| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

チェネレントラ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四幕その三


第四幕その三

「我が命、殿下に捧げるつもりです」
「それは有り難い」
 それを聞いてダンディーニは笑顔で頷いた。
「チェネレントラ」
 マニフィコはここでチェネレントラに顔を向けた。
「はい」
「温かいものの用意を」
「わかりました」
 彼女は台所に入った。マニフィコはそれを見届けてからダンディーニに顔を戻した。
「そして殿下はどちらに」
「はい」
 ダンディーニは頷いた。それから扉の前の道を開けた。そこから一人の貴公子が姿を現わした。
「ここがマニフィコ男爵のお屋敷ですな」
「はい、殿下」
 ダンディーニはラミーロにそう答えた。
「そしてこちらにおられるのが」
「この屋敷の主人でございます。そしてここにいるのが娘達でございます」
「はじめまして」
 二人は恭しく頭を垂れた。
「顔をお上げ下さい」
 ラミーロは三人に対してそう言った。三人はそれに従い顔を上げた。
「殿下、ご無事ですか」
 マニフィコはまず彼にそう声をかけた。
「心配はいりません」
 ラミーロは微笑んでそれに答えた。
「馬車がこけただけですから。誰も怪我はしませんでした」
「そうですか。それは何より」
「別の馬車がすぐに来ますし。それまでの間こちらにいても宜しいでしょうか」
「是非とも」
 マニフィコは笑顔でそれに応えた。そして恭しくこう言った。
「しかしお身体が冷えられたでしょう」
「いえ、別に。お構いなく」
「そういうわけにはいきません。チェネレントラ」 
 台所の方に声をかけた。
「もう出来ているか」
「はい」
 台所の方から声がした。そしてコーヒーを持って来たチェネレントラがやって来た。
「むっ」
 彼女を見たラミーロの顔色が変わった。それはチェネレントラもであった。
「まさか」
「そんな」
 二人は互いの顔を見て呆然となった。あやうくコーヒーを落としそうになる程であった。
「おい、危ない」
 それに驚いたマニフィコが慌てて声をかけた。
「あっ」
 すんでのところでそれに気付いた。チェネレントラはコーヒーを戻した。
「一体どうしたんだ」
「あ、何でもありません」
「いや」
 慌てて取り繕うチェネレントラに対してラミーロが前に出た。
「何かあるのですよ、あしからず」
「何か!?」
「はい。ダンディーニ」
 ラミーロはここでダンディーニに声をかけた。
「はい」
「ちょっとコーヒーを持っていてくれ」
「わかりました。お嬢様」
「はい」
 ダンディーニはここでチェネレントラに声をかけてきた。そして前に進み出た。
「ちょっとそのコーヒーを拝借」
「わかりました」
 そしてコーヒーを受け取った。これでチェネレントラは自由となった。ラミーロが彼女の前に出て来た。
「まさか・・・・・・」
「そう、そのまさかなのです」
 ラミーロは彼女ににこりと笑って微笑んだ。だがチェネレントラの顔は蒼白となっていた。その場から去ろうとした。
「そんな・・・・・・」
「お待ち下さい」
 だがラミーロはそれを止めた。そして彼女に対して言った。
「あの約束、覚えておられますね」
「はい」
 彼女はそれに頷くしかなかった。それで流れは決していた。
「それではお手を」
 ラミーロの言うままに手を差し出す。彼はそこに指輪をはめた。それで全ては決まった。
「これでよし」
「全ては」
 アリドーロはそれを見て会心の笑みを浮かべた。そして二人の間に来てこう言った。
「只今殿下のお妃が決まりました」
「えっ!?」
 それを聞いてマニフィコ達はやや場違いとも思える声を出した。
「あの、今何と」
「ですからお妃が決まりましたと」
 アリドーロは済ました様子でそう答えた。
「冗談ですよね」
「いいえ」
 その言葉に首を横に振った。
「まさか」
「またまたそんな」
「私は嘘は申しませんよ」
「それでは私達は」
「残念でした」
 ティズベとクロリンデにはそう答えた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