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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第八十三話 閃く光、燃ゆる炎

               第八十三話 閃く光、燃ゆる炎
 「しかしよ」
シンがうんざりしたような顔で言っていた。
「また大変な奴等が来たな」
「大変な奴等って?」
「だからよ、あいつ等だよ」
こうメイリンに返す。
「あの三人のガキ共だよ」
「そあ、ティス達ね」
「そうだよ。どうしたもんだよ」
また言うのだった。
「助かったのはいいさ」
「それはいいの」
「死ぬのより生きる方がいいだろ」
「まあね」
「だからそれはいいんだよ。けれどな」
「だから何を変にこだわってるのよ」
「ったくよお」
また言うシンだった。
「あいつ等かよ。全くな」
「全く?」
「洒落になってねえぞ」
こう言うのである。
「あんな馬鹿共と一緒なんてな」
「仕方ないじゃない」
「そうよ」
メイリンだけでなくルナマリアまで出て来た。
「修羅界から出るまでは暫くね」
「これからどうなるかわからないけれどね、まだ」
「へっ、無駄飯食いが増えたぜ」
シンの悪口は続く。
「しかも三人なんてよ」
「けれどシンさんだって」
「そうですよね」
フィリスとエルフィがここで言い合う。
「四人前はいつも平気ですし」
「食べることは」
「俺はそれだけ食わないと死んじまうんだよ」
「死ぬってまた」
「極端な」
「極端でも何でもねえよ」
あくまで言うシンだった。
「けれどな。あいつ等はそれこそな」
「それこそ?」
「何ですか?」
「ガキじゃねえかよ」
何故かこのことにこだわっていた。
「ガキはいらねえんだよ。邪魔だ」
「邪魔ってそんなこと言ったらプルとプルツーはどうなるんだ?」
「矛盾してるぞ、矛盾」
スティングとラウルは呆れた顔でシンに突っ込みを入れる。
「あいつ等とは仲いいだろうが」
「で、あの三人は駄目なのか?」
「駄目に決まってるだろうがよ」
理屈のわからないシンであった。
「そんなのよ。絶対に」
「絶対にってまた極端な」
「言い過ぎだぞ、シン」
今度はハイネとレイが言う。
「それに戦うとは言っていないぞ、まだな」
「今は三人にとって考える時間も必要だぞ」
「考える時間か」
「御前たまには考えろ」
ジャックが言う。
「少しはな」
「全く。いつも先に突き進むんだからな」
ミゲルも注意を促している。
「これで考える力があればな」
「全くだ。完璧なエースなのにな」
「今でも完璧なんだよ」
シンはあくまでシンだった。
「少なくともな。連邦の白い流星にも負けねえぜ」
「いや、シン、それは幾ら何でもな」
アスランも今度ばかりは咎める。
「自信過剰だぞ」
「やっぱりそうか」
「そうかじゃないぞ」
「全く。馬鹿も何処まで突き抜けるんだ」
イザークとディアッカがアスランに続く。
「俺達でもあの人には到底適わないんだ」
「コンピューターの模擬戦でもボロ負け続きだしな」
「シンさん勝ったことあります?」
シホがシンに対して言う。
「アムロ中佐に」
「残念だがねえ」
シンも事実は認めるしかなかった。
「それどころかあのおばさんにも勝ったことねえよ」
「シン君、それ以上は」
ニコルはそのおばさんがハマーンだということをはっきりとわかっていた。だから止める。
「命の危険がありますよ」
「俺は好きなこと言えないのかよ」
「言ってるだろ、今」
「自覚しないの?本当に」
トールとカズイも呆れていた。
「それも好きなだけ」
「全く。いい加減にしてくれないかな」
「とにかくさ。シン」
「三人は少なくとも当分一緒よ」
サイとミリアリアは事実だけを語った。
「だからさ」
「落ち着いてね。いいわね」
「俺は落ち着いてるぞ」
「いや、落ち着いてないぞ」
「誰がどう見たってね」
速攻でカガリとフレイが突っ込みを入れる。
「御前みたいな馬鹿ははじめてだ」
