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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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後日談10 三送会、そして卒業式

さて3学期後半。

つい最近、ホワイトデーでのお返しのために1万以上浪費した俺。
作るにも手作りチョコなんて気持ち悪いかと思い、結局買うことにしたのだが、あれやこれやと選んでいるうちに1万越えしてしまった………

まあそれでも喜んで受け取ってくれたので良かったのだが………

「ありがとう零治………」
「ありがとう」

アリサとフェイトは受け取ったチョコを大事そうに受け取ってくれたのだが、なぜかいつもよりもその仕草が切なく見えた。

………何かあったのだろうか?


さて、それ以外はウェンディが事件を起こす以外平和な学校生活。

冬に話題になったヴァルキリーズも全くメディアに注目されなくなると、次第に人々からも薄れていった。
といっても一部では今でも熱狂的なファンがいるのだが………

「さて、そろそろ三送会の準備が始まります。それぞれ準備の段取りを生徒会中心に三送会委員と共にやっていくので、生徒会メンバーは段取りをしっかり確認しておいてください」

と会計月村すずかが説明した。
聖祥中学校の行事のほとんどが生徒主体で行うため、今回の三送会も生徒会中心に1から準備をしている。

「後は出し物の劇だが、演劇部の出来はどうだ?」
「短い時間だったが問題ないと、先ほど連絡をもらった」

副会長加藤桐谷の質問に、書記の有栖夜美が答えた。

「なるほど………しかしその前に聞きたいことがある………」
そう言ってすずかと夜美を見る桐谷。

「会長と副会長は!?」
「今日、月イチのタイムセールがあるから今日は休むって言って、一緒にダッシュで帰っていった」
「あのバカ2人は………」

そう呟きながら頭を抱える桐谷。

「仕方がない、今日は星も用事があって買い物が出来ないのだ」
「いや、優先順位が違うだろ2人共!!」
「しかしレイが買い物しなければ我等の夕食が粗末な事に………」
「いや、だから………」
「桐谷君、もう2人は帰っちゃったんだからこれ以上言っても意味無いよ」
「………分かったよ。………取り敢えず2人が居ないとなると大事な案件は進められないから三送会の段取りを確認しよう」

そう言って会議を始める生徒会メンバーだった………






「零治君レタス!!」
「任せろ!!」

180cm近い身長を使い、人混みから何とかレタスを獲得する。

「どうだ!!」
「………流石は零治君や。当たりやで」

当たりとは新鮮かどうか。

『はいはい!レタス30円、1人1個までですからね』
「さあ零治君、次行くで!」
「次は何だっけ?」
「じゃがいも詰め放題100円!」
「すぐに行くぞ!!」

俺達の闘いは続く………









「ふう、買えた買えた」
「そうやね………私も満足や」

タイムセールという戦争を乗り越えた俺達には大きなビニール袋が2つ。今回の戦利品だ。

流石に家まで荷物を持てないはやては、仕事が早上がりのシャマルさんに手伝ってもらうことにしたようだ。
ただ来るまで暫く時間がかかりそうなので、今は近くの喫茶店で小休止している。

「しかしもう3月やなぁ………」
「ああ、水無月先輩は卒業、俺達は最高学年だな」
「早いなぁ、もう1年か………ほんまあっという間やな」

そう言ってコーヒーを飲むはやて。
会話にもあったので、気になることを聞いてみることにした。

「なあはやて、お前達は高校には進学するのか?」
「当たり前やん!………と言いたいとこやけど、実際は迷い中や。私もフェイトちゃんもなのはちゃんも。出世するには学校にのんびり行ってる暇無いし、私にはちょっとした夢があるんや」
「夢?」
「自分の部隊を持って、なのはちゃん達とみんなでミッドの平和を守る!………なんてな。まだ一介の魔導師なんやけど」

と、苦笑いしながら言うはやて

「平和を守るか………立派だよはやて」
「そ、そうやろか?」
「ああ」
「………でも私の夜天の書はたくさんの人に迷惑をかけたから………その分頑張らへんと」
「はやてじゃない、前の持ち主だろ?」
「いいや、もう私の家族なんや。私も一緒に罪を償うんや」
「そうか………」

