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銀河転生伝説

作者:使徒
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第24話 フェザーン占領とヤン艦隊の方舟隊

宇宙暦798年/帝国暦489年12月。
55000隻の大軍を以ってイゼルローン要塞を包囲攻略せんとするナトルプ上級大将は未だ目的を果たせず、その求めに応じて帝都オーディンを急遽進発したシドー艦隊は依然膠着状態にあるイゼルローン戦線の増援に向かっている……はずであった。


―フェザーン―

「おう、そろそろ交代時間だな」

「嬉しそうだな。また彼女とデートか?」

「へへへ、式場の下見に行くんだ」 ← 死亡フラグ(笑)

「おお~、この野郎幸せそうに」

そんな中、

「な、何だ?」

「未確認船影発見! 回廊内にワープアウトした模様、急速にフェザーン本星に接近中。数およそ……い、10000隻!? いや、11000……12000……13000……どんどん増える!! 何なんだこれは!?」

「て、帝国軍の艦隊だ!」

「何!?」「何だって!?」「何だと!?」

「警報を鳴らせ、非常態勢だ。警告を発してみろ」

帝国軍の艦隊にその場で停止するよう警告が発せられる。

「何だって帝国軍がいるんだ? フェザーン回廊は非武装宙域のはずだぞ」

「我々は一杯食わされたんだ。奴等はイゼルローンへ向かうと見せかけて一挙にフェザーンへ殺到したんだ!」

「すると奴等はフェザーンを武力占領するつもりか?」

「それ以外に何がある?」

「落ちついているな、一大事だぞ!」

そんな会話の最中も、帝国軍に対する呼びかけは続けられていたが、一向に応答する形跡は無い。

「ダメです応えません!」

「自治領主府へ連絡しろ、帝国軍の侵略だ」

「はい!」

「それにしても、こんな事態になるまでどうして分からなかったんだ!」

「帝国の駐在弁務官事務所の連中はいったい何をやっていたんだ!」

そんな間にも、次々と現れる帝国軍。
彼らには、どうすることも出来なかった。

・・・・・

帝国軍は特に問題もなく、フェザーンを占領した。
この世界では、ルビンスキーは完璧に帝国の味方となっているため、宇宙航路局のデータなどは既に確保済みである。

帝国に制圧されたフェザーンでは、当初こそ混乱が大きかったものの直ぐに治まり、意外と帝国を歓迎する風潮が強かった。
これは、占領後帝国軍が治安維持に努めたこともあるが、フェザーンが併合され帝国領となれば関税がかからなくなる(主に萌え関連の物に)というメリットがあったことも大きい。

そう、フェザーンは既に汚染され、もはや手遅れであった。

銀河連邦末期の人々の無気力感は、相次ぐ規制によって萌え関連の物が廃絶してしまったからだと言う意見が多数を占める。
そういう意味では、フェザーン人にとって帝国軍は救世主であった。

・・・・・

宇宙暦798年/帝国暦489年12月30日。
ハプスブルク大公アドルフがフェザーンに到着した。


<アドルフ>

フ、フフ、フフフ、フハハハハハハハ。

遂に、萌えを銀河に広める第一歩を踏み出せた。
このまま同盟を滅ぼして俺の野望を達成してやるぞ。
歴史が変わる。いや、俺が変える!

……なんか俺、敵の悪役みたいじゃね?
って言うか『ジーク・カイザー・アドルフ』『オール・ハイル・アドルフ』って何さ?
俺まだ皇帝じゃないんだけど……。

まあ、確かに時間の問題でもあるが。
同盟を滅ぼしたら、あの糞ガキを退位させて俺が皇帝の座につく。
これは既に既定事項だからな。

さて、部屋で新発売のガン○ラでも組み立てるかね。
最近忙しくて暇が無かったからな。(※他の人に比べれば十分暇でした)


* * *


宇宙暦799年/帝国暦490年の年明けと共に、帝国軍によるフェザーン占領の報が同盟政府にもたらされた。

この報に同盟政府は驚愕し、急いで報道管制を敷いて市民に知らせるタイミングを検討したが、フェザーン方面からの宇宙船乗りたちが危機を声高に触れまわったため無益であった。

