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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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すずらん亭と世界樹

スイングドアを押し開けてリーファが贔屓にしているという<<すずらん亭>>に入った。時間が時間なのか店内にはプレイヤーは一人もいなかった。奥まった窓際の席にリーファの向かいに腰掛ける。ちなみにキリトは隣だ

「さ、ここはあたしが持つから何でも自由に頼んでね」

「じゃあお言葉に甘えて……」

「あ、でも今あんまり食べるとログアウトしてから辛いわよ」

「キリトは食い意地が張ってるからなぁ」

「張ってないって!」

「どうだか」

SAOではないので、ここで食べ過ぎると現実に戻ってから食べれなくなる。まあ、一食ぐらい抜いてもいいと思うが

結局リーファはフルーツババロア、キリトは木の実のタルト、俺は木苺のケーキ、ユイはチーズクッキー。飲み物に香草ワインのボトルを注文した。ちなみにユイがチーズクッキーにすると言ったときリーファが目を丸くしていた

「それじゃあ、改めて、助けてくれてありがと」

緑色のワイン(見た目があれだが)を注いだグラスを持ち乾杯すると一気に飲み込んだ

「いやまあ、成り行きだったし……」

「キリトが飛行に失敗しただけだがな」

「……こほん。それにしても、えらい好戦的な連中だったな。ああいう集団PKってよくあるの?」

こほんって言葉でいうやつ初めてみた……

「うーん、もともとサラマンダーとシルフは仲悪いのは確かなんだけどね。領地が隣り合ってるから中立域の狩場じゃよく出くわすし、勢力も長い間拮抗してたし。でもああいう組織的なPKが出るようになったのは最近だよ。きっと……近いうちに世界樹攻略を狙ってるんじゃないかな……」

「それだ、その世界樹について教えて欲しいんだ」

「世界樹の上に行きたいんだよ」

キリトがそう言うとリーファは呆れながらも答えた

「……それは、多分全プレイヤーがそう思ってるよきっと。っていうか、それがこのALOっていうゲームのグランド・クエストなのよ」

「と言うと?」

「滞空制限があるのは知ってるでしょ?どんな種族でも、連続して飛べるのはせいぜい十分が限界なの。でも、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、<<妖精王オベイロン>>に謁見した種族は全員、<<アルフ>>っていう高位種族に生まれ変われる。そうなれば、滞空制限はなくなって、いつまでも自由に空を飛ぶことができるようになる……」

「オベイロン……オベロンの変化系か?」

「何だそりゃ?」

「シェークスピアの<<夏の夜の夢>>に登場する妖精の王です、パパ」

「まあ、それはおいておくとして、世界樹の上に行く方法っていうのは判ってるのか?」

「世界樹の内側、根元のところは大きなドームになってるの。その頂上に入り口があって、そこから内部を登るんだけど、そのドームを守ってるNPCのガーディアン軍団が凄い強さなのよ。今まで色んな種族が何度も挑んでるんだけどみんなあっけなく全滅。サラマンダーは今最大勢力だからね、なりふり構わずお金貯めて、装備とアイテム整えて、次こそはって思ってるんじゃないかな」

「軍団と言ったか?」

聞き逃せない単語があったので質問をするとリーファは怪訝そうな顔をして答えた

「そう言ったけど……」

「なら、一体ごとの強さはどれくらいなんだ?」

「三体までならなんとかなるらしいわ」

「そうか……」

「今では無理っていう意見が一般的ね。まあ、クエストは他にもいっぱいあるし、生産スキルを上げるとかの楽しみ方も色々あるけど……でも、諦めきれないよね、いったん飛ぶことの楽しさを知っちゃうとね……。たとえ何年かかっても、きっと……」

