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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第43話

教室にインデックスがやってくるという摩訶不思議なイベントが終え、生徒達は体育館で始業式を行うので移動する事になった。
麻生はさぼろうかと思ったが、体育館に自分の姿がいない事を愛穂にばれれば罰則を与えてきそうなので仕方なく向かう。

「あっ、麻生ちゃんー!」

体育館に向かっている途中で小萌先生が麻生の名前を呼びながらこっちに走ってきた。

「麻生ちゃん、上条ちゃんはどこに行ったか知っているですか?」

「いいえ、知りません。」

「う~ん、体育館でも姿が見えなかったですし、もしかしたらシスターちゃんを探しているのかもしれないですね。」

「というより、それしか理由はないと思いますよ。」

突然教室にやってきたインデックスだが彼女はまだこの科学の街に慣れていない。
下手をすれば学校から上条の家までの帰り道で何か面倒事が起こる可能性もある。
上条の性格を考えるとインデックスを探しに行っているのだろう。
小萌先生は少しだけ考えた後、申し訳なさそうな顔をして麻生に言った。

「あの麻生ちゃん、上条ちゃんを探すのを手伝ってくれないですか?」

「何で俺なんですか。
 他の先生に頼んだらいいんじゃないですか?
 何より俺はこれから始業式に出ないといけませんから、校舎をうろついている所を他の先生に見つかったら俺が怒られるんですよ。」

「確かに生徒にお願いするのは間違っていると先生も思うのですよ。
 ですけど、此処に上条ちゃんがいないという事はまだシスターちゃんを見つけていないという事です。
 シスターちゃんは何だか人には言えない事情を持っている人です。
 そんなシスターちゃんが私以外の面識のない先生に見つかったら色々大変な事になるのです。
 シスターちゃんを見つけるにしろ上条ちゃんを見つけるにしろどちらかを見つけないと話にならないのですよ。
 麻生ちゃんはシスターちゃんと面識があるようですし、捜索を手伝ってくれると先生は嬉しいですよ。」

確かに小萌先生の言うとおりだ、と麻生は思った。
インデックスは「外」の、正確には科学側とは真逆の魔術側の人間だ。
一応、ゲストIDがあるとはいえ校舎の中をうろついていたら他の先生に捕まり、最悪警備員(アンチスキル)に引き渡されるかもしれない。
そうなると話がややこしくなるだろう。
麻生は始業式に出るよりかは退屈しないだろうと考え捜索を手伝う事にする。

「じゃあ、とりあえず校舎の中を手分けして探すのです。
 もし他の先生に見つかっても先生が怒られないようにちゃんと言っておくから大丈夫ですよ。」

そう言って麻生とは逆方向の方に走っていく小萌先生。
麻生も歩きながら校舎の中を捜索していく。
すると、食堂の方で何やら聞き覚えのある声がしたので麻生はそこに向かう。
食堂の中を覗くと上条がいてテーブルを挟んでインデックス、それに長いストレートヘアから一房だけ束ねられた髪が伸びており知的な眼鏡を掛けているが多少ずり落ちている女性が椅子に座っていた。
その光景を見た麻生はため息を吐いて上条達に近づいていく。

「お前、こんな所で何をやっているんだ。」

「うん?ああ、恭介か。
 何をやっているってインデックスを探していたんだよ。」

「俺の眼には二人の女性と仲良くお話をしている様にしか見えないがな。」

「そう言うお前は何をしているんだ。」

「小萌先生に頼まれてお前を探しに来たんだよ。」

そこで上条はようやく今が始業式をやっている最中だと思いだした。
小萌先生の性格を考えると姿の見えない上条を心配して探しに来ると思った。

「あれ?そうだとどうして恭介が探しに来るんだ?」

「小萌先生はお前がまだインデックスを見つけていないと思ったんだよ。
 インデックスは色々事情を抱えているだろ、そこに他の先生とかに見つかったら色々厄介だからな。
 それで面識のある俺に捜索を手伝ってほしいと頼まれたから探しに来たんだよ。」

