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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十二話 二人の武神

                第四十二話 二人の武神

地球に降り立ちニースに入ったロンド=ベル。そこで彼等は束の間の休息を楽しむのであった。
「何かな」
「どうした?」
ビーチで不意に声をあげたブライトにアムロが問う。二人もリラックスした私服姿だ。
「いや、またメンバーが増えたのを実感してな」
「何を今更」
アムロはブライトのその言葉に苦笑いを浮かべた。
「わかっていたことじゃないか」
「騒がしさが増したな」
ブライトが言うのはそこであった。
「今までよりさらには」
「ああ、それはあるな」
アムロもそれは認めて頷く。
「特に。女性陣がな」
「特に彼女が元気になったな」
ブライトの視線の先にはエクセレンがいる。かなり派手なハイレグの赤いビキニを着ている。
「たまにはこうして泳がないとね」
「肌のケアも済ませましたし」
アクアもいた。彼女は黒いビキニだ。
「これで安心ですね」
「うわ、アクアさんって」
そのアクアを見たザズが思わず声をあげた。
「凄いスタイルいいんですね」
「そうですね」
それにサンユンが同意して頷く。
「声はプリメーラさんそっくりなのね」
「ちょっとロリ声かしら」
自分でも自覚はあるようだ。
「エクセレンさんの声もかなりだけれど」
「それは言いっこなしよん」
そのエクセレンが笑って突っ込みを入れる。
「他に突っ込みを入れるところはあるんじゃない?それに」
「はい」
何故かここでサラが頷いて彼女に応えるのだった。彼女は大人しい水色のワンピースである。お世辞にもセンスのいいデザインではない。
「そのスタイルですよね」
「花の二十三歳」
自分でそれを言う。
「さあ、存分に見るのよん」
「キラ」
ラクスもいる。ピンクの可愛らしいビキニだ。
「あちらで泳ぎませんか?」
「ううん、僕は今は」
しかし彼はそんなラクスの誘いを申し訳なさそうに断るのだった。
「あっちでちょっと」
「何か?」
「大次郎さんやムウさん達と男祭りをするから」
「男祭り?」
「ああ、そうなんだ」
ラフな黄色い水着のムウがここで出て来た。
「百人の逞しい男達を相手に戦い抜く。そうした競技さ」
「百人の」
「何でもそれを乗り越えたら本物らしいんだ」
そう言われて騙されているキラであった。
「だから。一度やってみようかなって」
「何か凄く胡散臭い名前なんだけれど」
年齢の割には見事なプロポーションを競泳水着で誇示してきているフレイが突っ込みを入れてきた。かえって競泳水着はスタイルが目立つ。
「何よ、そのホモ臭い祭りの名前」
「ホモ臭いっていうか得体が知れないわよね」
「そうですね」
派手に切り込みの入った青のワンピースのマリューと地味な黒いワンピースのナタルも出て来た。ナタルは水着こそ地味だがそのスタイルはこれまたかなりのものだ。
「何が出て来るやら」
「で、最後はあれ?」
フレイがまた言う。
「大次郎さんにぶん殴られて星になって消えるの?」
「それはないでごわす」
大次郎がそれは否定する。
「おいどんはあくまでキラどんと親睦を深める為に」
「俺も協力するってわけ」
「私もです」
ガムリンまで出て来た。
「是非共。キラ君の為に一肌」
「何でガムリンさんまで」
「さあ」
フレイにオレンジのビキニのルナマリアが応える。彼女達には全くわからないことだ。
「何でかしらね」
「理解不能よ。そういえば最近」
フレイは赤紫のビキニでプールで泳いでいるカナンを見て述べる。
「カナンさんやニコル君もやけに実によきこととか言うわよね」
「そうよね。何でかしら」
これも彼女達にはわからないことであった。
「BASARAとか何とか」
「変よね、どうも」
「僕も何か他の僕が入ってきているみたいなんだ」
キラも自分でそう語る。
「何故かわからないけれど」
「そういえば私も」
それを言われればルナマリアも思い当たるふしがあるのだった。
「黒いドレスを着たくて仕方ないのよ、最近」
「ふうん」
「メイリンは白いドレスが好きらしいし」
「何か女神みたいね」
フレイはそれを聞いて何気なく述べた。
「私がナタル少佐やユリカさんやステラに親近感感じるのと同じみたいね」
「はい、おそらくは」
ガムリンが彼女に言うのだった。
「私もそれは同じですから。フラガ少佐とは」
「あのシュウ博士も嫌いじゃないしな」
ムウは彼にも親近感を抱いているのだった。
「まあそこんところは結構複雑だけれどな」
「複雑っていうか」
それに突っ込みを入れたのはマリューであった。
「それを言ったら私だってね」
「私もよ」
その豊満な肉体を白いビキニに包んでいるのはタリアであった。年齢を感じさせない。しかも白が実によく似合う大人の女であった。
「アムロ少佐や宙君とは自然に仲がよくなるし」
「ペガサス好きですよね」
「ええ、とてもね」
タリアはにこりと笑ってルナマリアのその問いに答える。
「ぬいぐるみだって持っているわよ」
「私はタキシードが好きね」
マリューはそちらが好みであった。