「最後に言っておくわね」
「御前等に言われたかねえ!」
二人の言葉には激怒するシンだった。
「このクソアマ共!特に猿女!」
「誰が猿だ、誰が!」
「手前に決まってるだろ!手前は中国の動物園で孫悟空でもやってろ!」
「それはどういう意味だ!」
「金色の毛の猿はパンダより珍重なんだよ!」
変なことを知っているシンであった。
「だからそこに行ってろ!この雌猿!」
「ここで死ね!墓はプラントに送ってやる!」
「望むところだ!」
二人はまたしても取っ組み合いの喧嘩をはじめた。何処に行っても仲が悪い。最早皆その二人は放置して彼等だけでこれからのことを話すのだった。
「とにかく。修羅だよね」
キラが言う。
「今度の相手は」
「それだよな。今度の相手は」
ロウがキラに応える。
「手強いのは承知だな」
「しかもだ」
イライジャも言う。
「まだその全貌がはっきりしない」
「それもあるな」
劾の目が鋭かった。
「今偵察も出しているが」
「偵察?」
「あれっ、そういえば」
プレアとカナードはここであることに気付いた。
「オルガさん達がおられませんね」
「まさかあの人達が」
「ああ、そうだ」
劾が二人に対して答える。
「あの三人に行かせた。連中なら相当な相手でも死ぬことはない」
「確かにね。それはね」
ジェーンは劾のその言葉に頷いた。
「少なくとも死ぬことはないね」
「けれど大丈夫なのかな」
アーサーはあからさまに心配そうだった。
「あの三人が偵察で」
「威力偵察ってやつだろ」
エドは見事に核心を突いた。
「敵にぶつかってそこで情報を手に入れるってな」
「随分乱暴な話だ」
ミハイルは少し呆れていた。
「全く」
「しかしそれも手だ」
ミナはそれを肯定した。
「ここはな」
「そうなるのね。じゃあとにかく情報待ちね」
レナはこれで納得した。
「三人からのね」
「こういう時に不死身というのは楽だな」
「そうだな」
モーガンとジャンが言う。
「何時それが来るかだが」
「もうすぐならいいが」
「ああ。丁度いいわ」
ここでプロフェッサーが来た。
「皆、出撃よ」
「オルガ達から連絡だよ」
「敵と遭遇」
「早く来いってさ」
リーアムとジョージ、山吹もいた。
「さあ、だからね」
「早く行こう」
「敵は待ってくれないしね」
「よし、では行くぞ」
アルフレッドが楽しそうな笑みを浮かべている。
「腕がなるぞ」
「けれど少佐」
「今の少佐のマシン整備していますよ」
「何っ!?」
キースとボーマンの言葉に思わず動きを止めるアルフレッドだった。
「ここに来てか」
「間に合うかどうか微妙ですけれど」
「その場合はどうします?」
「おい、フラガ」
彼はすぐにムウに声をかけてきた。
「その場合はメビウスを貸せ。いいな」
「ええ。それなら」
「ガンバレルは使えないが何とかなるだろ」
「何とかする、だな」
「貴様の場合はな」
グリアノスとユーレクはこう言って笑っていた。
「では行くとするか」
「早速な」
「そうですね。ではステラちゃん」
「ステラ?」
ステラはアズラエルの言葉に顔を向けてきた。
「シン君に出撃を伝えて下さい」
「それだけでいいの?」
「ステラちゃんが言えばそれだけで充分です」
「うん。それじゃあ」
「死ね、クソアマ!」
「地獄に落ちろ馬鹿男!」
「何だかねえ」
最後にユウナがぼやく。
「シン君とカガリが修羅でも全然驚かないよ、もう」
「ユウナ様、それは幾ら何でも」
「率直過ぎます」
「率直なんですか」
今のキサカとトダカの言葉に驚いたのはキラだった。
「あの、それって」
「本当のことです」
「否定はできません」
「否定できないんですか」
「否定したいんだけれどね、僕は」
ユウナはしみじみと言う。
「けれどねえ。今までが今までだし」
「困ったことです」
「これでは嫁の貰い手が」
「おい、言うに事欠いてそれか!」
「言いたくもなります」
「全く」
カガリ本人に対しても容赦がなかった。
「このままでは本当に」
「誰か貰って頂きたいのですが、奇特な方が」6
