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八条学園騒動記

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第六十一話 非常識一直線その四


「ああ、大学生だからその知り合い」
 すかさずそうフォローを入れた。
「安心して。従姉なのよ」
「何だ、そうだったんだ」
「まあそれでも結構びっくりだけれど」
 大学生で結婚はあるが。それでもやはり驚くべきものがある。
「だから駄目なのよ」
 ウェンディはまた言う。
「私もねえ。実は」
「いるんだ、彼氏」
「一応は」
 さりげなく爆弾的な告白であった。衝撃の事実とも言える。
「いるわよ」
「じゃあ無理ね」
「残念だけれど」
「ええ。誰か探すしかないけれど」
 ウェンディはまた言う。
「誰かいないのかしらねえ」
「一人位はいるんじゃ?」
 不意に蝉玉がこう言ってきた。
「探せば」
「探せばねえ」
「ほら、この学園って女の子も多いし」
 そうウェンディに言う。実際に八条学園は女の子もかなり多い。男と比べて半々といったところだ。そのうえ生徒数が洒落にならないといったレベルではないのでその数は必然的に多いのである。
「一人はいるでしょ」
「そうだよね」
 蝉玉の言葉にスターリングも頷く。
「探せばね。やっぱり」
「そうね。それじゃあ」
 ウェンディはそれを聴いて決断を下すのであった。
「じゃあ蝉玉とスターリング」
「ええ」
「何かな」
 二人も彼女の言葉に顔を向ける。
「御願いね」
「えっ」
「何を!?」
「だから。カムイの恋人候補を探してきて」
 にこりと笑って二人に告げる。
「それを御願いするわ」
「えっ、私が!?」
「僕が!?」
 話を振られた二人は思わず目を点にさせた。
「だって。言いだしっぺじゃない」
「そういえばそうよね」
 ビアンカはウェンディの言葉に頷く。先程のスターリングと全く同じ流れであった。
「じゃあやっぱり二人が」
「御願いするわよ」
「そう言われても」
 話を振られた蝉玉はかなり露骨に困った顔を見せるのだった。
「私もねえ。知り合いは皆彼氏いるし」
「僕も」
 それはスターリングも同じであった。
「皆付き合ってる女の子いるよ」
「いるんだ」
「うん」
 ビアンカの問いにこくりと頷く。
「何か羨ましいわね」
 ビアンカはここで何故か嫉妬を見せるのであった。
「それって」
「ちょっと待って」
 そのビアンカの言葉でウェンディはふと気付いた。
「あんた彼氏とかいないの」
「中学校の時はいたけれど」
 またしても衝撃の事実がわかった。ビアンカも彼氏がいたことがあったのだ。
「卒業で学校が離れてそのままよ」
「そうだったの」
「だから今はいないの」
 とても言いにくいことだったがあえて言うのだった。
「悪いわね」
「別に悪くないわよ。相手は同級生だったのね」
「ええ」
 それもまた認めた。
「今どうしているかしら」
「元気にしていればいいけれどね」
「あの」
 ビアンカの話になっていたがスターリングがここでまた言ってきた。
「それでさ」
「私達だけれど」
「あっ、いけない」
 ウェンディは話を振られてやっと思い出した。
「そうそう、探すのよね」
「そう、それよ」
「僕達もこれといってあてがないんだけれど」
「それでも御願いできるかしら」
 ウェンディもかなり無茶を言う。 
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