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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第四十話 ズフィルード

              第四十話 ズフィルード
紫の巨人がいた。戦神の星の上に立っている。
「さて」
中にはエペソがいる。彼はその巨人の中からロンド=ベルの戦士達を見据えていた。
「汝等は知っていよう。このズフィルードの力は」
「ええ、とても」
ウッソが彼に答えた。
「知っています。あのバルマー戦役で」
「あれは確かラオデキアだったか」
エペソはそれに応えて言う。
「よくぞあの男を破った」
「今度はあんたの番だぜ」
トッドがこう彼に言った。
「覚悟するんだな。一度破った相手はまた破ってみせるさ」
「果たしてそういくか」
しかし彼はここで余裕を見せる。
「このズフィルードはあの時とはまた違うぞ」
「力が強くなっているというのか」
ブライトはそれを聞いてこう悟った。
「以前よりもさらに」
「ふむ。ならばだ」
グローバルも言う。
「ここは慎重に対処しよう。まずはズフィルードと間合いを取るのだ」
彼はそう指示を出した。
「そしてメギロート達を先に倒す。いいな」
「そうですね」
その言葉にアムロが頷いてきた。
「やっぱり先にそれですね」
「そうだ。彼は後で相手にしてもいい」
「ふむ。それもよい」
エペソもその言葉を受ける。
「それで余が倒せると思っているのならな」
「しかしよお」
ケーンはエペソの言葉を聞いて思うのだった。
「何でこんなにバルマーの奴等ってのは余裕風吹かすのかね」
「強いからだな、それは」
ライトが彼に答える。
「その力がな」
「力こそ正義ってわけかよ」
タップはそれを聞いて言う。
「何かお約束ってやつだな」
「力を持つ者はより大きな力を持つ者に破られる」
マイヨは静かに告げた。
「そういうものだがな」
「どちらにしろ来たぞ」
グン=ジェムがまっを見て言う。
「敵がな」
「じゃあ大佐、ラストゲームの楽しみだね」
「楽しいじゃねえかよ!」
ミンとガナンが言った。
「お、おで楽しくなってきた」
「皆戦いが好きってことだな」
ゴルとジンが最初に攻撃を放った。それが合図になった。
「野郎共!」
グン=ジェムが叫ぶ。
「これが終わったら飯だ!盛大にやるぞ!」
「そうだぜ、飯だぜ!」
「戦い終わったらパーティーだよね!」
「食う」
オルガ、クロト、シャニがグン=ジェムの言葉に応え敵に派手に攻撃を浴びせる。
「飯を食う前に一仕事だ!いいな!」
「了解!」
「クライマックスだ!派手にやろうぜ!」
彼等の戦意はまだ衰えてはいない。それどころかさらに燃え上がる。そうして先に進む。彼等はバルマー軍と最後の戦いに入った。
メギロートの大軍がロンド=ベルに襲い掛かる。その敵の群れに切り込むのは凱であった。
「うおおおおおおおおおっ!」
叫びつつ拳を繰り出す。ブロウクンマグナムが放たれ激しく回転しながら敵を貫く。しかも一機だけではなく数機纏めて貫いていた。
「来い!俺は決して負けない!」
「凱!」
その後ろからルネが来た。
「あたしもいるよ!忘れるな!」
「ああ、頼む!」
「この戦いで勝つのはどちらか」
ルネは前の敵を見据えつつ戦う。光竜と闇竜がそれに続く。
「ルネ姉ちゃん!」
「参りましょう!」
「ああ!」
彼等の戦いも激しい。バズーカにミサイルが放たれる。敵中で派手に暴れ縦横無尽に敵を薙ぎ倒していく。拳が唸り敵を砕く。皆阿修羅となっていた。
「敵が幾ら多くとも!」
「負けるのは趣味じゃないんでね!」
ギャブレーとレッシィがバスターランチャーを放つ。二条の光の帯が敵軍を貫いていく。
それでまた敵が倒れる。しかしそれでもまだ敵は多い。しかも後ろにはエペソがいた。
「ふむ、まだ戦意は衰えておらぬな」
エペソはそんな彼等の戦いを見て呟く。
「実によきこと。だからこそ余も戦いがいがある」
「そんなこと言っていられるのも今のうちよ!」
「そうだ!」
アムとダバが彼に言う。
「覚悟しておきなさいね!」
「戦いはまだこれからだ!」
「ダバ、それでも焦らないでね」
