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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十四話 処刑

               第四十四話 処刑

ラミアとアクセルは早速大空魔竜の営巣に入れられた。そのうえで取調べがはじまった。
「どうなんだ?」
「駄目です」
ボルフォッグがルネの問いに首を横に振って答える。
「一言も、ですか」
「そうかい、やっぱりね」
ルネもそれを聞いても驚かない。納得した顔だった。
「そうだと思ったよ」
「左様ですか」
「多分このまま何も喋らないね」
「銃殺になるとしてもですか」
「そんなのはもう覚悟してるんだろうね」
ルネはまた当然といった感じで述べる。
「スパイだったんだからね」
「そうですか」
「どちらにしろ銃殺は免れないね」
これはもう避けられなかった。
「それで話は終わりさ」
「どうも好きになれませんね」
ボルフォッグは珍しく私情を述べた。
「そうした。処刑というものは」
「仕方ないさ」
ルネも本音はそうであったが同時に受け入れてもいた。
「何度も言うけれどスパイなんだからね」
「それはそうですが」
「もう話はこれで終わりだよ」
ルネはここで話を打ち切った。
「わかったらトレーニングに行くよ」
「わかりました。それでは」
二人はトレーニングに向かう。その間にも取り調べは行われる。しかし二人は何も話さず結果として話はスムーズに進んでいた。
「やっぱり何も言わないか」
「そうだ」
リーがブレスフィールドにリーの個室で話していた。いささか剣呑なムードの中で。
「あのまま銃殺に甘んじるつもりらしいな」
「どうもわからないな」
ブレスフィールドはそれを聞いて言うのだった。
「わからない?」
「そうだ。今まで二人は結構我々と一緒に戦ってきたな」
「スパイとしてな」
リーの言葉の調子はきつい。
「それがどうしたのだ?」
「スパイだけか」
だがブレスフィールドはここでまた言う。
「個人的な感情はなかったのか」
「ふん、あるものか」
リーはそれをすぐに一蹴した。
「あの連中にそれが見られたか?」
「わしは見たぞ」
彼はここで言った。
「ちゃんとな」
「それは貴様の目がおかしいだけだ」
リーはそう言い捨てた。
「何故そう見えるのだ」
「わからないのはまだまだ御前さんが若いだけだ」
「何っ!?」
「もう少し見ていればわかるだろうな」
ブレスフィールドはまた言う。
「あの二人の心ってやつがな。よくわかるだろうな」
「そんなものわかりたくもない」
リーはそんなものと言ってすぐに否定した。
「どちらにしろあの二人は銃殺になるのだしな」
「そう上手くいくかな?」
ブレスフィールドはそれも否定する。
「下手をすれば逃げられるぞ」
「そんなことは有り得ない話だ」
今度はリーの否定であった。
「この厳重な警戒の中でどうして逃げられるというのだ」
「それはそうだがな」
「だからだ。確実に銃殺になる」
断言までしてみせる。
「安心しているのだ」
「言うな。若しそうならなかったらどうする?」
「どうするか?」
「そうだ。賭けるか?」
「私は賭け事はしない」
リーは真面目な顔でそれを断ったきた。
「だからだ。何しない」
「そうか。詰まらんな」
「そもそもだ」
今度はブレスフィールドを睨んできた。
「貴様等にしろ海賊の筈だが」
「さてな」
「この戦いが終わったら覚えてことだ」
睨みながら言葉を続ける。
「必ず捕まえてやるからな。この私の手で」
「できるのならな」
二人はそんな話をしていた。しかし話は複雑な方向にいってしまっていた。
「またか!?」
「ここでかよ!」
皆連邦軍からの話を聞いて思わず言うのだった。
「そうだ。済まないが」
ブレックスが彼等に話している。
「早速で申し訳ないが博多に向かってくれ」