「あれを見るとダンディっていうかお月様を感じるわ」
「お月様っていうと」
「じゃあタータさんは」
「ん!?呼んだか?」
タータの格好は普段とあまり変わらない。黄色のビキニだ。
「うちは別にお月様は好きやないで」
「じゃあ一体何がお好きですか?」
彼女に尋ねたのはメイリンであった。彼女は大人しい緑のセパレーツだ。
「うちは水星やで」
「まあ、タータったら」
タトラのプロポーションはこれまた凄いものであった。白いワンピースがこれでもかという位似合っている。有り得ない程に。
「やっぱりそれなのね」
「メイクアップの時もそや」
タータは今度はこう述べた。
「やっぱり水星みたいに知的にいきたいで」
「タータさんが知的って」
「何かそれって」
「悪いんかい」
ルナマリアとメイリンに言い返す。
「うちかてなあ。仮にも王女やから」
「お転婆王女様なら足りてるぜ」
ここでシンが登場して言うのだった。
「それこそ幾らでもな」
「おい、待たんかい」
タータはその彼にすぐに顔を向けるのだった。
「誰がお転婆やねん」
「鏡見な」
シンも負けてはいない。
「そこにいるからよ」
「言うたな」
それをスルーするようなタータではなかった。すぐに身構える。
「ええ度胸や。ほなすぐに楽にしたる」
「生憎俺だってそう易々とは楽にはならないぜ」
シンもシンで受けないでいい喧嘩を受ける。
「何ならここでな」
「成仏させたる」
「あらあら」
姉はそんな妹を見てもいつもの調子である。
「タータったら元気なんだから」
「あの、元気なんてものじゃ」
キラはその顔を少し青くさせていた。それも当然のことでタータは何処から出してきたのかその手に巨大なインド風の刀を持っていたのである。
「このままじゃ大変なことに」
「いや待てキラ」
「カガリ」
今度はカガリが出て来た。
「ここはタータに任せるんだ」
「そんなことしたらシンが」
「自業自得だ」
いつも喧嘩しているだけあってシンには厳しい。
「刺身になろうともな。それはそれ、これはこれだ」
「そうかなあ。違うんじゃ」
「へっ、お転婆王女様がもう一人増えたかい」
そしてシンもシンでまた言わなくていいことを言ってのける。
「どうやら今日はお転婆王女様の当たり日だな」
「今何と言った?」
カガリもカガリだった。その言葉を聞き逃さない。
「言葉次第では葬式になるぞ」
「だから何度でも言うぜ。今日はお転婆王女様の当たり日だってな」
「そうか」
そこまで聞けばもう充分であった。
「やっぱり御前・・・・・・死ね」
「かかって来やがれ!」
タータとカガリの二人を前にしてもシンは怯まない。
「一気にSEEDを発動させて男祭りを教えてやるぜ!」
「望むところや!」
「男祭りが御前の墓場だ!」
「あの、男祭りって」
キラが彼等に対して言う。聞かれてはいないが。
「そんなのじゃないんだけれど」
「まあ、タータもやんちゃね」
刃傷沙汰もタトラにとってはその一言である。
「幾つになっても腕白さんなんだから」
「だからその一言じゃ」
「済まないんじゃ」
そんな彼女にまたルナマリアとメイリンが言うが効果はない。
「どうしたものやら」
「困ったわね」
彼等は騒動の中にあったが平和な面々もいた。ラトゥーニとシャインはお揃いの青と赤のワンピースを着てプールサイドでボール遊びをしていた。ジノがその相手を務めている。
「ううむ」
ジノは二人の少女を見ながら至福の笑みを浮かべている。
「可憐だ。プレシア嬢と共に」
「ねえ」
そんな彼を見て白と黒のチェックのワンピースのラーダが皆に言う。
「ひょっとしてジノさんって」
「あれ、知らなかったの?」
答えたのはアポリーであった。
「あの人はあれだよ」
「そうだぞ」
ロベルトも答える。
「有名なんだけれど」
「知らなかったのか」
「私はすぐにわかったわよ」
青いワンピースを着ているのはシモーヌであった。
「ああ、この人はって」
「簡単にわかったの」
「見ていたらわかるじゃない」
鋭いシモーヌならばこれも当然のことであった。
「いつも小さな女の子ばかり見ているし」
「それもそうね」
「でしょう?そういうことよ」
「そういえばラーダの声も」
ここでマサキが突っ込みを入れてきた。
「あれだよな。少し聞けば小さい女の子の声にも聞こえるよな」
「そうかしら」
「あたしの声に似てるニャ」
「その通りだな」
ここでクロとシロが言ってきた。
「それもそっくりだニャ」
「おいらもそれは思うんだぜ」
「そう言われてみればそうかしら」
ラーダもそれは自覚する。
「声が似ているのは」
「別に悪いことではないニャ」
「おいらだってカトルとそっくりだしな」
「俺もな。かなりだしな」
マサキも心当たりのある話だった。
「けれどラーダはそういう人が多いみたいだな」
「否定はしないわ」
実はそうなのであった。
「私の声はかなり独特だと思うけれど」
「独特だから余計にだニャ」
「多分そうだぜ」
「そうかも。そういえばアスラン君もそうね」
「ああ、あいつの声な」
皆彼女が何を言うのかわかっていた。
「あのインスペクターのメキボスって奴と声が似てるよな」
「それもかなりね」
「あと蝿にもですよね」
デメクサがおかしなことを言ってきた。
「アスラン君それを言うと困った顔になりますけれど」
