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八条学園騒動記

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第三十四話 彼女ゲット!その七


 翌日カムイは唇をタラコのようにさせて学校にやって来た。皆それを見て今度は何が起こったのかと思った。
「どうしたんだ?今日は」
 皆そのカムイに問う。カムイは重い口を開いてきた。
「カレーだ」
「カレーって」
「何がどうなったんだよ」
 話が読めなくなった。何が何かわからなくなった。
「だからカレーを食ったんだよ」
 彼はその唇のまま言う。
「昨日さ。アーメンガードさんと」
「らしいな」
 覗き見していたことは皆言いはしない。それをかくして話を続ける。
「で、チキンカレーを食べたんだよ」
「それだけだろ?」
「いや、待てよ」
 ここでフックが気付いた。彼はタイ人である。そう、タイ人なのだ。
「ひょっとしてそれは辛かったせいか」
 辛いことで知られるタイ料理だからわかることであった。
「それで御前」
「いや、待ってよ」
 タバスコのメキシコ人であるマルコがそこで話に入る。
「カムイだって結構辛いものには強い筈だよ。それでこれは」
「そうか」
「図星だよ」
 カムイは憮然としてそれに答えた。
「その通りさ」
「そんなに辛かったのかよ」
「ああ」
 憮然としたままで言う。
「とんでもねえ辛さだった」
「そんなにかよ」
 フックは述べる。
「三十種類のスパイスだって言われたんだよ」
「三十種類じゃ普通じゃねえのか?」
 フックはそれを聞いて呟く。
「そうだよね」
 それにマルコも同意する。
「それ位だと」
「数はな。そうだな」
 カムイはそれを聞いて述べる。
「普通だった」
「じゃあ何が悪かったんだよ」
「そうだよ。三十種類じゃ」
「質だ」
 ここで数とはもう一つの要素が出た。質なのだ。この場合はスパイスの辛さの質だ。それは桁外れであったのだ。彼が言っているのはそれであった。
「一つ一つの質が半端じゃなかったんだよ」
「そうだったのか」
「ああ。そのせいでこうなっちまった」
「それでデートはどうなったんだ?」
 フックは話をそちらに向けてきた。
「肝心のそれは」
「勘弁してくれ」
 カムイは項垂れてそう言う。あのカムイがだ。
「あんなカレーをいつも食べさせられるなんてよ。俺にはマウリアは無理だ」
「そうなの」
 マルコがそれを聞いて目をしばたかせる。
「残念だけれどよ」
 結果は皆の予想通りとなった。そしてこれに狂喜する者がいるのも想定の範囲内であった。
「やった!やったぞ!」
 洪童は自分の部屋で叫んでいた。
「これでいい!もてないのは俺だけじゃない!」
「・・・・・・兄さん」
 暗い部屋で一人喚く兄を見て春香は呟く。
「人を呪えば穴二つよ」
 奇しくもこの言葉は当たることになった。洪童をとてつもない災厄が待ち受けていた。彼はそれから逃れることはできず恐ろしい目に遭うのであった。


彼女ゲット!   完


                 2007・2・9 
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