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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第14話 凹みます!早く復活せねば

 ……どうも。ギルバートです。ただ今ベコベコに凹んでおます。

 初めて人を殺してしまいました。

 思い切りブレイドで叩き切りました。

 敵だった。仕方が無かった。そして、撃たねば撃たれていた。

 そう思う事により、頭からその事実を追い出していました。

 事実、夜中に部屋を抜け出し出歩いてみたり、他家の食材を(空腹とは言え)勝手に料理をしてみたり、系統バレの危険を冒してまで帽子作りをしてみたりと、普段の私ならまずやらない事をしていました。それはじっとしていると、如何してもこの事を考えてしまう。と、無意識に感じていたからなのしれません。

 しかし、……現実は残酷でした。

 アルノーさんは、ギアス《制約》により操られていただけだったのです。

 突き付けられた事実に、思考がどんどん鬱な物へと変わって行きます。もしマギがまだ消えていなかったら、私に何と言ったのでしょうか? ひょっとして、笑い飛ばしてくれたでしょうか? それとも面白い突っ込みを入れて、気を紛らわせてくれたでしょうか?

(もし、マギがいれば……「初めての実戦で、いきなり味方殺し。どっかの艦長の息子かよ!!」と、突っ込みを……)

 止めましょう。思考が更に鬱になります。下手をすると、どこぞの人型決戦兵器弐号機パイロットの様になりかねません。



 とにかく、じっとしていても気分は晴れないと思い、行動に出る事にしました。

 これからも、この世界で生きて行くには“避けて通れない事”だと、分かってはいるのです。分かっているからこそ(何時か向き合わなければならない現実なら、早い方が良い)と、自分に言い聞かせました。

 そして“毒を食らわば皿まで”と言う言葉もあります。このハルケギニアに生きている以上、今後も人を手にかける機会はあるでしょう。そして今回の様な胸糞悪い“殺し”は、早々無い……と思います。ならば今回の件は、重く……徹底的に受け止めるべきでしょう。

 そう思った私は、意識を失った後の現場で、何が起こったのか知ろうと思いました。

 話を聞く相手を求めて最初に見つけたのは、アナスタシアとモンモランシー(おまけでルイズ)でした。正直言ってこの子達に、あの時の事を聞いて良いのか考えてしまいます。しかしモンモランシーには、私のブレイドを見たか確認し必要なら口止めしなければなりません。

(先にディーネに話を聞いた方が良さそうですね。もし、モンモランシーが目撃していれば、ディーネ達が先に口止めしているかもしれませんし。……もし見ていなければ、藪を突いて蛇を出す事になりかねません)

 そう判断した私は、ディーネの居場所を聞くに止めましたが、残念ながら「知らない」と返事が返って来ました。仕方が無いので、自力で探す事にします。

 先ずはディーネの部屋に行きます。しかし空振りでした。そして、いきなり手詰まりです。

(他にディーネが行きそうな場所は、何処かあったでしょうか? ……駄目ですね。全く思いつきません)

 仕方が無いので、適当に歩きながら見かけた使用人に随時聞いて行く事にしました。しかし何故か、ディーネの目撃情報が全くありません。

(諦めて別の事をした方が良いでしょうか? ディーネではなく、母上に聞くと言う手もありますし)

 そう思った時、閃くものがありました。ディーネも流石に子供の相手ばかりでは、疲れてしまいます。そう言った時は“気分転換をしたい”と、考えるのではないでしょうか?

(となると、行先は身体を動かせる所でしょうね。……それも剣を振りまわせる場所が、最も有力です)

 私はそう予想し、練兵場に向かう事にしました。そこでは、予想通りディーネが剣の稽古をしていました。動きやすい男物の服装に、ガントレットのみ装着しバスタードソードを構えるその姿は、ちょっと幼い気もしますが男装の麗人と言う言葉が合いそうです。