「ああ」
ダバはリリスの言葉に頷いた。
「わかっている。敵はまだいる」
「そうよ。だから」
「慎重に攻める。けれど」
彼もまたバスターランチャーを構えた。
「俺も戦う。何があっても!」
ギャブレーやレッシィと同じく彼等も戦う。ロンド=ベルの動きが一丸になっていた。
一丸になり攻める彼等は強かった。メギロートの大軍を瞬く間に壊滅させてしまった。そうして遂にエペソに迫るのであった。
「やいやいやい!」
勝平が彼に声をかける。
「来てやったぜ!エトウ!」
「エペソだ」
「おっと、すまねえ」
勝平は素直に謝る。
「とにかくだ。もう殆どあんた一人だぜ」
「覚悟しなさい!」
宇宙太も恵子も言った。
「逃げるんならいいけれどよ」
「どうするの?」
「ふむ。戯言だな」
エペソは逃げるという言葉を一笑に伏した。
「余の考えにそのようなものはない」
「まあそうだろうね」
万丈は彼の言葉を聞いて応える。
「だからここに残ったんだしね」
「マーグ司令への手土産は」
エペソは言うのだった。
「汝等の降伏だ。そう決まっている」
「そうかい。じゃあ容赦はしねえぜ!」
宙が最初に前に出た。
「小さくても馬鹿にするなよ!」
「無論だ。余は決して相手を侮ることはない」
ズフィルードの目が光った。
「今それを見せてやろう」
「全軍散開だ」
クワトロがその光る目を見て指示を出した。
「四方八方から攻撃を仕掛ける。いいな」
「わかった!じゃあまずは俺だ!」
鋼鉄ジーグが跳んだ。
「一気に行くぜ!!」
「宙さん!」
「ああ、ミッチー!」
後ろから美和が来る。バズーカを放つ。
「これを使って!」
「よし、これで!」
そのバズーカを手に取り構える。そこから一撃を放つ。
「ジークバズーカ!」
バズーカがズフィルードの胸を撃つ。しかしそれでもまだ彼は立っていた。
「ふむ、中々の一撃だ」
「ちっ、今のでまだ立っているのかよ!」
「このズフィルードはバルマーの創世神」
「だから何だっていうんだ!」
「その程度の攻撃では倒れぬということだ」
こう宙に告げるのだった。
「それがわかったか」
「生憎俺はものわかりが悪くてな!」
そう言いながらまた突進する。
「そうそう簡単にはわからねえぜ!喰らえ!」
跳んだ。そこから跳び蹴りを放った。
「これでどうだ!」
「ふむ、まだだ」
しかしまだ彼は立っていた。
「かなりのものだが。まだだ」
「じゃあよ。俺も切り札を出すぜ」
「宙さん、あれね」
「ああ、ミッチー」
また美和に応える。
「あれを使う。それでいいな」
「頼む!」
「発射!」
ドリルが放たれた。ジーグは跳びそれを受けそのまま突っ込む。
「マッハドリルセット!!」
「むっ!」
ジーグは一直線に突っ込む。エペソはその彼に攻撃を浴びせる。
しかしジーグはそれを右に左にかわす。機動力を活かしていた。
「俺に当たるか!」
宙は叫ぶ。
「そんな攻撃がな!」
「うぬっ、余の攻撃をかわすか!」
「ただかわすだけじゃないぜ!」
宙はその中で叫ぶ。
「俺のこのマッハドリル!かわせるか!」
「ぬうっ!」
「うおおおおおおおーーーーーーーーーーっ!!」
ジーグは突き抜けた。ドリルが今流星となりズフィルードを貫く。今度は致命傷であった。
「むう・・・・・・」
「どうだ!」
「まさかな」
エペソはあちこちから火を噴くズフィルードの中から言う。
「一機でこのズフィルードを倒すとはな」
「参ったか!」
「いや、まだだ」
だが彼はまだ立っていた。
「言った筈だ。このズフィルードは違うと」
「負け惜しみか!?いや」
「違うみたいよ、宙さん」
「ああ、そうだな」
美和の言葉に頷いて答えた。
「どうやらこれはな」
「その通りだ。見るがいい」
「艦長、大変です」
メグミがモニターを見ながらユリカに報告する。
「何かありましたか?」
「ズフィルードのエネルギー反応が上昇しています」
「えっ!?」
撃破されたというのにだ。
「撃破されたというのに!?」
「そうです」
メグミはまた報告する。
「今まで以上に。まさか」
「復活!?」
「復活なんてものじゃありません!」
メグミの言葉は続く。
「見て下さい!」
「!?」
「ズフィルードが!」
「まさか」
