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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第九十八話 一万年と二千年前から

               第九十八話 一万年と二千年前から
ロンド=ベルの次の行動先はアフリカ西海岸だった。そこに撤収した天使達の掃討がその目的である。補給や整備を受けてすぐの行動であった。
「そういえばですね」
ジュンがここで言うのだった。
「あのアクエリオンですけれど」
「それですね」
「はい。味方なのはわかりました」
それは彼も承知していた。このことをメグミ達と話しているのだ。
「ですが」
「ですが?」
「果たして何処から来たのでしょうか」
こう一同に問うのだった。
「果たして」
「そういえばそうですね」
メグミがそれを聞いて言った。
「あれだけのマシンを持っているとなると少なくとも部隊ですけれど」
「けれどテッサ大佐も詳しいことは御存知ないし」
「それか組織か」
ハルカとハーリーも言った。
「そういうのしか考えられないけれど」
「果たして何処なんでしょうか」
「それがわからないからこそ困ってるのよね」
マリアも珍しく困った顔をしている。
「何もかもが」
「こちらの世界のことは大体わかったつもりだけれど」
「それでもね。あれはわからないわ」
さやかとひかるも言う。
「あのアクエリオンだけは」
「他にも色々と噂を聞くし」
「パラダイムシティね」
このことを話に出したジュンだった。
「この世界の何処かにあるとは聞いているけれど」
「それについては只今調査中です」
ルリが一同に答えた。
「暫くお待ち下さい」
「それでわかりそうなの?」
「残念ですが」
こうマリアの言葉に答えるルリだった。
「何もかもがわかっていませんし」
「そうなの」
「暫くは何かがわかる可能性は皆無です」
「それでも調べるのね」
「はい」
今度はさやかの言葉に答えたのだった。
「継続してこそですので」
「わかったわ。それじゃあそっちは任せるわね」
「わかりました。それで皆さん」
「今度は何なの?」
「今度のアフリカ西岸ですが」
ひかるの問いに答える形になっていた。
「今現在ガルラ帝国との戦闘により多くの都市が廃墟になっています」
「そんなに酷いのね」
「約四十パーセントが都市としての機能を喪失しています」
こう述べるルリだった。
「ですから。廃墟となっていますので」
「市民の方々はどうなりました?」
ユリカが問うたのはそこであった。
「それで。今も!?」
「いえ、それは大丈夫です」
ルリはユリカの今の問いにも答えたのだった。
「既に安全な場所に避難されおられるので。御安心下さい」
「わかりました。それならいいです」
ユリカは市民達が無事と聞いてまずはほっとしたようであった。
「それでは。皆さん」
「はい」
「それじゃあ」
「アフリカ西岸へ。そこで天使達へ攻撃を仕掛けます」
こう言ってアフリカ西岸に向かうのだった。そしてその頃アフリカ西岸の都市の一つラゴスでは。廃虚になった都市に何故か子供達が食べ物を前にして困った顔をしているのだった。
「これ食べられるかなあ」
一人が道に落ちてしまった食べ物を見て泣きそうな顔になっていた。
「洗えば。どうかな」
「それじゃああまりにも意地汚いだろう?」
だが彼は別の子供にこう言われたのだった。
「幾ら何でも」
「それもそうか」
「それにまだあるんだし」
子供達はまた言い合う。
「そっちを食べようよ。それでいいよね」
「わかったよ。それじゃあ」
その物欲しそうにしていた子供も黙ってしまった。
「そっちを食べるよ」
「そうしよう」
「見つけてきたかいがあったぜ」