「そういやあいつカメレオンが嫌いだしな」
何故かわからないアスランの嫌いなものであった。
「何なんだろうな、あれは」
「そういえば最近」
話はまだ続く。
「デュオやレイがやたらクライマックスと言うのが定着したし」
「おかしなことだな」
アポリーろロベルトはそれを不思議がっていた。
「何なのだ、一体」
「しかも必殺沢にこだわる」
これもまた謎であった。
「何か別のキャラが取り憑いたのか」
「どうなったんだ」
「まあ色々あんだろうな」
マサキはこう言うだけであった。
「俺だってあのバルトフェルド艦長やタータ王女と斬り合ったような気がするしな」
「私も。結構」
ラーダもラーダでそんな感触はある。
「妙にタカヤ=ノリコって女の子が気になるのよ」
「今太陽系の外にいるぜ」
今彼女はそこで守りについているのだ。
「ガンバスターと一緒にな」
「そうなの」
「そういやあんたってアマノさんとも声似てるな」
またラーダにそうした相手が出て来た。
「マリーメイアにニナさんにクロにって。あんたも結構な」
「そうね。多いのは確かね」
「中にはイザークみたいなのもいるけれどな」
「ぬゎにい!?」
そのイザークはプールの中で水色のビキニのシホと一緒になって叫んでいた。
「シホ!そこにいるのはドモンだ!」
「えっ」
シホが間違えて呼んだのはドモンであった。声で間違えたのだ。
「すいません、つい」
「気をつけろ!」
イザークはこう叫んでいた。今度は。
「幾ら声が似ているといってもな!流石に俺もあそこまではできん!」
「できたらすげえって」
マサキが遠くから突っ込みを入れる。
「あんな人がそうそういてたまるかってんだ」
「気をつけろ、いいな」
「すいません、それじゃあ」
「わかったらいい。しかし」
そのうえでドモンを見る。
「あの人は一体今度は何を」
「暮らしの中に修行あり!」
ドモンはこう叫んでいた。叫びながらしていることは。
「だから俺は!こうして波の上を進む!」
「っておい!」
ディアッカが彼に突っ込みを入れる。
「それでどうやって水の上を歩けるんだ!」
「そうですよ」
ニコルも言う。
「幾ら何でも。何をどうやったらそんなことが」
「簡単なことだ」
ドモンにとっては、である。
「まず片方の足を出す!」
「はい」
「そしてその片方の足が沈まないうちに!」
ここからが問題であった。
「もう片方の足を出す!それを繰り返すのだ!」
「できるわけねえだろ!」
ディアッカがまた突っ込みを入れる。
「何だよそれ、何処のアマゾンのトカゲだよ」
「トカゲなんですか」
「ああ、バジリスクっていってな」
ディアッカはニコルに対して説明する。
「そうして水の上を進むトカゲがいるんだよ」
「世の中色々いるんですね」
「人間ができるとは思わなかったがな」
これはあくまで彼の常識の中での話である。
「しかもプールの上でそれをやるなんてな」
「非常識ですよね」
「非常識の中に修行あり!」
だからといって修行を止めるドモンではない。
「このまま俺は!」
「どうするんだ!」
イザークが問う。声が似ているのでわかりにくい。
「七人の偉大な拳法家を探し!臨獣を!」
「何か話がわからなくなってきたな」
「そうですよね」
ディアッカとニコルはまた言うのだった。
「倒し!そして!」
「そして!?」
「今度は何なんでしょうか」
「さらに上を目指す!頂上のさらに上を!」
そう宣言しながらプールの上を駆けるのであった。彼はいつも彼であった。
こんな様々な過ごし方でロンド=ベルは羽根休めをしたのであった。それが終わるとまずはプロヴァンスに来て情報収集に務める。ここですぐにシャドウミラーの報告が入った。
「もう出たか」
「何処だ?」
「チュジニアです」
ユンがそう一同に報告する。
「かつてのカルタゴ近辺にシャドウミラーらしき軍を見たとのことです」
「カルタゴか」
大河がそれを聞いて考える顔になった。
「また随分と歴史的な場所だな」
「戦争と歴史は関係があるがないものだぜ」
火麻が笑ってその大河に言う。
「特にああした連中にはよ」
「そうだな。だがこれで次の行動先が決まった」
大河は決断を下した。
「チュジニアだ」
彼は言った。
「今から全軍でそこに向かう。それでいいな」
「ああ、勿論だぜ」
また火麻が応えるのだった。
「じゃあ行くか、今からな」
「うむ」
「では全軍出撃デス」
スワンが言う。
「チュジニアへ」
「ここからすぐなのが助かりますね」
ボルフォッグはそのことにまずは安心しているようであった。
「事前にあの場所に関しては情報収集を行っていましたが」
「あの場所をか」
「はい。一つ気になる情報がありましたので」
凱にも答える。
「それで集めていましたが」
「何かあったのか、あそこに」
「以前から謎の遊牧民がチュニジア近辺の軍事基地を偵察していたそうです」
彼の返事はこうであった。
「それで気になっていまして」
「そうだったのか。それでか」
「はい。おそらくそれがシャドウミラーだったのでしょう」
ボルフォックの考えはこうであった。
「チュニジアから地中海を狙うということも充分考えられます」
「それは大変なことになりかねませんね」
ホワイトはそれを聞いて冷静に述べた。
「地中海を抑えられると欧州全体がシャドウミラーの影響下に置かれます。そうなれば」