「言った筈」
エペソの声が聞こえてきた。
「このズフィルードはこれまでとは違うとな」
「どういうことなんだ、これは」
「形が変わっていく」
ズフィルードの形が変わる。それまでの人型から顔はそのままでも身体が変わっていっていた。身体がなくなりほぼ顔と一緒になっていたのだ。
「フフフ」
エペソはその中で笑っていた。
「第七艦隊や前回の戦闘を踏まえたいい戦術だ」
「俺達を評価している!?」
「どういうことだ」
「やはり汝等は地球圏最強の戦闘集団」
またそれを認めてみせてきた。
「その力は我が帝国の下で行使されるのが相応しい」
「おい、まだ言うのかよ!」
豹馬が彼に言い返す。
「勝手なこと言ってんじゃねえや!」
「銀河の秩序を守る為に神鳴る門と汝等が必要だ」
「神鳴る門!?」
「何だそれは」
「汝等がそれを知る必要はない」
エペソはそれには答えようとはしない。
「だが」
「だが?」
「今一度その力を見極めさせてもらうぞ」
エペソのズフィルードにエネルギーが収束されていく。あまりものパワーであった。
「やっぱり切り札ってわけなのか!?」
「かもな」
ナオトに勇が答える。
「それだけの力がある。しかも第二段階まで出してくるなんて」
「いえ」
だがここでミサトが言うのだった。
「このタイミングでズフィルードを出してくるなんて」
「有り得ないっていうの?」
「ええ」
そうリツコに答える。
「前の戦争のことを思い出して」
「バルマー戦役ですね」
「そうです。あの時はあくまで切り札だった」
そうエレに答えた。
「けれど今は。ここで出るなんて」
「しかも何故あの形に」
今度はアムロが言う。
「人型だけではなかったのか」
「ズフィルードを形成するクリスタルは自律、自覚型金属細胞を含有しているんです」
ダバが答えてきた。
「そのコアは偵察機が収集したデータを解析、進化させて己の姿を形作ります」
「だから人型の兵器を多く有する私達と戦った以前のズフィルードは人型だった」
「そういえば」
ミスティが言ってきた。
「過去にメルトランディ軍の艦隊が機動要塞型のズフィルードと接触したという記録が残っているわ」
「機動要塞型?」
「ええ、そうよ」
レトラーデに答えた。
「私達は艦隊が主力だから」
「そうだったわね。じゃあ」
「ええ」
レトラーデの言葉に頷いてみせた。
「あのズフィルードはそれと同様のタイプなのでしょうね」
「けれど」
だがミサトはまだわからないポイントがあった。
「本当にそれだけかしら」
「どういうことですか、それは」
「私の気のせいだったらいいけれど」
そうマヤにも言う。いぶかしむ顔で。
「何かそれだけじゃないと思うのよ」
「心せよ」
またエペソが言ってきた。
「今より汝等に創世神の神罰が下る」
「ヘッ、言ってくれるじゃねえか」
そのエペソにまた甲児が言い返す。
「前のラオデキヤやユーゼスは随分ともったいつけやがったが」
「今度はえらく話がはええじゃねえか!」
ジュドーも言う。彼等も本気であった。だがミサトはその彼等に忠告する。
「けれど気をつけて」
「何を!?」
「それは向こうもだから」
「向こうも!?」
「じゃあそれって」
「それだけ彼等が本気だということよ!」
そう皆に言うのだった。
「各機はズフィルードに攻撃を集中させて!」
「ズフィルードに!」
「ええ、そうよ!」
また言うミサトだった。
「今の状態で持久戦に持ち込まれたら勝ち目はないわ!!」
「だが!」
竜馬が言う。
「一度は倒した相手だ!今度の奴も倒してみせる!」
「いえ!」
しかしミサトはその竜馬の言葉を否定してきた。
「あのズフィルードは彼等にとって切り札じゃないわ!」
「なっ!?」
「どういうこと、ミサト!?」
アスカがミサトに問うてきた。彼女もそれが気にならない筈がなかった。
「彼は囮よ」
ミサトはそう分析したのだ。
「敵はあのズフィルードを囮か捨て石にするつもりよ」
「そんな、まさか!」
「あのズフィルードを!」
「でなきゃこのタイミングであんな物を出さないわ」
「まさか、そんな」
「いや!有り得る!」
驚くキラにアスランが答えた。
「考えてみろキラ、敵はあのエペソだけじゃない!」
「そ、そうだったね」
