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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  百八話 刃の影

 
前書き
はい!どうもです!

今回は洞窟内の会話シーンの初めのとこです。

それなりに短いですw

では、どうぞ! 

 
さて、それから数分。リョウ達四人は、砂岩地帯の、岩山内にある洞窟の中に、ハンヴィーごと入り込む形で隠れていた。
入口は大きめで、中も広い。入口から見え無い位置までハンヴィーで入り込んでも、さらにその奥に畳四畳分くらいのスペースはあった。

「さてと、そんじゃここで一休みがてらスキャン回避と行きますか。俺らの端末にも情報こねぇけど……ま、良いだろ?」
「え、そうなの?」
車から降り、腰を伸ばしがてらそう言ったリョウにキリトが訪ね、リョウは苦笑する。

「あのなぁ……」
もし洞窟の中で自分達には情報が来るのに他のプレイヤーには自分達の位置が表示されないとしたら、それこそチート以外の何物でもないだろう。
開始と同時に全員がこぞって洞窟の取り合いをしてもおかしくは無い。

「成程なぁ……ま、水の底に潜るよりはましか……そう言えば……」
と、キリトがのんびりとした調子で言った所で、彼はシノンの方に真剣な目を向けた。

「死銃はさっき、突然キミの前に現れたよな。もしかして、あいつは自分を透明化したりすることが出来るのか?鉄橋脇で消えた時も、衛星に映らなかったのも、もしかしてその力のせい……?」
「たぶん、そう……」
キリトの問いに壁に寄り掛かるように座ったシノンが答えようとした所で、リョウが慌てたように声を上げた。

「おぃ、ちょちょちょちょちょ。悪いけど俺らにも分かるように一から説明してくんね?」
シノンの右隣でアイリが、コクコクと頷く。先に四人全員が事情を知っている事を説明したうえで、キリトが自分達の側であった事を話しだす。
すなわち、ペイルライダーが、リョウ達が居た田園地帯の南に位置する森林地帯の向こう。山岳地帯に繋がる鉄橋近くで殺された事。その後、一帯をスキャンで調べた物の、誰も見つからず、鉄橋下の川底に潜ったと判断して廃墟地帯まで追ってきた事。リョウ達と同じく廃墟地帯に居る銃士Xを死銃であると判断し、シノンが狙撃、キリトが前衛となって攻撃しようとした所、突然シノンが後ろから電磁スタン銃による狙撃を受けた事。
その時の様子まで事細かに、キリトは話してくれたのだ。

「で、透明化ってのは?」
「もしかして……メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)?」
「……」
アイリの問いに、シノンは正面からコクリと頷いて返した。

「何だそりゃ」
リョウが問うと、アイリが答える。

「ボス専用の希少能力(レアアビリティ)……って、もうボス専用じゃないのか……」
「それ使うと……透明になれる?」
キリトの問いに、アイリはしっかりと頷く。

「自分の迷彩服の表面で光を滑らせて、自分の像を結ばなくすることが出来る。って能力何だよ。見たことは無かったけど……そう言う能力の有る装備が有ってもおかしくは無いかな……」
「成程……って……」
キリトがふむんと鼻を鳴らし、少し顔をしかめて入口を見た。それを見て、何かを察したようにシノンが話す。

「ここなら、多分大丈夫。地面が砂だから、透明になっても足音は聞こえるし足跡も消せない。さっきみたいに、行き成り近くに……って言うのは無理」
「成程……じゃあ……」
キリトが二ヤッと笑ってリョウを見る。対しリョウも、二ヤリと笑って返した。

「任せとけ。ばっちり耳澄ましといてやるよ」
そう言ってリョウはシノンの正面に座り込むと、懐から初期配布の救急キッドを取り出して首筋に当てるとぶしゅッと音を立ててそれを使う。キリトもそれに倣った。一瞬だけ回復(ヒール)エフェクトの赤色が体を包むと、二人のHPが徐々に回復していく。一本でHP30%回復のアイテムなのだが、180秒もかけて回復するアイテムなので戦闘中に使っても殆ど効果が無い。
リョウは先程P90の銃撃を喰らった際に運転席故にしっかりと体勢を低く出来なかったせいか、後部座席の窓から飛び込んだ数発を背中に受けていたし、ガンシートに居たキリトもどうやらHPの六割近くを削られているようだった。

「ふぅ……アイリ、今何時?」
「えっと……九時十五分」
「五回目か……」
アイリの答えに、問うたリョウがもう一度息を付く。不意に、シノンが聞いた。

「ねぇ……死銃が、さっきの爆発で死んだって可能性は……?」
「いや。爆発の直前で馬から降りるのが見えたからな……あれだけの爆発だし、かなりのダメージは受けただろうけど、死んだとは期待しない方が良いと思う」
「そう……」
キリトが答えると、シノンは抱えた膝に顔をうずめるように俯く。