「おっ、博多ラーメン食えるな」
「馬鹿っ、それどころじゃねえだろうが!」
「そうよ!」
宇宙太と恵子が勝平に言う。
「またシャドウミラーが出たんだろうが!」
「それで何で博多ラーメンなんて余裕が言えるのよ」
「それもそうか」
「そうかじゃねえよ」
「全く。何考えてるのよ」
「とにかくだ」
グローバルが言う。
「シャドウミラーが今度は博多に出たのですな」
「そうだ」
ブレックスはグローバルに答えた。
「今連邦軍が止めている。しかし数が多い」
「だから」
「そうだ。君達にすぐに救援に向かって欲しい」
「しかしそれですと」
ミサトがブレックスに言う。
「あの二人は」
「二人は今何処にいるのかね」
「呉の連邦軍の基地です」
流石に何時までも艦内に抑留するわけにはいかなかったのだ。
「そうか。なら問題はないな」
「では我々が博多に行っている間は」
「そうだ。取り調べは続けるがその間は裁判は行わない」
つまり死刑を延期するということであった。
「それでいいな」
「わかりました。ですが」
「葛城三佐、何かあるのかね」
「はい、私としましては」
ブレックスに問われて答える。
「あの二人は警戒を緩めてはいけないと思いまして」
「警戒は充分ではないのかね?」
「いえ、それは」
だがそれはミサトにとっては甘い予想であった。
「あの二人に関しては」
「そうか。しかしだ」
だがブレックス、いや連邦軍にも事情があるのだ。
「今君達に博多に行ってもらわないといけないのはな」
「戦略的な理由からですね」
「そうだ。だからこそ頼む」
あらためて彼等に言うのであった。
「すぐにな。博多に向かってくれ」
「わかりました」
グローバルが彼の言葉に答えた。
「ではすぐに博多へ」
「頼む。その間二人の警護は厳重なものにしておいてくれ」
「はい、それでは」
「すぐに博多に」
こうしてロンド=ベルは博多に向かった。しかしここですぐに二人が動くのだった。
「行ったな」
「ああ」
アクセルはラミアのその言葉に頷いた。
「どうやら博多で陽動をしてくれたらしいな」
「それで奴等が行ったということだな」
「そうだ。それではすぐに動こう」
彼等は早速立ち上がり営倉の扉を開けた。まるで鍵なぞかけていなかったかのように。
「シャドウミラーに戻るぞ」
「うむ」
こうして二人は脱走を開始した。しかしロンド=ベルはまだそれを知らなかった。
博多に到着したロンド=ベルはすぐにシャドウミラーの軍勢と戦闘に入った。勇とヒメが最初に敵の中に突っ込んで行く。
「流石にグランチャーはいないな」
「そうだね」
ヒメは勇のその言葉に頷きながら攻撃を敵に放つ。
「いるのは連邦軍のばかりだよ」
「どうやらあちらの世界からマシンを持って来ているだけか」
「残念だがそれだけではない」
エキドナが二人に答えてきた。このシャドウミラーの軍勢を率いているのは彼女なのだ。
「どういうことだ!?」
「我々は既にこちらの世界に慣れ親しんできている」
「だったらどうなんだ?」
「貴女の話、わからないよ」
「こちらの技術も学んできているということだ」
そう二人に述べた。
「従ってだ」
「まさか私達のも!?」
「馬鹿な、グランチャーは」
「その通りだ」
しかし彼女は言う。
「既に用意してもある」
「馬鹿な、抗体を持っている人間までか」
「どうしてそんなことまで!?」
「クローンだ」
答えはそれであった。
「一人抗体を持っている人間を手に入れれば後は容易い」
「おいおい、ここでもクローンかよ」
ムウはそれを聞いて嫌な顔を見せた。
「どうやらあんた達の戦力の秘密はそれみたいだな」
「その通りだ。我等は生命を作り出すことができる」
エキドナはムウに対しても言うのだった。
「どれだけでもな。全ては我等が理想の為に」
「おいおい、また随分とぞっとしない話だな」
「理想があれば何でも許されるのかよ」