キラも言われてそのことを思い出す。
「まだ敵は」
「そうだ、あの男だけじゃないんだ」
アスランはさらに言う。
「まだ太陽系内に帝国監察軍がいるんだ。だから」
「今は方面軍だけで二個だったよな」
ディアッカはそこを指摘する。
「前の戦役じゃとんでもねえ戦力が一個艦隊だったよな」
「確かそうでしたね」
ニコルがディアッカのその言葉に頷いた。
「それで何とか勝ったって聞いていますけれど」
「そうだな。少なくともこいつ等はバルマーの戦力の一部だ」
イザークも分析した。
「だからか。こいつは」
「バルマー戦役で私達が倒したのは第七艦隊」
ミサトはまた言う。
「今回の戦いではそれを統括している辺境方面軍だったわね」
「はい」
シゲルが答える。
「そうです」
「しかも他にも方面軍が来ているから。最低でも」
「最低でも!?」
「残り十二個の艦隊が後ろに控えていると考えた方がいいわ」
「十二個!?」
「何だよ、その数!!」
その数を聞いてはさしものロンド=ベルも平静ではいられなかった。
「そんなに数があるのかよ!」
「バルマーはどうなっているんだ!」
「余が率いてきたのは第一艦隊だ」
エペソも答えてきた。
「それがこの火星侵攻の主力だった」
「じゃあ」
「間違いないっていうのか」
「その通りだ。マーグ閣下の辺境方面軍は今五つの艦隊」
それも言う。
「ハザル閣下の外銀河方面軍は七個艦隊だ」
「ということは」
「やはり十二個の艦隊が」
「バルマー軍は五つの方面軍からなっている」
エペソはそれも彼等に教える。
「本国と銀河西方、銀河東方。そして」
「貴方達二つというわけね」
ミサトはそこまで聞いて言った。
「ということは三十五個艦隊か」
「何だよ、その数」
「途方もないってのはこのことだね」
ケーン、タップ、ライトも言葉がない。
「しかもあれだろ?」
「ああ、戦力を回復するから」
「そう簡単に艦隊の数も減らないってことか」
考えれば考える程絶望的になる話であった
「バルマーの本気とはそういう意味か!」
「何という巨大さ!」
大文字も大河も言葉を失う。
「恐ろしい話だ」
「何処までも。巨大というわけか」
「皆!」
ミサトがまた指示を出す。
「とにかくよ!」
「ズフィルードを!?」
「そう!」
普段の冷静さはなくかなり必死な顔であった。
「一刻も早くズフィルードを破壊して!長引けば何が起こるかわからないわよ!」
「神鳴る門と選ばれし剣達が手に入れば」
エペソはロンド=ベルを前にしてまた言う。
「我が帝国の勢力図は大きく変わる」
「帝国はまだ」
「勢力を広げるつもりか」
「無論」
またロンド=ベルの面々に答える。
「余はその為の礎となろうぞ・・・・・・!」
「敵とはいえ」
ジョルジュはその言葉を聞いて言った。
「見事な心がけ。ですが」
「おいら達だってなあ!」
サイシーが叫ぶ。
「負けるわけにはいかないんだよ!」
「もうゴングは鳴ったよな!」
ヂボデーはファイティングポーズを取っていた。
「じゃあ行くぜ皆!」
「この戦い、俺達も負けられない」
アルゴが静かに語る。
「だからこそ。進む!」
「この手で掴み取るのは!」
ドモンの拳が輝く。
「勝利!そして!」
「平和よ!」
レインが続く。
「行くわ!だから!」
「総員総攻撃!!」
大河の声が轟く。
「今こそ!人類の未来を守る時だ!」
「ああ、だからこそ!」
またドモンが応える。
「シャッフル同盟はある!今こそ人類の為にだ!」
「その力だ」
エペソも逃げはしない。
「その力。見せてもらうぞ」
「かかれ!」
全員が攻撃を繰り出す直前に大文字が叫んでいた。
「諸君の健闘を祈る!」
「了解!」
「今こそここに!」
また声が木霊する。
「勝利を手に!」
「人類の為にだ!」
総攻撃に入った。それがズフィルードを撃つ。しかしズフィルードはその総攻撃を受けても持ち堪えていた。
「なっ!?」
「これだけの攻撃を受けてもなのか!」
「確かに見事だ」
エペソはその彼等に対して言う。
「しかし。それではまだ余は倒せぬ」
「何だと!ならよ!」
ディアッカがライフルを放った。
「これでどうだっ!」
「僕もっ!」
それに援護される形でニコルも出る。
「これならどうですかっ!」