眼鏡をかけた女性もいるのでインデックスの事情については簡単に説明して此処に来た理由を言う。
それを聞いた上条は納得した顔をする。
そこで麻生はインデックスの隣に座っている女性に視線を向ける。

「さっきから気になっていたんだがその子は一体誰なんだ?」

座っている女性は麻生達が通っている高校の制服を着てはいなかった。
自分の事を言われた女性は少し困ったような顔をしながら答える。

「え、えっと・・・私は・・・・」

「ひょうかは私の友達だよ!」

「お前に友達がいるとはな。
 これは驚きだ。」

「むっ、その言い方ちょっと失礼かも。
 私にだって友達の一人や二人いるもん!」

「ほう、じゃあその子以外で友達の名前を言ってみろ。」

「え・・・えっと・・・・・・・・スフィンクス?」

「それは人間じゃない、あと疑問形で答えるな。」

自分の自己紹介をしようとしたがインデックスに言われてしまいどうすればいいのか分からないようだ。
オドオドしている女性を見た麻生はもう一度女性に聞いた。

「それであんたの名前は?」

「わ、私の名前は風斬氷華。」

「では風斬、この学校の制服を着ていないあんたがどうして此処にいるんだ?」

「えっと・・・・それは・・・・気づいたら此処に・・・・」

風斬が何かを言おうとしたがインデックスが風斬が困っているように見えたのか、麻生に噛みつくように風斬を弁護するように言う。

「きょうすけ、ひょうかがどうして此処にいるかなんてどうでも良いでしょう!
 ひょうかが困っているでしょ!」

「案外、どうでもよくはないんだけどな。」

至極真面な質問をしているだけなのに、なぜか悪者扱いされる麻生は呆れたような表情をして、上条は上条でインデックスをなだめている。
とりあえず、麻生は上条を体育館に連れて行こうと思った時だった。

「上条ちゃーん!!
 アナタ一体何をやっているんですかーっ!!
 麻生ちゃんも上条ちゃんを見つけたら連れて戻るように言った筈です!!
 それなのに楽しくお話しするなんて一体何をしているんですか!!」

小萌先生の叫び声に四人は一斉にその声のする方に振り向く。
小萌先生は怒りのあまり頭に血が上っているのか耳まで真っ赤に染まっていた。

「先生が上条ちゃんを心配して探しに来たというのにそんな中、上条ちゃんはモテモテ学園生活満喫中ですか!?
 麻生ちゃんも麻生ちゃんもです。
 上条ちゃんを見つけたのにその会話に交じって楽しそうにお話しているんですか!?」

「先生はこの状況を見て楽しそうに会話をしていると思いますか?」

「ええ、先生にはそう見えますよ!!」

駄目だこりゃ、と麻生は思った。
小萌先生は二人の顔を見比べながら話を続ける。

「大体ですね、なんだって上条ちゃんの周りにはこう女の子がごろごろ転がり込んでいるんですか!!
 麻生ちゃんも麻生ちゃんで黄泉川先生に色々麻生ちゃんについて話を聞かせてくれと、よく聞かれますですし二人にはそういう変なAIM拡散力場でも生み出しているんですかーっ!」

「そんなの関係ないでしょうが!」

「あいつ、先生にいらんことを聞きやがって。」

小萌先生は話をすればするほど話の方向性がどんどんおかしくなっていった。

「と、とにかく上条ちゃんと麻生ちゃんは別室でお説教です!!」

「あーもん!寝不足で頭痛いんだからワケの分かんない事で甲高い声出さないでくれ!
 ほれ、風斬も何か言ってやってくれよ!
 ここでの良心はお前しかいないんだから・・・・・って、あれ?」