「少なくともあちらさんはそう考えてるみたいだね」
ケーン達三人は彼等を見て言う。
「どうやら俺達の相手は」
「またしても狂信者ってわけか」
「まっ、慣れてはいるけれどね」
「何とでもいうがいい」
エキドナは三人の言葉を受けても平気な様子であった。
「所詮俗物に我々の理想はわかりはしない」
「それが貴様の理想であるかはわからんがな」
マイヨがここまで聞いてエキドナに告げた。
「何っ!?」
「人形は踊らされるもの」
彼はまたエキドナに言った。
「そしてそれには安易に気付かないものだ」
「ふん、戯言を」
エキドナはここではマイヨのその言葉を切り捨てた。
「その戯言を言ったまま死ぬがいい」
「おっ、来たぜ来たぜ!」
「す、凄い数だぞ」
ガナンとゴルがグランチャーが出たのを見て声をあげる。
「まあ数だけだがな」
「狙いを定めていけば問題はないね」
ジンとミンはあまり騒いでいない。そのかわり余裕を見せている。
「狙い!?馬鹿を言うな」
グン=ジェムは豪快に笑って今のミンの言葉を否定した。
「ではどうするのだ!?」
「グン=ジェムよ、そこを聞きたい」
その彼にケルナグールとカットナルが問うた。
「決まっている。当たるを幸い撃ちまくるのよ!」
「・・・・・・美しくない」
ブンドルはそれを否定した。憮然とした顔で。
「その様な戦いは私の好みではないのだが」
「いえ、それも一つの手ね」
しかしタリアがそれに乗った。
「マドモアゼルレミー、どうして」
「!?私はタリアよ」
これはブンドルのミスであった。
「声だけで判断しない方がいいわよ」
「くっ、しまった」
「おいおいブンドルよ」
「その間違いは貴様らしくもないぞ」
二人がまたブンドルに突っ込みを入れた。
「しっかりしろ」
「貴様も他人事ではあるまい」
「・・・・・・確かに」
しっかりと心当たりのあるブンドルであった。
「しかしだ。そうした攻撃はどうも」
「だが敵の数は多い」
「合理的ではあるぞ」
二人もまたグン=ジェムやタリアと同じ意見であった。
「それにグランチャーには下手に狙いを定めて一機一機撃墜するより」
「まとめて始末するのも確かによい方法だぞ」
「それもそうか。それでは」
ブンドルも遂に乗ることにした。
「やるか。それでいいのだな」
「うむ」
「それではな」
こうして三人の艦も広範囲の攻撃に移った。ロンド=ベルは機動力を活かそうとするグランチャーに対して広範囲の攻撃でまずは数を減らしにかかった。タリアはその中でミネルバに対して射撃用意に入った。
「あれをやるわ」
「あれですか」
「ええ」
アーサーに対して答える。
「ここはあれが一番よ」
「そうですね。それじゃあ」
「タンホイザー発射用意!」
タリアはすぐに攻撃を命じた。
「攻撃目標前方の敵部隊!」
「了解、攻撃目標前方の敵部隊!」
メイリンがそれを受けて命令を復唱する。
「前方にいるマシンはすぐにどけて!」
「攻撃コース、開けて下さい!」
メイリンはまた指示を伝えた。
「了解!」
「わかった!」
それを受けてそこにいたミゲルとハイネが動いた。彼等はミネルバの護衛に回っていたのだ。
これでもうミネルバの攻撃を阻む者はいなかった。後はもう攻撃を仕掛けるだけであった。
「攻撃準備完了しました」
またメイリンが伝える。今度はタリアに対して。
「よし、撃てーーーーーーっ!」
今まさにミネルバに迫らんとするシャドウミラーのグランチャー部隊にそのタンホイザーが放たれる。それは彼等がその機動力を発揮するより速かった。瞬く間に数十のグランチャーが光の中に姿を消したのであった。
それが終わると生き残った敵にミゲルとハイネが襲い掛かる。そうして残った敵を掃討していく。
戦局はミネルバのタンホイザー発射と共にロンド=ベルに優勢となった。彼等は勢いに乗り敵を倒していく。連邦軍も彼等の動きと合わせて攻撃を仕掛けていた。
