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IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~

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number-16 Valkyrie Trace System

 
前書き


ヴァルキリートレースシステム。




この場合は、ラウラ・ボーデヴィッヒ。


 

 


「うああああああ――――!!!!」


悲鳴とともに黒いドロドロしたなにかに覆われていくラウラ。
その黒いものが形作ったのは、もとは織斑千冬の機体であった《暮桜》だった。


そこまであの人を考えていたのか。
麗矢はこんな形での《暮桜》との再会は望んでいない。
あれは、千冬が乗って初めてあの無類の強さを発揮できるのだ。


「お前がそれに乗るなあっ!!」


一夏が、ただ黒いものに突撃する。何も考えることはせずに。
そして《雪片》で斬られる。


斬られると、一夏の機体はもう限界を迎え、光を放ち、霧散していく。
一夏の左腕からは血が出ていた。
ご丁寧に単一能力までコピーしているらしい。――――細かいことである。


また一夏が、今度は生身であの黒いものに近づこうとしていたが、シャルルによって止められていた。
後ろから羽交い絞めにされても落ち着くことなく、もがいて抜け出そうとする。


「あれは……! あれは千冬姉の物なんだ!」
「だからなんだというのだ。お前の姉の物がコピーされた、ただそれだけじゃないか。」
「違うっ! 違うんだ麗矢! あれは千冬姉だけのものだっ!」


麗矢は辟易とするも、気を取り直して一つの質問をした。
この間にもあの黒いものは動きだしてしまいそうではあったが、今は教師部隊が止めている。
だから、まだ時間はあった。


「織斑一夏。お前は強さの定義を何ととらえる。」
「……? いきなり何を――――」


一夏の言葉を遮って、麗矢は強く一夏に問う。


「いいから答えろ。お前は強さの定義、いわば、お前の強さとはなんだ?」


麗矢が先ほどの問いよりも幾分か、分かり易くして、再び問う。
一夏は気を収まってきたのか、先ほどよりも落ち着いていた。シャルルも今の一夏を見て、大丈夫と判断して離した。


「俺の強さは良く分からないけど、みんなを守れるように強くなりたいって思った。だから、俺はあれを止めたい。みんなを守るために。」


一夏が強さとして考えること。ありがちではあったが想いは十分だった。
ここで麗矢は満足したのか、一夏に向かい――――腹を殴った。


ISの装甲が直接一夏に食い込む形で、くの字に曲がる。


「――――ッ! げほっ! いきなり何を……。」
「お前の綺麗事にはもう飽きた。お前は口だけの人だ。ただ自分の言いたいことを言って、その癖に何もできやしない。――――この際だ、はっきりと言ってやる。」


麗矢は一つ間を置き、今までずっと心の内にため込んで言わなかったことを抑揚なく言い放った。
冷たい目で、無表情に。


「織斑一夏、俺はお前が嫌いだ。有名無実、名ばかりで中には何もないお前が嫌いだ。自分で責任も取れない奴がしゃしゃり出て来るんじゃねえ。」


これを聞く前に気絶していたかもしれないが、そんなことどうでもよかった。
しかし、シャルルははっきりと聞いていたようで、口を手で覆い驚いている。
少しは一夏のために反論しようとしていたシャルルだが、麗矢の目を見ると何も言えなくなった。
あの殺気立った鋭い目を――――。


麗矢はそんな二人を背にして、今までずっと動くことなかった黒いものと向き合う。
両手には《デストラクター》を持っている。手数を優先にして、リーチの短いほうにした。
ずっと畳んでいた翼も広げて、臨戦態勢に。


そして、麗矢が接近するとそれに反応して、斬りかかってくる。
あの時の千冬の動きをほとんど忠実に再現されているようだった。
ぶつかり合う。


今回の目的はラウラの救出。
強さを吐き間違えたあの少女に情けをかけてやろうとしていた。


だが、実際には救出は二の次になる。
あの時が全盛期である、当然それに応じて強さも変わる。――――強い。
これまでに麗矢が戦った人たちより――――千冬は除くが――――も実力が一回りも二回りも高い。だが、中身がなかった。