本当に十分立派だよはやて………

「零治君、そんなことよりスピーチは考えたんか?」
「スピーチ………?ああ、卒業式の」
「そろそろ先生達に見せなあかんのちゃう?」
「………と言われてもいくらなんでも早いだろ………それに前もって考えるって苦手なんだよな………」
「せやけどまた文句言われるで………」
「言わせとけって」
「もう………」

そう呟いてコーヒーに口をつける。

「何だ?今日は随分と真面目じゃないか?」
「それほど流石に不味いと思ってるんよ私は」
「大丈夫だって。先輩達の晴れ舞台を台無しにすることはしないから。それに実はいい案を考えていたり………」
「良い案?」
「それはな………「はやてちゃんお待たせ!」


とそんなとき、迎えのシャマルさんが、そしてその隣には何故かヴィータが。

「シャマルさん、そしてヴィータ、こんにちは」
「こんにちは零治君。今日も元気ね」
「アタシはおまけか!?」
「別にそんなつもりは無いよ」
「ヴィータは寂しいんよ、先にシャマルの名前を呼んだから」
「は、はやて!?」
「そうなのか?悪かったなヴィータ」
「ち、違うからな!!アタシはそんな事思ってないからな!!」

と、あたふたしながら怒鳴るヴィータ。
はやての冗談にあんなに慌てるなんてからかいがいがあるなぁ………

「ヴィータちゃん、落ち着いて。はやてちゃんの冗談なんだから………」
「冗談!?そうなのか………?」
「ごめんな。そんなに取り乱すとは思わへんかったから」
「べ、別に取り乱してなんか………」

とチラチラ俺を見ながら言うヴィータ。

「そうだ、ヴィータはいつも通りだった」
「それはアタシがいつも取り乱してるって事か~!?」
「………俺にどうしろと?」
「「さあ?」」

無責任な八神家の面々だった………








『それでは3年生を送る会、開催します!!』

あれから時間は過ぎ、すずかの司会の元、とうとう三送会が始まった。

『先ずは会長の挨拶、零治会長、お願いします』

そう言われ、俺はマイクを受け取った。

『え~、三年生の皆さんいかがお過ごしでしょうか?卒業式まで後僅かとなり我々も寂しさが込み上げてきます。そこで、三年生の皆さんにこの中学校の事を忘れないようにささやかな贈り物をさせていただきます。どうか最後までお楽しみください!!』

そう言ってマイクを再びすずかに渡し、ステージ脇に消えた。

『あれ?まとも………し、失礼しました!それじゃあ先ずは吹奏楽部による演奏です!』






「零治、頭打ったか!?」
「桐谷、それどう言うことだ………?」

たまには真面目に言おうと思ってこうしたのに何故そんな風に言われなくちゃいけないんだ!?

「しかしほんま珍しいね、全くボケへんで挨拶終えるなんて」
「俺を何だと思ってるんだよ………流石の俺もボケない事位あるっての」
「………まあつまらんな」
「ちょ!?夜美さん?」

ボケを求められる会長だった………






その後も会は問題なく進んでいく。
一つ気になるのがウェンディ。会議にもちょこちょこ参加していて後半になってばったり来なくなった。
それが逆に不気味だ………

『俺は君に何が出来るんだろうか………?』

演劇部の劇、『記憶の絵日記』が始まっている。
高校3年生の少年が出会った少女は事故の後遺症で事故後の記憶が一週間と持たない。絵日記に書いてある記憶で少年と親しくなっていく。どんどん新たな記憶を紡いでいく2人だったが、それに反し記憶が持たなくなっていく少女。そしてとうとう1日しか持たなくなってしまう。自分の愛した人なのに覚えられない、そんな自分にこれ以上彼を付き合わせたくない。そう思った少女は決断する。

………と言った感じの劇。
感動ものの劇なのだが、何故三送会で?とも思った。

しかし基本的に主人公とヒロインの2人中心に話が進む為、人員は少ないし、舞台のセットもだいそれた物は使わない。
短時間での劇となるとこういう話がベストなのかも。

『彼女はもういない。誰かを事を愛したのは覚えているのだが、顔も名前も思い出せないらしい。それが辛くて彼女は君とはもう会わない事を選んだ。完全に忘れ去るために。だからこそ今まで書いていた絵日記を捨てたんだ』