「シノン……」
アイリが心配したように片手を上げたが……しかしその肩に触れる直前で手を止め、静かにその手を降ろした。
その様子を特に表情を変えずに見ていたリョウが、キリトに声をかける。

「そういや、お前、銃士Xに仕掛けたにしちゃ随分早く戻ってこれたんだな。シノンが狙撃地点に付いてなかったっつー事は、そんなに時間経ってなかったんだろ?」
「あぁ……それは……」
キリトの話によると、銃士Xは女性だったらしい。無論、キリトやリョウのような偽F型ではなく、正真正銘の女性アバターだ。
当然、その時点で彼女は死銃では無いから、自分達が何かを見落としていることには気づく。自動的に死銃がシノンの方に行くかもしれないと分かり、堂々と名乗ろうとした銃士Xを問答無用で斬り伏せ、一発喰らいつつも彼女のライフルとスモークグレネードを拝借。
シノンの所に戻った所で、リョウとアイリが死銃と戦闘をしている所に遭遇したと言うわけだ。

その話を聞き終え、成程と笑いながらリョウが答えた後も、シノンは俯き、アイリは落ち込み気味に少し目を伏せていた。苦笑しながら、リョウは二人に言う。

「御二人さん、んな自分の事責めなさんな」
「え……」
「…………」
リョウの言葉に、キリトが続けた。

「そう、だな……シノンの事に関しては、俺も彼奴が居た事に気が付けなかった訳だし……前衛後衛が逆だったら、きっと俺が麻痺弾喰らってたよ」
「で、また俺はお前のフォローに入ってたわけだ」
「またって何だよ?俺そんなに何度も兄貴にフォローしてもらってないぞ」
「そうかぁ……?ま、それは良いとしてよ、アイリも。何が有ったか知らねぇけど、次からあんな風にならないならそれでいいからよ」
「…………」
リョウの言葉に、アイリはゆっくりと俯く。その様子にリョウは再び溜息を吐きかけて。

「……それは、本気で言ってるのかな……?」
「あ……?」
アイリが、その言葉を遮った。普段と違う、少し低めの声に、キリトが反応し、シノンは膝の下から目だけで此方を見る

「“何が有ったか知らないけど”って……本当に、そう思ってる……?」
「…………」
「……兄貴?」
「…………」
それは、一般的に見れば妙な問いだった。実際、アイリ自身何故今のタイミングでこんなことを聞いたのかは分からなかったし、キリトやシノンに至っては突然の問いにアイリが何を言いたいのかが分からなかった。あくまで、二人の間に自分達が知らない間に何かが有ったのだろうと思っただけだ。そしてリョウは……

「…………」
無言で、そして無表情で、アイリの瞳を正面から見つめていた。その瞳にはいくつもの感情が有ったが、それらすべてが混ざり合っていて、一貫していなかった。
やがて、アイリが少し自分でも困ったように苦笑しながら言った。

「あはは……ごめん。変な事聞いたよね。忘れて!うん!」
そう言って、視線を逸らす。その顔には、張り付いたような小さな笑顔。そしてここまで来て……ようやく、リョウが口を開く。

「……やっぱ、気に食わねぇか?」
「っ!?」
それは、とても低い声で、聞いた瞬間、いつかの記憶がよみがえり、その声にキリトの背筋が冷える。

「え……?」
アイリが問いながら、リョウの方を向いた。リョウは座って胡坐を掻きながらも右膝を立てて、その上に右腕を乗せるようにした体勢でアイリを見ている。赤く、短い髪の向こうで、見覚えのある、ニヤリとした笑みが現れた。

「っ……!」
「あれ……聞こえなかったか?じゃ、もう一回」
何も言えず、唯その眼を見開いて、瞳を大きな感情で揺らすアイリに、リョウは再度問うた。

「……そんなに気に食わねぇか……?“親友の仇”が、正義の味方の真似ごとしてんのは」
「…………!!」
ただ、その一言で、キリトとアイリの表情が凍りつく。何も分からぬシノンだけが、ただその場のあまりに重たい空気の息苦しさを素直に感じる事が出来た。

アイリの前に……一本の、刃が居た。


「なぁ……?“スイカ”」
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

というわけで今回はちっとわけわかめなお話でした。

少しだけヒントを出しますと……前回のアイリの様子と組み合わせて……後は想像していただければw

次回からはシノンがメイン。
ではっ! 
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