「その通りだよ。僕もそう思ってやまないんだ」
ユウナもしみじみと語る。
「誰かいないかな、本当に」
「そもそも御前は私の婚約者じゃなかったのか?」
「そうだったっけ」
都合の悪いことはすぐに忘れるユウナだった。
「記憶にないけれどなあ」
「御前は首相だろうが!」
「他にも国防大臣に参謀総長に大蔵大臣に外務大臣に内務大臣に通産大臣も兼任していたかな。もう自分でも幾つ役職あるかわからないよ」
「その御前が言う台詞か、今のは!」
「だから。僕としてはだね」
ユウナはさらに言葉を返す。
「カガリが早く旦那様を貰って幸せになって欲しいんだよ」
「ものは言い様ですね」
「どうかな、アスラン君」
さりげなくアスランをそうさせようとする。
「よかったら。国家元首になれるよ」
「いえ、遠慮します」
「まあまあ。カメレオンのお腹の中にいるよりはましだよ」
「それよりはですか」
「多分ね」
「多分って・・・・・・」
「シン君はもうステラちゃんがいるし。残念だよ」
誰でもいいという心情が丸見えのユウナであった。
「誰かいないかなあ、本当に」
「全く。私は何なんだ」
「だから金色の雌猿だって言ってるだろ」
「貴様!」
「やるのか!」
「容赦はしねえぞ!」
また喧嘩に入る二人だった。何処までも進歩がない。しかも出撃の話は忘れていた。
「ああ、二人共」
「何だよ」
「何だ?」
二人は取っ組み合いをしながらアスランの言葉に顔を向ける。
「これから出撃なんだが」
「ああ、そういえばそうだったな」
「出撃だったな」
「そうだ。すぐに行くぞ」
「こいつを動物園送りにするのは後か」
「それはこっちの台詞だ!」
「・・・・・・どうすればいいんだ」
アスランは頭を抱えることになった。
「この二人は、全く」
「世の中どうしようもないこともあります」
アズラエルがアスランを慰める。
「さあ、早く行きましょう。いいですね」
「わかりました。修羅の相手をしないといけませんからね」
「そういうことだよ。じゃあ皆さん、行きますか」
「すっごい疲れてますけれど」
「それでも」
彼等は行くのだった。こうして戦いがまたはじまるのだった。
この頃三人は敵軍を前にしていた。それは修羅の大軍であった。
「おいおいおい、来てるな!」
「やっちゃうよ!いいね!」
「死ね」
「ええ、頼むわ」
マリューが通信で三人に応える。
「三分でそちらに行くわ。いいわね」
「ああ、わかったぜ」
「三分!?ちょろいね」
「俺達三人で全滅だ」
「いえ、三人でありません」
しかしここでボルフォッグが出て来た。
「私達もいますよ」
「到着だぜ!」
「あれ、あんた等」
オルガはゴルディマーグまで見たところで彼等に声をかけた。
「何でここにいるんだ?」
「私達も偵察に出ていたのですが」
「覚えておいてくれよな!」
「ああ、そういえばそうだったな」
「御免御免、忘れてたよ」
クロトの言葉にはあまり反省が見られなかった。
「悪いね、どうも」
「二人だけか?」
シャニは二人とは見ていなかった。
「違うと思うぞ」
「その通りです」
「僕達もいるよ!」
「さあ、今こそ反撃です」
「参上!」
氷竜、炎竜、風龍、雷龍も姿を現わした。
「お兄ちゃん達だけじゃないわよ!」
「私達もです」
「ガンガンやっちゃうもんねーーーーー!」
「光竜に闇竜にマイクもかよ」
「こりゃどんどん出て来たね」
「いい感じだな」
「これで宜しいですね」
ボルフォッグがまた三人に対して言うのだった。
「では。行きましょう」
「おうよ!今いるメンバーだけで全滅させるぜ!」
「抹殺開始!」
「撃つ」
まず三機のガンダムが迫る。そうして一気に攻撃にかかる。ロンド=ベルと修羅達の戦いはここで本格的にはじまったのだった。
「おらおら!行くぜ!」
「攻めるぞ!」
「必殺!」
三人で一気に攻める。先頭にいる修羅達が破壊され尽くされていく。
「くたばれや!」
オルガのカラミティがまず一斉射撃を放つ
「俺の前にいる奴は一匹残らず破壊してやるぜ!」
