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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第52話

「法の書」の事件が終結して数日が立った日、麻生は自分が通っている学校の前の門に背を預けて立っていた。
二〇〇人ものシスターをほとんど壊滅させたあの日、麻生が上条の様子を見に行くと「婚姻聖堂」のど真ん中で気絶している上条と柱にもたれかけて気絶している少女がいた。
その少女はシスターの部隊を統括しているアニェーゼという名前らしい(ステイルから聞いた)。
アニェーゼが倒された事が知られると、車輪を持ったシスターや硬貨が入った袋を持ったシスターなどが武器を捨てて降伏して戦いは終わった。
麻生は上条を病院に連れて行ってそのまま寮に帰って、次の日に上条の見舞いに向かった。
しかし、麻生よりも早く神裂が見舞いに来ていたので手に持っていたリンゴを神裂に渡し、そのまま寮に帰った。
その日に神裂は律儀にオルソラのその後などを教えに来た。
麻生はそれほど興味もなかったが神裂は言わないと帰ってくれなさそうだったので話だけ聞いた。
オルソラが見つけた「法の書」の解読方法はダミー解答だった。
その事が魔術世界で発表されるので狙われることはないとのこと。
そしてオルソラと天草式はイギリス清教の傘下に入る事が決まったらしい、と麻生にはどうでもいい情報だった。
その後、神裂は自分から巻き込んだくせに申し訳ありませんでした、と頭を下げてきた。
どうやら麻生に謝る事が本命だったらしい。

「別に火織が謝る事じゃない。
 俺は俺が助けると決めた人を助ける、ただそれだけだ。
 あの時、あいつらを助けるきっかけを作ったのはお前だ。
 けど、行動に移すか移さないかは俺の意思だ。
 だから、お前が謝る事じゃない。」

麻生がそう言うと神裂は驚いたような表情をしている。
おそらく、麻生からそんな言葉が出るとは思ってもみなかったのだろう。
それだけ言い終えると麻生は神裂を家から追い出した。
そして、今現在に至る。
麻生は目を瞑って、ある人を待っていた。

「ごめん、ごめん。
 待たせたじゃん。」

その人とは黄泉川愛穂だ。
愛穂の声を聞いた麻生は目を開けて、愛穂の方に視線を向ける。

「いや~、職員会議が長引いちゃって。
 本当に申し訳ないじゃん。」

両手を合わせて頭を下げる。
それを見た麻生は小さくため息を吐いて言う。

「別にそこまで怒っていない。
 それより、準備が出来たら行くぞ。
 面会時間は限られているんだからな。」

姿勢を元に戻し、麻生は歩き出す。
愛穂も麻生の隣まで来て一緒に歩き出す。
目指す場所は病院。
なぜ、二人が病院に向かうかというと先日、麻生の携帯電話にカエル顔の医者から電話があったのだ。
何でも桔梗が愛穂と麻生に頼み事があるそうなので今度、病院に来て欲しいとの事だった。
愛穂にその事を話すと警備員(アンチスキル)の仕事や教師の仕事の合間を縫って会いに行く、と言って了承してくれた。
愛穂も桔梗が入院している事は知っていたらしく、面会をしたいと前から思っていたらしい。
少し歩いて病院に着くとカエル顔の医者が出迎えてくれた。

「よく来たね?
 彼女も話をするくらいまでは回復している、けど長話は禁物だよ?」

桔梗が入院している病室に向かいながら医者は説明してくる。
桔梗の容体は良くなっているがまだ満足に話が出来るだけの体力は回復していない。
病室に着き、中に入ると一人用の病室らしく中央にはベットと側に点滴などの医療器具が置いてあった。
そのベットに桔梗は横たわっていた。
麻生と愛穂が近づくと、足音で気がついたのかそれともちょうど目を覚ましたのか、ゆっくりと目蓋を開ける。
眼球だけを動かし、麻生と愛穂の姿を捉えるとゆっくりと笑みを浮かべた。