「むっ!?」
グレプニールだった。それをズフィルードに叩き込む。
「やるな。しかし」
「無駄ですっ!」
ズフィルードの攻撃をかわし分身する。そこから一斉に切りつけるのだった。
「これなら!」
「俺もだ!」
今度はイザークであった。シヴァを撃つ。
「幾ら敵の切り札とてだ!」
「そうだ。今の勢いだ」
三機の動きを見てダイテツが言う。
「全軍諦めるな。攻撃を続ければ必ずだ」
「やれるんですね」
「やるのではない」
エイタの言葉は訂正する。
「やるのだ。必ずな」
「必ずですか」
「その通り。クロガネも前に出せ」
「前に!?まさか」
「艦長、あれをやるというのですか」
テツヤも言う。彼等はあることを予感していた。
「その通りだ。超大型回転衝角を出せ」
「あれでズフィルードを」
「わかったな。今三機のガンダムの攻撃で怯んだ」
とりわけニコルの攻撃でだ。ブリッツの特性を上手く生かした彼の見事な攻撃であった。
「ならば今こそ」
「艦長!ズフィルードが広範囲攻撃に入りました!」
だがここでエイタが叫んだ。
「むっ!?」
「数で来ても同じこと」
エペソは攻撃に入りながら言うのであった。
「それならばそれで余もやり方があるというものだ」
「ちっ、イザーク!ニコル!」
ディアッカはそれを見て二人に声をかける。
「散開しろ!危ねえぞ!」
「くっ、わかった!」
「仕方ないですね」
二人もそれを受けてすぐに散開する。他のマシンもそれに続く。
「メス=ハゾン受けるがいい」
広範囲攻撃が放たれる。光がズフィルードの周りに展開するロンド=ベルを攻撃する。その中をクロガネは突き進むのであった。
当然クロガネもダメージを受ける。あちこちからきしむ音がする。
「艦長!」
「うろたえるな!」
ダイテツはその中で部下達を叱咤する。
「この程度でクロガネは沈みはせぬ」
「それではこのまま」
「虎穴に入らずば虎子を得ず」
あえて言ってみせる。
「そういうことだ。このまま突っ込め!」
「わかりました!それでは!」
「総員衝撃に備えよ!」
彼は言う。
「このまま突っ切る!いいな!」
「はい!」
「総員に告ぐ!」
テツヤも叫ぶ。
「衝撃に備えろ!いいな!」
「了解!」
「わかりました!」
総員その言葉に応える。そしてそのまま突っ込む。
クロガネがズフィルードを直撃する。双方は暫しせめぎ合っていたがやがてズフィルードが押されていく。そうして次第に退いていく。
「うう・・・・・・」
「よし、押しているな」
「はい」
テツヤは目の前のバルマーのマシンを見ながらダイテツに応える。確かにその紫の巨体はジリジリと押されだしていた。それは彼にもわかる。
「このまま。いきますか」
「そうだ。このまま押す。そして」
「そして?」
「来たぞ。最後の切り札が」
「切り札!?それは」
その時だった。一機のマシンがクロガネのところに来た。
見ればそれはSRXであった。合体してきたのだ。
「ここで合体だと!?」
「いや、理に適っている」
大河が火麻に応えた。
「今ここで出すものだ」
「それはわかってるぜ」
だがそれは強硬派の火麻にとっては常識であった。それには驚かない。
「しかしよ」
「どうした?」
「問題は使い方だぜ。どう使うつもりなんだ、あれを」
「決まってるぜ!」
そのリュウセイからの返事であった。
「火麻参謀!」
「おうよ!」
二人の息は合っている。どうやら相性がいいらしい。
「派手にいっていいよな!」
「派手にいかなくてどうするんだ!」
こうリュウセイに言い返す。
「そうだろ!相手は敵の切り札だぞ!」
「だよな!じゃあやるぜ!」
「おう!それで何を出すんだ?」
彼の関心はそこであった。
「あれか?あの」
「ああ!あれを使っていいよな!」
リュウセイはまた言い返す。
「それで一気に決めたいんだよ!」
「おう!やれ!」
火麻の返事は決まっていた。
「思う存分にな!」
「よし来た!マイ!」
今度はマイに声をかけてきた。
「あれで行くぜ!」
「そう、わかったわ」
アヤは静かにリュウセイに応えた。
「それなら。すぐに」
「よし!ライ!」
今度はライに声をかける。
「今更反対はなしだぜ!」
「今の状況でする筈もない」
ライはいつも通りクールに応える。