「そうだ、その影響は計り知れない」
大河もそれはわかっている。
「だからこそだ。彼等の目論見を何としても阻止しよう」
「はい、それでは今から」
「全軍出撃!」
今度は大河からの指示であった。
「すぐにチュニジアへ!」
「了解!」
皆彼のその指示に頷く。そうしてチュニジアに向かうのであった。ここでまた問題があった。
「そういえばですね」
「どうした?」
出撃したマクロスの艦内でボルフォッグが凱似囁くのであった。
「その怪しい人物ですが」
「何かあったのか?」
「仮面をしていたそうです」
「仮面をか」
「はい、まさかとは思いますが」
ここで彼が連想するのは一人であった。
「それはあの」
「有り得るな」
そして凱もそれは同じだった。
「もうBF団はない」
「はい」
マスク=ザ=レッドの可能性はまずは否定された。既に彼の活動はない筈なのだ。何分その生死についてはわからないところがあるのだが。
「だとすると」
「シャドウミラーならば」
「そうだな。じゃあ次の戦いは」
「はい、間違いなく激しい戦いになります」
ボルフォッグは言う。
「特にゼンガー少佐にとって」
「俺も少佐に協力する」
凱が言った。
「何かあればな。とはいっても」
「そうですね」
ここで二人はゼンガーの気質について思うのであった。
「少佐は。ああした方ですから」
「あくまで一騎討ちにこだわるだろうな」
「そうです。ですから私達のできることはないでしょう」
「あるとすれば」
「おそらく。シャドウミラーの軍勢との戦いだけです」
「そうだな。多分な」
凱もそれを感じる。やはりそれしかないのだ。
「では。行くか」
「はい。チュニジアへ」
彼等もまたチュニジアへ向かう。その中でラミアとアクセルが話をしていた。
「上手く誘導はいっているな」
「そうだな」
クロガネの一室で話をしている。部屋の中には二人しかいない。
「このままいけば少なくともゼンガー=ゾンボルトは倒れる」
「まずは一人か」
「そうだ。焦る必要はない」
ラミアが述べている。
「ロンド=ベルは手強い。それならば」
「力を少しずつ削ぎ落としていくのだな」
「それが一番だ。まずは一人、そしてまた」
「もう一人か」
「そうだ。だがその前に」
ここでラミアはその整った顔を曇らせたのであった。
「一人。始末しておきたい者がいる」
「あの男か」
「そうだ。皆大なり小なり私達に勘付いているようだが」
二人もそれはわかっていた。誰もがラミアとアクセルを警戒する目で見ていたからだ。それに気付かない筈もなかったのだ。
「とりわけあの男はな」
「では。手を打っておくか」
アクセルはその目を鋭くさせて述べた。
「次に」
「そうだ。それがいい」
ラミアもその案に同意した。
「今のうちにな。それに」
「それに?」
「あの艦も欲しいところだ」
冷静な声でそう述べた。
「何とか。仕掛けるか」
「ああ。だが今は」
「わかっている。チュニジアでの作戦に専念しよう」
「芝居は続けろ」
アクセルはラミアに告げた。
「今はまだ。警戒されていても」
「仲間であるふりをし続けるのだな」
「そういうことだ。いいな」
「うむ。全ては我々の理想の為に」
「そう。我々の理想の為に」
そう話をしていた。この話は誰も聞いてはいない。しかし確かに話されていた。そうしてその中でもまた一つ何かが動こうとしていたのだった。
ロンド=ベルはチュニジアに到着した。するとここでもシャドウミラーが既に布陣して展開していたのであった。皆これを見てももう驚かなかった。
「やっぱりっちゅうかな」
「そうだな」
「既に用意を整えていて御苦労さんってことだよな」
「全く」
こんな調子だった。そうして彼等も出撃して敵に対するのであった。
シャドウミラーの軍勢には巨大な剣を持つマシンがいた。そのマシンこそは。
「よくぞ来たロンド=ベル!」
あの男であった。
「このヴォータン=ユミル、待ちかねていたぞ!」
「情報通りだな」
「そうですね」
エイタがテツヤの言葉に応える。
「やはりここにいたか」
「他に有名なパイロットはいないようですね」
「ああ。しかし」
あらためてシャドウミラーの軍勢を見る。その殆どが連邦軍のマシンばかりである。
「嫌な感じだな。何か味方と戦うみたいだ」
「まあ俺達はそういうのも慣れてるけれどな」
コウが言った。
「ティターンズとの戦いがあったからな」
「おやおや、言ってくれるね」
ライラは今のコウの言葉を聞いて笑みを返してみせた。
「あたし達との戦いがいい経験になったってのかい」
「少なくとも連邦軍のマシンのことはよくわかったさ」
こう返すコウであった。
「自分で使っているだけじゃわからない部分があるからな、どうしても」
「それはあるよな」
これにはキースも頷く。
「どうしてもな。自分で使っているだけじゃあな」
「といってもあれだぜ」
今度はジェリドが言ってきた。
「俺達とあの連中は一緒じゃねえぜ」
「それはわかっている」
シローが応えた。
「ティターンズとシャドウミラーじゃ。パイロットの質が違う」
「どちらが上だってんだ?」
ヤザンがその言葉に問うた。
「まさか向こうって言うんじゃねえだろうな」
「いや」
シローはヤザンのその問いにまずは首を横に振って応えた。