ラウラを半ば強引に動かしているシステム。いくら操縦者がいても、感情がなければ受けているこの剣も重くない。
人の感情がこもっているから、剣が重くなる。
麗矢は思う。――――あの時戦った千冬よりも弱い。技術は一番であるが、心は最下位だ。――――と。


右で振り下ろされる《雪片》を受け流し、左で斬りかかる。
すぐに引き戻されて左の攻撃が弾かれるが、今度は右で攻撃する。
また弾かれ、そのまま袈裟斬りへ。
半身動かすことで避けた麗矢は《雪片》を左の《デストラクター》で思いっきり弾き飛ばす。
しびれて使い物にならなくなった左腕を放っておいて、右で黒いモノの胴体に当たる部分を切り裂く。
深過ぎず、浅過ぎず。


切り裂かれたところからラウラが出てくる。
いつもの眼帯はしておらず、金色の瞳が光っていた。


助けを求めていた儚げな少女を抱き止め、黒い何かも操縦者であるラウラがいなくなったことで消えていった。
意外にあっけなかった。


こうして今大会は終わったのである。
またもや問題が発生して最後まで行うことを出来ずに。


      ◯


「――――ッ。……ここは。」
「目が覚めたか。」


ラウラが起きるとベットに寝かされており、窓から差し込む光は夕暮れを示していた。
そして、千冬が立っていた。


「機密事項ではあるのだがな、当事者であるお前には伝えておこうと思う。」


ラウラは千冬から事のあらましを聞いた。
聞いた中で一番ショックであったことが、自分のIS《シュヴァルツア・レーゲン》にヴァルキリートレースシステムが搭載されていたこと。
自分が力を求めたからそれが発動してしまったことであった。


「ラウラ・ボーデヴィッヒ。」
「?」


考え込んで落ち込んでいるところに名前を呼ばれ、下を向けていた顔を千冬に向けた。


「お前は誰だ。」


ラウラには答えることが出来ない。
もうただがむしゃらに力を求めることが間違いであることに気付いた今、自分が自分でないような気がするのだ。
だから、何も言えない。


「では、お前は今日からラウラ・ボーデヴィッヒだ。まだ時間はある、ゆっくりと考えるがいいさ。」


千冬が言った言葉に衝撃を感じたラウラ。
だが、千冬は言いたいことだけを言って出ていこうとする。
しかし、ラウラが千冬を引き留めた。


「教官。」
「……もう教官ではないのだが、まあいいか。なんだ。」
「夜神鳥麗矢について教えてください。」


千冬は驚きで声が出なかった。
寝ても覚めても強くなることにしか頭になかったラウラの口から、男の名前が出ることに驚いたのだ。
しかも、あの天然ジゴロの弟ではなく、麗矢のほうだったことに。


「あいつか……まあ、気難しいところはあるが基本的にはいい奴だ。あとは良く分からんが……こんなものでいいか?」
「はいっ。」


千冬は小さく笑うと出ていった。千冬は昔からそういう人だったから特別気にすることはなかった。
一人残されたラウラは思う。
自分を助けてくれた人のことを。自分と同じ銀髪の青年のことを。


「――――――――。」


ラウラは笑う。この自分に恋心が芽生えるなんて思わなくて。ドイツの冷氷と言われたこの自分に。
また、ここからが新しい自分のスタート、とても清々しい気分だ。自然と笑みがこぼれてくる。
心の憑き物が取れ、笑うラウラはとても楽しそうに見える。


――――夜神鳥麗矢。


あいつのことが頭から離れない。助けてくれた強いあの人のことが。
あいつのことを考えると心が温かくなってくる。この強化試験体であるラウラの胸が。


ラウラは笑い続ける。
これからはとてもいいものになるとどこかで思いながら……。

 
 

 
後書き


どうしよう……。うまくまとまっていないかもしれない……。






文才がほしい今日この頃。 
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