それはエキドナも見ていた。しかし彼女はそれを見ても冷静なままであった。そしてその冷静な顔で自分が率いる軍に指示を出したのであった。
「もういいな」
「それでは」
「そうだ。下がれ」
こう指示を出したのであった。
「それにもう頃合いだ」
「頃合い!?」
「そう、頃合いだ」
答えずにこう言うだけであった。
「わかったな。もう戦う必要はないのだ」
「左様ですか。それでは」
「うむ。では全軍撤退に移る」
また指示を出した。
「このままな」
「わかりました」
シャドウミラーの撤退は素早くロンド=ベルの面々から見れば実に呆気無いものであった。彼等もそれを見て拍子抜けしてしまった。
「何だ、こりゃ」
「もう終わりなのか」
キースとシローが言う。
「案外今回は諦めが早いっていうか」
「こんなこともあるのか?」
「ただ単に作戦が失敗しただけじゃねえのか?」
モンシアはあまり深く考えてはいない。
「それで逃げただけとかよ」
「逃げただけか」
バニングはその言葉を聞いて考える顔になった。
「そうかもな」
「少佐もそう思われますか?」
「ああ。ただ」
彼はシナプスに応えて言う。
「逃げたのが誰かだな」
「誰か?」
「とりあえず呉に戻るべきだ」
彼はまた言った。
「ここはな」
「そうですね。とりあえずは」
それにクリスが頷いた。
「戦いも終わったことですし補給にも」
「まああまり弾薬も減っていないけれどね」
バーニィは自分のザク3改の状況を述べて言った。
「それでも。あの二人がいるし」
「そうなのよ。変なことしていなかったらいいけれど」
「そうだ。だからこそすぐに戻るぞ」
またバニングが言う。こうして彼等は一旦呉まで帰るのだった。しかし呉に帰ったロンド=ベルの面々は嫌な予感が当たったことを知ったのだった。
「何っ!?」
「まさかとは思ったけれど」
皆その話を聞いて唖然とした。
「逃げたって!?」
「この基地から」
「・・・・・・そうだ」
基地司令が彼等に答える。
「信じられん。だが」
「おい、呉基地ってあれだろ!?」
キースが驚きを隠せない顔で皆に対して問う。
「連邦軍の日本にある基地の中で横須賀と並ぶ基地なんだよな」
「ああ、そうだ」
コウが彼に答える。
「警護もかなりのものだ」
「そうだよな。それでどうして」
「あっさりと逃げられるなんて」
「どういうことなんだよ、これって」
「やはりな」
だがバニングはそのことに何の疑いも抱いてはいなかった。予想していたと言わんばかりである。彼は今までの経験からわかっていたのだ。
「俺の考えた通りだ。逃げたか」
「少佐、わかっていたんですか」
「嫌な予感はしていた」
そう述べる。
「まさかとは思ったがな」
「それで司令」
皆は司令官に対して問うた。
「二人は何処に」
「それはわからない」
司令官もそこまではわからない。首を横に振るだけであった。
「だが。二人の脱走により多くの兵士が傷ついた」
「死者は!?」
「それがいなかったのは幸いだ」
「そうですか」
ルリはそれを聞いて頷いた。
「おかしいですね」
「おかしい!?」
「はい」
ルリはアキトの言葉に頷いた。
「本来ならば脱走の際基地を破壊していきます」
「あっ、そういえばそうね」
それにミレーヌが気付いた。
「工作員だったらそうするわよね、やっぱり」
「何か気紛れってやつでもなさそうだな」
バサラもそこに気付いた。やはりこの二人は鋭い。
「だったら何なんだ?」
「殺したくないとかじゃないわよね」
ミレーヌはまた言った。考えながら。
「いや、若しかしたら」
「そうかも知れないな」
しかしバサラがミレーヌのその考えを肯定する。
「あの時だってそうだったんじゃないのか?」
「あの時って?」
「だからこの前だよ」
バサラはまた言う。
「ほらよ、ハガネの」
「この前のあれね」
「そうだよ。その時にあっただろ」
彼はハガネの時の二人の話をはじめた。
「何でハガネの中で自爆しなかったんだ!?」