「いらっしゃい、二人とも。」

「久しぶりじゃん、桔梗。」

「本当は話もしたいんだけど、正直こうして話すだけでも辛くて。
 呼び出したのは二人に面倒を見て子供達がいるの。」

桔梗はそう言うと麻生は苦笑いを浮かべる。
麻生はその面倒を見てほしい子達に何となく予想がついたからだ。
それを知らない愛穂は話を進める。

「それってどんな子共達なの?」

「訳ありの特殊な能力者達なの、しっかり面倒を見てあげて。」

それだけ言うと何の説明もせず、愛穂の了承を得ずに目を閉じて眠りにつく桔梗。
愛穂は色々聞きたかったが桔梗がこんな状態なので聞くに聞けず、そのまま麻生と一緒に部屋を退出する。
病室を出るとカエル顔の医者が待っていた。

「彼女が言っていた子供達の病室まで案内するね?」

「お前、桔梗が何を頼むか知っていて敢えて俺に伝えずに呼んだな。」

「患者が望むものなら僕は何でも用意するよ?」

満面の笑みを浮かべてカエル顔の医者は言ってくる。
麻生は舌打ちをするが断る気もない。

「ちょっと待つじゃん。
 さっき病室に案内するって言っていたけど、桔梗が言っていた子供達も入院しているの?」

「二人いるんだけどその内の一人が入院患者でね?
 まぁ、口で説明するより会った方が早いね?」

そう言って背を向けて歩き始める。
愛穂は未だに納得できていないのか隣にいる麻生に聞く。

「恭介、あんたこれから会う奴の事知ってるの?」

「あ~、知っているというか・・・・面識しかないというか・・・」

歯切れの悪い解答に愛穂はますます納得できていないような顔をする。
桔梗の病室から少し離れた病室で医者は止まる。
どうやら目の前にある病室がその子供達がいる病室なのだろう。
愛穂は病室の前まで行き、ドアに手をかけようとした時、中から声が聞こえた。

「ねぇねぇ暇だよ~、ってミサカはミサカはあなたの身体を揺すりながら話してみたり。」

「あァ?うるせェぞ。
 黙って一人で暇でも潰してろ。」

「それが出来ないからあなたの身体を揺すっているんだけど、ってミサカはミサカはさらに強く揺らしながら言ってみたり。
 ねぇ、しりとりしよう、ってミサカはミサカは提案してみたり。
 それじゃあ最初はリス!、ってミサカはミサカはあなたの了承を聞く前に初めてみる。」

「スウェーデン、はい終わり。」

「もうお終いなの!?、ってミサカはミサカは納得いかないからもう一度言ってみる。
 ゴリラ、ってミサカはミサカもう一度再チャレンジしてみる。」

「ランタン、はい終わり。」

「納得いかない!!、ってミサカはミサカはあなたの身体をさらにさらに強く揺らしながら言ってみる。」

「しりとりに付き合ってやるだけでも感謝してほしいけどな。」

「こんなのしりとりとは言わない、ってミサカはミサカは納得のいかない表情をする。」

愛穂は中から聞こえてくる声を聞いてドアに手をかけようとした手がピタリと止まっている。
そのままゆっくりと麻生の方に振り返り言う。

「桔梗は特殊な能力者って言ってたけど。」

視線を病室のドアに向けて言った。

「それって能力以外の所が特殊って意味じゃん?」

愛穂はそう言うとドアに手を伸ばし、開ける。
突然、ドアが開いたので中の二人は一斉に愛穂と麻生の方に視線を向ける。
一人は白髪で赤い瞳の男、もう一人は肩まである茶色の髪と同色の瞳、立派なアホ毛を持ち、空色のキャミソールを着ている少女。
白髪の男は通称、一方通行(アクセラレータ)と呼ばれている。
学園都市最強の異名を持つ能力者だが、とある事件で脳にダメージを負っていてミサカネットワークというネットワークに演算能力を補助してもらっている事で何とか日常生活を生きている。
茶色の髪の少女は通称、打ち止め(ラストオーダー)と呼ばれている。
妹達(シスターズ)の上位個体でとある事件で死にそうになるも一方通行(アクセラレータ)が命がけで助け、今は普通に日常生活を生きている。
愛穂の言うとおり、能力だけでなく人としてこの二人はかなり特殊だ。
一方通行(アクセラレータ)は麻生が病室に入ってくるのを見ると目をひん剥いて話しかけてくる。