物語は終盤に入った。俺達含めた全校生徒全員が劇に見入っていた。

『くっ!?』
『どこへ行く?』
『決まってる彼女に会うんだ!!』
『行ってどうする?お前にあの子が救えるか?あの子はお前の為に今までの記憶の絵日記を捨てたんだぞ?』
『俺はそんなの嫌だ!いくら忘れられても、俺はあの子が好きなんだ!!』
『だがどうする?もう絵日記も無い、彼女は既にお前の事を忘れているぞ?』
『探す!!バラバラに散らばった絵日記を集める。全部は集まらないだろうけど、無いよりはマシだ』
『………しかし、お前が見つけている間に彼女は完全に忘れてしまうぞ?』
『まだ時間はある。俺は諦めない、絶対に!!』

その後は色んな場面で絵日記を見つける主人公。全部で集まった絵日記は400ページ中22ページ。

それでも主人公の悠は彼女の元へ走った。
初めて彼女と会った、町外れの神社に。

彼女の記憶が持つ時間ももう短い。それに行った所で彼女が居るかどうかも分からない。
だけど悠はいると感じていた。

そしてその場には悠の望んでいた人物がいた。
ベンチに座り、この町の景色を見ていた。

『知っています?ここの夕日はこの町で一番綺麗に見えるんですよ』

彼女は景色を見たままそう話しかけた。

『ああ、知ってるよ。俺の好きな人がここの景色が大好きだった………俺もここから見る夕日が大好きだ』

そう言って悠は女の子に近づく。

『これ、美沙のだろ?やっぱり町中探し回ってもこれが精一杯だった。本当にごめん………』

彼女の後ろからそう言って21枚の絵日記を渡す。
湖に浸かって字が滲んでいるものもあれば、泥に落ちて汚くなっているものもある。

『美沙、君が1日の記憶が持たなくなったっても、俺の事を何度も忘れてもずっと君のそばにいる。俺は君は好きなんだ。何度忘れても、何回でも好きだと言い続けるよ。だから………』

そう言って悠は美沙の正面に向かう。

『俺とずっと一緒に居てくれ』

俯いたままの彼女にハッキリと言った。

『………悠君はバカだよ………バラバラにした絵日記を拾い集めるためにそんなにボロボロになって………このページなんて字が滲んで読めないよ………』

顔を上げた彼女の顔には涙が流れているが、とても嬉しそうだった。

『どうせバカだよ俺は………』
『だけどそんな悠君だから私も………希望があると思えた………』

そう言って彼に抱きつく。

『こんな私だけどどうかよろしくね悠君………』

ここで劇は終わった………

『これから先輩たちにも色んな出来事があると思います。今回の劇でも主人公の悠は大切な出会いをし、不運な運命の彼女を支えようとすることを選びました。これから先も大事な選択がいくつもあると思います、どうか後悔しない道を選んでください。辛い事、苦しい事にも負けずどうか頑張ってください。物語は途中ですが………これで演劇部の出し物を終わりにします』

そう言って舞台の2人は深々と頭を下げた。
その後直ぐに拍手が体育館の中で響いた。

「後悔しない道か………」

先輩との件、加奈の件と俺も既に道を選んだ。
これから先も様々な道があり、辛い事も苦しい事もあるだろう。

(頑張れ先輩達………)

心の中でそう呟いて演劇部に拍手を送った………




さて、楽しい時間は過ぎ、会もとうとう終わりになった。
最後にはやての閉会の言葉で会は終了だ。

『最後に閉会の言葉です、副会長はやてさん、お願いします』

そう言われ、ステージ横からマイクを受け取り、ステージ中央に向かったはやて。

『先輩方、今日の3送会はどうでしたか?今日の事が先輩達のこれからに力になれば嬉しいと思います。辛い事、苦しい事があったら是非この学校の事を思い出して下さい。ここは先輩達の母校ですから………それではこれで3年生を送る会を終わります!!』

