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八条学園騒動記

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第六十四話 円卓会議その四


「ナンシー」
「何?」
「何であんたあの公園のこと知ってるの?」
 気付いたのはそれであった。どうして彼女が知っているのかが不思議だったのだ。
「えっ!?」
「今ちょっと気付いたんだけれど」
 そう述べてまた問う。
「あんた。あの公園に行ったことあったの?」
「え、ええちょっとね」
 ナンシーは内心の戸惑いを必死に隠しながら答えた。
「実はね。ちょっと、その」
「ちょっと?その?」
「取材でなのよ」
 嘘ではなかったのでこう答えることにしたのだった。
「取材で。奇麗な公園があるって聞いてね、それで」
「ああ、そうだったの」
 何も知らないダイアナはそれで納得しだした。
「それで知っていたのね」
「そうなのよ、別に変な意味じゃないわよ」
「変な意味!?」
(しまった)
 勘の鋭いダイアナが今の言葉に顔を向けてきたので内心舌打ちした。
「何、それって」
「あっ、だから寄り道とか」
 ナンシーは知っている者から聞けば実に苦しい言い訳をするのであった。
「そういうのよ。やっぱりそういうのって駄目じゃない」
「また随分真面目ね」
 どちらかというと不真面目な部類の生徒であるダイアナから見ればそう思えるものであった。ナンシーは真面目な生徒で通っているのもここでは幸運だった。
「ま、まあこういうのはね」
 焦りを残しながら言葉を続ける。
「守らないといけないかなあ、なんて思ったりなんかしてるから」
「わかったわ。けれど」
「まだ何か?」
 年下の彼氏のことは必死に隠しながら話のやり取りを続ける。
「いや、今時珍しい真面目さだから。やっぱりナンシーだなあって思って」
「そうだったんだ」
「ええ。御免なさいね、変なこと聞いて」
「べ、別に気にしてないから」
 下手なコメントを続ける。
「そんなのいいわよ」
「そうなの。それじゃあ」
「ええ。とにかくね」
 話を何とか誤魔化しきりその中に入る。そんな彼女をカトリとマルティが呆れた目で見ているがそれもとりあえずはスルーしながら。
「そこの公園もムードじゃいいから」
「了解」
 ピーターは彼女のその言葉にも頷く。
「じゃあここも候補地ね」
「これで三つね」
 ダイアナは三つ出たところで述べた。
「後は。そうね」
「他に何かある?」
「いや、これ位でいいんじゃ?」
 ダイアナは少し考えてからそう皆に述べた。
「三つあったら。これ以上あっても何にもならないし」
「そうだね」
 ピーターが彼女の言葉に同意して頷いた。
「これ以上あっても。それじゃあこれでいいよね」
「ええ」
「ピーターがそう言うんなら」
 二年S1組の面々はこれで納得した。後は何処にするかの問題であった。
「それで何処にするんだ?」
 マチアが尋ねた。
「何処もかなりいいと思うが」
「並木道にカフェに公園だったね」
 ピーターはそれをまた確認する。
「確か」
「そう、その三つ」
 ウェンディがそれに頷く。
「その三つのうちの一つ。どうするの?」
「そうだなあ」
 ピーターは彼女の言葉に少し考える顔になるのであった。
「いざ選ぶとなるとこれは」
「困るの?」
「うん。どれもいいから」
 首を傾げて述べる。
「一つにするってなると。どうにも」
「それもそうね」
 ウェンディもどうにも選びかねるようであった。彼女もまた困った顔を見せていた。 
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