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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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死神と炎の大剣

 
前書き
遅れました…… 

 
目的のダンジョンはなんとここ一層にあるという。行くメンバーは俺、アスナ、ユリエール、ユイ、ユイを背負ったキリトの計五人。ユイは行くといって聞かなかったので転移結晶を握らせてある。……目的の洞窟にシステム的なものがなにかあるのだろうか?ダンジョンにはもうすでにキバオウを始めとする軍のメンバーが入ったらしいが、散々追い回されて命からがら転移脱出するためになったそうだ……ざまあみろ。その話を聞いて、キリトが笑いだす。俺はもちろんポーカーフェイス

「リン君。顔がにやけてるよ」

なぬ……

ユリエールはすぐに表情を暗くして行った

「今は、そのことがシンカーの救出を難しくしています。キバオウが使った回廊結晶はモンスターから逃げ回りながら相当奥まで入り込んだところでマークしたものらしくて……シンカーがいるのはそのマーク地点の先なのです。レベル的には、一対一なら私でもどうにか倒せなくもないモンスターなんですが、連戦はとても無理です。……失礼ですが、お三方は……」

聞けば六十層ぐらいの強さらしい。俺のレベルは95。キリトもアスナも90前後だろう。安全マージンは階層プラス十なのでレベル70ほど……つまり

「問題ない」

「ああ、まあ、六十層くらいなら……」

「何とかなると思います」

「……それと、もう一つだけ気がかりなことがあるんです。先遣隊に参加していたプレイヤーから聞き出したんですが、ダンジョンの奥で……巨大なモンスター、ボス級の奴を見たと……」

「……ボスも六十層くらいのやつなのかしら……。あそこのボスってどんなのだったっけ?」

「えーと、確か……石でできた鎧武者みたいな奴だろう」

「……弱すぎて記憶にない」

「あー、アレかぁ。……あんまり苦労はしなかったよね……」

「まあ、それも、なんとかなるでしょう」

「そうですか、良かった!」

「そうかぁ……。お三方は、ずっとボス戦を経験してらしてるんですね……。すみません、貴重な時間を割いていただいて……」

「いえ、今は休暇中ですから」

「ソロだから関係ない」

そんな話をしながら地下水道を歩く
















「ぬぉぉぉぉぉ!りゃぁぁぁぁ!」

などと叫びながらキリトは敵集団に突っ込み叩き潰すというバーサクモードになっているため俺たちは暇である。アスナと俺は「やれやれ」といった表情でユリエールは目と口を丸くしてキリトを眺めているそしてユイは「パパーがんばれー」と気の抜けた声援を送っているため緊張感は皆無である。

「な……なんだか、すみません、任せっぱなしで……」

「いえ、あれはもう病気ですから……。やらせときゃいいんですよ」

「猪突猛進馬鹿ですから」

「なんだよ、ひどいなぁ」

「なんだよ、ひどいなあ」

蹴散らして帰ってきたキリトが文句を言うが

「じゃあ、わたしと代わる?」

「そろそろ肩慣らしがしたいから変わるか?」

「……も、もうちょっと」

その場が笑いに包まれたのは言うまでもない















ダンジョンに入ってしばらくすると水中生物型だったモンスターたちはオバケ系統に変化した。アスナがオバケが苦手なことを知っている俺はアスナをからかいながらキリトがモンスターを蹴散らしたあとの通路を進んだ。しばらくすると暖かな光の洩れる通路が目に入った

「あっ、安全地帯よ!」

「奥にプレイヤーが一人いる。グリーンだ」

「シンカー!」
ユリエールは一声叫び走りだした。俺はユリエールに続きつつも索敵スキルで辺りを走査していた。すると安全地帯の少し前にある十字路。その左端に不気味にオレンジに光る点を見つけた。その点は少しの間静止していたが、ユリエールが十字路に近づくにしたがって右に動き始めた。このままではユリエールと衝突する。この時俺はちょっと前にユリエールから聞いたことを思い出していた。そう、ボス級のモンスターを見たという軍の話を……

「ユリエーーール!!」

男が大声で叫んだ

「シンカーーー!!」

ユリエールもそれに応えて叫ぶがそれにかぶせるようにシンカーが叫んだ

「来ちゃだめだーーーっ!!その通路は……っ!!」

シンカーの絶叫。つまりこれが意味するのは……

「止まれ!ユリエール!!」

俺は叫ぶが、ユリエールはシンカーしか見えていない。このままでは……

「チッ」

俺は舌打ちをして足に力を込めた。キリトも同じ動作をしており、キリトのほうが早く弾丸のように飛び出した。俺もそれにつづく。背後から右手をユリエール体の前にまわし、左手の剣を壁に突き刺すキリト。俺は左手をキリトの体の前にまわし、右手の剣を突き刺す。こうして十字路ギリギリのところで止まった俺たちの目と鼻の先を死の弾丸が通り過ぎた。黄色いカーソルは十メートルほどいって止まった。またこちらに突進しようとしたので俺たちはその車線から退避して、そいつの姿を見た。死神としか言い様のない姿だった。武器は巨大な鎌。鎌というのは中距離の武器で、相手の盾に先を引っかけ、体制を崩す事ができる。ただし懐に潜り込まれたら終わりだし((今回の死神のように生身でも高い攻撃力を誇るものは体当たりで突き飛ばせばいいのだが))遠距離攻撃にも鎌の重さでかわせないし、ガードもできないので弱い。常に相手との間合いを考える必要がある。……何現実逃避しているんだ俺は……。識別スキルでデータが見えなかった。つまりこいつは間違いなく今まで会ったモンスターの中で最強!!