「それで行こう」
「レビ!」
最後にレビに声をかける。
「いいな!」
「わかった!なら!」
RーGUNがすぐに変形した。
「これで!」
「よし!喰らえ!」
SRXはすぐに攻撃態勢に入る。R-GUNを手に取るのだ。
「必殺!天上天下!」
叫びながら照準をズフィルードに合わせる。
「一撃必殺砲だーーーーーーーーーっ!」
一気にトリガーを抜きズフィルードを撃ち貫いた。これが決め手となった。
さしものズフィルードも動きを止める。エペソはその中で言う。
「見事だ、ロンド=ベル」
まずは彼等を褒め称えるものであった。
「その力、とくと見せてもらった」
「何だと」
ライは今の言葉で気付いた。
「じゃあ、御前はやはり」
「余を倒した汝等のデータは本国へ送られる」
「くっ!」
「いつもの通りか!」
「帝国監察軍の新たな力となる」
「そういうことね」
ミサトはそれを踏まえたうえで頷いてエペソに問う。
「やはり貴方達は捨て石だったのね」
「余は霊帝陛下の忠実なる下僕」
それがエペソの言葉であった。
「余の生命はルアフ様のためにある」
「霊帝」
「ルアフ」
アムロとクワトロはその名を呟いた。
「そいつがバルマーの支配者か」
「心せよ」
エペソは今度はブライトに応えた。
「汝等の真ある敵は銀河にあり」
「!?」
「銀河だと」
この言葉はまだロンド=ベルの面々にはわからないことであった。誰もが首を傾げる。しかしそれでもエペソの最後の言葉は続くのであった。
「選ばれし剣達よ」
「また剣だと」
「!?しかもこれって」
ここでゼオラが気付いた。
「ガンエデンの言葉と同じよ」
「あっ、そういえば」
「でしょ!?どういうこと、これって」
アラドが声をあげるとゼオラはまた言うのだった。
「似ていない?っていうか」
「同じだよな、本当に」
「どうしてなの!?どうしてガンエデンと同じ言葉が」
「ユダヤ?」
リツコは顔を顰めて怪訝な顔を見せた。
「ユダヤがどうかしたんですか?」
「えっ、いえね」
リツコはここで命の言葉に応えた。
「ほら、エペソっていうのは」
「はい」
「古代ヘブライ語で最初って意味で」
「ええ」
「ラオデキアは七番目。それぞれの艦隊と同じよ」
「あっ、そういえば」
今気付いたことであった。
「ですよね。何故なんでしょう」
「どうも。妙な引っ掛かりがまた出て来たわね」
ミサトも顔を顰めさせていた。
「次から次にと」
「汝等の真なる敵は」
ズフィルードのあちこちから火があがる。その中での断末魔の言葉であった。
「銀河に・・・・・・あり」
そこまで言って爆発する。エペソもその中に消えた。
「言いたいことを言うだけ言って」
ミサトはその爆発を見ながら言う。
「消えたわね」
「ズフィルードの消滅を確認!」
スワンが報告する。
「残った敵は!?」
「既に火星圏から離脱していていマス!」
「つまり勝ったってわけだな」
「俺達がな」
ジェリドとヤザンはそれはわかっていた。しかし。
「だが」
「この後味の悪さは何なんだろうね」
カクリコンとライラの言葉であった。
「やはりこれは」
「終わっていないということか」
ドレルとザビーネはそれを感じていた。
「今回の勝利は新たなる戦いへの幕開けだったということか」
「嫌な話だぜ」
ガルドの言葉にイサムが突っ込みを入れる。
「そして」
「ホワイトスターにはまだ」
マリューとミサトがそれぞれ言った。
「帝国軍がいるし」
「他の方面軍もまた」
「ええ、ある程度予測していたことだけど」
ミサトはマリューに応えてまた言う。
「今回の敵は規模が大き過ぎるわ」
「だが」
しかし大河はここで言うのだった。
「帝国監察軍を火星圏から撤退させたことは事実だ」
「確かに」
「それは」
これは確かだった。勝利を収めたことは。
「今の我々は目の前にある危機を一つずつ払拭していくしかない」
「そうですね」
「本当に」
これには誰もが頷く。その通りであった。
「何はともあれ帰りましょう」
ルリが言う。
「地球圏へ。敵はまだいます」
「その通り」
大河も彼女の言葉に頷いてみせた。
「では諸君、地球圏へ戻ろう」
「はい」
「エリカ」
一矢は火星を見る。そこにエリカを見ているのだ。
