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八条学園騒動記

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第十七話 影の実力者その三


「女の子に関しては」
「否定できないかしら」
 ビアンカもそれを認めるしかなかった。
「そういうつもりはないんだけれど」
「それでもね」
 女の子達は言う。
「そう聞こえるわ」
「言っておくけれど私は本当に駄目よ」
 アンはしつこいまでに念を押す。
「とにかくイスラエルでは絶対の御法度なんだから」
「わかってるわよ。アンも嫌いじゃないけれど」
「友達としてよね」
 思わず引く。本気であった。
「そうじゃなかったら?」
「止めてよ、本当に」
 またムキになっていた。本当に嫌なのがわかる。
「恋愛対象にはちょっと」
「わかってるわよ。安心してよ」
 ビアンカは笑って述べる。
「それはないから」
「だといいけれどね」
「友達としてね。あらためて宜しくね」
「ええ、こちらこそ」
 挨拶をしてもどうにもアンは怖がっていた。
「私だって相手が嫌だって言ってるのに付き合ったりしないわよ」
 その辺りはあっさりとしていた。
「だから安心して」
「そうね。それじゃあ」
 アンもやっと落ち着いてきた。どうにも宗教的な戒律よりも個人的な感情が大きいようである。それは見ていると何処かわかるものであった。
「こちらも」
「ええ」
「それはそうとしてよ」
 ルビーがまた言う。
「ビアンカの好みはわかったけれど」
「うん」
「問題はアルフレドよね」
「俺か」
 そこにはアルフレドもいた。結構寡黙なのでこうした場合あまり目立ったりしないのである。目立つ面々ばかりのクラスの中でキャラクターではあまり目立たない男であった。
「アルフレドはどんなの娘が好みなの?」
「いきなりそう言われてもな」
 話を振られるとどうにも困った顔になってしまった。
「俺もそりゃ好きなタイプはあるよ」
「男の子とかは?」
「ああ、それはない」
 同性愛の方は否定した。
「そういうのは好みじゃないんだ」
「そうなの。よかった」
 アンがそれを聞いて胸をほっと撫で下ろした。
「それでね」
「ああ」
「どんな娘は好きなの?」
「そうだなあ」
 言われてもどうもこれだということが言えないらしい。真剣に考える顔になっていた。
「言われてみると」
「言うの難しい?」
「いや、そうでもない」
 それは否定した。
「ただ、ちょっとな」
 それでも何か言いにくそうであった。困った顔になっていた。
「何て言うか」
「別にこのクラスの娘じゃないんでしょ?」
「ああ」
 ウェンディに答える。
「いいか悪いかは別にしてそれはない」
「じゃあ言えるじゃない。誰よ」
 レミが問う。
「神崎亜矢」
 アルフレドは一言そう答えた。
「あれっ、そうなの」
 皆それを聞いて目をパチクリとさせた。
「あんた亜矢ちゃんが好きだったの」
「ああ」
 少し戸惑いながらもそれに答えた。
「変か。実は言おうかどうか迷っていたんだ」
「別に」
「いいんじゃない?亜矢ちゃん可愛いし」
「そうよね」
 今人気のアイドルである。小柄ながら可愛らしいルックスと如何にもといった感じのアイドルめいた顔立ちで人気の女の子だ。日本の歴史上最強のアイドルとさえ言われている。抜群のスター性を持っている。
「けれど意外って言えば意外だよな」
「そうだとな」
 ベンとトムが話を聞いたうえでそう言う。
「アルフレドって固いかと思ったけれど」
「アイドル好きだったんだ」
「歌もいいだろ?」
 アルフレドは戸惑いながら述べる。
 
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