「それはハガネを乗っ取る為だったんじゃないの?」
「それもあったでしょうね」
それにミリアが頷く。
「確かに工作員を送り込ませていたし。けれどよ」
「けれど!?」
「どうせならアクセルかラミアだけが外に出ていればよかったじゃない」
そのことを指摘するのだった。
「けれどそうしなくて二人共出ていた」
「片方が中で工作活動に参加していたらハガネはマジで危なかったな」
フォッカーもそれに気付いた。
「しかしあいつ等は両方いたよな」
「そうですよね」
マックスがそれに頷いた。
「何でなんでしょうか。しかもすぐに自爆しなかったし」
「すぐにかよ」
「ほら、セレーナに落とされた時」
マックスはその時のことを柿崎に告げた。
「まだ意識あったよね」
「ああ」
「その時に自爆できたのに」
彼はそのことに気付いたのだ。気付けば話が早い。
「どうしてそれをしなかったんだろうね」
「やっぱり。何か考えがあるのかな」
「どうかな」
だがそれに隼人が異議を述べる。
「ただたまたまということも感じられるな」
「そうだよな」
それに輝が応えた。彼はどちらかというと隼人に賛成している。
「その可能性もある」
「しかもだ。あの二人は考えが読めない」
隼人はさらに言葉を続ける。
「まさに人形だ。だが」
「だが?」
「人形は壊れるものだな」
彼はそこを指摘した。
「壊れているとしたら」
「ハガネからの行動にも何か合わさる」
「そう言いたいんだな、隼人」
竜馬と武蔵、弁慶が彼に問うた。
「ああ。何か俺もあの二人に変化があるんじゃないかと思えてきた」
話しているうちにそう思えてきたのだ。
「どういう事情か知らないがな」
「だが今は二人は敵よ」
ミチルが言うのは現実であった。
「だから。敵として対峙することにはなるわよ」
「それはわかってるさ」
竜馬はミチルのその言葉に頷いた。
「それでも。変化があるのなら」
「何か起きるかも知れないのね」
「ああ。何だかんだで一緒に戦った仲間だ。それを信じたい」
これは彼だけでなく多くの者の考えでもあった。
「例え裏切られていてもな」
「だが。シャドウミラーは今もなお強大な敵だ」
クワトロはあえてそれを指摘した。
「それは忘れないでおこう」
「へっ、もう強大な敵は慣れてるさ」
カイはかつての様に軽口を叩く。
「飽きる程出て来たじゃねえか、今まで」
「カイ、それを言ったら」
ハヤトがいつもの様にその彼に突っ込みを入れる。
「何にもならないだろ」
「しかしカイの言う通りだ」
リュウがカイをフォローする。
「敵が強いからといってそれは理由にはならないぞ」
「むしろ楽しまないとな」
スレッガーはあえてリラックスさせるように皆に言った。
「あまり深刻に考えても駄目だぜ」
「それはそうですけれど」
しかし真面目なセイラは少し違っていた。
「ただ。二人がこれから私達に対して何をしてくるか」
「それだな」
「そうだな」
セイラの今の言葉にアポリーとロベルトが頷いた。
「既にかなりの情報が流れている」
「それをもとに何をしてくるか」
「やっぱり消すしかねえじゃねえか」
「だよな」
ジェリドとヤザンは実に彼等らしい結論を出した。
「こっちに向かって来るんならよ」
「容赦する必要はねえよな」
「待ちなよ」
しかしそんな彼等をライラが止める。
「それはよくないって話じゃないか。だからここは」
「じっくり見ろってか?」
「この俺達に」
「そういうことさ。わかったね」
「ちぇっ、柄じゃねえんだがな」
「甘い話だぜ。まあ今は従ってやるか」
「そういうことさ。あんた達も物分りがよくなったじゃないか」
ライラは二人が一応は納得したことにまずは満足した。そうして話を続けさせる。
「じゃああの二人には説得でもするんだね」
「致し方ない場合以外にはな」
アムロが彼女に答えた。
「そうするつもりだ」
「わかったよ」
そしてライラはその考えに賛同した。