彼等より幾分年長の少年がしゃがみ込んで何か保存用にした肉を貪っていた。
「この味はな」
「そうだな。久し振りか?」
その横に立っている頭を立たせた若者が彼に対して述べた。
「こうした食事も」
「二日前だったか?バロン」
「ああ、確かな」
バロンと呼ばれたその若者は赤髪の少年の言葉に対して頷いた。
「そうだったと思う」
「道理で美味い筈だぜ」
二日前と聞いてあらためて言うトゥールだった。
「この肉もな」
そんなことを言いながら彼等は久しぶりの食事にありついてるのだった。その彼等、とりわけその少年を傍にある下水道の柵から一組の男女が見ていた。一人はあのシルヴィアという少女でありもう一人はラテン系の背の高い少年だった。
「ねえピエール」
シルヴィアは顔を顰めさせてその少年に声をかけた。
「あいつがその候補者なの!?」
「らしいな」
その柵から覗きつつ答えるピエールだった。
「どうやらな」
「まるで獣じゃない」
実に忌々しげなものを見ての言葉だった。
「あれじゃあ」
「まあそれでも話じゃそうらしいしな」
「候補者だってこと?」
「そうさ。とにかく調べてみようぜ」
「わかったわ」
ピエールの言葉に頷くシルヴィアだった。
「それじゃあ」
こんな話をしていた時だった。不意にその赤髪の少年が柵の方を見たのだった。
「どうした!?アポロ」
「そこか!」
ここで彼は叫んだのだった。
「そこで何を見てやがる!」
「!?気付いたっていうの!?」
「おいおい、マジで勘がいいな」
二人はそのアポロという少年の言葉を聞いて言った。
「どうやら本当に獣みたいね」
「こりゃ凄いな、ある意味」
そんな話をしていた。だがここで彼等は柵を上に弾けさせて出て来た。二人共それぞれの服の上にマントを羽織っていた。
「何だ御前等」
「話はいいわ」
シルヴィアは笑ってアポロに対して言った。
「一緒に来てもらうわ」
「それでいいよな」
「おい、何なんだよ御前等」
また言うアポロだった。
「さっきから訳わからねえこと言ってよ」
「反応はすげえしな」
ピエールはそのアポロを見つつまた述べた。
「背中に翼の印があれば最強のな」
「何が言いたいのかわからねえって言ってるだろ」
二人の話がさっぱりわからないのでいらつきだしてきたアポロだった。
「御前等。何なんだ!?」
「誰だ!?貴様等」
バロンも子供達を護りながら二人に対して問うた。
「あんた達に用はないからさ」
ピエールが笑いながらバロンに対して述べた。
「用があるのはこっちの野郎でな」
「一緒に来てもらうわよ」
シルヴィアがまたアポロに対して言った。
「何が何でもね」
「腕づくってわけかよ」
「そうよ」
不敵に笑ってアポロにまた告げた。
「いいかしら」
「生憎だが俺は女だからって容赦しねえぜ」
「やるっていうんだな」
「そうだ」
ピエールに対しても答える。
「行くぜ、いいな」
こう言って二人に襲い掛かる。まずはピエールだった。
しかしその攻撃はかわされ彼の蹴りを受けてしまった。何とその足が燃えていた。
「ぐうっ!?」
「やれやれ。本当に聞き訳がないな」
「何を、まだだ!」
アポロはすぐに態勢を立て直し動いた。パイプの上によじ昇ってそこからまた二人に対して言った。
「ここなら何もできないだろ!」
「言うわね」
しかしシルヴィアはそれを見ても余裕の顔であった。
「それなら」
「むっ!」
「これで!」
右手を前に出しそこから何かを出した。するとそれでパイプが崩れ彼は地面に叩き付けられてしまったのだった。
「ちっ、今度は何なんだよ」
「サイコキネシスよ」
勝ち誇った声で倒れ伏すアポロの傍に来て述べた。
「さてと・・・・・・後は」
上着をめくる。だがまずそこで顔を顰めさせるのだった。
「臭いわね。お風呂も入ってないのね」
「それであったか?」