「御前等うざいからくたばれ」
シャニもまた攻撃を放つ。
「地獄に落ちろ。このままな」
「てやーーーーーーーっ!」
クロトは正面から殴り込みミョッルニルを振り回す。
「死ね!このままな!」
三人が中心となって暴れその後ろからボルフォッグ達が雪崩れ込む。戦いはこうして一気に突き進みそのまま戦う。だがここで修羅の援軍が出て来た。
「ふむ、ここでロンド=ベルに出会うとはな」
「意外でしょうか」
「いや」
銀髪の男が金髪の女に対して応えていた。
「予想はしていた。しかし」
「しかし?」
「これだけの戦闘力の相手だとは予想していなかった」
彼が予想していなかったのはこのことだった。
「残念だがな」
「左様ですか」
「しかしだ」
だがここで銀髪の男は言った。
「私が来たからにはこうはいかない」
「ではこのまま進まれるのですね」
「その通りだ。行くぞ」
金髪の女だけでなく他の修羅達にも声をかける。
「このままな。いいな」
「わかりました。それでは」
「メイシス」
女の名を呼んだ。
「正面からだ。行くぞ」
「行きますか」
「そうだ。ロンド=ベルの動きだが」
彼の言葉はさらに続く。
「あとどれ位でここに来る?」
「一分後です」
メイシスはこう報告する。
「レーダーに反応があります。それによると」
「そうか、わかった」
「ではアルティス様」
「今目の前にいる三機のガンダムは私が相手をしよう」
「アルティス様がですか」
「そしてメイシス」
「はい」
「御前は全軍の指揮にあたってくれ。いいな」
「了解しました」
「問題はだ」
ここでアルティスはボルフォッグ達を見た。
「あのロボット達だが。どうするべきか」
「それなら俺に任せな」
ここでアリオンのアガレスが戦場に現われた。
「俺があの連中を引き受ける。それでいいな」
「アリオン、何故御前がここに?」
「気が向いたんでな」
右目をウィンクさせて答える。
「それで来たってわけさ」
「気が向いてか」
「風の赴くままってやつさ」
またわざと軽く言うのだった。
「だからさ。それでいいな」
「よし、わかった」
「わかったら行くぜ。いいな」
「頼む。では私は」
「全機前進せよ!」
メイシスが指示を出す。
「ロンド=ベルの攻撃に備える。いいな!」
「了解!」
全軍彼女の指揮の下に動く。そのまま彼等は布陣を整える。そして一分後戦場にロンド=ベルの主力が姿を現わしたのであった。
「んっ!?あれはどいつだ?」
忍がまず敵の中に見慣れない二機のマシンを見つけた。
「あの赤い四本足と水色の翼のやつはよ」
「遂に出て来たか」
その二機のマシンを見たフォルカの言葉である。
「閃光のアルティス、そしてメイシス=マルク」
「!?誰、それ」
「知ってるみたいだね、フォルカ」
雅人と沙羅が彼に対して問うた。
「それって誰なの?」
「教えてくれないかい、よかったら」
「修羅の将軍達だ」
こう二人に述べるフォルカだった。
「そしてアルティスは俺の義兄だ」
「義兄か」
亮がフォルカの言葉を聞いて呟いた。
「複雑な関係だな」
「そう思うか」
「少なくとも今は敵同士ということだな」
「そうだ」
アランに対しても冷静に答えるフォルカだった。
「今は。だからこそ」
「戦えるってんだな」
「いいんですね、それで」
コウタとショウコが横に来て彼に問う。
「かなり辛いけれどいいんだな」
「それでも」
「構わない」
これはフォルカの返答だった。
「最初から覚悟している。だからだ」
「そうかい。じゃあ行くぜ!」
「行きます!」
「おいおい、邪魔するんじゃねえぜ!」
しかしここでオルガから通信が入った。
「こいつは俺の獲物だ!口出しするんじゃねえよ!」
「何っ!?こいつは僕の獲物だよ!」
「いや、俺だ」
クロトとシャニもこう主張するのだった。
「俺がやる」
「僕がやるんだよ!」
「俺だつってんだろ!」
「ああ、トダカさん」
アズラエルがよりによって戦闘中に喧嘩をはじめた三人を指差しつつトダカに話す。
「何なら撃っていいですから」
