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ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者

作者:黒神
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第五十四話 境地


ドゴオオオオオオオン!!!!

修行が開始されて数日。闇慈と一誠が連れてこられた山々には至る所に、クレーターや抉れた場所があった。そして今日も修行の山は轟音を轟かせていた。

「うわぁぁぁぁああんっ!」

一誠は泣き顔になりながら、タンニーンが飛ばしてくる火球を次々と避けていた。
しかし一誠が泣き顔になるのも分かる。タンニーンの火球ブレスは簡単にクレーターが出来てしまうほどのものだった。直撃したら跡形もないだろう・・・

「ほーら、赤龍帝の小僧。もっと素早く避けんと消し炭なるぞ?」

「せやっ!!」

闇慈が一誠を気にしている間にデスサイズ・ヘルでタンニーンの身体を斬り付けようとしたが・・・

ガキン!!

「これでもダメか!!龍の鱗は流石に硬すぎる!!」

弾かれてしまう。龍の鱗はそこらの甲冑よりはるかに硬く、生半端な攻撃では通用しない。闇慈はデスサイズ・ヘルに切れ味を地味に上げていったが、一向に斬れる気配がなかった。
そして闇慈は再びタンニーンと距離を取る。

「黒衣の死神は中々成長が早いな。我に攻撃する一瞬の隙をついてくる、そして我が火球を放つまでには距離を取っている。それに比べ、赤龍帝の小僧は逃げてばっかりか・・・」

