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八条学園騒動記

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第二十七話 草原の料理その二


「道案内するよ。何はともあれ場所がわかってよかったな」
「そうだよね、やっぱり」
「何か凄いとんでもないのを見たけれど」
「まあいいか」
 皆とりあえずはセーラの魔法から考えを離した。そしてナンの家へと向かうのであった。

 道がわかるまでは大騒ぎであったがわかってからは何ということはなかった。皆すんなりとナンのパオへ辿り着くことができた。見れば彼女はもう食事の支度にかかっていた。
「いらっしゃい、早かったわね」
「ええ、まあ」
「道はわかったからね」
「すぐわかったでしょ」
 ナンはにこりと笑ってきて皆に言ってきた。
「あの地図で」
「何でそう思えるんだよ」
 ジョンがその言葉に突っ込みを入れた。
「あれじゃあわからないよ」
「そうかしら」
「そうかしらねってあんた」
 パレアナもジョンに続く。彼女も大概にしろとさえ思った。
「あれが地図なの?そもそも」
「地図じゃない」
 しかしナンは相変わらずである。
「立派な」
「あっきれた」
 遂にはこの言葉を出す。
「よくもまあそれで地理クリアーしてるわね」
「まあ地図は描いたりしないけれど」
 ジュディも言うが彼女も感情的にはパレアナと同じであった。
「あれはちょっと」
「そんなに変だったかな」
「かなりな」
 ダンは彼らしくクールだがそれでも言っていることはきつかった。
「わかるわけがない」
「ちぇっ」
 ナンはそう言われてかなりむくれてみせた。
「何かショック」
「私も魔法を使おうと思っていたのですが」
「魔法って?」
 今度はナンが首を傾げる番であった。実際に首を傾げていた。
「何言ってるの、彼女」
「ああ、それ言うと話大きくなるから」
「それはまたね」 
 そう言って今度は皆で話を強引に進めてきた。
「とにかくだ」
 ダンがきりよく言ってきた。
「皆来たぜ。宜しくな」
「うん、こちらこそ」
 ナンもそれに答える。
「もう準備できてるわよ」
「ヒヒーーーーーーーン」
 後ろからナンの乗る馬達のいななきが聞こえる。ナンと完全に息が合っているといった感じであった。
「そうなの」
「やっぱり羊?」
「まあね」
 そう皆に答える。
「やっぱりモンゴルだからね」
 そのうえでにこりと笑ってきた。屈託のない笑顔である。
「それと馬のお乳よ」
「やっぱり」
「定番ね」
「といってもね」
 だがナンはここで思わせぶりに笑ってきた。
「皆が思っているような料理じゃないわよ」
「?どういうこと?」
 パレアナがその言葉に目を丸くしてきた。何のことかわかりかねた。
「それって」
「モンゴルっていったらあれじゃないの?」
 ジョンもその顔をキョトンとさせていた。とりあえずここは彼のイメージを優先させていた。
「ジンギスカン鍋」
「それよね」
 ジュディもそれを聞いて述べてきた。
「やっぱり」
「残念でした」
 しかしナンはその言葉に右の人差し指をチッチッ、と切って断りを入れてきた。
「モンゴルには元々焼く料理はないのよ」
「あれ、そうだったの」
「そうよ」
 そう答える。それを聞くと彰子が言ってきた。
「煮るんだよね」
「知ってたの?やっぱり」
「うん、本で読んだから」
 彰子は答える。
「それで」
「流石ね」
 ナンは彰子のその言葉を聞いて感心至極といった様子であった。
「その通りよ」
「てっきり生で食べるのかと思ったわ」
「私も」
 二人の後ろでパレアナとジュディが囁き合っていた。だがこれも合っていた。
「そういう場合もあるわね」
 ナンは答えてきた。
「そうなの」
「元々草原って燃料ないじゃない」
 そうである。草原にあるのは草だけだ。木のように燃料になるものはないのである。そうしたことを考えると実に暮らしにくい場所なのである。
「それでね。煮るの」
「どうしてそこで煮るの?」
 今度はジョンが問うた。
「そっちの方が燃料使わなくて済むから」
「ふうん」
「それでだ」
 ダンは一つ気になることがあった。
「その燃料は何だったんだ?あまりないっていうそれは」
「ああ、それ」
 ナンもそれに応える。
 
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