジャー=スミス」
シュバルツもそれを受けて立つ。
「この戦いをその後悔のはじまりとするのだ」
「言った筈だ。私は後悔を恐れてはいない」
この考えは変わらなかった。
「例え何があろうともだ」
この言葉と共に拳を繰り出す。シュバルツも攻撃を返す。ロジャーもまたその攻撃を受けてそこからあることに気付いたのだった。
「この攻撃は」
「似ているわ」
ドロシーも言う。
「このビッグオーに」
「そうだな。同じタイプのもののようだ」
攻撃を受けたうえで彼も言う。
「まさか。このビッグオーはこの世で一機の筈」
「その筈ね」
「だが。何故だ」
彼はシュバルツの攻撃を防ぎつつ考える。
「同じタイプがあるとするならば。何故だ」
「考えている暇はないわ、ロジャー」
しかしここでドロシーがまた彼に言う。
「敵の攻撃が」
「戦いの後で考えるとするか」
ロジャーもそちらに頭の中を切り替えた。
「それなら」
「ええ、そうした方がいいわ」
ドロシーも頷く。ロジャーはそれを受けてからあらためて攻撃に入る。攻撃を受けたシュバルツのマシンは後ろにのけぞる。ロジャーはそこにミサイルを叩き込みそのうえでさらに拳を入れた。しかしまだシュバルツは立っていた。
「ロジャー、まだ」
「わかっている。これで決める」
彼は続けてサドン=インパクトに入った。
「サドン=インパクト!」
これが決め手になった。最後の攻撃を受けたシュバルツのマシンはあちこちから火を噴き爆発した。しかしシュバルツは爆発する直前にマシンから跳び出てそのまま何処かへと姿を消したのだった。
「四十年前だ」
彼は逃げ去る時も言った。
「四十年前のことを知るのだ。そして絶望を味わうのだ」
こう言い残したうえで姿を消した。後に残ったのはロジャーとロンド=ベルの面々だけであった。
「戦いには勝利を収めることができたが」
「残念だったね」
万丈がシリウスに対して述べた。
「折角の有力な手懸かりを逃してしまったからね」
「四十年前に何かがあった」
シリウスも他の者もそれは察した。
「だが。それは一体何だ」
「それについても調べる必要があるようだな」
ロジャーは冷静に述べた。
「また。街の中を聞いて回るとするか」
「手懸かりはあるの?ロジャー」
「今のところはないが」
こうドロシーに返しはする。
「いや、待てよ」
「どうしたの?」
「あの時彼はトマトと言っていた」
不意に屋敷での話を思い出したのだった。
「トマトか。少し調べてみるか」
「手懸かりがあったのね」
「まだ手懸かりになるかどうかはわからない」
ドロシーに対して言葉を返した。
「しかし。そこから何か出て来る可能性はある」
「そうなの」
「ここは少しそこに行ってみよう」
少なくとも次の行く先は決まったようであった。
「明日にでもな」
「わかったわ。じゃあ今日はこれで終わりね」
「そういうことだ。今日は終わりだ」
既にビッグオーの戦闘態勢は解かれていた。戦闘は終わりだった。
戦いが終わるとロジャーは今街にいるロンド=ベルの面々に自宅に集まってもらった。そこはビル全体が家になっているのだった。
「へえ、凄い家だな」
「そうなの?」
エイジの言葉に斗牙がわかっていない声を出した。
「サンドマンのお城の方が」
「あんなとんでもねえ城と一緒にするな」
エイジはそんな斗牙に少し怒ったように返した。
「ったくよ、御前は何でそうなんだよ」
「そうなんだよって」
やはりわかっていない斗牙だった。
「何が?」
「だからよ。世間知らず過ぎるだろうが」
いい加減頭にきたエイジだった。
「ずっとあんな変てこな城の中で暮らしてきたにしろちっとは常識を身に着けやがれ」
「ちょっと、あんたが常識なんて言わないでよ」
ルナが斗牙を護るようにしてエイジの前に出て来た。
「少なくともあんたも常識は全然ないわよ」
「何っ!?俺がかよ」
「本当に全然ないじゃない」
じっとエイジを見据えて言う。
「っていうか頭斗牙より断然悪いじゃない」
「手前!今は頭は関係ねえだろうが!」
「あるわよ!」
いつものように喧嘩になってきた。
「あんたとシンも!頭は全然動かないじゃない!」
「今度はシンもかよ!」
「声が似てるからよ!」
身も蓋もないことを言うルナだった。
「実は同一人物じゃないの?性格だって似てるし」
「気にしてること言うんじゃねえよ」
実はエイジも自覚していることだった。
「御前はそういう相手いねえみてえだけれどな」
「それがいいか悪いかは別なのね」
「とにかく俺は最近それがやけに気になってるんだよ」
エイジでもそういうことはあるのだった。
「何なんだよ、本当に」
「まあ気にしても仕方ないんじゃないの?」
ルナも何時の間にかそうした話になっていた。
「とにかくよ。話は戻すけれど」
「ああ」
「このお家はあたしも凄いと思うわ」
このことについてはルナもエイジと同じ意見であった。
「結構以上にね。凄いわ」
「そうだよな。執事さんまでいるしな」
「ええ」
「あの白髪の人な」
エイジは彼も見ていたのだった。
「あの人がビッグオーの整備もしてるんだったよな」