「ディーネ。探しましたよ」

 私が話しかけると、ディーネが稽古を中断しこちらを向きます。

「ギル。如何かしたのですか?」

「ディーネに少し話があったのですが……」

「急ぎですか?」

「いえ。私も身体を動かしたですし、訓練の後で良いですよ」

 ディーネは頷くと、剣の稽古に戻りました。

「上がる前に、魔法無しで模擬戦しませんか?」

「良いですよ」

 私の提案にディーネは、剣を振りながら了承してくれました。

 私は刀が無いので、小ぶりなサーベルで手頃な物を2本借りる事にしました。

 よく柔軟をしてから、身体と剣をならすように型練習を始めます。

 暫くすると、身体も程好くあったまって来ました。ディーネも、そろそろ上がるつもりの様です。

「では、一手お相手お願いします」

「受けて立ちましょう」

 私がそう言いながら一礼すると、ディーネが了承の返事をします。

 私達は、それぞれの構えをとります。ディーネは剣を両手で持ち、中段の構え。私はサーベル二刀流で半身になり、左手を前に突き出し右手は相手から隠すように構えます。(レイピアに近い構えです)

 先手は私が取りました。身体をディーネの方に倒し、左足を滑るように前に出し突きを放ちます。この先読みが難しい突きに対して、ディーネは左やや後ろに避けます。右に避ければ左薙ぎと右突きが、下に避ければ切り落としか左膝が飛んで来るからです。身動きが取れなくなる上は論外ですし、後ろに下がれば連続で攻撃されればジリ貧になります。

 ディーネはお返しとばかりに、私の頭に向けて左から剣を振りおろします。私は身体を右に倒し、頭の直撃を避けつつ右のサーベルで受け流しました。そしてこのまま、ディーネを切りつけるべく左サーベルを振ります。

 しかしディーネは、私とぶつかる様に距離を詰め、左膝を私の腹に向けて放ちました。私は後ろに跳びながら、左膝と左膝をぶつけ受け切ります。そしてその勢いを利用して、そのまま間合いを開けました。

「相変わらず強いですね。ディーネ」

「まさか最後の膝が、(さば)かれるとは思いませんでした」

 ディーネは一切隙を見せずに、器用に残念と言うジェスチャーをします。

「あんなの食らったら、ご飯が食べられなくなります」

「それは残念です。デザートを貰ってあげようと思ったのですが」

「……」

 ……太りますよ。と言う言葉は、ギリギリで呑みこみました。もし言っていたら、ディーネが剣士(セイバー)から狂戦士(バーサーカー)にクラスチェンジしていたでしょう。怖ろしい。

 軽口を叩きながら再び構えをとり、そのまま少しだけ睨み合うと、今度はディーネから仕掛けてきました。私の左サーベルを力強く弾き、がら空きになった頭へ剣を振り下ろしたのです。モーションとしては、剣道の払い面が一番近いでしょうか? しかし私から前に出ようとした訳ではないので、簡単に対応出来ます。私は半歩後ろに下がるだけで、ディーネの剣は届かなくなりました。

 正直に言って、ディーネがこんな意味の無い攻撃した事に、疑問が頭をよぎりました。しかし剣を振り切った姿勢では、反撃も回避も出来ないはずです。この隙に、反撃しない手はありません。私は疑問を振り払い、半身の左右を入れ替え渾身の右突きを放ちました。しかしここでディーネは、左手を剣から離し私の右突きをガントレットで弾いたのです。そのままディーネは、身体を独楽の様に回転させ……。

 私が「しまった!!」と思った時には、ディーネの剣は私の首筋に突きつけられていました。私の負けです。

「参りました」

 私がそう口にすると、ディーネは嬉しそうに頷きました。

 お互い後片付けをして、いったん解散します。身体を清めた後、私の部屋に来てもらう約束をしました。

 私は身体を清め、着替えを済ませるとディーネを待ちました。暫く待つと、ディーネが来てくれました。私はディーネを部屋に招き入れ、鍵を閉めるとサイレントで聞き耳を封じます。

「話と言うのは襲撃の時の事です。私が気を失った後、如何なったか教えてほしいのです。視界が炎で埋め尽くされる所までは、覚えているのですが……」

 ディーネは頷くと、話し始めました。

 あの後私は気を失い、前のめりに倒れたそうです。一方でフレイム・ボールは、制御者を失い私に切り裂かれた事で爆散しました。爆散した炎はディーネのウォーター・シールドで、その大部分を防ぐ事が出来たそうです。