「ティターンズだ。シャドウミラーのパイロットの質は普通程度だ」
「嬉しいね、そう言ってもらえると」
その言葉がライラをまた上機嫌にさせた。
「こちらとしても士気があがるよ」
「じゃあ一気に行くぜ」
ヤザンが皆に声をかける。
「その質の違いを見せてやるんだよ」
「敵の数はおよそ六千です」
サラが報告する。
「正面から来ます」
「わかった。と言う側から来たな」
ジェリドが敵の動きを見て言った。
「また随分とせっかちだな」
「推して参る!」
ヴォータンはゼンガーと同じ言葉を口にしていた。
「覚悟!」
「ならば!」
そしてそれに応じたのはゼンガーであった。
「俺が相手をする。来い!」
「無論!ゼンガー=ゾンボルトよ!」
ヴォータンもまたそのゼンガーを見据えていた。彼に一直線に向かう。
「ここで決着をつけてくれる!」
「あの男は俺に任せよ!」
ゼンガーは皆に告げた。それと共にダイゼンガーを前にやる。
「男と男の勝負だ!」
「わかった、友よ」
最初に彼の言葉に頷いたのはレーツェルであった。
「ならば。その剣存分に振るうのだ」
「かたじけない!ではヴォータン=ユミルよ!」
「うむ!」
二人は対峙する。そのうえで巨大な剣と剣を構えるのであった。
「誰も邪魔はせぬ!だからこそ!」
「思う存分勝負をしようぞ!」
そう言い合ってから勝負に入る。それを合図としてロンド=ベルとシャドウミラーのチュニジアでの戦いがはじまったのであった。
戦いは正面からのぶつかり合いであった。それは激しい衝突であった。
「正面から来てもな」
ジェリドはジ=オを素早く展開させていた。砂の上であってもその機動力は損なわれてはいない。驚くべき機動力であった。
「質がものを言うんだよ!それを教えてやるぜ!」
言いながら左右に動きつつビームを連射する。それでまずは数機のバーザムを撃墜した。
「よし、まずは四機だ!」
「ジェリド、まだ安心するのは早いぞ」
歓声をあげた彼に対してカクリコンが忠告する。
「敵の数はまだ多いぞ」
「ああ、わかってるさ」
ジェリドも歴戦のパイロットだ。それはわかっていた。
「しかもバーザムだけじゃないな」
「ああ、バウンド=ドックもいる」
他にはメッサーラやパラス=アテネもいる。ティターンズ系のモビルスーツが多い。どうやらそうした軍であるらしい。
「他にも大勢な」
「とりあえずモビルスーツの質はいいな」
ジェリドもそれは認める。
「しかしな。中にいる人間が違うんだぜ。それを教えてやるさ」
「そうだ。しかしだ」
ここでもカクリコンは慎重であった。
「くれぐれもな」
「だからわかってるさ。撃墜されるのは好きじゃない」
幾ら経験があってもであった。
「さて。狙いを定めてな」
「うむ、その通りだ」
彼等は果敢に戦いながらも慎重に動いていた。そうして数に勝るシャドウミラーに対していたのであった。
ロンド=ベルは慎重に攻めていた。その中には当然ながら凱もいる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
叫びながら拳を一機のマラサイに撃ち込む。ブロウクン=マグナムにより頭部を叩き潰されたマラサイはそのダメージで爆発しそこから四散した。
だがそれで終わりではなかった。すぐにもう一機のマラサイが来た。そのマラサイにはドリルニーで応じた。
「これでどうだっ!」
それでまた一機だった。だがまだ前には多くの敵が展開している。
「凱!」
ここで凱に命が通信を入れてきた。
「気をつけて。そっちに敵が大勢来ているわ」
「どれだけだ?」
「およそ五十機よ」
命は言う。
「貴方一人じゃ危険よ」
「くっ、しかし」
それでも今彼はここを離れるわけにはいかなかった。そこにいるのは彼だけだったからだ。
「ここを離れるわけにはいかないんだ」
「ええ。けれど」
それは命もわかっている。しかしだった。
「五十機を一度に相手にするのは幾ら貴方でも」
「だがどうすれば」
「そういう時にはヒーローが出るのよ」
そう言って出て来たのはアスカであった。
「なっ、アスカ」
「凱さん、助けに来てあげたわよ」
エヴァ二号機がここで凱の横に出て来た。
「馬鹿シンジ達ももうすぐ来るから。これでいけるわよね」
「ああ、済まない」
「GGGチームも大変なんですね」
シンジの通信が入って来た。
「何か皆あちこちで戦っていますね」
「あんた、それは今は皆同じよ」
アスカがこうシンジに突っ込みを入れた。
「見なさいよ。周りを」
「わかってるよ、それは」
「わかっていたら早く来なさい」
完全にアスカがリードしていた。
「凱さんを助ける為にね」
「そういうことで凱さん」
シンジはまた凱に声をかけてきた。
「今からそちらに行きます」
「ああ、済まない」
凱はシンジに礼の言葉を述べた。
「おかげで助かりそうだ」
「といってもあれよ」
またここでアスカが言う。
「何か敵の数が増えてきたし」
「えっ!?」
「あんたが言わない」
アスカは敵が増えたと聞いて声をあげたシンジに言い返す。
「五十が百に増えた位よ」
「倍になったんだ」
「こっちは五機」
四機のエヴァとガオファイガーを入れてである。
「百機。一人で五十を相手にするのとどっちが大変?」
「それはまあ」
