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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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第二十話 決着……そして

 怒号を皮切りにナツは得意の豪炎を両手に纏い突撃を仕掛けた。それは彼の得意とする火竜の鉄拳。常人が喰らえば一溜まりもなく、岩石すらも砕け散る破壊力。その火拳をルシア目掛けて迷いなく振るわれた。しかし……。

「――なっ!?」

 相手は金髪の悪魔と称されしS級魔導士。その鉄拳はいとも簡単に彼の手のひらに収まり、燃え盛る憤怒はまるで吸収されるように消えていった。

「力は中々強くなったな。以前の俺ならばその力に炎が加われば受けるという選択肢はなかったが―――残念だったな。俺も成長してるんだ」

 ナツの火拳は不発に終わり、それどころかルシアの屈強な手のひらからも逃れられない。再び火を灯そうともまたも吸収されるように消え去ってしまう。
 そんな刹那の動揺をルシアが見逃すはずもなく、強烈な足刀によってナツは空を切るように真っ直ぐ吹き飛ばされる。

「―――ッッ!!」

 何とか空中で態勢を立て直し、地に足をつけ勢いを殺そうとするも数メートルは止まらなかった。ズキズキと痛む腹部を抑えながらもナツはすでに次の行動に出ようとしていた。明確な力量差がある場合とにかく打って出る。それが最善の手。攻めに攻めて攻めまくる。攻撃が最大の防御と言われる所以だ。



 ナツはまるで大量の空気を吸うように背を海老反らせ、口内に圧縮させた炎を貯める。それはこの荒野の大地を焼き尽くさんばかりの強烈な炎の集合体。いかにルシアとてそれを喰らえば無事では済まないだろう。

 それでもなお、金髪の悪魔はふてぶてしく相手の攻撃を悠然と待ち構えていた。そのルシアの態度に防げるものなら防いでみろと言わんばかりにナツは灼熱の炎を吐き出した。

「火竜の―――咆哮ッッ!!!」

 そのブレスは本当に火竜が放ったとすら錯覚してしまうほどの灼熱の炎。現にルシアはナツの背後に確かに火竜を見た。それが幻覚だろうともこのブレスがいかに強烈かを表している指針にはなっているはずだ。
 その攻撃に対しルシアは足でコンコンと大地を叩く。その直後ナツは信じられない光景を目にした。


―――砂の津波


 明らかにブレスとの規模が違う砂の津波。ここら一帯がこの砂に埋め尽くされてしまうほどの。ナツの灼熱は瞬く間に波に飲まれ消え去った。それどころか津波の勢いは止まらずナツを飲み込んでしまった。

「六星のDBの一つでな。大地のDB【ジ・アース】だ。土や岩といった小規模なものではなく大地そのものを操ることができ、地形まで変えてしまう強力なDBだ。と言っても俺自身まだまだ六星を使いこなせているわけではないが……」

 そんな説明など聞こえているはずもなく荒野が一瞬にして砂漠と化している。その砂漠をゆっくりと歩みだし、ナツが飲み込まれた位置に近づいていく。

 砂漠化した大地は足場が悪く瞬発力にどうしても影響が出てしまう。その盲点を砂の中に隠れ潜んでいたナツは利用した。ルシアが目の前まで近づいてきたとき、まるで土竜のように飛び出し攻撃に打って出た。


「火竜の劍角ッッ!!」


 砂漠と化した砂の下には確かに荒野の大地が存在し、その砂とは違い強固な大地を使い勢いよく飛び出し、全身に炎を纏わせ体当たりを仕掛けた。

 そして見事ルシアの身体を打ち砕いた。

 そう、打ち砕いたのだ。その有り得ない感覚に驚き先程までルシアがいた位置を見ると砂漠には不釣り合いな氷の欠片が散らばっている。
 ナツはその疑問の答えを導き出す前に長年の経験によって磨かれた勘でその場を離れた。その直後、ナツがいた場所には巨大な円柱の氷が砂漠を陥没させていた。

「良い勘をしてる。長年経験によって磨いてきた勘がナツを救ったな」

 それほど動いてはいないにも関わらずナツは必死に乱れた息を整えようとしている。だが、その行為を許さんとばかりに目の前の巨大な氷柱に亀裂が入っていき砕け、氷のつぶてとなって数百の氷の弾丸がナツに迫った。

 魔導士としては普通考えられないほどの身体能力と得意の炎でその迫り来る氷の弾丸を丁寧に捌いていく。

「これも六星DBの一つだ。氷のDB【アマ・デトワール】星屑の氷とも呼ばれているな」

 そんな講釈をナツは聞ける状態ではなく、止めどなく迫る氷の壁を相手に神経をすり減らしていた。だがそのおかげもあり、あと少しで全てを捌き終えようとしていた。

「くっ――あともうちょいでぇ! ラストォォォオオオオ!!!」

 その掛け声と共にナツの頭上からは紫色の直径二十メートルはある球体が落下した。


―――瞬間、光の世界が訪れた


 それは爆発時の影響によるもの。それから遅れて耳を劈く程の爆発音が鳴り響いた。その状況を作り出したのは勿論ルシア・レアグローブその人である。この事態を引き起こした元凶は内心やりすぎたかなと思いながら、ナツならば大丈夫かと無責任にも程がある考え事をしていた。