「味方をですか?」
「大丈夫です、何があっても死にませんから」
ここまで言い切るのだった。
「撃墜されようがモビルスーツごと大気圏に突入しようが生きていますから」
「本当に不死身なんですね」
「ええ。身体の強さはガンダムファイター級です」
言外にガンダムファイターは人間ではないと言っている。
「ですから何でしたら」
「おいおっさん!よりによってそれかよ!」
「幾ら何でもそれはないんじゃないの!」
「俺達はゴミか」
「それが嫌だったら早く別の相手に向かいなさい」
アズラエルが言うのはこのことだった。
「いいですね。さあ」
「ちっ、わかったよ」
「じゃあさ、フォルカさん」
「任せた」
「ああ、わかった」
三人に対してもクールに返すフォルカだった。
「それではな。アルティス」
「フォルカか」
「久し振りだと言うべきか」
三人のガンダムが去るとフォルカとアルティスの対峙に入った。
「会うとは思っていた」
「私もだ」
二人は対峙しながら言葉を続ける。
「しかしここでだとはな」
「それも運命ということだな」
「運命か」
フォルカはその言葉に目を止めた。
「俺達が闘うというのは運命なのか」
「私はそう考えている」
「?アルティス、それはまさか」
「そうだ。何時かはこうなるのだ」
アルティスの目がこれまでになく強く光った。
「それが修羅の宿命の筈だ」
「・・・・・・確かにな」
フォルカも今の言葉には確かに頷いた。
「闘いその中で生き、倒れる」
「修羅の生き方の筈だ」
「しかし俺は」
「修羅であることを否定するというのか」
「そうだ。俺は修羅を変える」
言いながらヤルダバオトを構えさせる。
「そして義兄をも越える」
「ならばもう言葉はない」
アルティスもまた構えを取った。
「命を賭けて闘う。行くぞ」
「来い。これが運命ならばな」
二人の拳が撃ち合う。二人の因縁も今巡り合う。ロンド=ベルと修羅の戦いが最後の舞台に入った。コウタとショウコはメイシスと闘っていた。
「くっ、こいつ!」
「何て速さなの!」
『気をつけろ』
ロアが二人に声をかける。
『この修羅は尋常ではない速度だ』
「ああ、それはな」
「わかっています。けれど」
『迂闊に動くな』
これはロアの言葉だった。
『慎重に見ろ。いいな』
「慎重にか」
「兄さん」
ショウコはロアの声を聞いて彼に声をかけてきた。
「ここは動かない方がいいわ」
「動かないだと?」
『そうよ』
今度彼に言ったのはエミィだった。
『迂闊に動くのを止めて様子を見て』
「様子を」
『ええ。わかったわね』
「ちっ、俺のやり方じゃないが」
「ここは我慢して」
また言うショウコだった。
「いいわね。下手に動いたらやられるわ」
「くっ・・・・・・」
「これからの為にも。御願い」
「・・・・・・わかった」
コウタにとっては苦い決断だった。
「じゃあそうする。それでいいんだな」
「ええ」
『そうしろ。いいな』
『今はそれしかないわ』
「来い」
動きを止めてメイシスに対して言った。
「俺はここで受けてやる。貴様の攻撃をな」
「面白いわね。それなら」
メイシスはここで動きを止めた。
「私もまた。動かないわ」
「動かないだと!?」
「私を甘く見ないことね」
表情は変えていないがそれでも声は確かなものだった。
「貴方達の考えはわかるわ」
『そうか。流石だな』
『ええ、そうね』
ロアとエミィはそのメイシスを見て声をあげた。
『修羅きっての智将メイシス』
『この世界でもその知力は健在か』
「!?どういうことだ」
メイシスはここで二人の言葉に目を止めた。
「私を知っている!?だが私は御前達は」
『だが俺達は知っている』
『貴女のことは』
「何故だ、一体何処で」
『ダークブレイン』
『しっているかしら』
「ダークブレイン!?」
メイシスの知らない言葉だった。それを受けて目を顰めるしかなかった。
「何かしら、それは」
『そうか。ここにはいないか』
『けれど』
それでも二人はまだ言うのだった。
『必ずまた出て来る』