「どう?」
「ああ・・・・・・ねえぞ」
「ないの」
「ああ、ない」
こうシルヴィアに言うピエールだった。
「そんなもんねえな」
「じゃあ人違いだったってこと!?」
「いや、そう断定するにはまだ早いだろ」
「けれどよ」
顔を顰めさせてピエールに言うのだった。
「ないのよね、跡が」6
「それはな」
「じゃあ人違いじゃない」
「浮き出て来るっていう場合もあるだろ?」
「それかもっていうの?」
「そうさ。とにかく候補者なのは間違いないんだ」
それははっきりと言うピエールだった。
「だからな。いいな」
「わかったわ」
少し憮然としているがそれでも頷くシルヴィアだった。
「それじゃあ」
「ああ。んっ!?」
ここで空から爆音がした。そちらに顔を向けた二人だった。
「あれ、ここでもアクエリオンがかよ」
「そうみたいね」
言葉を返すシルヴィアだった。
「ってことは」
「まずいな。ここにも奴等がいるのかよ」
一気に顔を曇らせたピエールだった。
「だったらここにいたらまずいぜ」
「そうね。あんた達・・・・・・」
バロン達に顔を向けようとする。ところが。
「いない・・・・・・」
「まさか!」
彼等がいないのを見て一気に顔を曇らせる二人であった。
「天使達に!?」
「おい、やばいぜ」
青くなった顔でシルヴィアに告げる。
「こりゃあよ。下手したら」
「こいつも!?」
「いや、こいつは大丈夫みたいだ」
懐から何か検査機のようなものを取り出してアポロに当てたうえで述べた。
「自分で天使からの干渉を防いでやがる」
「じゃあやっぱり私達と同じ」
「そうみたいだな。それよりもだ」
「そうね。あの子達を」
「むっ、バロン!?」
ここでそれまで倒れていたアポロが起き上がった。そうしてバロンの名を呼び周りを見回すのだった。
「何処だ、何処に行ったんだ皆!」
だが返事はない。アポロはそれを確かめてからすぐに彼等を探す為か何処かへと走り去ったのであった。シルヴィアがその彼を呼び止めようとするとここで通信が入って来た。
「お兄様!?」
「シルヴィアか」
「ええ」
兄の言葉に対して頷いた。
「まさかアクエリオンに乗っておられるのは」
「私と麗花とグレンだ」
「そう、今回はグレンなのね」
「そちらにその男は見つかったか?」
「いいえ」
兄の問いには首を横に振って答えるシルヴィアだった。
「残念だったけれど。人違いだったわ」
「そうか」
「とにかく。ここに天使達が来ているのね」
「そうだ」
通信の向こうから妹に対して答えるアポロだった。
「その通りだ。だから今は御前達も」
「それだけれど」
「何かあったのか?」
「その候補者がな」
ピエールがここでシリウスに対して言った。
「どっかに行っちまったんだ」
「何っ!?」
「ここにいる仲間を探してな。だからよ」
「探すというのだな」
「ああ、仕方ねえ」
こうシリウスに答えた。
「その間。頼むぜ」
「わかった。それではだ」
「すぐに戻るからな」
「おそらく激しい戦いになる」
シリウスはこう二人に告げてきた。
「それは注意してくれ」
「激しい戦いに!?」
「こちらに彼等も来ている」
「マグネイト=テンが!?」
「今の正式名称はロンド=ベルだったか」
シリウスは少し記憶を辿りながら妹に述べた。
「その彼等も来ている」
「そうなの。ここで」
「天使達の数も多い」
このことについても言及した。
「だからだ。すぐに避難してくれ」
「わかったわ」
「まずはあいつを見つけてからだな」
ピエールは顔を顰めさせて述べた。
「それからだな」
「ええ」
こうして二人はそのアポロを探すことになった。その時上空ではシリウスと麗花、それにグレンがそれぞれ宙を舞っていた。そのうえで合体準備に入っていた。
「司令」
シリウスがモニターで眼鏡の男に対して問うていた。
