星河の覇皇
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第一部第二章 銀河の群星その六
「ガンタース要塞群が陥とされた場合の防衛はそうなりますか?絶対に陥ない要塞などないのですぞ」
「・・・・・・・・・」
八条は何も言えなかった。エウロパは今はサハラに目がいっている。そして彼等には侵略の意図は無い。だが外交や謀略により連合の内部を撹乱したうえでガンタースを陥落させたなら・・・・・・。連合は敗れはしないまでもかなりの被害を受けるであろう。これも以前より危惧されてきたことだ。実際にエウロパからの撹乱はこれまで何度もあり中には彼等と結託していると思われる宇宙海賊や市民団体もあった。
「そうした時に最も有効に動けるのは統一された軍隊です。今までのような各国ごとに分かれたバラバラの軍ではなく」
今までの連合は軍人や艦艇の数こそ多いが烏合の衆と呼ばれていた。それはエウロパやマウリアのような中央からの統制が無いからだ。
「おわかりでしょう、外部からの敵に備える為我々は強力な軍を持たなければならないのです」
「はい・・・・・・」
八条はようやく頷いた。
「しかしいざ作るとなるとかなり難しいですよ」
彼は言った。
「反対しないまでも難色を示す国は多いでしょうし」
「それは折込済みです」
キロモトは言った。
「何せ我々は実に多様かつ雑多な集まりですから」
彼は笑っていた。何処か自信のある笑いだ。
「しかしですね」
彼は顔を引き締めた。
「困難だと思われることも実際にやってみないとわからないものなのです。そして実際には意外なところに解決方法があるものなのです」
「それは!?」
八条は再び問うた。
「例えば最初に何処かの国が参加を表明するとかね」
彼はそう言うと八条の顔を見てニヤリ、と笑った。
「それが発言権の強い国ならなおよし」
「大統領、貴方はまさか・・・・・・」
八条はキロモトの顔を見た。その顔には笑みが戻っていた。
「そうです、まずは貴国に参加して頂きたいのです」
彼は単刀直入に言った。
「貴国は中央政府に対し友好的です。しかも位置は丁度この地球の側にある。そして他の国からの評判もいい」
「しかしだからといって・・・・・・」
彼は少し口篭もっていた。
「そちらの国内世論は大丈夫だと思いますが。中央政府に対しては比較的好意的ですから」
「それはそうですが」
「総理には私からもお話しておきます。それならば問題ないでしょう」
「いえ、そういう問題ではありません」
彼は言った。
「閣下もご存知でしょう。確かにそれで設立は出来るかも知れません。しかし軍はそう簡単にはいかないものなのです」
「といいますと?」
彼はとぼけたふうに尋ねた。
「設立してから暫くは柱となるものが必要です。軍を主導出来るような。それから指針をつければ後はシステムが動いてくれますが」
「つまり基礎を固めるべき指導者がまず必要であると」
「そうです、これはどの組織にも言えることですが」
「成程」
キロモトは八条の言葉を最後まで聞いて頷いた。
「それならば最適の人材がいますよ」
「誰ですか?アメリカのマクレーン提督ですか。それとも中国の劉提督でしょうか」
二人共名の知られた人物である。軍人としてだけでなく人物の評判もいい。
「確かにあの二人も悪くはないですね。ですが」
キロモトは言葉を続けた。
「私は彼等以上の人材を知っているのです」
「それは誰ですか!?」
八条はまた問うた。
「今私の目の前にいる方です」
そう言って悪戯っぽく笑った。
「な・・・・・・」
八条はキロモトのその言葉に対し絶句した。
「貴方ならば軍を主導出来ると信じています。期待していますよ」
「閣下、冗談は止めて下さい」
八条は言った。
「私は若輩の身に過ぎません。それに軍歴があるといっても僅かです。そのような人物に新しく生まれた軍の統率が出来ると思われるのですか」
「はい」
キロモトは答えた。
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