上条はきょとんとした顔をして、インデックスと小萌先生と麻生もそちらへ視線を向ける。
同じテーブルに着いていたはずの風斬氷華の姿がいつの間にか消えていた。

「ありゃー、呆れて帰っちまったのか。」

上条はそう呟いたが麻生は風斬が座っていたパイプ椅子を見つめていた。







麻生と上条は小萌先生の説教からようやく解放された。
麻生は自分はちゃんと探して連れて帰ろうとしていました、と小萌先生に言ったが聞く耳持たずそのまま別室まで連行された。
上条は寝不足もあってかひどく疲れたような顔をしている。

「そうだ、恭介。
 これからインデックスとどこかへ遊びに行く予定なんだけどお前も来るか。」

「いや、遠慮しておく。
 お前達と一緒に行動していたらまた不幸な出来事に巻き込まれるからな。」

「俺は好きで巻き込んでいる訳じゃないんだけどな。
 分かった、また今度な。」

上条はそう言って窓の外を見ると校門の前に、インデックスと風斬が待っているのを発見して急ぎ足で校門に向かう。
麻生は校門の側に二人を見つめていた。
いや、正確には風斬氷華を見つめていた。
食堂で出会った時の風斬の言葉を思い出す。

「えっと・・・・それは・・・・気づいたら此処に・・・・」

彼女はそう言っていた。
自分でも気づかない内にこの学校の食堂にいたと言っていた。

(風斬の顔を見た限り嘘を言っているようには見えなかった。
 気づいたらという事は無意識にここまで来たのか、それとも本当に突然現れたのか。)

麻生は少し考えたが答えが全く出てこないので考えるのを止める。
見た限り特に害意もなさそうだった。
麻生は家に帰って寝直すかと考えた時、目の前の職員室から黄泉川愛穂が出てくるところだった。
愛穂はすぐにそばにいる麻生を見つけ近づいてくる。

「聞いたよ、恭介。
 何でも小萌先生を困らせたみたいじゃん。」

「好きで困らせている訳じゃない。
 全ては当間のせいだ。」

「でも、小萌先生から見たら楽しくお茶会をしている風に見えたって言ってたじゃん。
 いいね、小萌先生のクラスの生徒は楽しそうな生徒が集まって。
 ウチのクラスにもそういった馬鹿はいないかね。」

「あんな馬鹿が欲しいなら俺のクラスにはいくらでもいるから好きなだけ持って行ってくれ。」

「それが出来たら最高じゃん。」

学校なのに呼び方が恭介になっているが、それに気づかず愛穂は楽しそうな表情を浮かべながら話をしている。
麻生はふと疑問に思っていた事を愛穂に聞いてみる。

「なぁ、この学校の監視カメラに部外者が入ってきたって言う情報はあったか?」

普通こういった情報は生徒に教えると、生徒達に不安感を持たせてしまう可能性があるので、教師の立場である愛穂達は教える事は出来ない。
しかし、愛穂は何だかんだ麻生にお節介を妬いているが信頼はしている。
こういった情報は普通は教えないのだが、麻生になら他の生徒に言いふらす事は絶対にないと愛穂は考えているので教える。

「これはあんまり他言は無用だけど恭介だから教えるじゃん。
 一応報告では二人。
 一人は白いシスターの服を着た少女、あと小萌先生から聞いた眼鏡の女子生徒の二人。
 これは恭介も知っている事じゃん。」

「そうだな、俺もその二人は確認している。」

「けど、実際に監視カメラに映っていたのは、その白いシスター服を着た少女だけしか映っていなかった。
 もう一人の女子生徒はどの監視カメラにも映っていなかったじゃん。」

「能力を使ってカメラに映らなかったという可能性は?」

「それはないじゃん。
 ここは学園都市、能力者の学生がいる所だから能力を使って姿を消していても確認できるように、監視カメラには特殊な細工がしてあるから監視カメラには映る筈じゃん。」

そうすると風斬は空間移動能力者の可能性が高い。
監視カメラに映らないとなればそう考えるのが妥当だろう。
しかし、麻生はそう考え風斬が何のために此処に来たのはその目的が分からなかった。
そして本人が口にしていたあの言葉。