「テメェがどォして此処にいるンだァ?」

「どうしてと言われてもお前達の面倒をこの女性と見るように桔梗に言われたからだ。」

「はァ?そりゃあ一体」

一方通行(アクセラレータ)が聞こうとした時、一方通行(アクセラレータ)の声をかき消すように打ち止め(ラストオーダー)が声をあげる。

「ああ~!!
 あなたは前にあの人と一緒にミサカ達を助けてくれた人だ!!、ってミサカはミサカはあなたに指を指しながら言ってみる。」

打ち止め(ラストオーダー)の声で一方通行(アクセラレータ)の声が消されてしまい、一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)を睨むが打ち止め(ラストオーダー)はその視線に気づいておらず、麻生に駆け寄る。

「どうしてお前は俺の事を知っているんだ?
 初対面の筈だが。」

「ミサカは他のミサカが見たり聞いたり体験したりした事をミサカネットワークを通じて、他のミサカ達にも分かるようになっているの、ってミサカはミサカは説明してみたり。
 だから、ミサカとは初対面でもミサカ一〇〇三二号が会っているから一応、情報として知っているの、ってミサカはミサカは追加説明してみる。」

なるほど、と麻生は納得する。
一方通行(アクセラレータ)は苛立った口調で麻生に再び聞く。

「ンで、どォしてお前が俺達の面倒を見る事になってンだァ?」

「さっきも言っただろう。
 俺と此処にいる女性が桔梗にお前達の面倒を見てくれって頼まれたからだよ。」

「だから、どォしてお前達なンだよ?」

「さぁな、それは桔梗に聞いてくれ。」

これ以上は何も聞き出せない事が分かった一方通行(アクセラレータ)はもう一度舌打ちをする。
愛穂は打ち止め(ラストオーダー)の頭を乱暴に撫でながら自己紹介をする。

「ウチの名前は黄泉川愛穂。
 教師で警備員(アンチスキル)してるじゃん。」

最初は戸惑っていた愛穂だが彼女は警備員(アンチスキル)の仕事で、一方通行(アクセラレータ)のような悪ガキ?とよく話をしたりするので、いつもの調子で話す事が出来た。

「面倒なら他の医者にでも頼めばいいじゃねェか。」

麻生に面倒を見られるのがそんなに嫌なのか未だに食い下がってくる一方通行(アクセラレータ)
一方通行(アクセラレータ)の問いかけにカエル顔の医者が答える。

「君達以外にも患者はたくさんいるんだね?
 そうなると君達に何かあった時にすぐに駆け付けられない可能性があるんだね?
 だったら、保護者でも何でもいいから私達が面倒を見切れない時に見て貰う人がいれば君達の為でもあるんだね?
 特に君はまだ安全とは言えない状態だしね?」

これ以上反論しても無駄だと分かったのかもう一度舌打ちをする、一方通行(アクセラレータ)
対する打ち止め(ラストオーダー)は楽しそうな表情をしてみる。

「とりあえず、今日は顔合わせだけだから面倒を見てほしい時はこちらから電話するけど構わないかね?」

「俺は問題ない。」

「ウチも仕事中じゃあなければ問題ないじゃん。」

「よろしい、それなら今日はここまでだね?」

そう言ってカエル顔の先生は病室を出て行く。
それに続くように愛穂と麻生は病室から出て行く。

「ええ~、もう帰っちゃうの、ってミサカはミサカは不満な意見を言ってみたり。」

「まぁ、時間も時間だしまた今度じゃん。
 次に会った時に時間があれば相手してやるじゃん。」

愛穂がそう言うと打ち止め(ラストオーダー)は嬉しそうな表情を浮かべる。
一方通行(アクセラレータ)は麻生達に背を向けるように寝転がっている。

「じゃあな、一方通行(アクセラレータ)。」

「さっさと行きやがれ。」

愛穂と麻生は病室を出て行き、カエル顔の医者は別の患者の診察があると言って別の病室に入っていく。
麻生と愛穂は二人並んで病院を出て、歩いている。

「あの二人、なかなか大変そうじゃん。」

その言葉と裏腹にとても生き生きした表情をしている愛穂。
警備員(アンチスキル)の職分なのかそれとも教師としても職分なのか、愛穂はああいった子供の面倒を見るのが大好きなのだ。
対する麻生は疲れたような表情をしている。

「俺にはものすごく面倒そうな二人だと思うがな。」

「それでもちゃんと面倒は見るんじゃん。」

「当たり前だ、桔梗の頼みだしな。」

愛穂はその言葉を聞いて麻生の頭を乱暴に撫でながら笑う。
こうして二人は一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)の世話役?になった。 
 

 
後書き
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