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八条学園騒動記

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第五十一話 軟派男の戸惑いその三


「どうしようもないのよ、実際のところ」
「もう言えばいいんじゃねえのか?」
 フックは何気なく述べてきた。
「クラスの皆が知ってるしよ」
「ああ、そうでもないのよ」
「あれっ、そうか」
 フックはルビーのその言葉に顔を向けた。
「ていうか知らない奴っているのかよ」
「少なくとも彰子ちゃんは知らないわよ」
「ああ、彰子ちゃんはな」
 これはわかった。彼女の鈍感さはもう言うまでもない。それがわかっているからこそ言うのだった。それと共に納得できるものでもあった。
「そりゃ気付かないだろ」
「あと管君」
「あいつもかよ。わかんねえ奴だな」
 その言葉にも頷く。そもそも彼がどういった人間なのか知っているのはクラスでもいないのだ。謎の人物そのものであるのだ。
「彼に関しては多分だけれどね」
「多分か」
「そうなのよ。だって管君自分では何も言わないし」
「っていうかあいつ何者だ?」
 かなり洒落にならない核心について述べられた。
「そもそもよ」
「さあ」
 ルビーの返事も要領を得ないものであった。
「それはね。何なのかしら」
「何なのかって言われるとよ」
 フックも困った顔になる。
「俺もあいつに関しては正体不明だしな」
「そうよねえ」
「あいつもだってことか」
「あとテンボとジャッキー」
 ルビーは今度はその二人の名前を出した。
「あの二人も全然知らないと思うわ」
「ああ、あいつ等もか」
 そのことに関してはこれまで以上に大いに納得できた。
「まああいつ等に何ができるかどうかわからないからな」
「わかるっていうかあれは」
 ルビーは言う。
「勘違いばっかりだし」
「風紀部の罰ゲームどうなったんだ?」
「あれ終わったらしいわ」
 そうフックに答える。
「一応はね」
「一応はか」
「全然懲りずにまた馬鹿やってるけれど」
「やれやれ、あいつ等がいたんだ」
 またそのことについて述べる。
「何か最初から当然だなって思える奴等だな」
「それもそうね。けれど」
「けれど?」
 ルビーの言葉に顔を向ける。
「いやさ、それだけ皆知ってるんだったらよ」
「あんたも言えばいいのよ」
 ルビーも言うのだった。
「あいつが断るとは思えないしよ」
「断ったらクラスの皆が何とかするし」
「けれど」
 アンは煮え切らない顔で二人に言葉を返した。
「言えたら最初から苦労しないし」
「だったらよ」
 フックが言う。
「俺にいい考えがあるんだけれどよ」
「いい考え?」
「ああ、ここはつまりあれだ」
 また言ってきた。
「度胸だよ、いや」
「ここはマインドコントロールです」
 突然として何者かの声がした。
「んっ!?」
「誰だ!?」
「私です」
 フックとルビーの間から得体の知れない影が現われた。それは。
「えっ・・・・・・」
「まさか」
「話は聞いています」
 それはセーラであった。いきなり姿を現わしてにこりと笑うのであった。 
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