(気づいたら此処にいた、か。
 もしそうだとすると空間移動能力者という可能性はないのかもしれないな。
 見た目はおとなしそうな女性だし何も問題は起こらないだろう。
 そもそもどうして俺は風斬一人にこんなに考えているんだ。)

自嘲気味に笑いながら思った。
麻生は風斬の事で考えるのはやめて愛穂が職員室から出てきた理由を聞く。

「これからどこかに行くのか?」

「今から警備員(アンチスキル)の仕事じゃん。」

それを聞いた麻生は少し困ったような顔をした。
一応相手が学生とはいえ暴走した能力者を相手にする場合もある。
加えて愛穂は例え相手が大能力者(レベル4)の発火能力者だろうと、子供に銃を向けないというのが彼女の誇りだ。
なので、銃ではなくヘルメットやポリカーボネイドでできた透明な盾で能力者をどつきまわす。
麻生はそれを心配しているのだ。
何かの事件で能力者の攻撃を受けて重傷を負ってしまわないだろうかと心配している。
生きているのなら麻生の能力で何とか復活させる事は出来るが、死人までは生き返らせる事は出来ない。
この学園都市の闇は底知れない。
もし愛穂が警備員(アンチスキル)の仕事でその闇に触れ、殺されてしまえばおそらく麻生はどんな行動をとるか自分でも分からない。
黄泉川愛穂、芳川桔梗、吹寄制理、この三人は今の麻生恭介という人格を作り出した命の恩人だ。
この三人を守るためなら麻生はどんなことでもする。
だが、麻生はスーパーマンのようなヒーローではない。
麻生が見えている分には守る事は出来るが麻生が見えていない所で、何か事件があってもすぐに駆け付ける事は出来ない。
だから愛穂が警備員(アンチスキル)の仕事をしている事は快く思っていないのだ。

「どんな仕事だ?」

「あんまり人に言っちゃあ駄目なんだけどまぁ、恭介だしいいか。」

こんな軽いノリで愛穂は仕事の内容を教える。

「何でも「外」から強引にこの学園都市に侵入してきた奴がいるじゃん。
 重傷者も三人でて負傷者も十五人もでている。
 その侵入者が今は地下街にいるって情報が入ったから今から向かうところじゃん。」

その言葉を聞いて麻生は眉をひそめた。
「外」からの侵入者で中まで入ってこれる奴らなど、麻生は一つだけしか思い浮かばなかった。
魔術師。
科学の世界とは真逆の魔術の世界の住人。
しかも、今回はステイルや神裂のような穏便に事を済ませるような事はしない輩の様だ。
十中八九ただの警備員(アンチスキル)だけでは門を強引に突破できる魔術師に勝つのは難しいだろう。
下手をすれば死人が出る可能性もある。

「愛穂、俺もついていく。」

麻生の話を聞いた愛穂は一瞬驚いた顔をするが麻生の頭に手を置いて笑いながら言った。

「駄目じゃん。
 恭介は学生でウチは教師。
 学生を危険な場所に連れて行くわけにはいけないじゃん。」

他の警備員(アンチスキル)には内緒にしているが愛穂は、麻生に何回か事件の解決を手伝ってもらった事がある。
それらは全部話をして、麻生がそれらの情報を分析して麻生なりの解答を言うという簡単なものだ。
しかし、今回はそう言った簡単な事件ではない。
愛穂は麻生の能力を把握している訳ではないが並みの能力者ではない事を知っている。
それでも麻生は学生だ。
教師であり警備員(アンチスキル)である愛穂が守らなければならない存在だ。

「大丈夫じゃん、ウチ一人で戦う訳じゃないじゃん。
 だから麻生が心配するようなことは起きないから安心して待ってるじゃん。」

事件が片付いたら電話するじゃん、と言って愛穂は時計を見て少し慌てて廊下を走っていく。
その後ろ姿を麻生は黙って見つめていた。 
 

 
後書き
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