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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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別世界より⑩

<グランバニア>

リュカの娘の1人…フレイの涙ながらの抗議の声。
本人の意志を無視した異世界召還事件の張本人、プサンは両手を胸の前で激しく振って言い訳を始めるのだ。
「リュ、リュカを無理矢理異世界へ送った事は、私の罪として認めますが…ティミーさんを始め、ビアンカさんやマリーさんをあちらの世界へ送ったのは、私の所為ではありません!本来、異世界への(ゲート)は簡単に開くものではないんです。皆さんに(ゲート)を開ける事が出来るとは思ってなかったんですよ!」
一生懸命言い訳をするプサン…
しかしその内容を聞き、酷く落ち込むリュリュとマーサ。

「おい、クソヒゲメガネ!お前ふざけるなよ…今の言い方じゃまるでリュリュとマーサお祖母様が、余計な事をした所為みたいに聞こえるじゃないか!」
皆が押し黙る中、1人憤慨するのはポピー。
「そ、そう言う他意はありませんが、事実としてはそうなります…」
プサンとしては他人を責めるつもりはないのだが、売り言葉に買い言葉的な流れで、思わず2人に罪を被せてしまっている。

「いいや違うね!みんなお前の所為だ…お前と、向こうの世界の神…ルビスとか言うバカ女の所為だ!」
「な、何故そうなるのですか!?」
「お前等神々が私達人間を侮り、私達家族の絆を見くびった所為で、今に至るこの状況になってしまったんだ!」
「に、人間を侮る?………家族の絆!?」

「そうよ…私達の誰もが、お父さんの身を心配し助けようと努力する。そしてその方法は多種多様に渡り、各々の持てる力を全て出し尽くす事になる。その結果がパルプンテよ…何が起こるか分からないけど、もしかしたら良い結果が起こるかもしれないとの思いで、お父さん救出に望みをかける!」
「し、しかし…向こうの世界を平和にすれば、リュカは戻ってくるとは思わなかったのですか?こちらの世界が危険になるかもしれない魔法を持ち要らなくても、時間が経てばリュカは戻ってくるとは!?」
ポピーの怒りの篭もった説明に、後には退けなくなったプサンが抗議する。

「それは考えました…しかし向こうの大魔王とて大人しくは倒されてくれないでしょう。我々はリュカに全幅の信頼を置いてますが、万能ではない事も事実…家族としては心配になってしまいますよ」
今まで黙って話を聞いていたオジロンが、プサンに対し初めて口を開いた。
「それに前もって説明してくれても良かったのではないですか?『異世界が滅びの危機に直面している。赴いて平和を取り戻してほしい』と、先に言って頂いても………」
「オジロン…それは無理な注文よ。相手は私のお父さんなのよ…前もって異世界への冒険をお願いしたって『ふざけんなバカ!何で僕がそんな危険な事をしなければならないんだ!?』って拒否するわ…その後で強引に異世界へ行かせても、サボタージュを決め込まないとも限らないし…」
流石はポピー…父親の事を良く理解している。

「そ、そうなんですよポピー…ありがとう、私の苦労も分かってくれ「黙れバカクソヒゲメガネ!」
段々プサンの愛称が酷くなる…
「確かにお父さんの性格を考慮に入れれば、黙って勝手に異世界へ追いやる事も止む無しと理解しましょうけど、その後で私達家族に対して詫びと説明があっても然るべきではないのかしら?」
一瞬味方になったと思ったポピーから、強烈な一撃を受け言葉を失うプサン。

「さっきも言ったけど、今回の一連の事件は全部お前等神々の驕りから端を発した出来事なのよ!」
「う………た、確かに…私は人間を侮っていたのかも………」
ガックリと項垂れて、弱々しく呟くプサン…
そんなプサンに可愛らしい笑顔で近付き、優しい声で話しかけるポピー。
彼女の事をよく知る皆は、この時プサンの運命を哀れんだという…

「いいのよプサン…過ちは後日償えば済む事なの…だから天空人の技術を提供してちょうだい♥ な~に簡単よ…蒸気機関に代わる、小型化可能な動力源だけでいいの。それでこれまでの事はチャラにしてあげるから」
「そ、それとこれとでは話が違うでしょう!」
「おい良く考えろよクソバカヒゲ駄メガネ!私のお父さんが、一連の原因に気付かないとでも思ってるのか!?とっくの昔に感付いて、帰ってきたら無理難題を要求しようと画策しているはずよ!『天空城よこせ!』とか、そんなん平気で言ってくる相手だというのを忘れないでほしいわ…」
プサンの顔から血の気が引く…
そして対照的に満面の笑みなのは、最恐の美女ポピー。

「動力機関の技術提供だけで今回の事件をチャラにしてあげるって言ってるの…悪くない取引だと思いますけど…お父さんが帰ってくるのを待ちましょうか?」
「本当に…技術提供をすれば…それ以上は………」
満面の笑みの美女に肩を大きく抱かれ、項垂れ呟く姿はお世辞にも神とは呼べない…
冴えない中年男が、ギャンブルや女性問題で首が回らなくなり、生命保険に加入させられそうになっている様な姿…
それがこの世界で最も借りを作ってはいけない一族に、借りを作ってしまった神の姿だ!

「わ、分かりました…しかし、もう一つ約束してほしい事が…」
完全に負けを覚悟したプサン…それでも最後の力を振り絞り、神として条件を提示しようと試みる。
「分かってるわ…軍事利用を規制させたいのでしょ?」
「そ、そこまで考えてありましたか…聡い人だとは思ってましたが…ここまでとは…」
最早抗う力を全て奪われたプサン…

「ふふふ…私だって戦争に神様の力を使うなんて反対よ。でも、今を生きている私達には約束できても、未来を作るまだ生まれぬ子孫の事は約束できません!」
「そ、それでは技術提供は出来ないです!」
ポピーの答えが、納得のいく答えではなく思わず声を荒げるプサン。
「落ち着いてプサン…私達の子孫が、貴方からの技術を軍事利用しないと約束できなくとも、『軍事利用してはいけない』と言い伝える事は出来ます。だから提供する技術には、天空人側からセーフティーロックをかけられる様にすれば良いじゃない」

「…我々側からセーフティーロックを?………それはどういう風にですか?」
「うん。それはこれから話し合いで詰めて行きましょう。先ずは提供して頂く技術が、どの様な物かを我が国の有識者達に説明してほしいの。何なら今すぐにでも有識者を集めますけど…どうしますか?」
最早完全にポピーペースで話が進む。

オジロンの近くに座るマーサとドリスが、プサンに聞こえない彼の呟きを耳にした…
「あの強引さが私にもあれば、国王不在時でも代行を恙無く行えただろうになぁ…」



 
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