「じゃそれでいくといいさ」
「反対はしないのか」
「あたしだって空気は読むさ」
笑ってこう言葉を返した。
「だからだよ。それに」
「それに?」
「そういう甘いのも悪くないからね」
笑みが穏やかなものになっていた。
「乗らせてもらうさ。是非ね」
「悪いな」
「礼はいいさ。それはともかく」
「ああ」
話は続く。
「またすぐに来るだろうね」
「そうだろうな」
シャドウミラーの性質を考えればこれはすぐに察しがいった。
「なら機会はある」
「それなら」
「では決まりだな」
ブライトはここで話をまとめた。
「次の戦いに備える。いいな」
「了解っと」
カイがブライトのその言葉に応える。
「それじゃあ今は休むとしますか」
「何かそんなに軽くていいのかしら」
真面目なエマはどうも納得しかねていた。
「確かに悩んでも何にもならないけれど」
「だったら動くしかないさ」
アムロがエマに言う。
「余計にな。けれど動く必要のない時は」
「休むべきだということですね」
「その方がよく動けるものさ」
アムロの言葉は正論であった。
「わかったら。それじゃあ」
「わかりました。私も」
「エマ大尉」
フォウが彼女に声をかけてきた。
「何か飲みませんか」
「そうね。それじゃあビールでも」
彼女も飲む方である。
「一緒に飲まない?」
「そのつもりで声をかけたんですよ」
フォウは笑って言葉を返してきた。
「是非共」
「わかったわ。それじゃあ」
「ナタルもどうかしら」
「私はお酒は」
マリューの誘いにバツの悪い顔を見せる。
「駄目ですので」
「そうだったわね。じゃあジュースね」
「はい」
お菓子はいいナタルであった。
「ではグレープジュースを御願いします」
「葡萄なのね」
「最近それに凝っていまして」
やはりナタルは甘党であった。
「それで御願いします」
「わかったわ。それじゃあそれでね」
「はい」
「私はワインにするわ」
横からジェーンが言ってきた。
「少佐の葡萄を聞いてね。それにしたくなったわ」
「ほう、ワインか」
ミナはワインと聞いて顔を向けてきた。
「いいな。では私もそれでな」
「そう。それじゃあ一緒に」
「あら、ワインなの」
マリューはそれを聞いてあまり機嫌のいい顔にはならなかった。
「ビールじゃなくて」
「いいじゃない、飲めるのなら」
そのマリューにミサトが声をかける。
「何だったならユンに教えてもらった爆弾酒にしましょうよ」
「爆弾酒!?」
「そうよ。まずはね」
ミサトは説明をはじめた。
「ビールを大ジョッキに一杯に入れてね」
「ええ」
「その中にこれまたコップに一杯に入れたウイスキーを入れるのよ。これが爆弾酒」
「何だ、そりゃ」
ジャンはそれを聞いて思わず声をあげた。
「とんでもねえ酒があるんだな」
「かなり酔えるらしいわよ」
ミサトはさらに説明する。
「韓国じゃ名物なんですって」
「何かよくわからない国だな」
「そうですね」
リーアムとジョージはそれを聞いて囁き合う。
「けれど飲むとしたらそれよ」
「それなんですか」
「何か」
二人はミサトに言われてもまだ納得しかねている。
「悪酔いしそうで」
「そんなチャンポンは」
「大丈夫大丈夫」
ミサトにとってはそうである。
「多少悪酔いする方がいいしね」
「そうね」
そしてマリューも彼女と同じ考えであった。
「それじゃあユンちゃんのその爆弾酒を」
「早速飲むとしますか」
「何かすげえ話になってねえか?」
エドはミサト達のやり取りを横で聞きながら呟く。
「何でそんなとんでもねえ酒があるんだか」
「俺達は俺達で飲めばいい」
ミハイルが彼に言ってきた。
「テキーラがあったな」
「ああ」
「ではそれを飲もう。楽しくな」
「そうだな。おい」
彼はジャンやカナードに声をかけた。
「皆で楽しくやろうぜ」
「了解」
「といっても俺は」
「子供でもいいんだよ」
そんなことにこだわるロンド=ベルではない。
