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八条学園騒動記

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第十九話 もてない苦しみその五


「まずは猫の毛」
「うん」
 巨大な鍋の中に毛を数本入れた。
「プテラノドンの爪」
「よし」
 次に爪を。
「ゼウグロドンの皮」
「美味かったな」
「ああ、ベーコンが特にな」
 やけに分厚い皮を。ちなみにこの時代鯨はどの国でも食べられるがゼウグロドンのような昔鯨類も普通に食べられるのである。他にはイルカも食べたりする。
「ウシガエルの骨」
「何かさ」
 彰子は彼等の不気味な儀式を見ながら述べる。
「魔女のあれみたいね」
「あれで何作るつもりかしら」
「さあ。闇鍋みたいよ」
 コゼットが七美に言う。
「闇鍋!?」
「ほら、他にも色々と入れだしたじゃない」
「あっ、本当」
 見ればその通りだった。何か次から次に食べ物を入れていく。虫や雑草まで入れているからとてもまともな鍋には見えはしないが。
「糞っ、何でこんなにまともなものが揃わねえんだ」
「あいつやっぱり」
 中からカムイの声が聞こえてきた。七美はそれを聞いて呟く。
「いたんだ」
「予想通りね」
「そうね」
「どうなってるんだよ、本当によ」
 三人のクラスメイトに見られているとも知らず馬鹿話をしていた。
「おかしいだろ」
「おかしいも何もよ」
 中の一人が彼と思われるフードの男に語っていた。
「これしかないから仕方ないだろ」
「この特製闇鍋を食えば俺達は」
 彼等は言う。
「あのバカップル共を懲らしめる無限の力を手に入れられる」
「そうだぞ、その為には仕方ないだろう」
「本当にこれで力が手に入るんだな」
「ああ」
 誰かがカムイの声に応えた。
「間違いない」
「わかった。それじゃあ食うか」
「よし、皆入れたしな」
「食うとしようぜ」
「よし」
 その不気味な闇鍋を食べはじめた。何やら見ているだけで不気味なものがある。
「食べはじめたね」
「ええ」
 七美は彰子の言葉に応えた。
「何なんだろ、あの闇鍋」
「さあ。どちらにしろ碌なものじゃないわよ」
 コゼットが言う。彼女もそれだけは察しがついたのだ。
「まあこれ以上見ても何の利益もないみたいね」
「そうね」
 七美はコゼットの言葉に頷いた。それから彰子にも言った。
「帰る?」
「帰るの?」
「だってこれ以上見ても何もなさそうだし」
 とりあえず何のメリットもないであろうことは彰子も薄々わかったような気がしてはいる。
「帰ろう。それでさ」
「うん」
 彰子は七美の言葉に頷く。
「とりあえず何か食べる?」
「何かって?」
「ラーメンでも」
「ラーメンなの」
 コゼットはそれを聞いて何か考えるような顔を見せてきた。
「嫌なの?」
「ううん、そうね」
 ここで彼女は少し考える顔を見せてきた。
「ラーメンもいいけれどさ」
「あんた宗教的にはそんなに五月蝿くはなかったんじゃ?」
「まあね」
 ラーメンのスープにはよく豚骨が使われる。コゼットはイスラム教徒なのだ。連合ではかなり寛容とはいえやはり豚肉やその関連を口にするのはイスラム教徒としてはまずいのである。
「だったらいいじゃない」
「だからさ」
 それでも彼女は言う。
 
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