「それじゃ遅すぎるんだ!」

不意にキリトは押し殺した声で叫ぶ。眉間には深い谷。口元が震えるほど歯を食い縛っている

「キリト……わかってるから、少し……」

「どうしてそんなことが言えるんだよ!」

「いい加減にしろ!そうやって叫んで戻って来るんだったら、喉が枯れるまで叫んでるさ。今は落ち着け」

俺はキリトの肩に手をやってそう諭す。するとキリトは少し落ち着いたように見えた

「……驚かせてごめん」

キリトは謝罪をする

「でも俺……」

「俺たちは……だろ?」

俺の割り込みにありがとうとキリトは言って続けた

「どうしても世界樹の上に行かなきゃいけないんだ」

「何で、そこまで……?」

「人を……探してるんだ」

「詳しくは説明できないが、俺たちがこの世界に来たのもそれが理由だ」

俺はリーファに微笑む。リーファの瞳には疑問が浮かんでいた

「……ありがとうリーファ、色々教えてもらって助かったよ。ご馳走様、ここで君に会えてよかった」

「邪魔したな、リーファ」

俺とキリトは各自そう言って立ち上がろうとした

「ちょ、ちょっと待ってよ。世界樹に……行く気なの?」

だが、リーファは俺とキリトの腕を掴んできた

「ああ。この眼で確かめないと」

キリトは言葉で、俺はうなずくことで。リーファの問いかけを肯定した

「無茶だよ、そんな……。ものすごく遠いし、途中で強いモンスターもいっぱい出るし、そりゃ君も強いけど……」

そう言ってリーファは言葉を切る。そのあと、俺を驚愕させるような言葉を放ってきた

「じゃあ、あたしが連れていってあげる」

「「え……」」

俺とキリトの戸惑いの言葉が見事にはもる

「いや、でも、会ったばかりの人にそこまで世話になる訳には……」

「いいの、もう決めたの!!」

断固とした口調で言い放ったリーファは顔を背けた。その頬は赤く染まっていた

「あの、明日も入れる?」

「あ、う、うん」

「俺は問題ないが……」

「じゃあ午後三時にここでね。あたし、もう落ちなきゃいけないから、あの、ログアウトには上の宿屋を使ってね。じゃあ、また明日ね!」

混乱からまだ復活していない俺たちに向かって畳み掛けるようにリーファは言って右手を振った

「リーファ……」

メニュー画面を見ていたのであろうリーファは俺の呼び掛けに顔を上げた

「ありがとう……な」

そういうとリーファは笑みを浮かべうなずくと光りに包まれ、そして消えた

「どうしたんだろう彼女」

リーファが消えてしばらく、リーファが座っていた椅子を呆然と見ていたキリトがそうつぶやいた

「さあ……。今のわたしにはメンタルモニター機能はありませんから……」

「ううむ。まあ、道案内してくれるってのは有り難いな」

「マップならわたしにもわかりますけど、確かに戦力は多いほうがいいですね。それにしても……」

そう言うとキリトの肩からユイは飛び立ち俺の肩に座るとユイは言った

「にぃはリーファさんといい雰囲気でしたね」

ユイがそういうとキリトはニヤニヤし始めた

「おや〜リン。現実に彼女がいるってのにバーチャルで彼女を作ってもいいのかぁ?」

「えぇっ!?にぃには彼女がいたんですか?」

いつもより間延びした声でキリトが言うとユイが反応し、驚きの声を上げた

「リーファはからかっただけだ」

「それは……」

「リーファさんが可哀想です……」

「……何のことだよ。とりあえず、俺らも落ちるぞ」

「にぃ。彼女のことはどうなったんですか?」

「……ノーコメント」

顔が赤くなってるのを感じつつ俺は立ち上がりそっぽを向いた

「ほら、行くぞ」

未だニヤニヤしているキリトとユイを急かし二階へ上がる。そして、装備を解除し横になった

ユイは俺のベッドとキリトのベッドの間にある机に降り立つと僅かに俯きながら言った

「……明日まで、お別れですね、パパ、にぃ」

「……そうか、ごめんな。せっかく会えたのにな……。またすぐ戻ってくるよ、ユイに会いに」

「……あの……」

ユイは僅かに頬を赤く染めて言った

「パパとにぃがログアウトするまで、一緒に寝てもいいですか?」

ユイは俺たちを交互に見ながら言った

「どちらか一人にしろ、ユイ。俺は男と一緒に寝る趣味はない」

「……そうですか……」

しゅんとしてしまったユイを見てキリトは俺に言った

「俺は構わないぜ」

「俺は構う。まさかお前……こっちなのか?」

首に手首を当てる。某天使の鼓動で音が無いやつがやったように

「違うよ!?」

しばらくそこが笑いに包まれたのは言うまでもない

「じゃあ、な」

「おやすみなさい、にぃ」

そうして俺は眠りに就いた 
 

 
後書き
蕾姫「ふぅ……」

リン「ようやく書き終わったな」

蕾姫「いやぁ、最近やることが多くてさ」

リン「シークレットゲームをやってたもんな。十六歳のくせに」

蕾姫「……まあ、それは置いといて、ALOはさらっと流すつもりだったのになかなか進まない……」

リン「……はぁ。こんな作者でよかったらこの作品に付き合ってやってくれ」

蕾姫「リン……初めて俺に優しくなった……」


蕾姫「改めまして感想を待ってます。感想が作者の原動力です。これからもよろしくお願いします!」
 
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