「どんどん飲めよ。いいな」
「そうなのか」
「じゃあ僕もですか?」
「それはそうだろう」
プレアにモーガンが答える。
「どうせだ。飲んでおけ」
「はあ」
「では私は一人でやるとしよう」
ユーレクはそっとその場を去ってバーに向かった。
「その方が落ち着く」
「じゃあグリアノスさん」
「私達も」
「私もなのか」
グリアノスはフィリスとエルフィに声をかけられて複雑な顔をしていた。
「年齢がかなり離れているが。それでもいいのか」
「いえ、こちらこそ御願いします」
「是非」
ジャックとシホも彼に言う。
「ザフトのエース中のエースと飲めるなんてこちらこそ」
「是非共」
ルナマリアとレイもそこにいた。彼等もグリアノスと一緒に飲みたかったのだ。
「ただ。いないな」
「あっ、そうですね」
ここでディアッカとニコルは周りを見てあることに気付いた。
「シンか」
「そうだ。あいつは何処だ」
アスランにイザークが答える。
「折角グリアノスさんと一緒なのにあの馬鹿」
「何処なのやら」
何故か一緒にいるメイリンとアーサーも顔を顰めさせていた。しかしここでハイネが皆に答えた。
「カガリと一緒だ」
「何っ!?」
ミゲルがそれを聞いて顔を顰めさせた。アスランもまた。
「また喧嘩なのか」
「違うみたいよ」
だがルナマリアが皆に言う。
「違うのか」
「キラと三人一緒らしいわ」
「キラとか」
アスランはそれを聞いて怪訝な顔になる。
「その組み合わせもどうなのかな」
「心配なのね、やっぱり」
「あの二人だからな」
アスランは言う。
「まあ最近キラも変に熱い時があるしな」
「熱いっていうかあれはよ」
ディアッカが突っ込みを入れる。
「何か別の奴が取り憑いていねえか?」
「別の?」
ニコルは彼の言葉で気付いた。
「ああ、そういえばそうですね」
「大次郎さんと一緒にいるとそうなっているな」
イザークもそれを言う。
「何だ、あれは」
「わからない。最近そういえば俺も」
「御前最近蝿っぽいぞ」
ディアッカがアスランに突っ込みを入れる。
「何でなんだ?」
「それがわからないんだ。そういえばレイも」
「クライマックスですよね」
ニコルがそこを指摘する。
「僕も何か軍神になっていますし」
「シンもだ」
イザークはそのシンのことも言う。
「あいつも最近ダンスは踊るし。しかも上手いぞ」
「何がどうなっているんだよ」
ディアッカは首を捻っていた。
「最近よ。皆が皆おかしくなってきていねえか?」
「わからない。だが」
アスランはそれに応えて述べる。
「何か俺達の声に関係しているのだろうな」
「またそれなのね」
ルナマリアがそれに突っ込みを入れた。
「そういえば私も最近黒髪の大人の女性になってムウさんをどうも」
「げっ、俺かよ」
ムウはルナマリアの言葉を聞いて嫌そうな声をあげた。
「何でそこで俺なんだよ」
「何ていうかですね」
そのムウを見ながら言葉を続ける。
「冥界がどうとかで」
「おいおい、俺は不死身なんだけれどな」
少なくともそう簡単に死ぬムウではない。
「そういや昔は狼だの誰それを殺すって言ってくれだの五月蝿かったがな」
「最近じゃ何かキラや大次郎さんと一緒にいますしね」
「ああ」
それは否定しない。
「何か三人でいることが結構多いな、確かにな」
「何でなんですか?」
「さてな」
自分ではそれはわからない。
「ただな。どうも大次郎をお館様って呼びたくなってな」
「お館様ですか」
やはり話がわからない。
「もう何が何だか」
「あとこれだけは言っておくぞ」
何故かその言葉が言い訳がましくなる。
「俺は音楽はわかるからな」
「!?どういうことですか、それ」
アスランは今のムウの言葉に顔を怪訝なものにさせる。
「話が読めないんですけれど」
「いや、ルナマリアに言われるとな」
何故かそこにいくのだった。
「どうしてもそう言いたくなってな。ルナマリアがハーブを奏でたら特にな」
