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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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主人公-鈍感=え、何が残るっていうの?

「はぁああああっ!!」

 長剣を持つ兵士が勢いよく踏み込んで上段から剣を振り下ろす。左右からは、それぞれ槍と短剣を持った二人組が鋭く突きを繰り出していた。
 やれやれ、またなんとも面倒くさいことを……。

「でもまぁ……こんなのは喰らわねえよっ」
「ぐあっ!」

 短剣使いの方に一歩動き、偃月刀の石突の部分でそいつの顎を突き上げる。俺が動いていたため、長剣は空を切り、同時に槍を弾く盾となっていた。
 ふぃー、あぶねぇあぶねぇ。一人が超接近戦用で助かったぜ。
 安どのため息をつく俺とは反対に、兵士達の間でははっきりとした不安と恐怖が生まれていた。

「おい……もう一人やられちまったぞ……」
「どうするの? アタシ、勝てる自信無くなっちゃったんだけど……」
「そ、そんなこと言われても……」
「…………はぁ」

 兵士達の様子を見て、俺は静かにため息をついた。
 雰囲気から察するにコイツらはおそらく新米兵士。まともに戦場にも出たことがないのだろう。そのため、未知の恐怖、予想外の事態にはめっぽう弱い……そんなところか。
 でも……だからって……!
 俺はふつふつと沸いてくる怒りを隠すこともせず、叫んだ。

「お前ら! それでも孫呉の兵士か!」
『!』

 突然怒鳴られてことに驚きを隠せない兵士達。
 俺は声量を落とすことなく言葉を続けた。

「お前らは敵と戦うためにここにいるはず。それなのに強すぎる敵が現れた途端挙動不審になるっていうのはどういうことだ! お前らはそんな自分の恐怖心のためだけに国を捨てるのか!? 家族や友人を見捨てるのか!? 違うだろ! 向かって行けよ! たとえ勝てなくても、軍師から撤退命令があるまで戦い続けろ! そのかわり、死にそうになったら、全力で逃げろ! 全力を尽くして、やるべきことをすべて終えて、それでも勝てなかったら、みっともなくてもなんでも、とにかく逃げろ! いいか!」
『…………応!!』

 異口同音に返事をする兵士達。あれ? なんか途中から関係ないことまで言って訳分からなくなってたような……ま、いっか。
 偃月刀を低く構え、戦闘態勢に入る。

「それじゃ……次は俺から行くぜ……っ!」

 右足で地面を蹴り、勢いよく踏み出す。その勢いを利用して、偃月刀を横薙ぎに払った。

「がっ!」
「うぐぅっ!」

 大剣と鎚という重装備のため一歩遅れた二人が、巻き込まれて吹き飛んだ。
 後……七人!

「ヤァアアアアアアアアッ!!」
「ウオオリャアアアアアア!!」
「チェストォオオオオオオ!!」

 槍、長剣、無手の兵士がそれぞれの攻撃を放つ。それを俺は武器組の方へ偃月刀を横向きに投げつけていなすと、無手の奴の鳩尾に前蹴りを叩きこんだ。

「グァアアアッ!!」
「そんな!?」
「畜生……」

 武器を捨てるという普通では考えられない状況に目を白黒させる二人。その隙を逃さず、男の方の金的に速やかに蹴りを入れた。

「ホグァっ!」
「な、なんてことを……」
「鬼畜……」
「ひ、ひでぇ……」

 生き残っている男三人が股間を押さえて渋い顔をしている。これは本当に危険なので良い子は絶対に真似しないでね♪
 股間を押さえている奴らはすっかり戦闘意欲を失ってしまっていたため、首元に手刀を入れて昏倒させた。
 ……さて、残りは女子二人か……。
 一歩ずつ彼女らの方に足を進める俺。二人は警戒するように武器を構えたが、腕の振るえは隠しきれていなかった。

「ま、負けませんよ……!」
「女だからって嘗めないで……!」

 震える唇で紡がれる言葉に恐怖する要素なんぞ一ミリたりとも存在しない。
 俺は握った両拳を彼女達の前に掲げ、人差し指を勢いよく放った。
 いわゆる、デコピンである。

「えい」
「痛っ!」
「あぅっ!」

 痛そうに額を抑える二人。俺はしゃがみこんでいる彼女らを一瞥すると、偃月刀を投げ捨てて中庭の方へと歩き始めた。

「ま、待ってください!」

 そのとき、後ろから制止の声が飛んでくる。俺は気怠そうに彼女達の方を向いた。

「何?」
「何、じゃなくて……どうして倒さなかったんですか?」
「いや、倒したじゃん」
「倒してない。孫瑜様は私達を気絶させなかったし、決定的な攻撃も当てていない」
「あー、そういうこと……」

 俺は軽い笑みを浮かべると、混乱する彼女達に向けて言った。

「女の子に攻撃なんて、するもんじゃないっしょ?」
『え……?』
「雪蓮とか祭とかならともかくさ、二人はまだか弱い女の子なわけじゃん? そんな子たちに武器を向けるなんて、俺には無理だね」
『!』

 俺の言葉と同時に、二人の顔がボンと茹蛸のように赤くなる。ありゃ? 一体全体どうしたんだ?

「おい、二人共大丈夫か? なんか顔が赤いけど」
「な、なんでもありません!」
「心配無用」
「それならいいけど。そんじゃ、俺は行くから」

 再び中庭に向けて歩き出す俺。

「……天然だね、あれは」
「女たらし」

 後ろから何か不名誉な発言が聞こえてきたような気がしたが、俺は構わず駆け出した。













 ちなみに、この三十分くらい後に祭に捕まった俺と雪蓮は、二人仲良く正座のまま仕事をさせられました(泣) 
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