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八条学園騒動記

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第四十四話 誰にもわからないその一


                    誰にもわからない
 話は前の日に遡る。彰子は自分の家で買ってきたチョコレートをチェックしていた。
「うん、皆の数があるわ」
「それ姉さんのクラスの人にあげるぶん?」
「ええ」 
 明香の問いににこりと笑って返す。二人は今家のリビングにいた。
「お父さんやお母さんのぶんもあるわよ」
 その後でこう答える。
「明香のぶんもね」
「有り難う」
 口の両端に微かな笑みを浮かべてそれに応えてみせた。
「毎年姉さんのチョコレート貰ってるわね」
「それは私もよ」
 彰子はにこりと笑って妹に返した。
「だから。お互い様よ」
「そうなの」
「そうよ。だから気にしないで」
 やはり笑顔でそう返した。
「わかったわね」
「ええ」
 明香もその笑みのままで応えてきた。
「貴女達のぶんもね。いいわね」
「わかったわ。それで」
「何?」
「その一番大きなチョコレートは何かしら」
「!?」
 妹のその言葉に首を傾げさせてきた。
「これのこと?」
「そう、それ」
 彰子が最も大きなチョコレートを見て頷いてきた。見れば星型のかなり大きなチョコレートである。何か巨大手裏剣にも見えるものであった。
「それだけれど。誰の?」
「管君の」
 彰子はそう答えてきた。
「買ってみたけれど」
「そうなの」
「うん」
 また妹の言葉に頷く。
「駄目かな、これで」
「いえ、別に」
 その言葉にはあまりはっきりとしない返事を送る明香であった。実はここで姉の気持ちがわかったのだがあえて言わなかったのである。
「いいと思うわ」
「そう、それじゃあ」
「ええ、いいと思うわ」
 そう姉に告げた。
「それじゃあそれでね」
「有り難う。じゃあ明日管君にプレゼントするから」
 こうして彼女は管にチョコレートを手渡すことになった。しかし話はそう簡単には進まないのであった。神様というのは何かと意地悪な存在でもあるからだ。
 次の日。バレンタインになった。まずは洪童とカムイの叫びがあった。
「俺にチョコを食わせろ!」
「さもないと暴動を起こすぞ!」
「はいはい」
「これあるから黙って」
 クラスの女の子達が宥めてチョコレートを手渡す。それで二人に関しては終わりだった。
 とりあえずこれで終わりかと思ったら違っていた。二人は相変わらず暴動を起こすぞと騒ぎチョコレートを要求するのであった。無茶苦茶であった。
「今度は抹茶味だ!」
「イチゴもいいな!」
「ほい、これ」
「義理チョコなのによくもまあそんなに」
「別にいいだろ」
 二人は開き直って女の子達に言う。
「俺達は彼女がいないんだ」
「この位何だってんだ」
「あっきれた」
「じゃあ彼女の一人でも作れば?」
「無理言うな」
 二人は同時に言った。最早開き直って有無を言わせない様子である。
「そんなに彼女ができるか」
「俺達は日向を歩けないんだよ」
「まぁた訳わからないこと言って」
 女の子達はそんな彼等に呆れた声をかける。
「笑えよ」
「ぶっ潰してやる、太陽なんてよ」
「わかったから。はい」
 女の子達はチョコレートを出してきた。二人のリクエスト通りの抹茶味とイチゴ味のチョコレートを出した。二人は笑顔でそれを受け取るのであった。 
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