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ソードアート・オンライン stylish・story

作者:黒神
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第二十七話 二人のチーター


キリト、シュウ、ユイの三人は再会を果たした後、小さな小川に架かっている天然の木の橋に腰掛けた。ユイに至ってはキリトに甘えたいのか膝の上に座っていた。
一息付くとシュウがユイに尋ねる。

「ユイ。お前がまたその姿で戻って来る事が出来たって事は、ここはSAOの世界なのか?」

「ちょっと待ってくださいね」

ユイはキリトの膝の上で眼を閉じ、何かを探っているようだった。
元々ユイはSAOでの人格を持ったAIなので、この世界のサーバーにアクセスする事は簡単な事だった。

「この世界は・・・ソードアート・オンラインのサーバーのコピーだと思われます」

「コピー?」

「はい。基幹プログラム群やグラフィック形式は完全に同一です。ただカーディナル・システムのバージョンが少し古いです」

(つまりこのALOはアーガスのSAOを元に作られた世界って訳か。そのアーガスは解散してそれがレクトに受け継がれているからな・・・)

キリトが聞き返し、それをユイが答えた。そしてシュウが自分の考えを口にする。

「って事はつまり、SAOのデータがこのALOのキャラデータに上書きされたって事なのか?」

「間違いないですね。このデータはパパとおじさんが使用していたキャラクター・データそのものです。セーブデータのフォーマットがほぼ同じなので、二つのゲームに共通するスキルの熟練度を上書きしたのでしょう」

次にシュウとキリトはアイテム欄の破損しているアイテム達をユイに見せる。

「所持アイテムは・・・破損してしまっているようですね。このままではエラー検出プログラムにひっかかると思います。アイテムは全て破棄したほうがいいです」

「・・・ん?ユイ。ちょっとこれを見てくれないか?」

「どうしました?おじさん」

シュウのアイテム欄に一つだけ破損していないアイテムがあった。名前はアルファベットで書かれていたため何なのか分からなかったが実際に取り出して見た物は背の丈程の刀身がある日本刀だった。キリトにはそれに見覚えがあったのか尋ねる。

「それはシュウがSAOで使っていた【閻魔刀】だよな?」

「ああ。これ以外の武器は全部データが破損していたんだが、何故かこれだけが破損してなかった。これがどう言う事か分かるか?ユイ」

「その刀を少し見せてもらえませんか?・・・どうやらこの刀はおじさんの種族、インプだけが装備出来る魔刀に分類されるようです」

「何とも言えねぇ都合的な事だな。しかしありがたい話だな。使わせて貰うぜ」

シュウは閻魔刀以外のアイテムを消去した。キリトも少し戸惑いながらも渋々それを消去したようだった。消去し終えたキリトがユイに尋ねる。

「ユイ。スキル熟練度はそのままでも良いのか?」

「システム的には問題ありません。プレイ時間と比較すれば不自然ではありますが、人間のGMが直接確認しない限り大丈夫でしょう」

「何て言うか・・・これじゃビーターを通り越して、チーターだな」

シュウの言葉にキリトも同感なのかヤレヤレと首を振っていた。ここでシュウがユイに尋ねる。

「そう言えばユイはこの世界では何に該当するんだ?」

「えーと・・・プレイヤーサポート用の疑似人格プログラム【ナビゲーション・ピクシー】に分類されています」

ユイがシュウに説明をし終えると体が光に包まれ、それが晴れると小さな妖精となったユイがキリトとシュウの目の前に浮いていた。

「これがピクシーとしての姿です♪」

「おお!」

「く、くすぐったいです。パパ」

キリトは珍しいのかユイの頬を軽く突っ突いていた。シュウは「何やってんだ」とキリトを止めると尋ねる。

「今のユイには昔みたいに管理者権限はあるのか?」

「いえ。出来るのはリファレンスと広域マップデータへのアクセスくらいです」

「そうか。ユイ、実はな。この世界にアスナがお前のママがいるんだ」

「えっ?ママが?どう言う事ですか?パパ」

キリトとシュウはユイに現実世界での現状をユイに分かるように説明した。

「居場所までは分かってるんだが。世界樹・・・多分あれだろうな」

「ママが・・・あそこに」

シュウは遠くにそびえる大きな樹を指差しながら言った。
しばらく三人とも黙っていたがキリトが何かに気が付いたのかユイに尋ねる。

「そう言えば。俺とシュウは何でこんな森に飛ばされたんだ?ホームタウンに飛ばされる筈だったんだが」

「さあ・・・位置情報も破損したのか。あるいは混信したのか、何とも言えません」

「どうせなら世界樹の根元に落として欲しかったぜ。そうしたらすぐに助けに行けるのによ」

シュウの言葉にキリトは「同感だ」と言うと一旦立ち上がり、背中から黒の羽を出す。シュウも自分の紫の羽を出した。どうやら種族で羽の色には違いがあるみたいだった。

「これが羽か。俺は紫。キリトは黒か。ユイ、どうやって飛ぶんだ?」

「補助コントローラがあるみたいです。左手を立てて、握るような形を作ってみてください」

二人はユイの言う通りにやってみると左手にコントローラのような物が握られていた。

「手前に引くと上昇、押し倒すと下降、左右で旋回、ボタン押し込みで加速、離すと減速となっていますね」

ユイにレクチャーしてもらいながらキリトとシュウはゆっくり飛んでみた。初めは慣れない事やるのでフラフラとぎこちない動きをしていたが数分もすると慣れた始めたのか動きが良くなった。そこは二人のゲーム脳のお陰かもしれない。

