八条学園騒動記
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第四十一話 御前が犯人だその六
「いたのは君だったってわけ。それとパトラッシュ」
「そうだったの。怪獣って」
「これでわかったわね」
ルビーもひょっこりと前に出て来た。そのうえで二人とネロに対して語る。
「怪獣の正体はパトラッシュだったのよ」
「そうだね」
「昨日襲われたのもそれだろうね」
「ちょっと待ってよ」
襲われたという言葉を聞いてネロがムッとして反論してきた。
「パトラッシュは人を襲ったりはしないよ。まして僕の友達は」
「それはわかってるわ」
ルビーが彼に答える。
「だからじゃれついたのよね」
「うん」
「パトラッシュだからね」
二人はこれで納得した。実際に今目の前でパトラッシュはネロにじゃれついていた。大きいが実に愛嬌のある姿であった。
「何かよくわからないけれどさ」
ネロは少し拍子抜け気味の二人に対して言った。
「話は終わったってことかな」
「ええ」
ネロにルビーが答える。
「何はともあれ一件落着よ」
「そう。それはよかったね」
「ところでさ、ネロ」
ロミオは話が終わったところでネロにあらためて声をかけてきた。もう気持ちは幾分切り替えてきている。
「何?」
「その手に持っているのは何?」
見れば彼は両手で紙袋を抱えていた。
「何かの買い物?」
「ああ、これプレゼントなんだ」
彼はこう答えてきた。
「プレゼントっていうと」
ルビーはその言葉を聞いてふと気付いた。
「あれ!?やっぱりバレンタインの」
「そう、それ」
ネロは笑顔で彼に答えてきた。
「それなんだ。相手は」
「アロアだね」
セドリックが笑顔で突っ込みを入れてきた。
「そうだよね」
「やっぱりわかるんだ」
「わかるわよ」
ルビーはネロにそう言ってくすりと笑ってきた。
「簡単にね」
「何か今度のバレンタインも楽しみになってきたね」
「そうだね」
怪獣のことも忘れてセドリックとロミオは楽しく話をする。
「何個貰えるか」
「僕はフィアンセがいるけれどね」
セドリックは楽しくそう述べる。
「彼女からも一個」
「いいなあ」
ロミオはそれを聞いて少し複雑な顔を見せてきた。
「本命がいてさ、君は」
「ロミオだっているじゃない」
しかしここでルビーが彼にそう突っ込みを入れてきた。
「ビアンカがさ」
「それはそうだけれど」
それでも彼の複雑な顔は変わらない。
「どうにもね。ちょっと」
「まあビアンカはね」
ルビーは彼の言葉を聞いて言う。
「両方だから」
「そうなんだよな。男は僕一人だっていうけれど」
女の子は別だというわけだ。彼女は実際には男も女も深くは経験を持っていないがそれでも好きなことは事実なのである、
「どうにもね」
「まあそれはそれこれはこれでさ」
ネロがそう言って慰める。
「割り切っていこうよ」
「君はアロアがいるから」
それでもロミオの割り切れなさは変わらない。言葉にもそれが出ている。
「まあ言っても仕方ないか」
「そういうことよ」
ルビーがいいところで彼女にそう告げる。
「だって。あれよ」
また言う。
「もらえない人も渡せない人もいるんだし」
「ああ、あの二人だね」
セドリックにはそれが誰なのかすぐにわかった。
「洪童とカムイだよね」
「ええ」
セドリックのその突っ込みに大して頷く。
「あの二人よ。さて、何をするかしら」
「それは僕にもわかるよ」
ネロはじゃれてくるパトラッシュをあしらいながら述べてきた。
「また変な組織を作って抗議活動とかしてるよ」
「そうね。またね」
ルビーがそれに返した笑みは困ったようなものではあるが同時に認めて包み込むような笑みであった。少し大人の笑みになっていた。
「困ったことに」
「さて、今度は何をするやら」
「見ものって言えば見ものね」
「そうだね」
ネロとやり取りをしながらその笑みを続ける。何はともあれバレンタインがすぐに迫っていた。即ち新たな騒動の幕開けであった。
御前が犯人だ 完
2007・3・21
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