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八条学園騒動記

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第四十二話 チョコレート爆弾その三


「ああ、何だ」
「その委員会って何人いるの?」
「俺と!」
「俺だ!」
 堂々と名乗ったのは二人だけであった。クラスの誰も名乗ろうとはしない。
「どうだ、恐れ入ったか!」
「控えい控えい!」
「・・・・・・よくわかったわ」
 蝉玉は呆れ果てるのも通り越して呆然となる。その中で二人に応える。
「どっちにしろバレンタインはなくすのね」
「その通り!」
「バレンタインの圧政に途端の苦しみを味わう民衆の力を今見せてやる!」
 完全にかつての独裁国家のように見ている。無論そう思っているのはこの二人だけでだからこそ彼等の異常性が際立つ結果となっている。そういうものを見ながら皆この二人の暴走を眺めていたがそこでセーラが蝉玉とスターリングに対して問うてきたのであった。
「あの」
「どうしたの、セーラ」
 スターリングが彼に顔を向けてきた。
「バレンタインというのはどんな邪神なのでしょうか」 
 考える目で二人に問うてきた。
「カムイさんと洪童さんのお話を聞いていると何か恐ろしい力を持っているようなのですが」
「ああ、あれ単なる馬鹿だから」
 蝉玉がまずこう述べてきた。
「考えなくていいから」
「はあ」
「バレンタインっていうのはね」
 スターリングが説明する。
「あれなんだ。女の子が好きな男の子にチョコレートをあげる日なんだ」
「チョコレートをですか」
「マウリアにもチョコレートはあるよね」
 スターリングは少し不安を感じながらセーラに問うた。連合ではお菓子の代表の一つであるがひょっとするとマウリアにはないのかも知れないと思ったからだ。
「はい、あります」
 しかしそれは杞憂だった。セーラの返事はこうであった。
「それをプレゼントするんですか」
「うん、男の子はそれにお返しする」
「キャンデーとかマシュマロとかね」
 蝉玉がにこりと笑いながら述べてきた。
「それがまた楽しみなのよ」
「マウリアにはそういうのはないんだね」
「そうですね、少なくとも私の星ではありません」
 セーラはこう答えてきた。
「それでも面白いですね。好きな方にチョコレートをプレゼントするなんて」
「義理も多いけれどね」
 実際はそっちの方が遥かに多いのはこの時代でも同じである。
「けれど実際にプレゼントする場合もあるわよ」
「蝉玉さんもですか?」
「私!?」
「はい。だってスターリングさんは」
「まあね」
 図星であった。それを言われて少し苦笑いになる。
「一応そのつもりだけれど」
「お返しはキャンデーでいいよね」
 スターリングも蝉玉に顔を向けて問うてきた。
「それで」
「ええ、いいわ」
 実は彼女はキャンデーが好きだったりする。願ってもないプレゼントであった。
「お願いね」
「うん」
「わかりました。好きな人にですね」
 セーラはそれを聞いて何かを考えたようであった。少し知的で優雅な笑みを浮かべてきた。
「それでは」
「それではってセーラ」
 蝉玉は彼女に顔を向けて問うてきた。
「一体何を考えてるの?」
「ですから好きな方にですので」
 女神の如き済んだ笑みだが何かがありそうであった。
「ですから」
「ううん」
「それはそうだけれど」
 二人はその笑みを見て何故か悪寒を感じた。 
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