「それでは今回の合体は」
「そうだ。頼むぞ」
その眼鏡の男はシリウスの言葉に応えて述べてきた。
「君がメインだ」
「わかりました。それでは」
「しかしだ。気をつけてくれ」
「何か?」
「反応がある」
彼の顔がここで不吉に歪んだ。
「彼等の反応だ。ここで」
「来た!?ここで」
「見て!」
その時だった。麗花が不意に驚きの声をあげたのだった。
「また獣達が」
「くっ、こんな時にかよ!」
グレンがそれを見て歯噛みした。
「司令、ここはよ!」
「わかっている。シリウス君」
「はい」
シリウスが彼の言葉に応える。
「今度の合体は君だ。いいな」
「わかりました。それでは」
合体に入ろうとする。しかしその時に。麗花が突如としてうめきだしたのであった。
「麗花!?」
「どうしたんだ!?一体」
「ああ・・・・・・ああ・・・・・・」
シリウスとグレンの言葉にも応えず突如としてうめきだしたのである。明らかな異変であった。
「これは・・・・・・天使達が」
「天使達!?」
「まさか。奴等」
シリウス達は麗花の言葉を聞いて危惧を感じた。そしてその危惧は不幸にして的中してしまったのであった。
その時シルヴィアとピエールは。虚ろな顔で前を進む人々を必死に止めようとしていた。だが彼等はそれでもそのぼうっとしたデクの如き進みを止めないのであった。
「止まって!」
「行くな!」116
必死に呼び止める。しかし止まらない。そしてそこにはあの子供達もいたのであった。やはり虚ろな目で進んでいるのだった。
「まずい、このままじゃ」
「天使達に」
「どうする!?」
暗い顔になるピエール。だがどうしようもなくなっていた。
そしてアポロもそこにいた。必死で彼等を止める。だがそのまま黒い壁に進みそのまま中に入っていく。そこにはバロンもいた。
「バロン!」
彼を後ろから抑え止めようとする。しかしここで壁から幾つもコードが出て来てそうして彼の耳や身体につき。そのまま壁の中に入れてしまったのだった。
「ど、どうなってんだよ!」
「おい、あんた!」
「あんたも!」
そのままアポロも中に入って行く。絶望的な状況になっていた。
アクエリオンでも異変が続いていた。麗花が呻きそしてグレンも異変を来たしていた。アクエリオンのコクピットからそのまま滑り落ちてしまったのだ。
「グレン!」
「・・・・・・・・・」
シリウスが呼ぶ。それでも反応はない。彼はまるで亡霊の様にふらりと落ちていく。彼の機体はそのまま街に自然に落ちてしまっていた。
「な、何ということだ!」
それを見て司令が慌てふためいていた。
「二人に異変だと!」
「司令」
シリウスがここで彼に声をかけてきた。
「麗花はこちらで機体をコントロールして着地させました」
「う、うむ」
「ですが」
彼はここでまた言うのだった。
「二人は完全に戦闘不能です」
「命に別状は!?」
「それはないようです」
これについても答えるシリウスだった。
「ですが」
「うう・・・・・・」
呻くしかなかった。
「そうか」
「はい。どうされますか?」
「それは・・・・・・」
返答に窮するしかなかった。だがここで。
「よしっ!」
「よしっ!?」
司令はその声に顔をあげた。そしてその声の方を見ると。そこにいたのだった。
「これからの指揮は私が執る!」
「なっ、誰だ!」
司令は慌てふためき咄嗟に銃を抜き彼に向ける。しかしその動きは相手の方が速かった。その速さはまさに電光石火だった。
「遅いな」
「うっ・・・・・・」
既に相手に後ろに回られていた。そしてこめかみに銃の形にした指を合わせられ。そうして。
「バアン」
「ひ、ひいいっ!」
「銃の使い方は用心が必要だぞ」
言葉は厳かだったがふざけているのがわかる言葉だった。
「さて。それでだ」
「誰なんだ、貴方は」
