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星河の覇皇

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第五部第三章 巨大戦艦その十


「だがこれは頼もしい。いざという時にはこれ等の艦艇が力になってくれるでしょう」
「ええ、それを期待しています」
「ところで」
 彼はここで話題を変えた。
「先程空母が出ましたが」
「はい」
 艦載機と聞き二人は顔を引き締めさせた。
「あの空母は一体どれだけの艦載機を搭載できるのですか。あの巨体からするとかなりの数を期待できますが」
 大体駆逐艦や護衛艦、パトロール艦が三〇〇メートル超であった。軽巡や砲艦、ミサイル艦が四〇〇近く。重巡で五五〇程か。それで普通の国の戦艦よりもずっと大型であった。掃海艇は二〇〇位である。戦艦で七〇〇程だった。高速戦艦も同じだ。
 だが空母はそれよりもさらに大きかった。優に一〇〇〇には達していた。ちなみに輸送艦や病院船、揚陸艦や工作艦等は特別であり三五〇〇を超えている。だがこれは戦闘用ではない。多くの人員や陸上兵器を収容する為である。後方にいる為装備といったものもない。
「はい、二〇〇機です」
 レイミーが答えた。
「二〇〇ですか」
 それは今までの空母の倍程の数だった。
「それだけではありません、他の艦種の艦載機の搭載量も多くしました」
「どの位ですか」
「はい、まずは駆逐艦や護衛艦で三機、ミサイル艦や砲艦も同じです」
「駆逐艦等にも搭載しているのですか」
「はい、大きめに設計したのはそれもあります」
「また凄いですね」
 これには素直に驚きを覚えた。まさかここまでとは思わなかったからだ。これも彼の予想以上であった。
「軽巡で六機、重巡で九機、戦艦で十二機です」
「かなり多いですね。接近戦で活躍してくれそうです」
「元々我々は数で戦うことを念頭に置いていますから。これ位は当然かと」
「そうです、それに驚かれるのはまだ早いですよ。あれがありますから」
「そうでしたね」
 八条はそれを聞き表情を一旦元に戻した。そしてあらためて笑った。
「いよいよあれが来ますよ」
 チャムは彼に笑って言葉をかけた。
「我が連合軍の象徴とも言える艦が」
「もうすぐ姿を現わします」
 レイミーの声はいささか興奮したものであった。彼もまた緊張と喜びを隠せなかった。
「いよいよか」
 八条もそれは同じであった。上を見上げそれを待っている。
「さあ来い」
 彼等は呟いた。
「そしてその巨体を見せるんだ」
 だが観衆や中央政府及び各国の首脳達は観艦式はもう終わったものと思っていた。
「帰るか」
「ああ、よかったな」
 帰り支度をはじめている者もいた。その彼等の上に何やら巨大な影がやって来た。
「!?」
 ふと上を見上げた。その瞬間彼等の顔は凍りついた。
「な、何だあれは!」
 それを見た誰かが叫んだ。
 それは艦とは思えない程巨大なものであった。輸送艦なぞ問題にならないものであった。
 優に十キロは超えていた。艦体は六つあり中央に巨大なメインと思われる艦体がある。その左右にそれぞれ戦艦のそれを思わせる艦体があり、そのすぐ下に重なる形でに四段の巨大な艦体がある。これは空母のものであった。上に三つ、下に三つつ並ぶ形になっていた。重なっている為一番上の甲板はなくなっており三段になっている。中央のメインと思われる艦体は他のそれよりも遥かに大きく段になっていた。艦橋は上の三つは上部にあったが空母のそれには下にあった。上のそれがまるで城塞の様に聳え立っているのに対して下のそれは比較的小さく、艦体の端にあった。
 艦首の部分にはやはり巨砲があった。それは砲艦のそれと比するのが馬鹿馬鹿しくなる程の大きさであった。
「化け物か」
 それは上の艦体に一つずつあった。その他にも装備は恐るべきものであった。見ればそれを意識してか甲板は巨砲よりもずっと奥にあり上下の距離もあった。おそらく互いに影響があるのを避けたのであろう。
 おそらく砲艦の巨砲をそのまま使っているのだろうか。いや、それよりも遥かに巨大なものであった。主砲は三つの艦体の上と横、そして空母体の下にあった。しかもそれは六連であり前に八つ、後ろに七つずつあった。下の空母体のそれも同じであった。なお中央のそれには前に十、後ろに九あった。そしてその体が一際大きい為砲塔は回転が可能であった。
 副砲もあった。それは他の五つの艦体の左右にあった。見れば戦艦の砲塔である。それは主砲の優に倍の数が備え付けられている。
 見れば艦の各部に監視塔があった。それで巨大な艦の見張りをするのだろう。その周りには夥しい対空ビーム砲座とミサイルランチャーがあった。
 主砲、副砲の上にもあった。他にも各部にビーム砲座やランチャーは備え付けられている。最早艦というよりは要塞であった。
「何なんだあれは」
「要塞じゃないのか」
 実際にそうした声も聞こえていた。
「いや、あれは艦だろう。姿形を見る限り」
「そうか?それにしては大き過ぎると思うが」
「いや、間違いない。あれは艦だ。ただ巨大なだけで」
 観衆も各国の首脳達もそれをようやく認識できるようになった。それでもまだ信じられなかった。
「長官」
 中国の李大統領が八条を呼んだ。チャムとレイミーを従えるように彼はキロモトのところへ行った。
「何でしょうか」
「あの艦だが」
 豪放磊落な気質の李も驚きを隠せないでいた。
「一体何なのかね。あれ程の艦は今まで見たことがないが」
「あれですか」
 八条はあえて悪戯っぽく笑ってみせた。
「ああ。どうやら要塞ではないようだが」
「はい、あれは艦艇です」
「そうか。一体何という艦かね。見たところ戦艦の様だが。いや」
 李はその艦の下の空母の部分を見て考えを改めた。
「空母かな。それにしては装備が凄いが」
「閣下、あれは超巨大戦艦です」
「超巨大戦艦」
 李はその小説で聞く様な言葉に一瞬だが表情を変えた。見たことも聞いたこともないようなことをはじめて感じた様な顔であった。
「はい、あれは連合の象徴とも言える艦です」
「そうか。私は戦艦がそうだと思っていたが」
 彼も事前に話を聞いていた。連合軍の象徴とも言える艦を開発しているというのは聞いていた。だがそれは大型の戦艦であり、これ程のものとは夢にも思わなかったのだ。
 それも当然であった。この艦の開発は連合大統領であるキロモトと八条、財務長官トラブゾン、そして一部の軍の高官しか知らなかったのだから。
「それにしても凄い装備だな。艦載機だけでもどれ位あるのやら」
「一万機程です」
 レイミーが答えた。
「そうか、それ位はあるだろうな」
 普通なら一笑に付す話だが今回は信じることができた。それだけの大きさがあったからだ。
「それだけでかなりの戦力だが」
「それで終わりではありませんよ」
「そうだろうな。これ程までの武装だと嫌でもわかる」
 巨大戦艦は威容を見せ付ける様に空を飛んでいた。そしてその姿を連合、いや全銀河の者達に焼き付けたのであった。
 観艦式は成功に終わった。連合はその目論見通り連合軍の力を内外に誇示することができた。その多くの艦、特に巨大戦艦は各国の注目を集めることとなった。 
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