「この戦いが終われば俺達はきっと」
「そうです。ですから」
ルリはその一矢にも声をかけるのだった。その静かな声で。
「地球に戻りましょう」
「わかった。そして地球に平和を」
「ええ」
こうして彼等はルリのボゾンジャンプでまた地球に戻るのだった。火星での勝利はあらたな戦いへの幕開けでもある。彼等もそれはよくわかっていた。
惑星バルマー。その奥の玄室で二人の男が話をしていた。
「辺境銀河方面監察軍第一艦隊のデータだけれど」
「如何でしょうか」
一人は上におりもう一人は下に控えている。そうしたはっきりとした位置関係を置いたうえで話をしている。
「中々興味深いものだったよ」
「そうですか」
「犠牲は大きかったけれどね」
「ジュデッカ=ゴッツォタイプ一体とズフィルード一基を犠牲になりました」
「それと万単位でのマシンが」
「そうです。今までの戦いを考えれば損害は」
大きい。彼等もそれははっきりわかっているようである。
「尋常なものではありません」
「その通りだよ。けれど」
「その甲斐がありました」
下に控える男は述べた。
「人形などいくらでもいるさ」
「はい・・・・・・」
何故かここで下に控える男の言葉は微かに濁った。だが上にいる男はそれに気付かないのかそのまま話を続けるのであった。
「後でエペソの予備体にデータを移植しておいてくれ」
「エペソのですか」
「そうだよ。ラオデキアのオリジナルはなくしているし」
「補充にですか」
「その通り。ラオデキアは惜しいことをした」
かつてのバルマー戦役での話のようである。
「クローンはまだあるにしても」
「それにジュデッカ=ゴッツォのクローンもまだ」
「彼は健在だし。何とかなる。ただ」
「用心にですか」
「そういうことさ」
上にいる男は笑みを浮かべる。傲慢な笑みである。
「また役立つことがあるかも知れないからね」
「御意」
下に控える男は彼の言葉に頷いて答えてきた。
「では新たなエペソを目覚めさせます」
「頼むよ。むっ」
ここでまた一人来た。今度は女であった。
「来たね」
「はい」
女は下に控える男の側まで来た。そうして頭を垂れてから述べる。
「陛下」
「うん」
まずは上の男を陛下と呼んだ。
「送られてきたデータによればロンド=ベルはこれまでよりさらに強い力を持っています」
「君の予想以上にかい?」
「そうです。それもかなり」
「そうなのか。そういえば」
「はい?」
「どうも中には変わった人形も二体混ざっているようだね」
男は楽しげに女に言ってきた。
「彼等の動きも実に興味深い」
「あの二体ですか」
「そう。あの二体の動きも見ていこう」
彼は言う。
「今後面白い動きをまた見せてくれるだろうしね」
「わかりました。それでは」
「剣達の中にとんだ異物が入り込んでいる」
上の男はそう言いながら笑みをそのままにしていた。
「これもかの者の意志かな」
「あるいは」
女はそれに応える形でまた述べてきた。
「先手を打たれたのかも知れません」
「ああ、そうだね」
上の男は女の言葉に少し頷いた。
「そうかも知れないね。あのロンド=ベルという集団はこの銀河の中でもかなり特異な存在だから」
「その通りです」
女も彼の言葉に頷くのであった。
「超能力者や強念者を始めとする特殊能力者、数々の超兵器」
「うん。それ等だよ」
「あれだけの素材が単なる偶然で揃うとは思えません」
「そういうことだね。そこには間違いなく何かがある」
男はそこを指摘する。下に控える男はそれを黙って聞いている。
「僕は作為的なものすら感じるな」
「作為的なものですか」
「うん。もっとも」
上にいる男は女の言葉に応えてまた述べる。
「彼等はそのことを自覚していないだろうけど」
「ナシム=ガンエデンも彼らの特異さに注目したということでしょうか」
下に控える男はここで口を開いた。
「だからこそ」
「うん」
上の男は彼の言葉にも頷いた。そうして今度はある男の名前が出て来た。
「君の人形だったユーゼス=ゴッツォもね」
「やはり地球には何かが」
「アルマナもそれを感じ取ったんだろう」
上の男はまた言う。
「もしかしたら、地球が始祖の星なのかもしれない」
「!?あの星に」
女はそれを聞いてその声を怪訝なものにさせた。
