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星河の覇皇

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第八部第二章 議会その二


「問題は彼等が連合市民かどうかだ」
「それならもう問題はない筈だ」
 既に彼等は連合の市民権を得ていた。だが反対派の領袖達はここでこう答えた。
「我々が今言っているのはそういう簡単な問題ではない」
「どういうことだ?」
「見方を変えればより単純な話だが」
「それは」
 こう言われて賛成派は思わず首を傾げた。
「彼等が連合の市民というならば」
「いうならば?」
「その証を見せてもらいたいのだ」
 彼等はこう主張したのだ。
「証拠といっても」
 それに困惑する者も多かった。
「一体何を見せろというのか」
 今までは連合の市民権を得ればそれでよかった。そしてそれで連合の市民となった。だがそれだけではないというのだ。それは国を興すからである。
「国を作るのは連合の者に限る」
 これは連合の不文律であった。連合においては連合の者が国を作る。そう決められていたのである。
 だが彼等は市民権こそ持っているとはいえ難民である。サハラの者なのだ。サハラの者が連合において国を作ってよいのかという問題であった。
「別に国なぞ欲しくはない」
 難民達にはそう主張する者もいた。
「俺達はサハラに帰られればそれでいい」
 彼等は問題はなかった。だが問題はそう単純ではなかった。やはりそれと異なる考えの者達も多かったのだ。これが問題であった。
「ここにいたい」
「ここに俺達の国を作りたい」
 そう考えるようになった者達もいたのである。それはサハラ義勇軍の中にもいた。
「もう生活の基盤はこちらにある」
 それが第一の理由であった。それに連合自体を気に入っていたのである。
 連合のそのおおらかな空気に彼等は魅せられた。そしてそこに住みたいと考えるようになってきていたのだ。
 そうした者達をどうするかということであった。彼等は国も欲していた。だがそれには連合の者であるという証が必要だと言われたのだ。
「ならば見せてやればいい」
 サハラ義勇軍にいるある将校がこう言った。
「場所はもう決められている。ならば後はその証を見せるだけだ」
「どうやってだ」
 これに異論も出た。当然である。
「戦いで見せるんだ。俺達は軍人だ」
 彼はそう主張した。そう、彼等は軍人であった。軍人ならばそうする他ないのだ。
「戦いが来る。俺達はその時に見せればいい」
「そうだな」
 他の者もそれに頷いた。彼等はエウロパとの戦いがはじまるのを待つようになっていた。それは八条にも伝わっていた。
 八条はそれを聞いて考え込んでいた。
「そうですか」
 サハラ義勇軍がその為に連日激しい訓練を行っているということも聞いていた。
「ならば彼等には戦ってもらいましょう」
「はい」
 木口はその言葉に頷いた。
「それでは彼等を先鋒にしますか」
「そうだね」
「戦いの際には」
 まだ戦うと正式に決まったわけではないのだ。あくまでそういったことも考慮される、ということになっていた。
「少なくとも彼等には参加してもらわなくてはならなくなったよ」
「ですね」
「そして外交の方はどうなっているかな」
 密かに水面下でエウロパとも交渉を行っているのである。
「そちらの方は進展がありません」
 木口は首を横に振った。
「向こうも態度を硬化させています」
「そうだろうね」
 予想されたことであった。
「議会はもう開戦が大勢らしいですね」
「うんん」
「では後は議決されるだけですか」
「兵の集結等はまだこれからだけれどね」
 連合は広くその兵も多い。だから兵を集めるのも大仕事なのである。
「それをどうするかだよ、これからの我々の仕事は」
「どれだけの兵力を参加させるおつもりですか」
「そうだねえ」
 彼はここで自分の考えを述べた。
「二千個艦隊程か」
「総兵力の三分の二ですか」
「それにサハラ義勇軍百個艦隊。計二千百個艦隊だ」
「今までそれ程の戦力を動員した例はありませんよ」
「わかっているよ」
 彼は答えた。
「だからこそやるんだよ」
 そしてそう答えて笑った。
「兵力でまず彼等に心理的プレッシャーを与えていきたいんだ」
「そういう御考えでしたか」
「勿論それだけじゃない。彼等も兵力を総動員してくるだろう」
「はい」
「ならばこちらもそれ相応の兵力が必要だ。違うかな」
「いえ」
「それだけでも足りない可能性もある。油断はできないよ」
「二千個艦隊でもですか」
「対外戦争だしね。敵はエウロパ軍だけじゃない。市民達も敵になる可能性がある」
「ゲリラ戦ですか」
「その危険もある。これは占領地での政策如何だが」
「それについても何か御考えですか」
「そうだね。とりあえずは彼等の武装解除と治安の維持、そしてこちらの風紀の徹底だね。それだけやればかなりましだと思う」
「わかりました」
「後は宣戦布告が行われてからだな。それまでにおおよその作戦を立てておかないと」
「はい。それですが」
「もう会議が予定されているんだね」
「ええ」
 木口は答えた。八条はそれを見て苦笑した。
「この仕事は次から次に仕事が来るな」
「閣僚はどれもそうですよ」
「そう言われればそれまでだけど。それにしても」
「ぼやいている暇はありませんよ、長官」
「わかったよ」
 彼はそれに答えて席を立った。そして会議室に向かうのであった。そこにはもう軍の高官達が集まっていた。彼等は八条が入ると一斉に席を立ち敬礼した。八条はそれに応えて返礼した。
「それでははじめましょうか」
「はい」
 高官達を席に座らせた。それから話をはじめた。 
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