 砂埃が晴れ、元々あった荒野の大地も顔を出しさらには抉れている。そこに倒れ伏しているのはナツ……と、そのナツを守るように仁王立ちしていた


「まったく、外が騒がしいと思ってきてみればやはりうちのギルドだったか」

「エ、エルザか。どうやら無事に裁判を終えたようだな」

「終えたようだな、じゃないっ! まったくナツ相手に六星のDBを使うなんて。それもさっきのは流動のDBだろっ!! 何を考えてるんだっ!」

「い、いや、少し盛り上がってな。ナツも想像以上に強くなってるもんだから……いいかなと」

「良くないっ!」

「すまん。あとでナツにも謝る」

 まるで尻に敷かれた夫と嫁のようなやり取りだが無理もない。
 最後ルシアが使用したDBは六星の中でも最も凶悪とされる流動のDB【ゼロストリーム】水・風、さらには血液といった流れがあるもの全てを操ることができる凶悪なDB。それを使いルシアはあろうことか風を操り空気を圧縮させプラズマを作りだしたのだ。

 ガミガミと怒るエルザとさすがにやり過ぎたと凹んでいるルシアのその状況は評議員が見れば顎が外れてしまいそうなほどの光景だろう。数人は爆笑するだろうが。
 未だ説教が終わりそうもないが、ルシアは恐る恐る提案をする。

「ナ、ナツもそんな怪我をしてることだし、一旦ギルドに帰らないか?」

「むっ……ルシアに言われるのはどこか納得いかないが、そうだな。手当をしに帰ろうか」

「あ、あぁ。俺のDBでギルドまで一瞬だ」

「帰ったら説教の続きだぞ」

「……」

「返事っ!」

「あ、あぁ」

「あぁ、じゃなくて、はいっ!」

「はい……」

 こうしてルシアのDBによって一瞬にして妖精の尻尾のギルドへと帰っていった……のはエルザとナツだけだった。勿論これには理由がある。元々ルシアはフィオーレ支部の図書室で調べ物をしようとこの支部まで来たのだ。

 ただ、そうであったとしてもここは素直に共に帰るべきであっただろう。現にエルザはギルドでカンカンに怒っており、それをギルドメンバーが何故ナツが怪我をしているのか、何故エルザが怒っているのか分からず困惑しながらも宥めていた。

 そんな後が怖い状況にルシアは冷や汗をかきながらも建物の中へ入っていった。







side out

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

side ルシア・レアグローブ






 フィオーレ支部にある図書室は一般人では立ち入ることさえできない。許可を貰っている者や一定以上の権力者にしか入室できないようになっている。入口には魔導警備員二人が常時配置されており、例えこの二人を何とか掻い潜ったとしても結界魔法によるセンサーが待ち構えている。

「許可書をお見せください――はい、確かに。ではお通りください」

 この結界魔法というのが意外と厄介で無理やり通ろうとすれば勿論阻まれ、警報が鳴り響く。この魔法自体を解除しようとすれば別の結界魔法が発動すると共に警報が鳴る。つまりこの部屋自体に二重三重に魔法が上手く重ねがけされている。

 部屋の中はまるで図書館と言えるほどの広さを誇り、さらにその奥には禁書エリアと呼ばれる評議員クラスの人でないと立ち入りが禁止されている場所がある。

 そしてその禁止エリアこそが俺の目的地であった。勿論そこには警備員はいないものの結界魔法により評議員のみが入れる仕様になっている。現代で言うところの網膜センサーなどを魔法で再現しているらしい。ここの警備員が酒場で酔っていた時、上手く聞き出したのだ……カナが。俺はそういうのは苦手だ。何より相手が怯えるからな。

 ではどうやってここを掻い潜るかというと、それはこれを使う。と言っても魔法に疎い俺は今手に持っている物が何かよく分かっていない。いや使い方も効果も分かる。以前もこれを使って入室したからな……だが、こんな魔道具見たことがないのだ。

「……ミストガンの奴、これをどこで手に入れたかも教えてくれないしな」

 まぁ俺はこれが使えればそれでいい。水晶のようなソレの中に以前回収しておいた評議員の髪を一本入れると交わるように溶けていく。そしてそれを粉々にするため握りつぶした。さてここからが本番だ。

 この魔道具は相手の皮膚や頭髪など本人の一部(恐らくDNAが必要なのだろう)を入れて割るとその人そっくりの幻影を作り出すことができる。しかしここの結界魔法では幻影は無効化される効力もありこれのみでは意味をなさない。つまり、実体がなければいけないのだ。

「なら実体を一時的に作ればいい」

 現実化のDB【リアルモーメント】

 幻を一瞬だけ現実に変えることができるDB。これによって先の幻を実体化させる。すると見事に扉が開くという寸法だ。


 今回俺が調べるのはゼレフの遺産。と言っても前回のヘタレ笛についてではなくデリオラと呼ばれる怪物。十数年前いくつもの都市を壊滅させ実在の記録がある悪魔。今回はこいつについて調べる。と言っても

「はぁ、強敵探しのためとは言えこの無数にある本棚からデリオラの資料を探すだけでも一日は潰れるな。さすがに気が滅入るが……」



――それでも俺のために探すとしよう。奴はまだ生きていると予感しているのだから。 
 

 
後書き
VSナツ戦でしたが、実は六星クラスのDBでないと余裕&短時間での勝利は難しかったとルシアは判断しました。滅竜魔法とナツの爆発力はそれ程までに強力だということです。あの文中からはそれを察するのは無理ですねw 
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