「アスナ、リン、今すぐ安全エリアの三人を連れて、クリスタルで脱出しろ」
キリトも識別スキルで確認したらしく擦れた声で言った

「え……?」

「こいつ、やばい。俺の識別スキルでもデータが見えない。強さ的には多分九十層クラスだ……」

「それですめばいいがな……裏ボス的なやつだろう……」
俺も声が擦れるのを抑えることができない。体は強ばり原始的な恐怖が俺の体を貫いている。濃厚な死の気配。まさに死神。そいつの名前は<<The Fatal-scythe>>意味は運命の鎌。その運命は果たして死か、生か……

「……!?」
アスナも息を呑んで体を強ばらせる。そうしたやりとりの間にも死神が少しずつ近づいてきた。まさに死が忍び寄るかのように

「俺が時間を稼ぐから、早く逃げろ!!」

キリトは叫ぶ。だが、その体は震えている

「アスナ……さっさと逃げろ」
キリトの隣に並び、俺は言う。震えて、今にも剣を捨て、座り込みたかったが俺には守りたい人、親友がいる。だから、座り込むわけにはいかない

「リン……」

「キリト……たまには俺にもかっこつけさせろよ」

「ははっ……わかったよ。だが、死ぬなよ。約束だぜ」

「お前こそな」

憎まれ口の応酬。やがて死神は急にスピードを上げてキリトの方に突進してきた。俺はいつでもサポートできるようにキリトの後ろに立つ。キリトは二本の剣をクロスし迎撃体制に。するといきなり横から白い閃光、アスナが走り込み剣を合わせた。そこに死神の鎌が振り下ろされた。サポートをする暇もなかった。二人は吹き飛ばされ俺のちょっと横に叩き付けられた。これによりキリトとアスナのHPが半分を割り込んだ。さらに死神の追撃。狙いはキリトとアスナ!!俺はキリト&アスナと死神の間に割り込む。両手の剣を合わせ死神ね鎌の軌道にほぼ平行になるように合わせた。ちょっとでも軌道がずれると三人とも仲良くあの世いきだった。賭けには成功し、鎌の軌道をずらすことに成功。俺たちのわずか右の地面に突き刺さった。余波で俺たちは飛ばされた。HPを確認するとアスナとキリトはレッドゾーン。俺はまだ残っている。俺は前にでる。思惑は成功し、死神の狙いはおれ一人にしぼられた。再び高威力の鎌が横なぎに振られた。俺は懐に潜り込みかわす。そして単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>を放った。だが、まるで石でもたたいたような衝撃を受けて俺の体は硬直し剣を落としてしまった。死神が少し下がり、俺に向かって鎌を振り上げた。俺は硬直。キリトとアスナは動けない。これは死んだな……

「すまない……アスナ、キリト、約束は守れない」

俺は鎌を見つめた。後ろでキリトとアスナが叫んでるのが聞こえる。だが聞こえない。全てがスローモーションに見える













そのスローモーションは視界一杯に広がった黒いものが登場して突然終わった。その直後、大音響とともに音がよみがえった。同時に目の前に【Immortal Object】の文字が浮かび上がった。復活した頭で考える。そして、すぐに一つの答えを導きだす

「ユイ……お前……やっぱり……」

ユイは俺の言葉には答えず悲しそうに眉をひそめた。その直後突然、ユイの掌に炎が生まれ、凝縮し、一振りの大剣となった。服が焼け落ち最初に見たときに着ていたワンピース姿になる。そして、その大剣を死神に向かって振り下ろした。死神は鎌で受けるが、熱により鎌が徐々に溶け、最後には死神ごと叩き斬られた。その一撃により死神は爆散。その後に残ったのは痛いぐらいの沈黙だった

「ユイ……ちゃん……」

沈黙を破ったのはアスナ。細剣を支えにアスナはゆっくり立ち上がり、キリトとともにこちらに向かって数歩歩み寄った。ユイは微笑んではいたが、その瞳は涙で一杯だった

「パパ……ママ……にい……。ぜんぶ、思い出したよ……」

「ユイ……辛かったら俺が……」

俺の言葉にユイは左右に首を振る

「私が言わないと……いけないから……」

俺に微笑むユイはとても痛々しかった
 
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