八条学園騒動記
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第四十一話 御前が犯人だその一
御前が犯人だ
ロミオは家への帰り道を歩いていた。そこでセドリックに出会った。
「ああ、君もこっちだったね」
「ああ」
ロミオはにこりと笑って彼に応える。
「君もだったね」
「うん。バイト?」
「花屋のね」
そうセドリックに答える。
「君は?」
「僕は別に何もないよ」
セドリックは笑顔でそうロミオに述べる。
「あちこちをネロと歩いていただけ」
「歩いていたの?本当に」
「そう言われるとね」
苦笑いでそれに応えてきた。同時に首を傾げているのでそうではないということがよくわかる。
「何か寝ている時間の方が多かったね」
「やっぱりね。ネロだから」
「けれどあれだよ」
ここでセドリックはネロのフォローに出てきた。何かと天然でグサリとする突込みを入れることも多いが同じく天然でフォローを入れることも多いのである。
「おかげでよく休めたよ」
「パトラッシュと一緒にだよね」
「うん。アロアも一緒だったよ」
「のどかだよね、それって」
ロミオは彼のその話に顔を綻ばせてきた。
「いい感じに」
「ずっと川辺の土手でね。横になって」
「いいねえ」
ロミオはその話を聞いて何かを懐かしむような顔を見せた。
「そういうのもね」
「今度は君も一緒に寝てみる?」
「うん、時間があったらね」
悪い話ではない。それに応える。
「僕も入れてよ」
「うん」
そんな話をしているうちに夕暮れとなった。辺りが暗くなってきて道行く人の顔もあまり見えなくなってきていた。事件はその時間に起こったのであった。
「ねえセドリック」
ロミオはその暗がりの中でセドリックに声をかけてきた。
「何?」
「何かさ、怪しい気配しないかな」
怪訝な顔で辺りを探りながら彼に囁いてきた。
「怪しい気配?」
「うん、何かね」
そう彼に告げる。
「しない?どう?」
「気のせいじゃないかな」
しかし彼はそうしたものを感じていないのか穏やかな返事であった。
「そうなんだ」
「うん、僕は別に」
「いや、これは」
しかしセドリックは感じていた。明らかに何か空気が違っていたのだ。
辺りを探る。すると暗がりから何かが出て来た。
「なっ!?」
「何、これ」
二人はそれを見て思わず声をあげた。それは得体の知れない怪物だったのだ。
怪物はすぐに二人に襲い掛かってきた。彼等は何とかそれを振り払って逃げ出したのであった。
「セドリック、こっちだよ!」
「う、うん!」
セドリックはロミオに案内されて何とかその場を逃げ出す。ほうほうのていで逃げ出した二人はある場所でやっと落ち着いた。肩で息をしていたが何とか逃げ延びたのであった。
「何だったんだろう、今の」
セドリックは汗を拭きながらロミオに問う。
「さっぱり訳がわからないんだけれど」
「怪物・・・・・・だよね」
ロミオは両膝に手の平をそれぞれ置いてふうふう言っている。そのまま呼吸を整えながらセドリックに答えるのだった。
「何かわからないけれど」
「そうだね」
セドリックもそれに頷く。
「逃げた恐竜かな」
「そうかも」
連合においては恐竜もまたペットの中に含まれる。実際に小型のブロントザウルスを飼っている人間もいる。中にはそのままのブロントザウルスを飼っている人間もいる。他には翼竜やカモノハシ竜、剣竜等がある。大型だが案外食事は少なくしかも大人しいので買い易いのである。中にはティラノザウルスを買う物好きもいる。
「まさかティラノサウルスとか?」
セドリックもそえに考えを至らせた。
「若しかして」
「その可能性はあるね」
ロミオもそれに頷く。
「ひょっとしたらだけれど」
「じゃあさ、何とかしないと大変だよ」
セドリックはいよいよ狼狽を見せてきていた。
「さもないと食べられちゃう人が出るかも」
「そうだね」
ロミオはセドリックのその言葉に同意してきた。
「とりあえずさ、僕達は助かったし」
「うん」
「明日から捜索はじめよう、それでいいよね」
「僕はそれでいいよ」
そもそもセドリックが言い出したことである。反対なぞあろう筈がなかった。ロミオの言葉にこくりと頷くのであった。
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