「そうらしいわね」
ルナはエイジの今の言葉に頷いた。
「ノーマンさんよね」
「そう。ノーマン=バーグさん」
万丈が彼の名前を二人に告げた。
「ギャリソンに匹敵する名執事だね」
「ギャリソンさん程って」
「それだけの人だよ。あっ、噂をすれば」
ここでその白髪の背の高い執事が来たのだった。万丈達の前に出て来てそのうえで静かに一礼してそのうえで一同に述べるのであった。
「ロンド=ベルの方々ですね」
「如何にも」
シリウスが彼の問いに答える。
「その通りだが」
「四十年前の記憶を調べに来られたとお聞きしました」
こう彼等に言ってきた。
「その通りですね」
「はい、そうです」
それに答える一同だった。
「その通りですけれど」
「それが何か?」
「私は長い間この家にいます」
ノーマンは彼等の言葉を聞いたうえでまた述べてきた。
「そう。四十年以上前より」
「四十年以上前から?」
「そうです」
彼はまた答える。
「この家にお仕えしています」
「おい、それおかしいだろ」
アポロが彼の今の言葉に言い返した。
「この街には四十年前の記憶がないんだよな」
「その通りです」
「じゃあどうしてあんたそれより前に仕えてるんだよ」
彼はそこを問うのだった。
「何でだよ。それであんたが四十年以上も前からって」
「記憶はありません」
「記憶はない!?」
「それでも!?」
「そうです」
また言うのだった。
「私はその時の記憶はありません。ですが」
「四十年以上前から仕えている」
「ということは」
万丈はそれを聞いて考える顔になった。
「あれだね。この街は四十年以上前からあった」
「そうなるな」
宙も同じことを考えた。
「ノーマンさんの話だと」
「それとも」
「それとも?」
しかし万丈はこうも言った。
「そういうことになっているのかもね」
「!?どういうことなんだ万丈」
宙にも今の言葉の意味はわからなかった。
「そうなってるってよ」
「ドモンが言っていた言葉が気になるんだよ」
万丈は宙のその疑念に応えてまた述べた。
「何か。周りが全部機械みたいだってね」
「そういえばそんなことを言ってたな」
「アポロ君も同じことを言っていた」
今度はアポロを見て言った。
「そうだったね。この街の人間は機械みたいだって」
「生きている感じはしねえな」
アポロは彼の言葉に応えて述べた。
「それも全くな」
「そうだね。だとしたら」
万丈はさらに言う。
「この街はイミテーションかも知れない」
「イミテーション!?」
「まさか」
「とにかくまだ結論は出せない」
こう言いはする。
「けれどそれでも。これは仮説の一つにはなるよ」
「仮説にか」
「うん。さて、どうなるかな」
万丈は今度はシリウスに応えて述べた。
「この謎は」
「それで皆様」
話が一段落したところでそのノーマンが彼等に言ってきた。
「ロジャー様ですが」
「あっ、そうだったな」
エイジは彼のことを思い出した。
「あの人は何処なんだ?それで」
「今来られます」
こう彼等に告げるのだった。
「そして皆様に御馳走をしたいと」
「食事か」
「既に用意はできております」
ノーマンはこうも彼等に述べた。
「ですから。ここは是非」
「俺はいいがな」
宙だけはそれは断った。
「俺はサイボーグだからな。だからそれはいらない」
「ドロシー様と同じですね」
ノーマンはそれを聞いて静かに述べた。
「ならば」
「ああ、悪いな」
「いえ、構いません」
それはいいというのだった。
「その方の事情がありますから」
「だからか」
「はい。それでもです」
しかしそれでもとノーマンは申し出てきた。
「お食事の場には出て下さい」
「それはどうしてなんだ?」
「ロジャー様から御礼を申し上げたいからです」
このことも彼等に話した。
「ですから。是非」
「御礼?」
「今まで。戦闘において助けて頂きましたから」
だからなのであった。
「ですから。是非共」
「そういうことならわかったぜ」
宙もここまで話を聞いたうえで頷いたのだった。
「じゃあ俺もな」
「はい、御願いします」
「さて。まだ謎は何一つとかれてはいないけれど」
万丈はそれはまずは置いておくことにした。
「それでも。今は休息を取るとしようか」
「休息ですか?」
シルヴィアは万丈がいつもの余裕のある調子で述べたので顔を少し顰めさせた。
「今はそんな時じゃないと思うのですが」
「いや、その時だよ」
だが万丈はこう言うのだった。
「弓も張ったままじゃ駄目じゃない」
「弓ですか」
「そうだよ。だからね」
万丈はまた言う。
「ここは休息を取るよ」
「そういうものですか」
「戦士も時として休息が必要」
万丈の話は同じだった。
「だから。ここは食事を楽しもう」
「わかりました。それじゃあ」
こうして彼等は今は休息に入った。そして食事の場でロジャーから礼の言葉を受けそのうえでまたこれからのことに挑むのであった。

第百十一話完

2009・3・2  
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