「答えは出てるわね。そういうことよ」
「何か僕達ってそういう戦いばかりだね」
「何を今更」
アスカはまたシンジに言葉を返した。
「何十倍の相手だってやってきたじゃないの」
「宇宙怪獣の時ね」
「そうそう、それそれ」
こうレイに言葉を返した。
「あの時も無茶苦茶だったし変態爺さんとそのお仲間だって相手にしたし」
「変態って」
「あれは確実に変態よ」
まだアマスターアジアに拒否反応があった。
「そうじゃなきゃ何なのよ」
「あの人が本当に嫌なんだ」
「まあ信じられないのは事実よ」
自分でもそれは認める。
「ただね」
「ただ?」
「敵が何倍いても。相手をするのがあたし達だっていうのは覚えておきなさいよ」
アスカが言いたいのはそこであった。
「それはわかったわね」
「うん、まあ」
「よし、その敵が来たぜ」
ここでトウジが言ってきた。
「百機が一辺に来るってのは中々ええ光景やな」
「慣れたわよ」
それで動じるアスカではない。
「行くわよ。百機もいたらそれこそ的が並んで来ているようなもんだし」
「広範囲攻撃ね」
「そういうこと。凱さん」
レイに応えながら凱にも声をかける。
「威勢よくいくわよ!」
「ああ、わかった!」
いつも凱になっての言葉であった。
「行くぞ皆!」
「ええ」
「わかったで!」
レイとトウジが応える。
「バカシンジ、あんたも!」
「わかってるよ。僕だって」
「まあ何だかんだであんたも結構積極的になってきてるしね」
「そうかな」
「あの変態爺さんの影響?」
またここでマスターアジアを出す。
「まあドモンさん達が格好いいとは思うけれど」
「やっぱりあんた変よ」
一言であった。
「あれはもう超人でしょ」
「超人なんだ」
「BF団でもそうよ」
実はアスカは彼等も好きではない。
「無茶苦茶じゃない」
「その無茶苦茶さがいいんじゃ?」
「よくないわよ」
あくまでそう主張するのだった。
「まああんたがやる気出すんならいいけれど」
「僕だって。色々あったから」
シンジはこうアスカに言葉を返した。
「やっぱりね。変わったと思うよ」
「いいか悪いかは別にしてってわけね」
「少なくとも頑張らなきゃっては思うよ」
それも認める。
「色々な人達が頑張ってるの見てきているから」
「タケルさんとか?」
「アスカはタケルさんが気になるんだ」
「・・・・・・応援したくなるのよ」
自分でもそれを言う。
「ああして。必死にやっている人を見ているとね」
「そうなんだ」
「あの人は絶対にやるわ」
タケルを信じての言葉であった。
「何があってもね」
「やれるんだ」
「あたしはね、ああいう人は嫌いじゃないのよ」
珍しく素直になるアスカだった。
「一矢さんだってそうだし」
「一矢さんもなんだ」
「じゃああんた嫌い?」
シンジに問い返す。
「あの人が」
「嫌いだなんて」
実は尊敬さえしている。何があってもエリカを想い続け遂に愛を取り戻した彼のことを嫌いになれる筈がなかった。そういうことだった。
「そうでしょ?あんなに一直線だとね」
「タケルさんもそうなんだ」
「そうよ。お兄さんのことは絶対にやると思うわ」
「絶対に」
「ええ、絶対によ」
絶対という言葉を繰り返す二人だった。
「何があってもね」
「そうだね。タケルさんなら」
遂にシンジもそれに頷くのだった。
「やれるね」
「あんたもそういう人達を見て変わったんでしょうね」
アスカがまた言った。
「熱さってのを見て」
「アスカはどうなの?」
「あたしもよ」
ここまで話してそれを否定することはできなかった。
「あたしの性には合わないけれどね」
「いや、合ってると思うよ」
シンジはくすりと笑ってアスカに告げた。
「それもかなり」
「何でよ、それ」
「だって。アスカだってそういうの好きだし」
「だから。好きっていうか」
照れ臭い言葉だった。
「あの人達を。応援せずにいられないのよ」
「そう?本当はああしたふうになりたいんじゃ」
「なりたくてもなれないわよ」
また本音を述べる。
「あそこまで。一途で熱くはね。相手がいないとね」
「相手が」
「ほら、わかったらさっさと行くのよ」
また戦場に話をやる。
「敵は待ってはくれないわよ」
「う、うん」
「全く。とろいんだから」
もういつものアスカに戻っていた。
「一斉射撃、かますわよ!」
「わかったわ」
「じゃあ早くこっちへ来るんや」
先に戦場に向かっていたレイとトウジから声がかかった。
「こっちはもう準備万端整ってるで!」
「わかってるわよ。じゃあバカシンジ!」
「わかってるよ」
「一斉攻撃。いくわよ!」
こうして四機のエヴァがガオガイガーと共に攻撃を浴びせる。その動きは凱に合わせており的確にフォローしていた。そのフォローを受けながら凱は戦う。
「うおおおおおおっ!」
叫びつつガトトングドライバーを放つ。それで敵を倒していく。
両軍が激しい戦いを繰り広げる中でゼンガーとヴォータンはそれにも増して激しい一騎討ちを繰り広げていた。剣撃が白銀の光を飛ばしていた。
「キエエエエエエエエエエーーーーーーーーーッ!」
ゼンガーが剣を一閃させる。だがそれはヴォータンの剣によって防がれる。
「むっ!」
「見事な剣捌きだ」
ヴォータンはゼンガーの剣を受けた姿勢のままで彼に言う。
「やはり俺と戦うのに相応しき相手」
「貴様も!」