「私か」
「そ、そうだ」
震える声でその彼に対して問うのだった。
「そもそも。急に出て来てだ」
「そんなことはどうでもいい」
また言う男であった。
「とにかくだ。これからのアクエリオンの指揮は私が執る」
「な、何故だ」
とにかく言葉を出す彼だった。
「どうしてだ。私の指揮権を何故」
「それはな」
「それは!?」
「私だからだ」
傲然とこう言い放つのだった。
「私だからな」
「私からだと!?」
「その通りだ!」
また言うのであった。
「今まで御苦労!」
「御苦労!?ちょっと待て!」
何が何なのかさっぱりわからずまた言う彼であった。
「だからどうしたのだ!何故私が」
「ふむ。では聞きたいか」
「当たり前だ!」
「では名乗ろう!」
破天荒な調子で遂に名乗ると宣言するのだった。
「我が名は!」
「何者だ!」
「しかし。どうなっているのだ」
シリウスは司令部でのやり取りを聞いて言うのだった。
「この事態は」
「この事態も何もない!」
司令の言葉は慌てふためいたままであった。
「それでだ!」
「うむ!」
「君は一体何者だ!早く名乗れ!」
「よし!」
それに応え遂に。彼は名乗った。
「不動ZENだ」
「何っ、不動ZEN!?」
「生きていたのか」
「如何にも」
周りの驚く声に対して述べるのであった。
「ここにこうして舞い戻ってきたのだ」
「では貴方があの」
「君のことも知っている」
その男不動は司令に顔を向けて言ってきた。
「ジャン=ジェローム=ジョルジュ君だな」
「そうだが」
「君を今から副司令に任命する」12
「だから何故だ!」
あまりにも強引なのでこう言い返す。
「何故私が!何の権限があって!」
「連邦政府からの直接の命令なのだがな」
「連邦政府の!?」
「見給え」
ここで一枚の書類を出す。そこに書いてあるのは。
「なっ、大統領のサイン・・・・・・」
「これでわかったな」
「うう・・・・・・」
「これからの司令官は私だ」
「しかし貴方は」
ここで白衣の美女が彼に言ってきた。
「アトランティス遺跡を見つけられその際の事故で最後まで残られて皆を逃がした後で」
「死んだと言いたいのだな」
「そうです」
彼女が言うのはこのことだった。
「確か」
「私は不死身だ」
「不死身ィ!?」
ジャンはその理不尽な言葉にまた声をあげた。
「何なんだ貴方はそもそも!」
「とにかくだ」
「とにかくも何も」
「見給え」
またこの言葉だった。それと共に出してきたものは。
三本の矢だった。何処からか出してきたのであった。
「矢!?」
「日本の戦国大名の一人毛利元就だが」
「あの三本の矢のですね」
「そうだ、ソフィア=ブラン君」
その美女の名を読んでの言葉である。
「三人の息子に与えたな」
「それは知っていますよ」
ジャンがうんざりした顔で不動に告げる。
「あれですよね。一本では簡単に折れるが三本では簡単には折れはしないと」
「そうだ。しかし!」
「なっ!」
「今度は!?」
「不測の事態があれば折れる」
何とその矢を握り潰して折ってしまったのである。
「それが今だ」
「今・・・・・・」
「じゃあ一体どうすれば」
「案ずることはない」
だが彼はまた言った。
「今我々には得難い人材が手に入った」
「それがまさか」
「そうだ、彼だ」
ジャンに対して言う。
「彼だ。彼が来たのだ」
「しかしですね」
もう副司令になってしまっているジャンであった。
「彼はまだアクエリオンの訓練さえも」
「それはまだいい」
やはり強引にそういうことにしてしまう不動だった。
「シルヴィアとピエールだったか」
「はい」
「二人は無事か」
「はい、何とか」
ソフィアが彼に答える。
「今シリウス達と合流しています」
「そうか」
「麗花とグレンは?」
ジャンが周りのスタッフに尋ねた。
「彼等は無事なんだよね」