タンニーンは岩陰に隠れていた一誠を見つけると、その岩に向かって火球ブレスを放ち、一誠を誘き出した。

「ひぃぃぃ!!死ぬ!!死ぬ!!死んじゃうよ!!」

「まったく、逃げ回ってばかりではいつまで経っても修業にならないだろう?ほら、少しは反撃してこい」

「無理っスよ!あんた強すぎだもん!もしかしてヴァーリより強いんじゃないの!?」

「まあ、パワーだけなら魔王級とはよく言われる」

「無理ィィィ!!魔王級のドラゴンって何!?ドラゴンってだけでもバケモノなのに、魔王級なんて相手に出来る訳ないでしょおおお!!」

「そこ死神は我に恐怖の顔を見せずに掛かってくるぞ?」

「怖くないわけじゃないが、恐怖に負けては成長は出来ない!!」

闇慈はタンニーンにそう返すと再びデスサイズ・ヘルを取り、斬りかかろうとすると・・・

「お~。やってんな。どうよ?」

アザゼルが顔出しに来た。

~~~~~~~~~~~~

「うみゃい!うみゃいよぉぉぉおおお!」

「イッセー。気持ちは分かるけどご飯粒が飛んでるよ?」

一誠と闇慈はリアス達が作ってきてくれた弁当にがっついていた。一誠に至ってはリアスが作ってくれたおにぎりが嬉しかったのか涙を流しながらバクバクと食べていた。
実はここ数日。食事もサバイバル環境下にあり、自給自足の日々が続いていた。しかし冥界に来て日の浅い二人にとって植物などの知識は持ち合わせていなかった。仕方ないので二人は近くにある川でとった魚を焼いて食べていた。

「ハハハハ。しかし数日見ない間に多少は良いツラになったな」

「ふざけんな!死ぬよ!俺死んじゃうよ!このドラゴンのおっさんメチャクチャ強いよ!ドラゴンの戦いを教えてくれるって言っても実力が開き過ぎてて話にならねぇぇぇぇっ!おっさん。全然手加減してくれねえんだもん!!俺、ドラゴンのおっさんに殺されちゃいますって!童貞のまま死にたくないっス!」

「イッセー。それは違うと思うよ・・・タンニーンが本気出したらすぐに消し炭だって・・・」

「なんでそんなことが言えるんだよ!?闇慈」

「この前イッセーが休んでいる間に、本気で相手をして貰ったんだけど・・・あれは死ぬかと思ったよ。火球が掠めただけで身体中の骨が折れそうな位の威力だったんだよ?」

「なんだよ・・・それ」

それを聞いた一誠はさらに顔を青くしてしまった。

「そのお陰で何度も死に掛けたけど、何だか『境地』が見えたような気がする」

そう言うと闇慈は立ち上がり、タンニーンに再び頼んだ。

「タンニーン。お願いします!!」

「では二人に危害が出ないように空で戦うとしよう」

そう言うと闇慈が死神の姿になると空に飛び立ち、タンニーンと向き合った。

「ではいくぞ!!」

そう言うとさっきとは比べ物にならない位の火球ブレスを闇慈に放った。闇慈はそれを避けるが・・・ミシミシと骨がきしむ様な音が聞こえた。

「ぐっ・・・(思い出せ・・・あの感覚を・・・『境地』を)」

闇慈は突然目を瞑った。それには一誠も驚いたようだった。

「何やってるだよ!?闇慈!?避けろ!!」

そう言っている間に闇慈の目の前には火球が迫っていた。

(僕は・・・『生きる』!!そして大切なものを・・・『守る』!!)

その瞬間、闇慈の心の中でピチャンと何かが弾けた。そしてカッと目を見開き・・・巨大な火球をデスサイズ・ヘルで一閃した。

「うおおおおおお!!!」

闇慈が振り切るとその火球は霧散してしまった。そして闇慈からは目に見える程の黒いオーラのような物を纏っていた。

「見事だ。死神よ」

「これは・・・一体?」

(ついに境地に達したか・・・闇慈よ)

ここで久しぶりにデスが闇慈に話しかける。

(デスさん。お久しぶりな気がします)

(気にするな。それよりお前は『明鏡止水の境地』に達することが出来たようだな)

(明鏡止水?)

(穢れのない清んだ心・・・それが明鏡止水。お前はこの境地に至った時は更なる力を得るぞ)

それを言うとデスは再び、引っ込んでしまった。そして闇慈は一誠の元に降りてきた。

「闇慈!!何だよそのオーラみたいなのは!?」

「これが僕の境地・・・明鏡止水の境地みたいだよ」

それにアザゼルが続ける。

「明鏡止水か・・・洒落た名前だな。でもお前はこれで強くなったと思うぜ?俺もあの火球を叩き斬った時は驚いたぜ?」

それを聞いた闇慈は少し笑みを零し、水筒のお茶で喉を潤した。ここで闇慈は気になったことを思い出し、アザゼルに尋ねる。

「アザゼル先生。あの時ヴァーリが何か呪文みたいなものを唱えようとしていたんですけど、あれって何なんですか?」

「あぁ、[覇龍]『ジャガーノート・ドライブ』の事か」

「[覇龍]『ジャガーノート・ドライブ』?[禁手]『バランス・ブレイカー』よりも上の状態ですか?」

「いや、バランス・ブレイカーの上は存在しない。セイクリッド・ギアの究極は禁手だ。だがな、魔物の類を封印してセイクリッド・ギアにしたものがいくつかあってな。それらには独自の制御が施されている。イッセーのブーステッド・ギアとヴァーリのディバイン・ディバイディングもその例だ」

「独自の制御・・・要するにジャガーノート・ドライブは『力の暴走』みたいなものですか?」

「そうだ。酷い位のな。本来、セイクリッド・ギアは強力に制御されていて、その状態から力を取り出して宿主が使えるようにしている。だが、赤龍帝と白龍皇の神器の場合はそれを強制的に一時解除し、封じられているパワーを解放する。それが『ジャガーノート・ドライブ』だ。一時的に神に匹敵する力を得られるが・・・リスクも大きい。寿命を大きく削り、理性を失う。言うなれば、力の亡者と化した者だけが使う呪われた戦い方だ。イッセー、お前は絶対に真似するな」

一誠はそのジャガーノート・ドライブの内容を聞くとブンブンと首を振り、同意した。

「よし。お前たちもオッケーみたいだな。あとは・・・小猫か」

「小猫?小猫ちゃんがどうかしたんですか!?」

闇慈はらしくないように慌ててアザゼルに尋ねる。

「落ち着け。命にどうこうするって程じゃねえ。焦っている・・・と言うよりも、自分の力に疑問を感じているようだ。俺が与えたトレーニングを過剰に取り組んでてな、今朝倒れた」

「なん・・・ですって!?」

闇慈は心が乱れたのか『明鏡止水』も消えていた。

「怪我はアーシアに治療してもらえるが、体力だけはそうはいかん。特にオーバーワークは確実に筋力などを痛めて逆効果だ。ゲームまでの期間が限られているのだから、それは危険だ」

(小猫ちゃん・・・君は何を焦っているんだ。焦りは何も良い物を生まない)

闇慈は苦虫を噛み締めたような顔をしたが、アザゼルは続ける。

「さて、行くか。アンジとイッセーを一度連れ返せと言われたんでな。一度グレモリーの別館に戻るぞ」

「へっ?先生、誰からの連れ戻し命令ですか?部長?」

「リアスの母上殿だ」

「「??」」

結局何なのか、分からずに二人はアザゼルに連れられ、別館に戻った。
 
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