最後にいつもは関西弁のはやてが普通に喋り、会は終わった………









そして月日は流れ………

『次に在校生送辞。生徒代表、生徒会長有栖零治』

「はい!!」

そう言って俺は立ち上がりステージへ歩く。
3送会も終わり、時期は3月の終盤。とうとう卒業式になった。

ステージに上がり、送辞の紙を懐から取り出した。

『送辞。………柔らかい日差しの中、木々の芽が膨らみ始め、辺り一面春の光に包まれ始めています。深々と大地に根を伸ばし、じっと冬に耐えてきたタンポポも今、太陽に向かって花開こうとしています………』

そこで俺は送辞の紙を懐にしまった。

『零治君………?』

司会の先生が心配そうに呟くが、悪いがやっぱり………

『済みませんが送り出すのにこんなに堅苦しいのは苦手なので止めさせてもらいます』

ざわざわと騒ぎ始める保護者の人達。まあこんな生徒会長居ないだろうしな………

『思えば先輩達との2年、あっという間の出来事でした。体育祭に文化祭、他にも色んなイベントを先輩達と楽しみました。それも先輩達が率先して事にあたってくれたおかげでもあります。そう、今年の学校は先輩達が回してくれたおかげで自分達も楽しい1年を過ごせました………生徒会長に就任したときも前生徒会長の水無月会長の意思を継ぎ、今以上に楽しい学校を創ると言いましたが、まだまだ力不足を痛感します。やはりそれほど先輩達の存在は大きく、甘えていたんだと思いました………だけどそんな先輩達も今日で卒業です。いつまでも心配ばかりかけてしまうだらしがない生徒会長ですが、弱音はここまでにします』

もう一人称が俺になってしまっていたが、気にせず話を続ける。

『先輩達が卒業すれば俺達2年生が最上級生になります。もう頼れる先輩達もいません。だからこそ今日までで弱音を吐くのは終わりにし、新たに宣言したいと思います』

そう言って一度深呼吸した。

「俺は必ず先輩達に負けない最高の学校をみんなで創りあげます!!だから先輩達は安心して卒業してください!!今年の文化祭は楽しみにしてて下さいね!!そしてまた一緒に楽しみましょう!!」

マイクを使わず、大声で宣言した。

『生徒代表、生徒会会長有栖零治』

そう言って俺は深々と一礼してステージを降りた。
途中、先生や来賓のお客さんの顔を見たが、皆が険しい顔や怒った顔で俺を見ている。
保護者からもざわざわと不満そうだ。

だけど………

「良いぞ!!生徒会長!!」
「文化祭期待してるからな!!」

3年生からは大きな拍手と声援が巻き起こった。

「それだけ聞ければ満足だ………」

先生達からは大目玉だろうがな………






『続きまして、卒業生答辞。生徒代表、水無月楓』

「はい」

俺の送辞に今度は水無月先輩の答辞だ。
こつこつとゆっくりとステージに歩いていく。

『答辞。………まあ私も零治君と同じ様にやらせてもらいます』

と言って早々答辞の紙を懐にしまう先輩。
流石の俺の予想外だった。

元々超優等生として生徒会長になった水無月会長。
そんな先輩がこんな大きな舞台で俺の様なマネをするなんて思えなかった。

『私は去年の学業優先という学校のスローガンが大嫌いでした。3年しかない中学校生活を行事を極端に少なくして勉強の時間を多くする。………将来的に考えればとてもいい考えかもしれません。この3年の頑張りでこれから先の道が決まると言ってもおかしくないのですから。だけど納得出来ない自分がいました。ただ学校に来て勉強をする………その為に中学生活があるのかって………だからこそ私は生徒会になり、もっと皆で楽しい学校を作ろうと思いました』

今までの中学校生活を思い出すかのように話す先輩。

『だけど私だけではどうしても企画も思いつかず、苦悩する日々が続きました。とてもじゃないけど私にはそんなアイディアは思いつきませんでした。そんな時に会ったのが今の生徒会長、有栖零治君です』

いきなり名前を言われ、本当に驚いた。クラスだけでなく、周りの皆が俺に注目した。

『彼が私の所に来たのは本当にくだらない事でした。2年生の神崎大悟君と加藤桐谷君、どっちがイケメンだと思うかアンケートしてるから協力してくださいとそう言ってきたんです。くだらない内容だと思いましたが、確かに神崎君も加藤君も女子からはかなりの人気がある2人でしたので、面白いと思って協力したのが始まりでした』