ゼンガーも彼に言葉を返す。
「その動き。まさに真の剣の使い手のもの!」
「その真の剣同士!」
「合間見えん!」
そう叫び合い剣を繰り出し合う。気迫と闘志が辺りを支配し圧していた。その中で両者は百合二百合と撃ち合う。だが決着はつかない。
やがて周りの戦局がはっきりとしてきた。シャドウミラーの軍勢の数が減り崩れだしてきていた。戦い全体の趨勢はロンド=ベルに傾いてきていた。
それを見たのかシャドウミラー軍の後方に一気のマシンが姿を現わした。それはロンド=ベルの誰もが見たことのないマシンであった。二人以外は。
「何だあのマシン!?」
「見たことがねえぞ」
誰もが驚いている。しかしその二人は別だった。
「ここで出て来たか」
「ではいよいよ」
ラミアとアクセルはそのマシンを見て呟くだけであった。周りとは違い。
そのマシンは動かない。ただヴォータンに告げるだけだった。
「ヴォータン=ユミルよ」
「ラースアングリフ。エキドナか」
「そうだ。ここは下がれ」
「下がれだと」
「そうだ」
そうヴォータンに告げるのだった。
「今はな。よいな」
「何故だ」
ヴォータンはそのエキドナという薄紫の髪の女に問い返した。
「何故ここで退けという」
「作戦が変わった」
それが彼女の返事であった。
「作戦がか」
「そうだ。地中海を制圧する作戦は中止する」
「では何処に」
「それは帰ってから伝える」
こうヴォータンに答えるだけであった。
「奴等の戦力を削減させる秘策と共にな」
「秘策だと」
「何はともあれここでの作戦行動は中止する」
それは念押しするのだった。
「わかったな」
「わかった。ではゼンガー=ゾンボルトよ」
彼はエキドナの言葉を受けるとあらためてゼンガーに顔を向けるのであった。
「また会おうぞ」
「承知!」
ゼンガーはその言葉を受けて彼に言葉を返すのであった。
「また会おうぞ!」
「うむ。ではさらば!」
こうして両者は別れた。それと共にシャドウミラーは軍を退けていく。気付けばもうシャドウミラーの軍勢もヴォータンもエキドナもいなくなっていた。残っているのはロンド=ベルの軍勢だけであった。
「とりあえずは勝ったんだな」
「そうなるわね」
ゼオラがアラドに答えていた。
「けれどよ。また何か出て来たしよ」
「それが問題だっていうのね」
「ああ。俺だってそれ位はわかるさ」
こうゼオラに述べる。
「さて。また出て来るだろうしな」
「しかもすぐにね」
それもまた予測していた。
「問題は何処にだけれど」
「また当分情報収集かね」
「いや」
だがここでリーが二人に言ってきた。
「艦長」
「既に彼等の別の居場所はわかっている」
「それは何処ですか?」
「日本だ」
彼は答えた。
「駿河湾で彼等のマシンを見たという報告があった。これからすぐに日本に向かうぞ」
「日本ですか」
「どうした?」
何か思うところを見せたアラドに対して問う。
「いえ。何か日本での戦いが多いなって思いまして」
「当たり前っていえば当たり前だけれどね」
首を傾げるアラドにゼオラが述べた。
「それも」
「だよなあ。研究所が一杯あるしな」
ロンド=ベルに参加しているマシンの本来の拠点が集中している。そして彼等の動力源となっているエネルギーも共にある。それを狙うというのは当然の流れだったのだ。
「それを狙ってだとすると」
「シャドウミラーが出るのも当然ね」
「じゃあ。すぐに日本に行かないと」
アラドは焦りだした。
「大変なことになるじゃねえかよ」
「だからそれは言ってるでしょ」
ゼオラは少し怒った顔でアラドに告げた。
「行かないといけないって」
「だよな。じゃあすぐに」
「ええ、日本に急行よ」
「速度はあげていく」
リーは二人に対して言うのだった。
「理由は言うまでもないな」
「了解」
「それじゃあすぐに」
「全機速やかに艦に入れ」
また指示を出す。
「収容が終わり次第すぐに日本に向かうぞ」
「わかりました」
「日本に」
「暫く振りの日本なのに」
「何が何だか」
皆その慌ただしさに少し辟易していた。
「まあそれも日本に行って」
「シャドウミラーを倒してね」
「今度はどうなるのかね」
レッシィは慌ただしくナデシコの中に入ってから述べる。
「何度目かの日本だけれど」
「さあ?少なくとも敵は決まってるんだからいいじゃない」
アムが答える。
「暫くバルマー軍も大人しくしてるみたいだしね」
「あの連中が相手になるとなると」
レッシィの目に剣呑な光が宿る。
「やっぱりあの二人だね」
「あんたもあの二人は信用していないんだね」
「ああ」
それを隠すこともなかった。
「じゃあできるのかい?あんたは」
「まさか」
それに関してはアムも同じであった。
「何時仕掛けてくるかって待っているのよ」
「だよね。そこは同じだね」
「そういうことね。ただ」
だがここでアムは言うのだった。
「ダバはそうじゃないみたいだね」
「ダバはね。そうね」
レッシィはアムのその言葉に頷いた。
「やっぱり信じたいみたいね」
「けれど。どうかね」
アムは懐疑に満ちた目を見せるのだった。
「あの二人はわからないよ」
「問題は何を仕掛けて来るかだな」
レッシィはまた言う。
「あいつ等が何を」
「どうせ碌なことではない」
ギャブレーもそこにやって来て述べる。キャオもいた。