「あたしハーブなんかしないし」
少なくともルナマリアには全く似合わない。
「何でそうなるんだか」
「いや、それでもだな」
ムウは何故か額に汗をかいて話をする。
「言っておかないとな。これは」
「そうなんですか」
「色々とまずいんだよ」
彼にとってはそうであるらしい。
「実際のところな」
「少佐も大変なんですね」
アスランはそれを聞いて言う。
「そういえばガムリンさんも同じことを」
「わかるぜ、その気持ち」
ムウだからこそわかることであった。
「多分あいつもそうだろうな」
「あいつ!?ああ」
皆すぐにそのあいつが誰かわかった。
「シュウ=シラカワ博士ですね」
「今何処で何をしてるかわからねえけれどな」
彼のことを掴める人間は実際のところ僅かだ。
「まあそんなところだな。何はともあれ」
「羽目を外すんですね」
「戦いが終わったからな」
ムウはザフトの面々に答える。
「いっちょ飲むか」
「飲むのはいいのですが」
ここでナタルが咳払いの後で答える。
「少佐、今度は酔われても」
「んっ、何だ?」
「裸踊りは止めて下さい」
「ちゃんとトランクスは穿いてるぞ」
「いえ、そういう問題ではなく」
彼は酔うといつも裸踊りをするのだ。トランクス一枚になって。ナタルは顔を赤らめさせてそこを指摘する。
「あまり。周りにいい影響を与えませんので」
「そうなのか」
「はい。ですから」
「わかった。じゃあ上半身だけにしておくか」
全くわかっていない。
「アズラエル議長にもそう伝えておくよ」
「全くあの方も」
アズラエルもアズラエルで酒が回ると紫のトランクス一枚になってサーフィンの真似をしだすのだ。なお紫のトランクスは彼の趣味である。
「ブリーフじゃないだけましだろ?」
「当然です」
ナタルもブリーフは嫌いらしい。
「十三番目の殺し屋とか夢みたい・・・・・・な漫画を思い出します」
「ナタルさん、それは言ったら駄目ですよ」
「皆トラウマになっていますから」
ルナマリアとメイリンがナタルに言う。
「実は私達もあれは」
「ああ、思い出したくない」
「済まない。とにかく」
ナタルはあらためてムウに言う。
「それだけは止めて下さいね」
「ちぇっ、飲んだ時の楽しみが」
「ですから普通にして下さい」
ナタルの小言は続く。
「全く。士官なのに」
「そういえばナタルさんってよ」
「そうですね」
ディアッカとニコルがアスラン、イザークを入れてヒソヒソと話をする。
「プロポーションいいんだけれどな」
「水着も下着も弱いな」
「なっ、何故それを知っている」
今のアスランとイザークの言葉に驚いて顔を向けてきた。
「水着はわかるとして」
それはいつもプールや海で見せている。黒のワンピースだ。あとは競泳水着しか持っていないがこれがかえっていいという意見もロンド=ベルの中にはある。
「何故私の下着まで。白しかないとどうして」
「あ~~あ、また自分で言っちゃったわ」
「どうしてこの人は」
「くっ、しまった」
四人の引っ掛けだったが見事にそれにかかったナタルであった。
「つい・・・・・・」
歯噛みして呻く。
「まさかまた引っ掛かるなんて」
「少佐、幾ら何でも」
「べ、別にいいではないか」
ナタルは顔を真っ赤にさせて言い繕う。
「私の趣味なのだからな。それに白は清潔感があっていい」
「否定しないんだ」
「居直ったわね」
ルナマリアとメイリンはまた言う。
「とにかく。飲むのはいい」
今度は話を誤魔化してきた。
「だが慎みを忘れないように。いいな」
「白い下着もですね」
「うう・・・・・・」
もうどうにもならないところまで追い詰められたナタルであった。何はともあれ戦いは一旦は終わった。しかしまた新たな戦いがはじまる。その最中の息抜きであった。

第四十四話完

2008・2・21


 
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