確かにすんなり協力してくれた事に多少驚いてたけれど………

『その企画の司会をやったのは零治君とはやてさんの2人でした。彼らの息のあった司会だからこそあの企画は成功しました。この時思ったんです。彼らだったらもしかしたら皆が楽しめる学校作りが出来るんじゃないのかって』

そのときから俺達の事を………

『その考えは間違ってませんでした。彼らに協力してもらった企画で学校はどんどん明るくなっていきましたし、みんなも楽しそうでした。それを見て、彼らだったらこの学校を変えられる、そう確信したからこそ零治君に生徒会長を頼みました。その事は間違ってなかったと心から思います』

『だからこそ、私は言います。私は学校を変える機会を作っただけ。後は零治君達2年生次第です。みんな頼むわねこの中学校を、私達の時よりももっともっと楽しく皆が笑い会える学校に………卒業生代表、水無月楓』

そう言って先輩も深々と頭を下げた。
生徒会選挙前に話した時よりも先輩の心の内を聞けた気がする。
何だか本当に最後なんだという実感が湧いた気がした………

2度目なので先生方も来賓のお客さんも保護者も動揺は少なかった。

『校歌斉唱、皆さん、ご起立下さい………』

そして卒業式も終盤に差し掛かった………






閉会の言葉も終わり、卒業生卒業となるこの場面。
俺達の考えている最後の企画、それを実行する為に準備をしているとき、事件は起こった。

『待ったっス~!!』

いつものっス~という軽やかな口調。

「おい、はやて………」
「わ、私も何も聞いとらんよ………」

しゃがみながらはやての席に向かい、確認するがはやても何も知らないみたいだ。

『先輩~!この魔術師、ウェンディ・イーグレイから囁かなプレゼントを送るっス~!!』

ステージ中央に突然現れたウェンディはタキシードにシルクハット、そしてステッキにマントといかにもマジシャンって感じの服装で言葉通り突然現れた。

体育館にいる全員驚き、先生達でさえウェンディの行動を見ているだけになっている。

『皆、上にある時計を見るっス~!!』

そう言ってステージ上にステッキを上げるウェンディ。
ステージの上のスペースには以前にウェンディのいたずらで変わったファンシーな時計が動いている。

『しっかり注目してるっスよ………1、2………3!!』

バン!!とステッキから大きな音が鳴った瞬間、時計のあったスペースにいきなり文字が現れた。
文字にはこう書かれている。

『卒業おめでとう、最高に楽しかったっス~!!』

因みにペイントで。

ワアアアアアアアアアアアアアア!!!

もの凄いサプライズに生徒全員から歓声が上がる。
だけどこれはもしかして………

「クアットロか………?」

こんな事出来るのはクアットロのISしか思いつかない。
彼女のISで視覚を阻害すればあらかじめ書いておいた文字を意図的に消し、瞬時に表すもの可能だろう。

「全くウェンディには本当に驚かせられる………」
「流石の私もこんな事出来へんよ………」

そんな中、ミュージックが流れ、先輩達が退場する………

『レイ兄ー!!後は頼むっスー!!!』
「それじゃあお前の事まで俺の企画みたいじゃないか!!………ったく………よし、やるぞ皆!!」

俺は立ち上がり、ウェンディにツッコミを入れた後、手を上げて、生徒皆に聞こえるように言った。

「よし………行けー!!!」

手を下ろすと同時にクラッカーが生徒の所々から鳴り、その後、体育館の二階で放送や、照明など操作していた放送委員に頼んで渡しておいた、紙吹雪を扇風機を使って吹き飛ばしてもらった。
桜の様にひらひらと上から紙吹雪が降り落ちる。

「綺麗………」
「上手くいったな………」

はやてと確認するように呟いた。

「先輩達喜んでくれたやろか………?」
「ああ、絶対な………」
「私達も来年はあそこやな………」
「ああ。今度は俺達の思いを受け継いでくれる新たな生徒会長が立派にやってくれるさ」
「高校か………」
「答えは出たのか?」
「………まだ決められへんよ………もう少し経ったら答えを出すわ」

「そうか………しかし、中学校生活ももう1年しか無いんだな………」

俺は退場していく先輩達を見ながらそう呟いた………  
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