「命に別状はありません」
それは保証された。
「ですがそれでも」
「ううむ、それではシルヴィアとピエールに二人と交代させてだ」
「いや、駄目だ」
だがここでまた不動が言ってきた。
「それはならんぞ」
「どうしてですか!?それは」
「一人に二人を保護させるのだ」
「保護!?」
「今二人は戦闘不能だ。戦場にそのまま置いてはいけない」
「そういえば確かに」
言われてこのことに気付くジャンだった。
「それはあまりにも」
「だからだ。一機にもう一人が乗り」
「そしてもう一機に彼なのですね」
「そういうことだ」
ソフィアの言葉に頷いて答えるのであった。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「そのように」
これで方針は決まった。ところがその時肝心のアポロが。壁にそのまま入れられようとしていたのであった。
「おい、まずいぜ」
「ええ」
ピエールとシルヴィアがそのまま中に入ろうとしているアポロを見て顔を青くさせていた。
「早く助けるぞ!」
「わかったわ!」
何だかんだ言っても彼を助けるのだった。急いで壁から出そうとすると彼から出て来たのであった。
「バロン・・・・・・アクエリオーーーーーーーーーーーン!!」
「おい、自分からかよ!」
「何て奴なの!」
「まあそうかもな」
しかしここでピエールは納得したような声をあげた。
「御前の一万二千年前からの恋人だからな」
「それは言わないで」
ピエールのその言葉に顔をムッとさせるのだった。
「まだ決まったわけじゃないんだから」
「それはそうだけれどな」
「とにかく。助かったみたいね」
「ああ」
それは間違いなかった。何とか壁を出てそれから不時着した三機の戦闘機にそのまま走っていくアポロであった。
「戦闘機の方に!?」
「俺達も!」
「そうね!」
二人もそれに続く。まずは麗花とグレンを救助する。麗花は涙を流し震えていた。
「麗花、大丈夫か!?」
「どうなの!?」
「・・・・・・・・・」
だが返事はない。頭を抱えて震えているだけだ。
そしれグレンもまた。身体が何故か緑に光って倒れている。
「ピエール、二人を頼むわ!」
「おい、シルヴィア!」
「私は!」
そのままコクピットに入り込むのだった。
「行くわ!」
「よし、じゃあここは任せろ!」
ピエールもその言葉に頷くのだった。
「二人はな」
「御願いね。それじゃあ」
「わかったぜ」
こうしてシルヴィアが戦闘機に乗る。しかもその間にアポロもまた戦闘機に乗る。しかしここで彼はふと気付いたように言うのであった。
「なっ、ここは」
「アクエリオンだ」
「アクエリオンだと!?」
突如として聞こえてきた声に対して問うた。
「何だよ、それは」
「創聖合体だ」
「創聖合体!?」
「そうだ」
その声は彼に言うのであった。
「今こそそれをするのだ」
「俺がか」
「アクエリオンのな」
「そういえば兄様」
「どうした?」
既にシルヴィアは宙にいた。そこでシリウスに対して話していた。
「あいつ、さっきアクエリオンの名前を」
「言っていたのか」
「どうして!?」
「しかも・・・・・・あれは」
宙にあがりだしたアポロが今乗る戦闘機を見て言うのだった。
「太陽の・・・・・・翼!?」
それが見えているのであった。戦闘機から。そして今またあの言葉が出された。
「創聖合体だ」
今度はアポロからの言葉だった。
「創聖合体!?」
「何よそれ」
「創聖合体だ。ウォおおおおーーーーーーーーーーーーっ!」
二人の問いには応えない。そのまま戦闘機を駆って合体に入る。そうして。
「アクエリオーーーーーーーーーーーーンッ!」
またアクエリオンの名を叫んだ。そうして今シルヴィア、シリウスと合体する。すると二人の身体にも異変が及んだのであった。
