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八条学園騒動記

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第十四話 消える魔球その四


「ああ、それな」
「あいつも出るんだろ?また何か考えてるみたいだけれど」
「まあ何があっても気にしないでくれ」
「わかったよ。それでルールは」
「ああ、それな」
 言われてそれに話を向けてきた。
「こっちのルールでいいか?」
「ああ、それでいいよ」
「じゃあそれでな。場所はうちのグラウンドで」
「野球か」
「ボールとかもこっちでな。まあ野球をやるってことでな」
「わかった。それじゃあそれでだ」
「了解。それで次にやる時は」
「こっちのルールでソフトをな」
「お互い勉強の為にな」
 タムタムはそこまで考えていたのだ。流石は知略のタムタムであった。
「今日はそういうことで」
「けれどな」
 ここでロザリーはちらりとフランツを見た。
「あいつがなあ。大丈夫かね」
「安心しろ、野球は普通にやる」
「あれで普通なのかい」
「一応はな」
 タムタムの言葉は実に信憑性のないものである。だがそれがフランツへの正しい評価に聞こえるのだからこれまた不思議なことである。
「まあ放課後な」
「ああ、練習試合でも手加減はしないよ」
「こっちもだ」
 二人は互いの顔を見て不敵に笑い合った。
「思う存分やらせてもらうぞ」
「うちのソフト部は強いよ」
 全日本レベルである。だからこその自身がロザリーにはあった。
「こっちもだ」
 そして野球部もまた。その看板がフランツとタムタムのバッテリーである。この二人はフランツの脳細胞はともかくとしてかなりの力を持っているのは確かであるのだ。
「俺もあいつも容赦はしない。覚悟していてくれ」
「楽しみだね、放課後が」
「ああ」
 二人は言い合う。タムタムはフランツには万全の信頼を置いていた。あいつならやってくれる、そう信じていたのである。
 かくしてプレイボールとなった。クラスメイト達も観戦に来ていた。
「さて、いよいよだね」
 スターリング達もいる。彼等は観客席で観戦している。
「野球部対ソフト部の練習試合」
「今回はどうなるかしら」
 蝉玉はスターリングの横にいる。そこで試合を眺めていた。
「今までは五分と五分だったわよね」
「通算で両方共四十勝四十敗」
 プリシラが彰子に述べた。
「本当に互角よ」
「そうかあ、実力伯仲なんだ」
「だからこそ面白いんだけれど。ところでさ」
「何?」
「何で審判があいつなの?」
「あいつって」
「ほら」
 見れば主審は彼等のクラスメイトの四神正孝であった。名前からわかるように日本人である。黒い髪と目が奇麗な謎めいた雰囲気の少年である。顔立ちは中性的で女の子にも見える。
「何であんなところにいるのよ」
「ああ、あれ頼まれたかららしいわよ」
 蝉玉にエイミーが答えた。
「頼まれたって?」
「四神君審判部だから」
「そんな部活もあったの」
「あるのよ。それで選ばれたの」
「それでなのね」
「そうよ。ジャッジには定評があるから」
「じゃあそれを見せてもらいますか」
 蝉玉はそれを聞いてそちらも見せてもらうことにした。ここでふと彰子に気付いた。
「あら」 
 見れば彰子は正孝だけを見ているのだ。じっと目を離さない。
「彰子ちゃんってまさか」
 そう思った時だった。正孝が試合開始を告げる。
「プレーーーーボーーーール」
 こうして試合がはじまった。まずはソフト部からの攻撃であった。
 
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