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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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穏-持病=エロ要素なんて一つもない普通の日常です。

 本日は誠に天気も悪く、胸糞悪いほどの大量の雨が俺の心を大変イラつかせておりまする……。

 やぁ、皆さんご存知、雹霞だよ。冒頭から変なテンションで入ってしまったけど、あまり気にしないでくれ。コッチの世界じゃ、雨天時にできることなんてあまりないから、暇だったんだ。
 そんなわけで、今俺は自室にてのんびりと本を読んでいます。
 
「…………ふぁ~あ……暇、だな……」

 思わず気が抜けるようなため息が出る。うーん、いくら読書をしようとも暇なのは誤魔化せないか……。
 ……仕方がない。あまり気は進まないが、こういうときは何かおもしろいことを探しに行くのが定石のはず。
 俺は読みかけの本を寝台に放り投げると、いつもの服に着替え始めた。
 特に面白くもなんともない風景なので、口直しに俺の服装についてでも説明するとしよう。
 簡単に説明させてもらうと、現実世界のブレザー制服の模倣品である。俺自身、学生時代は中高共に学ランだったため、ブレザーに憧れていたのだ。そんで、服を新調するときにこう思ったのさ。『あ、どうせならブレザー着てみっか♪』ってな。
 そんなわけで、朱を基調としたブレザーに黒を基調にしたズボン。これが今の俺の格好だ。
 ネクタイを締め、準備は万端。俺は本日の暇つぶしを見つけるべく、城内へと足を進めた。



                    ☆



「はぁ……ふぅ……」
「ん?」

 二階の階段に差し掛かったところで、少し急ぎ気味に駆け下りていく穏とバッタリ会った。ふくよかな胸に弾かれる汗がなんとも目に悪い。……マジで。

「おい、何やってんだ?」
「あ……雹霞さんじゃないですか~、丁度良かった、蔵に用事があるんですけどぉ~、一緒に来てくれませんかぁ~?」

 どうやら冥琳から頼まれたらしい。蔵からとある本を取ってきてほしいとのことだ。
 ふむ……暇つぶしには丁度いいか? 冥琳に借りを返すいい機会でもあるしな。

「了解、着いて行ってやんよ」
「本当ですかぁ~、ありがとうございますぅ☆」

 相変わらずのスローペースで話す穏。いつも思うんだが不思議な奴だよなぁ……これがあの有名な陸遜っていうんだから、なおビックリだ。
 二人で並んで蔵へと向かう俺達。

 スタスタスタスタ。
 ぽよんっ、ふよんっ。
 スタスタ……スタスタ……。
 ふわんっ、ほよんっ。

 …………正直、目が痛いですぜ、姐さん。
 だいたい、この国の奴らはみんながみんなデカすぎるんだよ! 右を向けばメロンだし左を向けばスイカだし、どっちむいても豊かな奴らしかいない。
 男としては喜ぶべきなのだろうが、はっきり言って目のやり場に困るのが現状というものだ。もうちょっと控えめな子はおらんのか?
 
 そんなくだらないことを考えている間に、いつの間にか蔵の前へ。
 うし、とりあえず仕事すっか――――――――――

「穏? 入らないのか?」
「…………雹霞さんに、お願いしてもいいですか? 私はここで待っておきますので……」

 何故か入口の前でしゃがみこんでいる穏。というか……お前が頼まれたんだろうがよ。
 まぁ無理強いするのは教育上よろしくない。理不尽を感じつつも、俺は一人で蔵の中へと向かった。

「ほへー……相変わらず広い部屋だなぁ……」

 上下左右に敷き詰められた書物の山。古今東西大陸の全ての知識が、ここに詰まっているかのようだった。

「……おっと、ボーっとしている場合じゃねえや。さっさと探さねぇとな。穏を待たせているわけだし」

 そういって、『孫子』と書かれた辺りを徘徊する俺。えーと、確か『孫子言説集第一~五巻』だっけか。
 十分ほどたち、ようやく全てを見つけた。孫子、多すぎんだろ……。
 割と分厚いそれを抱えて入口の方へと戻ると、待ちくたびれたのか穏が床に座り込み、壁に背を預けてすやすやと寝ていた。あちゃー……そんなに待たせちまったか?
 いつものゆったりとした雰囲気を更に強くして、気持ちよさそうに涎を垂らしながら寝ている穏。うーん、このまま寝かせておくのもな……かといって、起こすのも忍びないし……あ、そうだ。
 ゴソゴソとブレザーから何本かの紐を取り出し、孫子を一つにまとめ上げる。そして、起こさないように気を付けながら穏をゆっくりと背負った。……背中に当たる感触はこの際無視しておく。

「うーん……むにゃむにゃ……もぅ食べられませんよぉ……」

 驚いた。本当にこんなベタな寝言言う奴がいたとは。
 右手に孫子を吊るして冥琳の待つ書斎へと足を進める。やはりというべきかなんというべきか、穏も女の子らしく体重が軽いためあまり苦にならない。なんでこんな軽いのかねぇ……。
 
「ぅ……うーん……はれぇ? ひょーかさん?」
「お? 起きたみたいだな」

 階段に差し掛かったところで爆睡していた穏が目を覚ました。階段を昇る際の振動が原因だろう。まだ寝惚けているのか、呂律があまり回っていない。

「なんでわたひ……ひょーかさんにおぶられているんですかぁ?」
「一応本も取ってきて、後は冥琳のところに行くだけなんだけどな。起こそうとも思ったが、あまりに気持ちよさそうに寝てたもんだから起こすのも可哀想だろう、と思って。迷惑だったか?」
「いえいえ……こころづかいありがとうございまふ……それじゃあ、悪いですがこのまま背中で眠っていても良いですか~?」
「あぁ、眠いんだろ? 無理に起きておく必要もないし、こんな背中でよければ存分に眠っていいぞ」
「それでは、お言葉に甘えて……すぴー」

 そういうやいなや意識を沈めていく穏。よっぽど眠たかったんだろうなぁ。
 よく見ると目の下にうっすらと隈が出来ている。こんな女の子でも呉の第二参謀だ。その仕事量と疲労は計り知れないだろう。
 
「穏も、頑張っているんだな」
「うぅん……はい~……むにゃむにゃ」

 気のせいか、少しだけ嬉しそうに笑った気がした。
 さて、そんじゃせいぜい起こさないように冥琳のところに急ぐとしますかな。 
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