『その時こそ』
「貴方達だけしか知らない話のようね」
ここまで聞いたメイシスの言葉だった。
「それならそれでいいわ」
「俺にもわからねえんだがな」
「ダークブレイン・・・・・・」
それはコウタ達も同じであった。ショウコに至っては顔も顰めさせている。
「一体何だ、それは」
「聞いたこともない名前だけれど」
『そのうちにわかる』
『だから二人共。今は』
「メイシスとの闘いに専念しろ」
「そうなのですね」
『そうだ』
ロアの言葉はそれだった。
『そうでなければ敗れる。いいな』
「わかった」
「それでは」
二人は彼の言葉を受けてメイシスと対峙する。対峙しつつ相手の動きを見守る。しかし二人の対峙はやがて水が入った。ロンド=ベルが修羅達との戦いで勝利を収めたからだ。
「よし、いける!」
「このまま包囲だ!」
勝利を収めたロンド=ベルはそのままアルティス達を包囲に入る。
「一気に戦いを決めるぞ!」
「よし!」
「むう・・・・・・」
その動きを見たアルティスが声をあげる。彼はフォルカとの戦いの中でもロンド=ベルの動きを冷静かつ沈着に見ていた。
「メイシス」
「はい」
そのうえでメイシスに声をかけると彼女もすぐに言葉を返してきた。
「今はやはり」
「はい、撤退すべきかと」
彼女もアルティスの考えは読んでいた。
「それではな。ここは」
「わかりました。全軍撤退せよ」
メイシスが全軍に指示を出した。
「後詰は私が引き受ける。コンパチブルカイザーよ」
「何だ?」
「勝負はお預けだ。また会おう」
こう告げて戦場を後にするのだった。子の戦いでは修羅はすぐに撤退し戦いを終えたのだった。
「何だよ、もう終わりかよ」
「まあこんなものじゃないかな」
カイにハヤトが告げる。
「遭遇戦だったしね。お互い傷が深くならないうちにね」
「それなら話はわかるけれどな」
「しかしだ」
ここでリュウが二人に言う。
「また強敵出現だな」
「ええ、そうですね」
セイラがリュウのその言葉に頷く。
「今度は紅蓮の修羅ですか」
「閃光のアルティス」
この存在がクローズアップされる。
「かなりの相手だ」
「なあ、それだけれどな」
スレッガーがここで一同に声をかける。
「フォルカの奴今までよりダメージが大きいぜ」
「あっ、そういえば」
「そうですね」
ハヤトとカイがそれに気付く。
「ありゃあ相当な相手だ。しかしな」
「フォルカとあいつの縁が気になるな」
「はい」
セイラはまたリュウの言葉に頷いた。
「何者かのか」
「義理の兄とか言っていたな」
「ああ」
アポリーがロベルトの言葉に頷く。
「確かにな」
「兄か」
「詳しい話は後だ」
話が進もうとしたところでクワトロが通信を入れてきた。
「今は撤収する。いいな」
「わかりました」
「それじゃあ」
「おいフォルカ」
カイがフォルカに声をかける。彼はまだ戦場に立っていた。
「帰るぜ。いいな」
「わかった」
まずはカイの言葉に頷く。しかしこれで終わりでないことは明らかだった。決着はまだ何もついてはいないのだから。
戦いが終わったロンド=ベルはフォルカから話を聞いていた。彼は静かに話しだした。
「あの男は俺の兄だ」
「義理のお兄さんですよね」
「そうだ」
ショウコの問いに答える。
「血はつながっていない」
「やっぱり」
「そして修羅界の将軍でもある」
「将軍・・・・・・」
「修羅王」
新たな名前が出た。
「その片腕だ」
「修羅王!?」
「修羅界を統べる覇者だ」
こうコウタに答えた。
「この世界をな」
「覇王ってわけかよ」
コウタは彼の言葉を聞いてこう述べた。
「力で支配してるんだな、つまり」
「その通りだ。力こそが正義だ」
フォルカの言葉が厳然なものになった。
「修羅の世界ではな」
「そうだったのか」
「そうだ。そして」
フォルカはさらに言う。
「俺はその修羅の世界に疑問を抱きだしていた」
「疑問をか」
「闘うことのみに生き」
修羅の世界のことも話す。
「そして敗れれば死だ。その世界に疑問を抱いたのだ」