「ディーネはドットメイジなのに、よく防げましたね」

「残念。今の私は、水のラインメイジです」

 ディーネが自慢げに言って来ました。あの時私を助ける為に、その力を覚醒させたそうです。

「ありがとう。ディーネ。私もあの時力が覚醒して、土と風のラインメイジになりました」

 ディーネが一瞬キョトンとし、納得行かないと言わんばかりに睨んできました。私は真剣な表情で、続きを促します。

 ディーネのウォーター・シールドで防げなかった炎が、私の体を焼き全身に軽い火傷を負わせたそうです。倒れる途中だった所為で、他の場所と比較して頭の火傷が酷い状態でした。すぐに《凝縮》で作った水で私の体を冷やし、ヒーリング《癒し》で治療を開始しました。

 モンモランシーが水の秘薬を持たされていた事と、ヴェリエール領に入っていた為、公爵お抱えの高位水メイジに早い段階で見せられた事もあり、運良く火傷の痕は残りませんでした。

 クレマンさんとアルノーさんは、この戦いで死亡。

 騎兵8人中3人が重傷。4人が軽傷。(母上とディーネが、秘薬付きの《癒し》で治療したので、その場ですぐに全快しました)

 母上の方は敵がラインメイジが3名だけで、後はドットメイジだった為、かすり傷ひとつ無かったそうです。

「ディーネ。あの時、私のブレイドを目撃した人間は……何人居ますか?」

「騎兵は全員大丈夫でした。私も話を聞きましたが「気付いたら爆炎が上がっていた」と、言っていました。その所為で隙が出来て、ケガ人が出たそうですが、それは私達の責任ではありません。……モンモランシーもギルが飛び出した後、両手で顔を覆っていましたから、見られた心配はありません。敵の方も問題無しです。そう言った意味では、運が良かったです」

「……そうかですか」

「これで、あの時の話は全部です」

 ディーネがこれで終わりと、ジェスチャーしながら言って来ました。ディーネはあの事を知らないのか? それとも……。

「ディーネ」

「なんですか?」

「アルノーさんは、ギアスで操られていただけでした」

「……!? そうですか。知っていましたか」

 やはりディーネは、知っていて隠して居たのですね。余計な気を使わせてしまいました。

「私は立派な味方殺しですね」

 私は、自嘲気味に呟いていました。

「ふざけた事を言わないでください。あの時ギルがやらなければ、私達は死んでいました。アルノーさんには気の毒ですが、あの場で私達が死んであげる義理はありません」

「……確かにそうですが」

「アルノーさんの手で、私達を殺させる訳には行かないでしょう? ギルはアルノーさんの手が、私達の……特にモンモランシーの血で汚れるのを防いだのです」

 ああ。私は“アルノーさんを、主の家人殺しの汚名から守れた”と、言う事ですか。そう言う考え方もあるのですね。

 私はまだ完全に心の整理が出来ませんでしたが、この考え方に救いを感じる事が出来ました。



 そして私達が、領地に帰る日が来ました。ありがたい事に、ヴァリエール家全員で見送りをしてくれます。

 結局エレオノール様とカトレア様とは、挨拶をしただけでまともな会話はしませんでした。

 エレオノール様とは良く顔を合わせましたが、すぐにルイズに説教を始めてしまうので、まともに話をする事が出来ませんでした。(なんとなく、婚約を断る人達の気持ちが分かりました)

 カトレア様と顔を合わせたのは、挨拶の時のみでした。ルイズ達はカトレア様の部屋に、良く出入りしていた様ですが、私は誘われてもカトレア様の部屋へ行きませんでした。何故か?と言うと、カトレア様の本質を言い当てる所が怖かったからです。アルノーさんの事があったばかりですし、何より自分が歪んでいる事は自覚している心算です。

 何となくですが、……カトレア様の視線が突き刺さる様な気がするのも、気の所為だと思いたいです。

(避けられている。と、思われてしまったのでしょうか? ……まあ、今更気にしても仕方が無いですね)

 とりあえずカトレア様の事は、いったん忘れる事にしました。彼女の性格なら放置しても大事にはならないでしょう。

 ラインメイジに昇格した事で、出来る事が増えたはずなので、帰ったら色々と試してみる予定です。






 ……何時までも引きずっている訳には行きませんので、早く折り合いをつけようと思います。 
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