「何をしてきてもいいようにはしておこう」
「また三人共疑ってかかってるんだな」
「当たり前でしょ」
アムはすぐにキャオにこう言葉を返した。
「あからさまに怪しいじゃない」
「気付かない筈がないってか」
「他の部隊ならいざ知らず」
レッシィは言った。
「ロンド=ベルは違うさ。あの二人にもそれを教えてやるよ」
「そういうことね。それじゃあ今はとりあえず」
「日本だな。しかしどうも」
「何よ」
アムはギャブレーが言葉の調子を変えてきたことに突っ込みを入れた。
「うむ。私は日本においてはどうも貧乏くじばかり引いていると思ってな」
「あら。そうかしら」
「そもそもあまり滞在したこともない」
記憶に残っていないのは確かであった。
「宙君や凱君のことが続いて。私の見せ場がないではないか」
「そんなのはどうでもいいじゃない」
アムはぼやくギャブレーに突っ込みを入れた。
「あんたの見せ場なんてそもそもお笑いばかりなんだし」
「私はお笑いなのか」
「自覚ないの!?」
「自覚も何もだ」
少し怒ってアムに言い返す。
「私の様な二枚目を捕まえてそれはないだろう」
「あんた、二枚目だったのか」
キャオがここで身も蓋もないことを述べる。
「そういう主観はよくないぜ」
「あんた、最近何かと世話焼きになってないかい?」
今度はレッシィがキャオに突っ込みを入れた。
「お母さんみたいだよ。エプロンまでするし」
「最近料理に目覚めたんだよ」
笑いながら答える。
「やってみると楽しいよな」
「そういえばさ」
アムはここであることに気付いた。
「あんたとヂボデーさんとヤザンさん同じエプロンよね」
「ああ」
「緑で烏のアップリケのあるエプロンよね」
「あれが好きなんだよ」
笑いながら述べる。
「あのエプロンがな」
「お揃いなのね」
「そうなるよな」
自分でもそれを否定しない。
「何か弁慶になった気分だぜ」
「?どういうことなんだ」
レッシィには今の言葉の意味はわからなかった。
「烏と弁慶が何なのか」
「何なのかって言われるとな」
「要はデネブよ」
アムが言った。にこりと笑って右目でウィンクして。
「そういうことよね」
「クライマックスってやつだな」
「ううむ、私も縁があるかもな」
「あたしもかい?」
「あたしもかしら」
レッシィもアムも何か心当たりを感じた。
「アスランみたいに」
「あんな感じで」
「待て。それを言えば私も」
ギャブレーもふと考えるのだった。
「五人組やそういう者達と何か縁がありそうだぞ」
「化け物になっているのなら御免だけれどね」
「まあそれはな」
アムとレッシィについては考えたくはないことであるようだった。
「あって欲しくないっていうか」
「せめていい方で」
「まあそれは言っても仕方ないしな」
キャオは今回は余裕があった。
「今はとりあえず日本に行こうぜ」
「ああ、そこにいたんだ」
ここでダバが四人に声をかけてきた。彼も格納庫にいたのだ。
「今のうちに休んでおけって言われてるよ」
「今のうちになのね」
「ああ。日本に入ったらすぐに戦いになるかも知れないらしい」
こう四人に告げた。
「だから今のうちに」
「パイロットは休んでおいてくれって言われてるのよ」
リリスも言ってきた。
「今のうちに、ねえ」
「何かそれ聞いただけでこれから大変だってわかるわね」
レッシィとアムはダバの言葉を心の中で反芻して述べるのであった。
「食事も採っておこう」
「飯は作っておいたぜ」
キャオがダバ達に言うのだった。
「すぐに食べられるようにサンドイッチをな」
「あっ、いいわね」
「じゃあすぐに頂くか」
「うむ。それではな」
アム、レッシィ、ギャブレーがそれを受けて頷く。
「それでダバ」
アムはそれからまたダバに問うのだった。
「何だい?」
「あたし達最初は日本の何処に入るの?」
「松江らしい」
ダバはこうアムに答えた。
「ユーラシア大陸を通って日本海側から入るそうだから」
「そうなの」
「松江!?」
ギャブレーはそれを聞いても何のことかわからないようだった。顔を顰めさせている。
「何処にあるんだ、そこは」
「それもすぐにわかる」
レッシィが彼に述べる。
「わかったらすぐに行くぞ」
「どちらにしろ行くしかないか」
「わかったらさっさと食おうぜ」
キャオがまた声をかけてきた。
「タップなんかはもう食ってるぜ」
「また声が似たのが出て来たわね」
「そうだな」
キャオの口からタップが出て来たので思わず言うアムとレッシィであった。
「あんたも案外」
「似ている奴が多いな」
「御前等に言われるとはな」
これには心外といった顔になるのだった。
「思わなかったけれどな」
「あたし達はね」
「たまたまだ」
一応はそう理由付ける。
「まあとにかく今は」
「食べるとしようか。これからの為にな」
「そういうことだね。じゃあ」
ダバがあらためて皆に声をかける。
「少し休もう」
「ええ」
「わかった」
こうして戦士達は日本に向かいながら束の間の休みに入るのだった。だがそれは日本に入るまでのことであった。日本ではまた新たな戦いが待っているのであった。

第四十二話完

2008・2・14  
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