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八条学園騒動記

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第三十四話 彼女ゲット!その一


                    彼女ゲット!
「おらおら!」
 何故かカムイがいい気になっている。
「俺もこれで無敵だぜ!」
「あいつ何があったんだ?」
 騒ぐ彼を見てマチアがネロに問う。
「彼女がいなくて遂にいかれたか?」
「ううん、その逆みたい」
「逆!?というとだ」
 マチアはその話を聞いて何か自分の想像の外の世界のことが起こるのを感じていた。
「彼女ができたのか?あいつに」
「ううん、彼女を紹介してもらえるらしいよ」
「そうなのか」
「そうなんだ。後輩にね」
 ネロは言う。
「それでなんだ」
「ああ、前あの馬鹿二人が滅茶苦茶な推理した時か」
 記憶を辿って述べる。
「何か何時の間にかフックが犯人になってそっからペンギンが事件解決したんだったな」
「オオウミガラスだよ」
「ああ、そうか」
 言われて思い出す。そういえばそうだったと気付く。
「違うんだったな、ペンギンとオオウミガラスは」
「味が全然違うよ」
 ネロはオオウミガラスもペンギンも食べているらしい。両方の味も知っているようだ。
「オオウミガラスは美味しいけれどね。ペンギンは」
「まずいのか」
「うん、美味しくないね」
 きっぱりとして言う。
「油ばかり多くて」
「そうなのか。それでだ」
 マチアは話を戻してきた。
「あいつが彼女か」
「そんなに不思議?」
「御前はどう思うんだ?」
 マチアは逆にネロに問い返す。
「あいつに彼氏って」
「想像つかないね」
 ネロは正直だった。嘘はつかない。
「そんなこと。夢を見ているみたいだよ」
「そうだよな」
 マチアはその言葉を聞いて頷く。
「あいつがねえ。彼女だなんて」
「何はともあれ明日合コンらしいよ」
「失敗する方に一〇〇〇テラだ」
 マチアは言った。
「俺はそっちにかける」
「皆失敗にかけてるから倍率ないよ」
「そうか」
「浮かれてるのカムイだけだし」
 実にわかりやすい話である。
「あっ、そうそう」
 ネロは言ったところで思い出した。
「洪童はまた別の反応示しているけれど」
「もてない団の片割れがか?」
「うん。何でもね」
「ああ」
 洪童は洪童でおかしなことになっていた。彼は今自室でヒステリックに何やら呪文を唱えていた。
「オンドゥルウラギッタンディスカーーーーーーーーッ!」
 部屋の中は真っ暗で何か床に魔法陣を描いている。その周囲に銅像やら蝋燭やらを置いて中央で踊り狂って呪文を唱えている。何をしているのか訳がわからない。
「クサム!」
「あの、兄さん」
 そんな彼に春香が引きながら問う。
「何しているの?」
「何?わかっているだろう」
 顔に妙な紋章を描いて両手に三叉のキャンドルを持っている。それでさらに叫んでいる。
「カムイを!カムイを!」
「話は聞いているけれど」
 春香は呆れた顔で彼に言う。
「そんなに頭にきているの?」
「当然だ!」
 彼はまた叫ぶ。
「もてない団の同志として!俺は!」
 飛び跳ねる。さらに叫ぶ。
「あいつは許せん!失敗しろ!」
「またそんな」
 また呆れた声で兄に言う。
「祝福してあげた方がいいわよ」
「そんなことできるか!」
 最早嫉妬に身を焦がす彼にはそんな言葉は耳に入りはしない。
「今こうして!呪ってやる!」
「困ったわね」
 しかし彼女はそんな兄をどうしても止められない。どうにも呆れるだけでしかなかった。困った顔をしながら。 
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