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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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笛と温泉の使い方

<マイラ>

「随分と質の良いオリハルコンだ!…数日時間をくれ、そうしたら最高の剣を作り上げよう!」
マイラにある道具屋の主人は、リュカから手渡されたオリハルコンを眺め、即座に何を求めているのかを把握して答える。
元はジパングに住んでいた主人…恋人をヤマタノオロチの生贄から守る為に共に逃げ出し、あてもなく彷徨う内にアレフガルドへ落下した道具屋の主人は、一緒に逃げ出した元恋人の妻と共に、腕の良い刀鍛冶職人として名を馳せている。

「数日か…まぁよろしく頼むよ。世界を救おうとしている、勇者アルルの武器だから…最高のを頼むよ!」
「任せろ!……それよりも、(ウチ)の壁を壊さんでくれよ…隣に美女が居ても!」
ここマイラでは数日前の事件は有名で、自分たちの妻・恋人などが入浴している女湯を覗こうとして、温泉の壁を破壊したバカ共の話題は誰もが知っている!

立ち寄る商店や道行く人々に、面白半分で同じ様な事を言われる男性陣(おとこども)
最初はティミーを始めラングストンでさえ、何も言えずに俯き黙ってしまっているのに、首謀者のリュカは悪びれることなく言い放つ。
「あはははは、大丈夫だよ!そんな絶世の美女は身内にしか居ない!壁壊す程価値のある女なんか、ここには居ないよ!(笑)」
先にからかった村人等も、リュカの言葉に苦笑い。
その内ティミー達もリュカの言い分に自信を持ち、率先して彼女自慢を展開させる様になった…



「さて…そう言えば、温泉の南に笛が埋まってるって話だったよね?探してみようか!」
オリハルコンを刀鍛冶に託し、旅の買い出しを済ませた一行は、ドムドーラで仕入れたアルルとティミーの情報を思い出す。
「そうですね…アスカリーさんの話では、それがルビス様の封印を解く『妖精の笛』のはずですからね」
アルルは、今朝営業を再開した温泉の裏手を進みながら、数日前の事件を思い出しながらリュカ等に話しかける。

男湯と女湯を隔てる壁を破壊したリュカ等に、修理費を出す余裕は無く、首謀者(リュカ)を主とした男性陣の手により、しっかりと修理して経営者に詫びを入れた。
なおリュカ指示の下、しっかりと探さないと分からない様な覗き穴を複数備えさせての修理だったが…

「う~ん…どこら辺でしょうか?」
「さぁ?全部掘り返してみればティミー。泥だらけになって笛を見つけて、アルルに向かって『ワイルドだろ~?』とか言ってみれば面白いよ」
「相変わらず貴方の言っている事の意味が分かりません!」
最近、父兄が似てきた様に感じるマリー…
放っておくと何時までも続けそうな父兄のコントを遮る為、自ら提案をする。
「何も全部掘り返さなくても、レミラーマを使っていただければ早いのでは?」

「あぁ…流石マリーは賢いなぁ。じゃぁ父さん、お願いします」
「何…最近パパを顎で使う様になってきた?」
「えぇ…ワイルドだろ!」
「………言い方が違うから減点!(笑)………レミラーマ」
息子と楽しそうに会話しながら、アイテム探し用の魔法を唱えるリュカ。
程なく地面の一点が輝き放つ。

直ぐさまリュカは、光る点を素手で掘り返し、土中に埋まっている『妖精の笛』を手に入れる。
「本当にあんなどうでも良さそうな情報が、貴重なアイテムへ導くなんて……」
リュカが手にする泥だらけの笛を見て、アルルが驚き感心する。

「でも泥だらけだな…こんな笛は吹きたくないよね………ちょっと洗ってくる!」
リュカはそう言うと、アルル達が見守る中、器用に温泉の垣根を取り外し、湯船にまで近付き笛を洗い始める。
「ちょっとリュカさん!な、何をやってるんですか!!?」
だがリュカの行動に叫んだのはアルル…
「何って…笛を洗ってますが…何か?」

「な、何か?って…何、自然な動きで女湯に入ってるんですか!?」
そう…リュカが入ったのは女湯で、しかも入浴客ありの状況だ。
入浴客達も突然の事で声も出せない。
「何時の間にこんな所に出入り口を作ったんですか!?い、いやそれより、何で女湯で洗ってるんですか!男湯に行けばいいでしょ!」
「あはははは。男湯には女性客は居ないよ。女湯に入らなきゃねぇ………ワイルドだろぅ!」

「あぁ…ああ言うのか!」
「ちょっとティミー!そんな事を感心してないで、貴方からもリュカさんに言ってやってよ!」
「ん…うん。と、父さん…笛を洗うの、手伝いましょうか?」
「………是非!」
「『是非』じゃねー!お前等、女湯から出て行け!!」
女湯で入浴中だった一般客を守るべく、勇者アルルが全力で邪悪なる者を出て行かせる。
「「ワイルドだろぅ!」」
「いいから出て行け!」



その日の晩は、リュカの部屋で珍しく親子して叱られるリュカとティミー。
尤も、ビアンカの方はヤレヤレという感じなのだが、アルルが猛烈にティミーを叱る。
「何を考えてるのよティミー!最近、父親そっくりになってきたわよ!!」
「い、いや…あの…と、父さんが…」
凄い剣幕で詰め寄られ、かなりタジタジのティミー…
「リュカさんが何だって言うのよ!」
「う、うん…あのね…父さんがね…『女の子は怒った顔も可愛い』って言ったから…ちょっとアルルをからかってみたくなっちゃって…」
「………はぁ?」
思いも寄らないティミーの言い訳に、アルルも言葉が出てこない。

「ホント父さんが言った通りです、女性(アルル)は怒った顔も可愛いんですね!」
ティミーはアルルの顔を真っ直ぐ見て、真面目な顔で褒めちぎる。
「だろ!泣き顔以外は全部可愛いんだよ。色々見たくなっちゃうよね」
リュカはリュカで、大きく頷きながら息子に答える。

アルルはまだ怒りが収まらない様子だが、それ以上に嬉し恥ずかしで顔を赤くし、何かを言いたそうに腕をブンブン振りながらリュカを睨む…
「あ、その表情(かお)も可愛い!」
そして追い込むかの様にティミーがトドメの一言を…
その言葉を聞きアルルはティミーの胸ぐらを掴み、力ずくで彼を自分たちの部屋へと連れ去った。
そして響き渡る甘く激しい喘ぎ声…

「やるなティミー…今回はお前に助けられるとは…」
アルルがティミーを連れ去り、説教が終わった事に安堵してリュカが呟いた。
「え?…じゃぁ『女の子は怒った顔も可愛い』って言ってないの?」
「うん。確かにそう言う思いはあるが、ティミーに向けて言った事は1度もない!アイツの機転で説教が終わった。助かったよ…」

皆、無言で血のなせる恐ろしさを噛み締める…



 
 

 
後書き
あぁ…ティミーが………
真面目っ子ティミーが…………… 
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