急遽開かれた議会では最高評議会議長であるヨブ・トリューニヒトが早々に退席し、代わりに国防委員長のアイランズが進めていた。

「戦闘指揮は制服組の専門家に任せるとして、我々が決断しなければならないのは降伏か徹底交戦かということだ。念のために尋ねるが降伏を主張するものは?」

さすがに、誰も降伏を言い出す者はいない。

「では、交戦するとして同盟の全領土が焦土と化して、全国民が死滅するまで戦うのか。それとも講和ないし和平を目的としてなるべく有利な条件が得られる為の政治的環境を整える、そのための技術的手段として武力を選択するのか。その辺りを確認する必要があると思うが」

・・・・・

議論の結果、講和ないし和平の条件を整えるための技術的手段として武力を選択することとなり、軍部へと協力要請がなされ、宇宙艦隊司令長官のアレクサンドル・ビュコック大将はそれに同意した。

自由惑星同盟軍はこの数年来の動乱で機動部隊の大半を失い、イゼルローン要塞に駐留するヤン艦隊を除けば、現存する纏まった艦隊は第一艦隊、第十二艦隊だけとなっている。

第一艦隊は、クブルスリー司令官の統合作戦本部長就任に伴ってかつての第二艦隊司令であったウィリアム・パエッタ中将が司令官となり、第十二艦隊はアムリッツァ星域会戦における第十二艦隊の分艦隊司令で唯一の生き残りであるアルト・スプレイン中将が司令官の地位を継承した。

また、各星系の警備隊や星間パトロールに所属する重装備の艦艇や廃棄寸前の老朽艦からテストの終わっていない新造艦まで掻き集めた結果、数だけは20000隻に達した為、これを二分して第十四、第十五の2艦隊が急遽編成される。
それぞれの司令官にライオネル・モートン、ラルフ・カールセン両提督が任命された。

その後の軍議では、今の同盟軍にフェザーン回廊の出口で正面決戦を挑むだけの戦力は無いことから、帝国軍の補給線が限界に達するのを待って、その側背を突き侵攻を続けることが不可能なだけの損害を与えて撤退に至らしめることが基本構想とされた。

スプレイン中将より、帝国軍の補給部隊を襲撃して撤退させるという案が出たが、推進装置を取り付けたガイエスブルク要塞がフェザーン回廊に現れたという報告から敵は補給に不安が無いとの結論に至り、却下された。

