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星河の覇皇

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第一部第三章 海賊征伐その一


                  海賊征伐
 カッサラ星系を制圧したオムダーマン共和国はこの星系に軍事基地の建設を開始した。そしてアジュラーン大将率いる駐留艦隊を置きサラーフ等に備えた。
「確かにカッサラ星系を得たのは大きいな」
 アッディーンは自分の艦の艦橋にあがりつつ言った。
「そうですね。カッサラは交易の中心地でありますから」
 隣にいるガルシャースプが答えた。
「この地から得られる収入も莫大なものですが軍事的に見ても西方の要地ですし」
「そう。この地からサラーフやミドハドを攻めることも出来る。今我々は軍事的に見てかなり有利な状況にある」
「はい。これにより西方の小勢力が我々に帰参したいと申し出ておりますよ」
「いいな。戦わずしてその国力を併合出来るのだから」
 アッディーンはその話を聞いてニヤリと笑った。
「艦長は別に戦うのがお好きではないのですか?」
 ガルシャースプは彼のその笑みを見て言った。
「いや、そういうわけじゃないけれどな」
 アッディーンは答えた。
「ただ無益な戦いはしないにこしたことはない。無意味に血を流してもそれは無駄というものだろう」
「成程、それは良いお考えです」
 ガルシャースプはそれを聞いて言った。
「今俺達が従事している任務にしろそうだ。相手が降伏してくれればそれに越したことはないがな」
「そうですね」
 彼等は今カッサラ星系近辺に跳梁跋扈する宇宙海賊掃討の任務についていた。彼等は星系周辺にあるアステロイド帯に隠れ商人達を襲わんと常に息を潜めているのだ。
 彼の艦を長として巡洋艦五隻、駆逐艦十隻がその任にあたっている。彼等は周辺を哨戒しながら海賊達を探している。
「何処かおかしなところはないか」
 アッディーンはレーダー手に対し問うた。
「今のところはありません」
 レーダー手は答えた。
「そうか。奴等にとってこの辺りは遊び場のようなものだ。警戒を怠るな」
「ハッ」
 レーダー手は敬礼した。そして任務に戻る。
「そろそろ出て来る頃だろうがな」
 アッディーンは目の前に映し出されているモニターを見上げながら言った。
「だが一体何処から出て来るか」
 そのモニターには複雑なアステロイド帯が映し出されている。
「わかりませんね。ここの何処かに息を潜めているのは確かですが」
 ガルシャースプもモニターを見ながら言った。
「こんなことなら空母も連れて来れば良かったな。やはり航宙機の索敵能力は頼りになる」
「そうですね。しかし今更言ったところでどうにもなるわけではありません。今空母は余分に戦力を割けない状況にありますから」
「そうだったな。基地の建設が早く終わればいいんだが」
 今駐留艦隊の空母はその殆どを惑星防衛にあてている。今攻撃を受けたらもともこもないからだ。
「しかしだからといって退くわけにもいくまい。各艦からの報告はあるか」
「ハッ、今来ました」
 通信士が答えた。
「来たか。何処からだ」
「巡洋艦ムスタファからです」
 この艦は艦隊の先頭を進んでいる艦である。
「よし、何と言っている」
「前方のアステロイド帯のところに識別不明の艦隊反応があり、その数三十だそうです」
「来たな」
 アッディーンはその報告を受けて言った。
「あそこだな」
 彼はモニターに映るアステロイド帯を見て言った。
「他の場所には反応はないか」
「はい、一切ありません」
「よし、やるぞ」
 彼は不敵に笑って言った。
「各艦に伝えよ。駆逐艦部隊はアステロイドを大回りし奴等の後ろに回り込め。巡洋艦部隊は俺と共に奴等の正面に移動する」
「わかりました」
「いいか、見つかるなよ。一瞬で勝負を着けるからな」
「ハッ!」
 彼の言葉に従い艦隊は二手に分かれた。駆逐艦部隊は敵が隠れていると思われるアステロイド帯を大きく回り敵の後方に向かった。アッディーンは巡洋艦達と共に敵の前に向かった。
「お頭、オムダーマンの奴等が来ましたぜ」
 見ればかなり旧式の艦である。軍からの横流し、若しくは普通の船に無理矢理武器を備え付けただけのものである。しかし彼等は何ら臆するところはなかった。
「ヘッ、遂にきやがったか」
 お頭と呼ばれたその下品な顔立ちの男は下卑た笑いを浮かべて言った。
「正規軍だか何だか知らねえがここは俺達の縄張りなんだ。調子こいてるとどうなるかその身体で教えてやるぜ」
 彼はそう言うと周りの者達を配置に着けさせた。
「いいか、最初が肝心だ」
 彼は部下達に言った。
「まずは徹底的に痛めつけてやれ。そうすれば連中も俺達に手を出さなくなる」
「へい」
 手下達はそれに答えた。
「来たぜ、一気にやるぞ」
 アッディーンの艦隊が接近してきた。彼等は攻撃準備を整えた。
「お頭、来やしたぜ!」
 レーダー手がそれを見て叫んだ。見ればかなり旧式のレーダーである。
「よし、行くぜ!」
 海賊達はアステロイドの影から一斉に襲い掛かろうとした。だがそれより先にアッディーンの艦隊は攻撃を仕掛けて来た。
 既に主砲をこちらに向けていたのだ。その斉射が彼等を襲う。
 
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