| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

星河の覇皇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十三部第一章 角笛を持つ時その六


「ノルウェーの騎士の家に生まれました」
「そうか」
 エウロパの爵位はまず国家元首がある。そして公候伯子男の五つの爵位が存在する。このうち子爵は公爵に、男爵は侯爵に仕えている場合もある。
 そしてその下が騎士である。そして紳士がある。その他にも貴族としての階級は存在し、かなり複雑なものとなっているがおおまかに分けてこうなっている。
「家は代々文官でしたので。私もエウロパ中央政府に入りました」
「そして今ここにいるのだな。以前は何処にいたか」
「文部省に」
「文部省」
 アランソはそれを聞いて意外といった顔をした。
「そうなのか」
「意外でしたでしょうか」
「うむ」
 そして彼女はそれを認めた。
「少しな。財務省か通産省と思っていたが」
「元々教員免許も持っておりますし」
「教師のか」
「はい。小学校の」
 ここで優しげな笑みになった。
「主に音楽を学びました」
「音楽か」
「ピアノのコンクールにも度々出たことがありますよ」
「そうか。私はピアノはあまり聴かないが」
「補佐官はかなりの音楽好きだと御聞きしておりますが」
「実はそれはクラシックではないのだ」
「おや」
「ヘビーメタルだ。私が好きなのは」
「そうだったのですか」 
 それを聞いて今度は官吏が意外そうな顔をした。
「またそれは」
「あの派手な感じがいい」
 そう語るアランソの顔が僅かに綻んだ。
「衣装もな。今一番好きなのはヘルモーズだ」
 北欧の神の名を冠したグループである。五人組の実力派バンドとして知られている。彼等が言うには自分達こそがエウロパ最高のヘビメタバンドである。
「そこいらのニセ者とは訳が違うんだよ!」
「俺達の本物の音楽を御前等に聴かせてやるぜ!」
 ステージでそう叫んでファンや他のグループを挑発する。だがそれはステージやインタビューの中だけで素顔はいたって素朴な青年達である。メイクをして楽器やマイクを手にすると性格が変わるのである。
「ヘビーメタルはやはりあそこまで反体制的、反宗教的でなければいけない」
「そうなのですか」
「ヘビーメタルは聴かないか」
「申し訳ありません」
「謝る必要はない。音楽の趣味なぞ人それぞれだ」
「左様ですか」
「少なくとも私はそうだな。だがピアノも嫌いではない」
「有り難うございます」
「そしてコンクールではどうだったか」
「学生の頃の話ですが」
 彼女はそう前置きをしたうえで述べた。
「何度か賞も頂いております」
「ではそれなりに自信はあるか」
「最近はあまり弾いてはおりませんが。それでも暇を見つけて」
「そうか。では一度聴いてみたいな」
「宜しいのですか?」
「頼む。そうだ」
 アランソは少し思案した後で述べた。
「この戦いが終わってエウロパが残っていたならば。それでいいか」
「わかりました。それでは」
「頼むぞ。卿の名は」
「アンネローゼ=フォン=メルヒオールです」
「メルヒオールか。覚えたぞ」
「はい」
「それではな。その時はエウロパを祝福してくれ」
「わかりました」
 話をしているうちに官邸に辿り着いた。アランソは官邸に辿り着くとメルヒオールを伴ってラフネールのもとに向かった。そこでは既にペーチがいた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