「な、何だこの力は!?」
「この力・・・・・・」
二人は白い光に包まれながら言う。
「暖かい。そして」
「気持ちいい・・・・・・」
「行くぞ友よ!」
彼の中で今太陽の神と美貌の女神が会っていた。
「創聖合体!!」
「そうだ!」
彼の言葉に不動が頷き。そうして手を撃ち合わせて彼も叫んだ。
「これこそ創聖合体!!」
彼もまた言うのであった。
「今こそ時は来たのだ!」
「時が」
「世界の謎も全てが解かれ」
彼はさらに言う。
「救われる時がな」
「司令!」
ここで彼に報告があがった。
「天使達がさらに来ました!」
「うむ!」
「そして援軍です!」
「援軍か」
「ロンド=ベルです」
彼等であった。
「彼等もまたここに」
「何と言っているか」
「協力を申し出て来ていますが」
「喜んで受けると伝えてくれ」
「わかりました」
それと共に戦場にロンド=ベルが姿を現わした。すぐにテッサが彼等に問うのであった。
「この部隊の司令はどなたですか?」
「私だ」
不動が出る。しかしテッサは彼の顔を見てまずは驚きの声をあげた。
「貴方は確か」
「生きていたのだ」
こう言うのであった。テッサに対しても態度は同じであった。
「わかったな」
「はあ」
「そうだったのか」
宗介はそれを聞いて全く平気であった。
「だからか」
「だからで済むのかよ」
ブリギットはこのことに驚いていた。
「っていうかこっちでも普通に死んだ筈の奴が生きてるんだな」
「あんたも私も人のことは言えないけれどね」
アンナマリーがぽつりと言うのであった。何はともあれ彼等も参戦するのであった。
「とにかくだ。あんたたちは俺達の味方なんだよな」
「如何にも」
ビルギットの問いにはっきりと答える不動だった。
「それは安心してくれ」
「だったらいいけれどよ」
「しかし細かい話は後だ」
不動は今はこれ以上は話そうとはしなかった。
「今はだ。彼等を」
「ああ、そうだよな」
「それはね」
ビルギットとアンナマリーが彼の言葉に頷いた。
「やるか。いいな」
「ええ、そうね」
こうしてロンド=ベルも出撃し天使達に当たる。当然ながらバサラも出ている。彼はギターを奏でながら前に出ているのだった。
そこに天使達が来る。ここで気付いたのだった。
「!?」
「どうしたの、バサラ」
「いや、こいつ等」
ミレーヌに応えつつ言うのだった。
「俺の歌に反応した」
「あんたの歌に!?」
「そういやこいつ等も歌を持ってるんだよな」
「そうだ」
バサラに対して不動が答えた。
「その歌で人を虜にしてその命を吸い取るのだ」
「そうか。それでか」
「それでどうするつもりだ?」
「当たり前だ。やることは一つしかねえ」
ギターを手に言うバサラだった。
「誰であろうが。俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
こう言って叫ぶのであった。やはりここでもバサラはバサラであった。
そうして前に突き進み天使達の攻撃をかわしつつ歌を歌い続ける。すると彼の歌を聴いた天使達の動きが止まっているのであった。
「!?どういうことなの?」
ミレーヌがその天使達を見て眉を顰めさせた。
「バサラの曲に。動きが」
「まさかと思うが」
レイがそれを見てある仮定を述べた。
「あの連中は音楽に対して抵抗があるのか」
「抵抗!?」
「プロトデビルンとはまた違ってな」
「あいつ等とはまた別の反応ってこと?」
「おそらくはな」
こう述べるのであった。
「まだはっきりとはわからないが」
「そうなの」
「少なくとも動きは止まった」
このことははっきりと言った。
「そこに何かがあるのは間違いないな」
「それに動きは止まったわ」
ミレーヌはそこに注目していた。
「だったらあたしも。行くわ」
「よし、ビヒーダ」
