| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

プライド×罰則=絶対に負けられない戦いがそこにある……!

 俺と雪蓮が出会ってから十三年の歳月が経った。
 この世界に転生して十八年。やっとこさ俺にもこの世界の詳細が掴めてきたところだ。
 どうやらこここは『三国志』であって『三国志』ではない世界らしい。時間軸もおかしいし、武将の性別からしてあり得ないことになっている。なんでまたこんなおかしな世界に紛れ込んじまったんだろうな……。
 話を戻そう。
 この十三年の間でいろんなことがあった。十歳のときに母さんと一緒に孫家の城に住むことになって、そこで祭や冥琳と出会った。冥琳は雪蓮と同い年らしく雪蓮が素直な気持ちを吐き出せる数少ない人物だ。祭は一言でいうとなんか豪快だった。貫禄があるというかなんというか……ちなみにこのことを本人に言ったら良い具合の笑顔で『雹霞……殺されたいのかの?』と剣を突き付けられた。いやはや女というものは恐ろしいね(泣)
 十五歳のとき、母さんと伯母さんが死んだ。
 袁術の命令で劉表を攻めに行った際に、黄祖の部下が放った矢に撃ち抜かれて戦死したのだ。そして、弱体化した孫呉の軍は袁術に吸収され実質的な権力を失ってしまった。
 悔しかった。何もできずただただ家族の死を受け入れてしまった自分が不甲斐なかった。
 絶対に袁術を倒し、孫呉を復興させる。
 その願いを叶えるために、俺達は袁術の客将という形で日々を生きているのだ。

 ―――――そして、今現在は―――――

「雪蓮! 雹霞! またこんなところでサボってたのね!」
「げっ、冥琳! 雹霞、とっとと逃げるわよ!」
「ちょっと待て雪蓮! なんで俺まで巻き込むんだよ!? 元はと言えば雪蓮が『暇だから蹴鞠でもしましょー』って言ってきたからだろう!?」
「覚えがないわ」
「このクソアマ――――――――――!!」
「待ちなさい、二人共!」

 ―――――鬼の形相をした冥琳から全速力で脱走していた。
 あーもう! なんでこういつもいつも巻き込まれるんですかねぇ!? お転婆姫も少しは俺に平穏を与えてくれたっていいだろうに!
 
「穏! 城にいる全兵士に伝えろ! ただ今から最初に孫策と孫瑜を捕まえたものには褒美が与えられるとな! 武器の使用も許可する!」
「はぁ~い☆ わかりましたよ~ぅ」

 マズい……冥琳め、実力行使に出やがったな。いくら俺と雪蓮が常人より強いと言っても全兵士、しかも武器装備となるとナカナカに厳しい。リアル鬼ごっこもびっくりな状況だ。
 そんな不利……というか生命的な意味で絶体絶命の中、隣で走っている我が従姉とはというと―――――

「絶体絶命の状況の中、か弱き女の子が己の体一つで生き延びていく……うん! 燃えてきたわ‼」
「…………はぁ」

 右手の拳を握りしめ、意気揚々としていた。こいつ、悪気とかそういうの一切持ってねぇな。質が悪すぎる。
 
「いたぞ! 孫策様と孫瑜様だ!」
「ちっ、もう来やがったか……」

 城の中にある鍛錬場。そこに差し掛かったところで約十人の呉軍兵士に囲まれた。手にはそれぞれ剣や槍などの武器を持っている。

「すみません、お二人共。主に刃を向けたくはないのですが……」
「あら、そういうなら見逃してくれてもいいのよ?」
「万が一逃がした場合は、二か月間の減給が待っているんです」
「地味に痛いペナルティだな、おい」

 流石は周公瑾、人の扱いというものを心得ているようだ。
 チャキ、と剣を構えた兵士が徐々に近づいてくる。俺は雪蓮を庇うように一歩前へと踏み出した。

「雹霞……?」
「下がってろ。ここは俺一人で十分だ」
「でも……」
「俺にも女の子守るぐらいの格好をつけさせてくれよ。たまにはさ」
「……わかったわ。それじゃ、よっろしっくねぇ~♪」
「え、あ、ちょっ!」

 折角の良いムードをぶち壊すだけぶち壊して逃走した雪蓮。あのクソアマ……絶対ゆるさねぇ……!
 しかしまぁ、まずはこいつらをどうにかしましょうかね。

「それでは……参ります!」
『いざ!』

 十人が一斉に俺に襲い掛かる。単体では勝てないから集団戦法で来たか。頭のいい連中だ。
 とりあえず最低限の動きで武器をかわし、当たりそうなものは柄の部分を弾いて軌道を変えさせてもらった。
 結果、無傷で立っている俺。ポカン、と口を開けて俺を見ている兵士達という構成が出来上がってしまっている。

「よっと(ヒュンッ)」
「うわっ」

 ボーッとしていた兵士の一人から偃月刀を奪い取る。ふむ、銘柄はよくないがなかなか上等な代物だな。
 俺はトントンッと軽いステップで兵士たちから離れると、偃月刀の切っ先を彼らに向けた。

「さて、これからどうする? 大人しく俺を逃がすか、それとも向かってきて返り討ちを喰らうか……選ばせてやるよ」
「……わ、我らとて武人の端くれ!」
「一度刃を向けた以上、最後まで戦います!」
「…………はぁ」

 大きくため息をつく。ったくよぉ……いい根性してるぜまったく。……ま、嫌いじゃないけどな。
 兵士達が再び武器を構える。俺に武器を奪われた一人は、懐から三節棍らしきものを取り出していた。あいつ、長物使いか。俺と同じだな。
 
 そして、それぞれのプライドと罰則をかけた男達の戦いが始まった。










 あれ? なんか当初の目的とは違う展開じゃねぇか……? 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