「我々のバルマー星ではなく辺境にあるあの惑星がですか」
「うん、それなら」
男は女にまた応えて言うのだった。
「地球でガフの部屋が開かれようとした理由」
「あれが」
「そして破壊神達がこのバルマー星系ではなく太陽系を優先して襲撃した理由に納得がいく」
「そこまでですか」
「案外僕達の前世界は地球で終焉と始まりを迎えたのかもしれないね」
「地球で」
「あの星で」
下に控える二人にとってはそれはあまり受け入れたくないもののようである。声にそうした感情が出ている。しかし上にいる男はここでまた言うのであった。
「まあ僕にとっちゃ始祖の星がどこであろうと関係ないけどね」
「左様ですか」
「どっちでもいいさ」
男に応えてまた言う。
「はじまりはね」
「わかりました。それではそれは」
「うん」
「ところで」
また女が口を開いてきた。
「うん?」
「アルマナ様の件はあれで宜しいのでしょうか」
「ああ、構わないよ」
アルマナという名前を聞いても動じない。
「彼女に残された時間は少ない。好きにさせてやれ」
「左様ですか」
「そうさ。その為にバランとルリアを付けてあるんだ」
「わかりました。それではそちらも」
「その流れでね。さて」
ここで男はまた話を変えてきた。
「はい」
「太陽系方面に関しては暫くは様子見だ」
「様子見ですか」
「まずはね。当面の敵はバ造反者達と破壊神だね」
「ボアザンにキャンベルですか」
下に控える男が言う。
「ゾヴォークはまずは置いておきますか」
「彼等も地球に主力を向けていたね」
「はい、そうです」
彼等はそれもよく知っていた。
「じゃあ。地球でロンド=ベルと噛み合ってもらうよ。それでいい」
「では彼等もそのように」
「そのうえで造反者達と破壊神だけれど」
話がまたそこに戻る。
「破壊神には本国防衛軍を置こう」
「はい」
「そして後の二つの方面軍で造反者達の相手をしよう」
「はい。それではそのように」
戦略がおおよその段階で決められてきていた。
「ボアザン軍にも動きが見られます」
「じゃあ丁度いいね」
「そうかと。やはり今一度本星の防衛を固めませんと」
「そうだね。確かに戦線を拡大し過ぎたよね」
「御言葉ですが」
「軍の再編成は君に任せるよ」
上の男は己の下に控える男にまた言うのだった。
「何なら近衛軍を使ってもいいからね」
「承知致しました」
「で、最後に」
話がまたしても動く。
「僕達側のクロスゲートについては?」
「残念ながら制御不能」
男はまた報告した。
「当面は監視に留めておくのが得策かと」
「制御不能ねえ」
上にいる男はそれを聞いてつまらなそうな声をあげた。
「何なら僕があれに触れてみようか?」
「いえ」
「陛下、それは」
だがそれは二人にすぐ止められてしまった。
「御身に何かありましたら一大事です」
「ゲートの件はこの我々にお任せ下さい」
「そうかい」
「はい」
「ですから陛下、ここは御自重を」
「ふふふ、わかったよ」
男は二人の言葉を受けて楽しげな笑みを出してみせてきた。そうしてまた言うのだった。
「君達の忠義嬉しく思うよ」
「有り難き御言葉」
「ではシヴァー=ゴッツォ」
男に声をかけた。
「守りは君に任せる」
「御意」
「エツィーラ=トーラー」
「はい」
続いて女に声をかけてきた。
「無限力に関する調査は引き続き君に任せる」
「御意」
「では僕は神体ズフィルードの間で瞑想に入るとしよう」
「はっ」
エツィーラがそれに応える。
「早速儀の用意を致します」
「今度は長くなりそうだ」
男は笑いながらまた言う。
「終焉の時が近付いているからね」
(その間に鍵の入手と『ディス=レヴ』の完成を急がねばならんな)
(人間共が何を企もうが結果は同じ)
シヴァーと男はそれぞれ違うことを考えていた。
(バルマーがいや、この僕が生き残れば)
男は考えていた。
(新たな時のはじまりを迎えられるのさ)
これからのことを。しかしそれを知っているのは彼だけであった。バルマーもまた何かが蠢動していた。

第四十話完

2008・2・5  
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