そして、同盟軍4個艦隊52000隻はハイネセンを出立する。

その頃、帝国軍もフェザーンを立ち、先行のミッターマイヤー艦隊がフェザーン回廊の出口に達していた。


宇宙暦799年/帝国暦490年 1月8日。
帝国軍の第一陣はフェザーン回廊を突破し、彼らが初めて見る恒星の海へと乗り出した。


* * *


帝国軍、同盟軍の主力部隊がそれぞれ動き出した頃、ここイゼルローンでも事態が動き出そうとしていた。

「(軍人一筋40年。片目、片腕を失いながらもここまで来れたものだな……)」

「閣下」

「ん? ……すまぬな、少々考え事をしていた」

「お疲れのところ申し訳ありません。ドロッセルマイヤー、ルッツ、アイゼナッハ大将ら三提督が面会を求めておこしですので」

「うむ、会議室に通してくれ」

「はっ」

「(……おそらく、この一連の戦いが最後の戦いになるだろう。敵がいなくては戦いようが無いからな)」

・・・・・

「友軍がフェザーン回廊に大挙して雪崩れ込んだ現状、同盟軍がイゼルローン要塞を固守したところで戦況には何ら寄与しない。遠からず、イゼルローン要塞を捨てる筈だ」

「では、攻撃を加えずこのまま包囲するだけに留めますか?」

「いや、むざむざ敵に時間を稼がせることもなかろう。敵が何を企んでいるにせよ、その準備に専念させてやる必要はない」

「つまり、嫌がらせの攻撃をすると?」

「うむ」

帝国軍は、再びイゼルローン要塞への攻撃を開始する。

同盟軍も艦隊を出撃させ応戦するが、誘いに乗って深追いするようなことはせず、トールハンマーの射程から出るようなことはしなかった。

そんな中、要塞より護衛艦を伴った輸送船団が発進する。

「イゼルローン要塞より推定500隻の輸送船が発進し、およそ2000隻の戦闘用艦艇がそれを護衛して同盟領方向へ向かいつつあります」

「……どう思う?」

「表面を見ればVIPまたは非戦闘員が離脱を図っているように思われますが、敵はあのヤン・ウェンリーなのでどのような罠があるやら……」

「ふむ……」

ナトルプが少し考え込んでいると、そこへ報告が入る。

「要塞から離脱した敵を追って、ドロッセルマイヤー艦隊が動き出しました」

「まあ、よかろう。やつに任せるとしよう」

・・・・・

ドロッセルマイヤーは艦隊を二分し挟撃体制を築こうとするが、後続のアーベライン中将の部隊が要塞の浮遊砲台からの砲火に曝される。

「く、罠か!」

アーベライン分艦隊は浮遊砲台による側面からの砲撃によって、成す術も無いままにその数を減らしていく。

「見殺しにはできん、援護せよ」

ナトルプ艦隊の援護射撃によってアーベライン分艦隊は危機を脱したが、挟撃態勢は崩れてしまっていた。

「この隙に敵艦隊に突撃せよ!」

ドロッセルマイヤー艦隊が攻撃を仕掛けると、護衛にいた同盟軍艦隊はすぐさま撤退に移り、輸送船のみが残される。
そして、帝国軍が輸送船を拿捕しようとした時、輸送船が次々と爆発して艦隊に被害を与えていく。

「く、小細工を……」

「閣下、敵艦隊が反転してきます!」

反転してきた同盟軍の奇襲によって窮地に陥っていたドロッセルマイヤー艦隊だったが、ルッツ艦隊が救援に来たことで不利を悟った同盟軍は撤退した。

損失は、先のアーベライン分艦隊のも合わせると2000隻に達していた。

「あのような策を弄したのは実際に要塞を捨てる時にこちらの追撃の意思を鈍らせるためだろう。単に戦術上の小さな勝利のためだけではあるまい」

「では、改めて追撃の用意をいたしますか?」

「いや、ここで態々いらぬ危険を冒さずとも帝国軍の勝利は揺るがん。放置しておいて構わんだろう」

「分かりました。しかし、追撃はともかくイゼルローン要塞進駐の準備は整えておきたく思いますが」

「うむ」


* * *


「イゼルローン要塞から膨大な数の艦船が離脱を開始しました」

「追撃は無用だ。先ず要塞を占拠することを目的とせよ」

「ルッツ提督より入電」

スクリーンにルッツの姿が映る。

『敵が要塞を放棄したのは事実としても、注意するのは置き土産の存在でありましょう。要塞動力部に爆発物を仕掛け、我らが進駐したところ一挙に殺戮するつもりではないかと思われます。先ず、爆発物の専門家を派遣して調査させるべきではないでしょうか?』

「なるほど、卿の意見はもっともだ。直ちに専門家を派遣しろ」

・・・・・

結局、要塞に仕掛けられた爆弾が爆発することは無かった。
これは、ヤンが真の罠に気付かせないために爆弾が発見されるように設置したからである。
もっとも、容易に発見されると罠を疑われるため多少分かりにくくしてあり、発見されずに爆発……という可能性も存在したが。

「まったく、危機一髪でした。実に巧妙に隠されておりまして、発見が後五分遅れていれば要塞は大爆発を起こしているところでした」

「(ふむ、あの名将ヤン・ウェンリーがこのような凡ミスをするとも思えんが……これは何か裏が有るな。今度はどのような策を催したものやら……まあ、ここで同盟を滅ぼしてしまえばその策も無用になる。今の時点で深く考える必要はあるまい)。オーディンに連絡せよ、『我、イゼルローン要塞ヲ奪還セリ』とな」

「はっ」


宇宙暦799年/帝国暦490年1月9日。
イゼルローン要塞は帝国軍の手に戻った。
ほぼ、2年半ぶりのことである。
 
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