「これは気持ち良いな。癖になりそうだ。次は情報集だな。ユイ。最寄の町が何処にあるか分かるか?」

「えっと。西のほうに【スイルベーン】という街がありますね。そこが一番・・・」

ユイがシュウに説明している最中に言葉を遮ると険しい表情を浮べる。それに気付いたのかキリトが尋ねる。

「ユイ?どうしたんだ?」

「プレイヤーが近づいてきます。どうやら戦闘中のようですね・・・三人と一人です」

「おいおい。まさか集団で一人を相手してんのか?勝つためとは言うが気に入らないな。行って見るか?キリト」

「だな。そいつを助ける事が出来れば情報も貰えそうだしな」

キリトとシュウはユイの先導でその場所を案内して貰う事にした。
数分後、ユイは木の裏に止まった。その視線の先には赤い羽の火妖精【サラマンダー】の男子三人が風妖精【シルフ】の女子に空でランスを構えている光景がキリトとシュウの眼に入った。しかしキリトは減速を誤ってしまい、そのまま地面に顔を打ち込む。その音を聞いたサラマンダーとシルフはその音源に顔を向ける。

「痛ったた・・・着地がミソだな・・・これは」

「自業自得じゃねぇのか?急ぎ過ぎてたお前がどう見ても悪ぃと思うぜ?キリト」

シュウはゆっくりとキリトの横に立つと腕を掴んで持ち上げた。。

「何してるの!早く逃げて!!」

シルフの女の子が叫ぶが、キリトとシュウの耳には聞えておらずに、サラマンダーの三人と向き合う。

「ふ~ん。重戦士三人で女の子一人を襲うのはちょっと格好悪くないか?」

「だな。そんなにPKするのが楽しいのか、単なる腰抜けなのか。まあ何れにしろ気に入らねぇ事に変わりはないか。さっさと失せな」

「何だとテメェ等!!」

「初心者がノコノコ出てきて調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

キリトとシュウの服装は初期設定の黒と紫の服装のため、サラマンダーもそれで判断しているのだろう。二人のサラマンダーは上空に飛び上がると得物のランスを構えた。

「初心者は初心者らしくしてた方が身のためだぜ?それをここで教えてやる!!」

「お望みどおりに狩ってやるよ!!」

「危ない!避けて!!」

シルフの女の子が叫ぶと同時に二人のサラマンダーがキリトとシュウに突っ込んできたが・・・

「Too Late(遅すぎる)・・・」

ガキン!!

「えっ!?」

シルフの女の子が閉じていた目を開くと見た物はキリトは左手で、シュウは右手でランスを鷲掴み、動きを止めていた。

「う、動かねぇ・・・」

「それ!!」

「うわっ!!」

キリトはそのままポイッとランスを投げ捨てるように突っ込んできたサラマンダー吹き飛ばした。シュウは・・・

「ハア!!」

バコン!!

「グヘッ!!」

ランスを引き寄せるとその反動でサラマンダーが近寄ってきた所に左の裏拳を兜の空いている
所に打ち込み、吹き飛ばした。
二人は吹き飛ぶと地面に倒れ伏した。

「「グハッ!!」」

シュウは閻魔刀ではなく初期装備だった刀を左手に持つとシルフの女の子に尋ねる。

「なあ。そこのお嬢さん。こいつらは斬り捨てて良いのか?」

「そりゃいいんじゃないかしら。少なくとも先方はそのつもりだと思うけど」

「違いないな」

「それじゃあ、失礼して」

キリトは背中から初期装備の片手剣を構え、シュウは刀を少し鞘から出した状態で居合いの構えを取った。

(スプリガンの構えは独特だけど。インプのあの構えって・・・居合い?)

シルフの女の子は剣術に少し覚えがあるのか頭の中に思考を過ぎらせていた。しかし考えている最中にキリトとシュウは少し動くと・・・

「フッ!!」

「Scum(クズが)!!」

それぞれの掛け声と共に姿が消えた。
そして二人の姿が見えた次の瞬間に、二人を襲ったサラマンダーが斬られたエフェクトを出しながら赤い火となった。

「なん・・・だと?」

空中に残っていたサラマンダーは驚愕の表情と声を上げていたがそれはシルフの女の子も同じ表情を浮べていた。
キリトはそのまま振り返りながら・・・そしてシュウは刀を回転させ、鞘に納めると首だけをサラマンダーに向け、鋭い視線を当てながら静かに呟く。

「次は・・・誰かな?」

「Who is it to want to die next(次に斬られたいのは誰だ)?」
 
 

 
後書き
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