「何故そうなったんだ?」
一矢がフォルカに対して問う。
「そう思うようになるには理由が必要だが」
「それには理由がある」
「理由が?」
「そうだ。俺は親友であり弟でもある男を殺さなければならなくなった」
「闘いの結果か」
「そうだ」
一矢に答える。
「しかし俺は殺さなかった」
「そのせいでか」
「あいつは今も俺を怨んでいる」
表情こそ変えてはいないがそれでも上を見上げた。
「今もな。俺も修羅の世界で将軍になることはできなくなった」
「修羅の戒律に背いたからか」
「その通りだ。そしてそこで御前達に出会った」
「俺達に」
「御前の闘いを見ているうちに考えていったのだ」
静かにまた告げた。
「このままでいいのかとな。俺は」
「それで修羅を抜けて俺達の中に入ったんだな」
「その通りだ。これでわかったな」
「ああ」
「まさか修羅界に入るとは思わなかった」
これはフォルカにとって全くの予想外であったのだ。
「そして。決戦に向かうとはな」
「最後まで戦うということだな、その言葉は」
京四郎はそのフォルカに対して問うた。
「そう捉えていいのだな」
「ああ、そのつもりだ」
「そうか。ならいい」
「その修羅だけれどね」
ナナが皆に言ってきた。
「今南の方に集結しているんだって」
「ほう、そうなのですか」
シュウはそれを聞いてまずは頷く顔になった。
「予想通りですね」
「予想通りだっていうのかよ」
「はい、そうです」
マサキに対しても答える。
「必ずそう来ると思っていました」
「どうやら修羅界のことも知ってるみてえだな」
「ある程度は」
言葉を少しぼやけさせてきた。
「わかっているつもりです」
「ある程度で済むかどうかわからねえからな、手前の場合は」
「おやおや、信用がないのですね」
「手前は色々隠してやがるからな」
謎を言おうとしないシュウを直接日皮肉った言葉だった。
「信用しねえっていうか安心できねえんだよ」
「左様ですか」
「それでだ。修羅の連中も決戦を挑んで来るんだな」
「それはその通りです」
今度のマサキの問いには正直に頷いてみせてきた。
「閃光のアルティスが出て来たということが何よりの証拠です」
「あいつが鍵かよ」
「だからこそです。次の戦いはこの修羅界において最も激しい戦いになるでしょう」
こう述べてからあらためて一同に顔を向けてきた。そのうえでまた問うてきた。
「それでも宜しいですか?」
「それでも?」
「そうです。それでも」
さらに言葉を続けるのだった。
「宜しいですね。戦われますね」
「当たり前だよ」
「その通りです」
コウタとショウコが答えた。
「その為にここに来たんじゃねえか」
「それならもう答えは出ています」
「ふふふ、流石ですね」
これこそがシュウの望んでいた返答であった。
「その通りです。では皆さん」
「ああ、行くぜ」
「このまま南だ」
「全軍南です」
エゼキエルが全軍に指示を出す。
「このまま修羅の軍と戦闘に入ります。宜しいですね」
「了解しました」
「では全軍進路を南に」
「そういうことです。それでは行きましょう」
皆シュウのこの言葉に頷き南下を開始した。
「南に」
「流石シュウ様」
サフィーネは今のシュウを見てうっとりとしていた。
「こうでなくてはいけませんわ、やはり」
「そういえば最近サフィーネって機嫌いいよね」
「当然よ」
テリウスに対して言葉を返した。
「だっていとしのシュウ様が一緒におられるんだから。当然よ」
「そうなんだ、やっぱり」
「しかし。それでもね」
「何よ」
セニアが来て顔を少し顰めさせてきた。
「何かあるっていうの?」
「クリストフがいない時でも過激さは変わらないのよね」
「全く以って至極その通りではあったりなかったりしますわ」
「しかし最近のモニカ殿の言葉は」
アハマドも今のモニカの言葉には額に汗をかいている。
「わからなくなる一方だな」
「ちょっとねえ。最近確かに本当に凄いわね」
セニアも困った顔になっている。
「双子のあたしでもわからなくなってきてるからね」
