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薔薇の騎士

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第二幕その五


第二幕その五

「何でしょうか」
「せめて従者は静かにさせて欲しいのですが」
「ですから嗜めているではないですか」
「ですが」
「それよりもですな」
 スケベそうな目でゾフィーを見て話を変えてきた。
「フロイライン」
「はい」
 ゾフィーもそれに応える。だが少し引いている。
「まずはお話を。これからのことですが」
「何でしょうか」
「あの、男爵」
 またオクタヴィアンが言う。
「今はそれよりもですね」
「まあまあ」
 だが男爵は彼に取り合わずゾフィーばかりを見ている。そして彼女に語り掛けるのだ。
「これからの二人は。幸せになり」
「けれどまだはじめて会ったばかりで」
「それでも私にはわかります」
 ゾフィーの話は全く聞いてはいないのだった。
「まずは従者達の無礼失礼を」
「はあ」
 それは一応は謝罪する。ゾフィーもそれを受ける。
「ですが悪気はないので。パリとは違い」
 パリの作法の五月蝿さを皮肉り否定していた。
「オーストリアですので。お許しを」
「ですか」
「まあ私達も少しは破目を外しましょう」
「いい加減どうにかならないものか」
 オクタヴィアンはそんな男爵を見て歯噛みしていた。
「幾ら何でも」
「さてさて」
 ファニナルがまたどう言っていいかわかりかねている顔であった。
「男爵様も困るが従者の者達も。どうしたものか」
「おい見ろよこのワイン」
「それに窓ガラスも」
 相変わらずの様子の彼等であった。
「美味そうだよな」
「レルヘンフェルトにも行こうぜ、後でな」
「そうするか」
「少しはしゃぎ過ぎではないかな」
 彼等を見て呟くファニナルであった。
「困ったことだ」
 口では呟くがどうにもできない。その横ではこれまだ男爵が好色な目でゾフィーを見て話し掛けている。
「若鶏の様な。そんな感じか」
「私が鶏ですか」
「いやいや、レルヒェナウではですな」
 また自分の領地のことを口にする。
「婚礼の時には領主、つまりわしがその夫婦に鶏を馳走することになっていましてな」
「そうなのですか」
「それを思い出したのです。ですから私もまた鶏を後で」
「別に鶏は」
「いやいや、遠慮はなりませんぞ」
 やはり話を聞いてはいない。
「鶏を食べて幸せを祈り」
「幸せは」
「一夜でわかるものです。こちらの歌にもありまして」
「どちらの?」
「当然レルヒェナウのです。気持ちよい歌でして」
「しかしこれまた」
 マリアンネがそっとオクタヴィアンに歩み寄って囁く。
「お嬢様がお困りなのですが」
「わかっている。けれど」 
 今は我慢しているのだった。彼なりに。
「どうしたものか」
「私と一緒ならいつも長くはないでしょう」
 遂には歌いだした。しかもそれに従者達も続く。
「私は貴方のものになりますわ」
「私と一緒に暮らすなら」
「どんなお部屋も小さ過ぎないでしょう」
「私がいなければ毎日悲しいことでしょう」
 こう歌いだしたのだった。いい加減オクタヴィアンも腹が据えかねていた。
 
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