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八条学園騒動記

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第十六話 物持ちはいいけれどその二


「いいか!」
「はいはい」
 三人はフランツの話を聞く。何時の間にかアンジェレッタとロザリーも巻き込まれている。
「人生は気合!そして努力だ!」
 この言葉自体はまあ正論である。よく言われる。
「だがそこには常に前に進む気持ちがなくてはならないんだ!現状に満足せずにだ!」
「それでどうしろっていうのよ」
 ナンが問う。
「決まっている。この場合は」
「この場合は?」
「アンジェレッタの薬を全部飲む!そして!」
 彼はいきなり全ての薬をその手に取った。
「あっ、私の薬」
「飲む!!」
 そのままおもむろに口の中に流し込んだ。朝鮮人参はバリバリと噛み砕く。
 すると暫く経ってからフランツの全身が急に膨張した。そのまま上着を破き上半身裸になる。
「うおおおおおおおおっ!」
「ううん、何て漫画的なんだろ」
 ロザリーがそれを見て言う。目は苦笑いで額に汗をかいている。
「前から思ってたけれど上着は破れてもズボンは破れないんだよね、この場合」
「何でだろうな、それ」
 アンジェレッタに返答をしながらフランツを見守っている。
 フランツの身体に異変が起こっていた。何か全身が赤く染まっていく。
「みなぎる、みなぎるぞ」
 彼は言う。
「燃える!これならいける!」
「何かありそうね」
「っているか起こってるわよ」
 アンジェレッタに今度はナンが突っ込みを入れた。
「どういう薬なのよ」
「唯の漢方薬だったよ、どれも」
「それであれ?」
「まあ全部飲んだからね、あれだけ」
「だからかな」
「多分」
 アンジェレッタは言う。
「そうだと思うけれど」
「ううん」
「にしてもよ」
 ナンとロザリーがまた言葉を返す。
「訳のわからない薬持ち過ぎ」
「ちったあまともな薬ないのかよ」
「あるわよ」
「あるの」
「風邪薬だって消毒薬だって。結構あるわよ」
「ふうん」
「包帯だってね」
 また懐から出してきた。それも何本も。
「持ってるわよ」
「ってまたそれだけもかよ」
「本当にどういう懐なのかしら」
「冗談抜きで四次元につながってるんじゃないのか?」
「そうよね。何か」
「それでさ」
 ナンは話題を変えてきた。
「何?」
「あれ、どうするの?」
 フランツを指差して問う。
「あのままにしておくつもり?」
「洒落にならない位厄介だぞ、あれ」
「うおおおおおおおおおおおっ!みなぎるぞコスモが!」
「早速訳のわからないこと喚いてるし」
「どうするよ、あれ」
「ああ、それは心配ない」
 タムタムがすっと出て来た。
「あれはあれで使い様がある」
「あるのかよ」
「そうだ。俺に任せてくれ」
 ロザリーに冷静な声で答える。
「じゃあな。おいフランツ」
「タムタム、どうしたんだ?」
「一緒に走らないか?」
「ランニングか!?」
「そうだ」
 彼は穏やかにフランツにそう応える。
「わかったな、今から全速力でだ」
「よし!何処までだ!」
「飽きるまでグラウンドをだ。いいな」
「よし!」
「じゃあ行くぞ」
「おおっ!それが終わったら!」
 フランツは一人勝手に叫ぶ。
「魔球の開発だ!やるぜ俺は!」
「よし、何時までも付き合うぞ!」
「言ったな!じゃあ開発までいくぞ!ライジングボールの完成だ!」
「わかった!」
 二人は教室を出た。そしてそのままグランドを全速力で走りはじめた。
 
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