「それも当然だな」
「当然なの」
「最早聞いていて訳がわからん」
アハマドの言葉は冷静でその通りだった。
「何が何なのかな」
「その通りね。どうも」
「宜しくあってないのですわ」
「あんた、もう言ってる意味がわからないんだけれど」
「だからさ。姉さん」
サフィーネも呆れているがここでテリウスが出て来た。
「文法がおかしいんだって」
「そうでございますなのでしょうか」
「うん。落ち着いて話してね」
「落ち着いて話したらなおるのかいな」
「あかんやろ」
ショージとチョーサクはこう考えていた。
「こらどう見てもな」
「訳がわからへんな」
「全くや」
ジュンも入る。三人にもわからなくなっていたのだった。
「とにかくさ。南だよね」
「ああ、そうだ」
ヤンロンがミオに答える。
「このままな。では早速行くとしよう」
「それはそうとさ」
ここでリューネが入って来た。
「一つ気になることがあるんだけれど」
「むっ!?何だそれは」
「あの三人のことよ」
こうヤンロンに答える。
「あの三人。どうするの?」
「デュミナスの子供達のことね」
テュッティにも誰のことなのかわかった。
「あの子達は。どうしようかしら」
「今のままでいくしかないんじゃないの?」
ベッキーはこう答えた。
「やっぱりさ。今は」
「今のままでって?」
「だから。捕虜扱いで戦艦の中だね」
シモーヌに対して答える。
「それしかないでしょ。外に出すわけにもいかないしさ」
「それしかないわね、やっぱり」
「そういうこと。まあそれで行くしかね」
「そうですね。窮屈で申し訳ないですけれど」
ザッシュもベッキーのこの考えに賛成した。
「それが一番だと思います、今は」
「修羅との戦いも長くなるかも知れませんしね」
デメクサは戦局を冷静に語った。
「フォルカさんのお話ではこの世界の崩壊も近いそうですが」
「その通りだ」
そのフォルカが彼等に答える。
「俺の予想以上だ。このままではすぐにでも」
「おそらく一年といったところでしょう」
ここでまたシュウが言うのだった。
「もつのは。それ以上は」
「しかし。妙なことじゃ」
ティアンの言葉だ。
「あらゆる世界が崩壊に瀕している」
「確かに」
ジノは彼の言葉に表情を暗くさせた。
「ラ=ギアスでもヴォルクルスが出た。地上では宇宙怪獣が蠢いている」
「しかもセフィーロも崩壊しかけていた」
ファングはセフィーロについて言及した。
「あらゆる世界が同時にか」
「有り得へんな」
ロドニーも口調はともかく言葉も表情も冷静なものになっている。
「普通に考えてな」
「ええ、確かに」
「複数の世界が同時に崩壊しかけてるなんて」
エリスとプリシラも言う。
「何かあるのでしょうか」
「けれど偶然ということもありますし」
「本当に偶然ならばいいのですがね」
シュウは何故か思わせぶりな口調になっていた。
「果たして。どうなのか」
「何だ?何かあるのか?」
「いえ、まだ私にもわかりません」
しかしシュウはここではマサキの言葉にも首を横に振った。
「何なのか。ですがどうも」
「どうも?」
「誰かの存在を感じないわけではありません」
シュウの目が知的に光っていた。
「果たしてそれが私の気のせいかどうかもわかりませんが」
「おめえでもわからないってことがあるってことかよ」
「私も万能ではありません」
マサキの言葉にこう返すのだった。
「ですから。それもまた」
「そういうことかよ。まあ今は目の前の敵をぶっ潰すだけだな」
「ぶっ潰すっていうのがねえ」
「マサキらしいニャ」
「けれど今はそれしかねえ」
マサキの言葉は断言になっていた。
「南だ。いいな」
「わかってるニャ」
「それじゃあ行くニャよ」
「ああ、すぐにな」
クロとシロの言葉に頷く。ロンド=ベルは南に向かった。修羅達が待つ決戦の場に。今は向かうのだった。

第八十三話完

2008・10・3 
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