レイはビヒーダに声をかけた。
「俺達もだ」
「・・・・・・・・・」
ビヒーダは答えない。しかし頷きはした。そうして彼等もバサラに続いて天使達にその音楽を聴かせるのであった。
それは戦局全体に影響した。天使達はバサラ達の歌で動きを止める。そこがロンド=ベルにとっての絶好の狙い目となったのだった。
「今だな」
「はい」
ジェフリーの言葉にボビーが頷く。
「それじゃあ艦長。ここは」
「うむ。総攻撃だ」
これしかなかった。
「それで一気に勝負を決めるぞ」
「わかりました。それじゃあ」
マクロスクゥオーターの舵を取りつつ言うボビーだった。
「行くわよ、マクロス!」
「全艦及び全機に告ぐ」
ジェフリーもまた指示を出す。
「このまま天使達に総攻撃を仕掛けよ!」
「了解!」
こうしてアクエリオンとバサラ達の活躍により西アフリカでの天使達の戦いはその騒ぎとは反比例して瞬く間に終わった。だがここで厄介な問題が残っていた。
「そうですか。命を吸い取られた人は」
「そうだ。帰っては来ない」
不動はこのことをロンド=ベルの面々に話していた。
「二度とな」
「くっ、何て奴等だ」
「そうして世界を破壊するっていうのかよ」
「そしてだ」
不動は天使達の所業に歯噛みする彼等にさらに述べてきた。
「敵は彼等だけではない」
「ああ、それはな」
勇が彼の言葉に頷く。
「その通りだよな」
「それを踏まえて今言おう」
「今!?何なんだ?」
「我々は諸君等に合流しよう」
ジョナサンに応えての発言であった。
「今よりな」
「おいおい、あんた達もかよ」
「驚きはしないのだな」
「いつものことだからな」
実に達観したジョナサンの言葉である。
「今更誰が来ても驚きはしないさ」
「そうか。ならいい」
「ならいいってちょっと待って下さいよ」
しかしジャンは彼等とは全く別の考えであった。
「いいって。設備とかはどうするんですか?」
「そっくりそのまま移す」
全く何でもないといった口調であった。
「だからだ。心配無用だ」
「けれど場所は」
「場所ならあります」
エキセドルが申し出て来た。
「マクロス7居住区にスペースがありますので宜しければお使い下さい」
「かたじけない。それではな」
「何でこうなるんだ」
ジャンは唐突に決まってしまった話に嘆くことしきりだった。
「こんな何でもかんでも急に」
「まあ仕方ないわね」
嘆くジャンに対してソフィアは至って落ち着いたものであった。
「けれど私達で何かするより皆でいた方がいいわよ」
「そういうものなのかなあ」
「そうよ。私は賛成よ」
微笑んで述べてきた。
「それでね」
「はあ。何がもう何だか」
「何か貴方を見ていると全く他人には思えないな」
カミーユが嘆くそのジャンを見て言った。
「できればもっとしっかりして欲しいんだがな」
「何か私も君を見ていると他人には思えないよ」
ジャンもまたカミーユを見て述べた。
「初対面だというのに」
「では我々とアクエリオンはそのままロンド=ベルに加入する」
完全に決まったものにしている不動だった。
「これから入る予定の候補者達も呼ぶようにな」
「わかりました」
ソフィアが応える。かなり強引にアクエリオンもまたロンド=ベルに入るのだった。
その頃ある場所では。妖しげな、それでいて清らかな美女が透き通った床の下にいる銅像の如き青年を見て微笑んでいた。
「時が来ましたわ」
女は言った。
「貴方が目覚められる時が。遂に」
その青年に優しげに語り掛ける。それと共に眉から四つの目が開いた。その四つの目で青年を見つつ女は微笑むのだった。まるで希望を見出したかのように。

第九十八話完

2008・12・11
 
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