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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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六話

 
前書き
今回は、今まで以上に短いです。 

 
盗賊討伐の遠征から一月経った、陳留の華琳の軍は一万以上に増え更に先の遠征の後に仲間になった許緒と旬彧。真名を季衣と桂花の二人を加え曹操の名も朝廷や在野の者達に広く知られるようになってきた。
季衣は華琳の親衛隊の将として春蘭の指導を受けながら働くようになり、桂花は曹操軍次席軍師として迎え入れらた。
自身の軍が大所帯になった事で華琳は軍制を改め軍を大きく三つに分け春蘭、秋蘭、如水の三人の将を軍団長に任命し軍行動の効率を上げるようにした。
三人の将はそれぞれ華琳より軍団長としての指示を与えた。
春蘭は新兵の育成と兵の錬度を高めるように勤め
秋蘭は新しく軍規を設け軍紀を正す事を主な仕事とし
如水は軍の全体演習時の草案、兵の部隊編成と当直の案を出すように指示した
加えて如水と秋蘭は文官としても勤めさせ。
秋蘭には領内の治安維持。
如水には桂花と共に城の予算編成と財貨、糧食、荷馬、武具の管理を任せ更に、領内の治水と城下の区画整理を担当させた。

更に如水は、巨額の財を投じて大陸各地に諜者を撒き天下の情勢、地理、人情、各地の領主や在野の有力者の性格と能力を調べ来るべき時に備えての準備を行った。

華琳自身も桂花と共に宮廷に働きかけ自身の名声の箔付けに腐心したり。領内の新地開発による産業促進や、交易路の開発整備による市場拡大によって民力向上と財源の拡大に務めた。
曹操の名が朝廷でも取りだたされるようになり、陳留に勅使が下り、至急、曹操は都に下り、朝廷に参内するようにとの命が下った。華琳は軽兵を率い留守を春欄たちに任せ上洛した。
帰郷後、華琳は朝廷より刺史から州牧に任じられる内示が下ったと各位に知らせた

すべての知らせが終わると華琳は如水に執務室に来るように言われた
「私だが」
「入って」
そう言われ、如水が部屋に入ると華琳一人だけが室内で待っていた、含みを持った笑いを浮かべてる華琳に如水は軽口を言った
「州牧に任じられるとはずいぶん過分な沙汰だな」
「まだ内々の事だから皮肉と世辞はいいわよ。それより、州牧となれば今以上にするべき事が増えるわ、その下準備を怠らない事。いいわね」
「わかっている。明日にでも各新領地に人を遣って父老達から実情を聞くように指示しよう」
「それと各地の特産品や資源の確認も怠ら無いこと」
「承知した。用件はこれだけかね?」
如水がそういうと華琳が挑発的に笑って
「あら?。てっきりあなたの方が私に聞きたいことがあるんじゃなくって?」
と言ってきたそれを聞き、自身の好奇心を見抜かれていた事を笑った
「やれやれ、すっかり見透かされていたか。そうだな、朝廷の実情について君の体験をもって聞いてみたいのだが構わないか」
「ええ、私もあなたの意見を聞いておきたいし。まず、今上については近臣たちに壟断されているといっても過言では無いでしょう。実際、いろんな伝手を使ったけども拝謁は適わなかったわ。」
「そうか、君の伝手と言うのは聞いてもいいのか?」
「ええ、まず、私の祖父が何代か前の大長秋だったの、それの縁を伝って、拝謁の為に働きかけたのだけど、それでも駄目だったから、腐れ縁の袁紹が都合よく都に居たからそいつを上手く使ってみたわ」
「袁紹といえばたしか桂花がかつて使えていた者だな、確か三公を輩出する名門の家柄だったはずだが」
「そうよ、袁紹本人については別の機会に話すとして、その袁家の名を使ってでも拝謁が叶わないとなれば、宮殿の奥に引きこもっているとしか考えられないわ」
「確かにそうだろうな、では、今現在、宮廷を取り仕切っているのはその近臣たちとして、それらはどのような者たちだ?」
「ほとんどが、金に目の眩んだ小物ね。朝廷の権威を利用して、地方の有力者から賄賂を受けて私腹を肥やすしか能の無い奴らだわ。当然、賊の跋扈や各地での重税に苦しむ民衆の声。今の世の現状を知る輩は一人も居ない。宮廷の要職は殆どそいつ等の類縁。まあ、だからこそ今回の上洛での私の任官もすんなり行った訳だけど」
吐き捨てる様に語った後、華琳は冷ややかにほくそ笑んだ
「私の知りうる限りだと、今の朝廷に絶望している民衆も少なくは無い。何かのきっかけがあればいずれ朝廷に反意を起こしても不思議ではない。もしそうなれば、今の朝廷では何も打つ手は無いだろうな。となれば各地の有力者に兵を出させる様に命が下るだろう」
そこまで言うと二人はお互いに考えている事がわかったのか急に笑い出した
「それこそが、この私が名を広めるに十分な条件ね」
「人の不幸で成り上がるか、ろくな死に方しないだろうな私達は」
「自分の死に様を今から考えても仕方が無いわ。そんなもの死の直前に考えなさい」
「だが、せめて君の領内では出さない様にしよう。少なくともそうなれば、兵を他の領内で動かす口実も出来るそれに、後日、後ろ指を刺されるような事は無いだろうからな」
「当然よ。私の領民からその様な者を出しては、誰が許そうとも、私が私自身を許せなくなるわ」
「その命に答えて私達も力を尽くしていこう」
その言葉を聞き、当然の様に思った華琳は、自分の目的には如水の存在が無くては為らないものと気づき。そして、この男が自分にとってどれほどかけがえの無い者だと気が付いてしまった。 
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