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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第六話  必要に迫られケータイ購入

「それじゃー、連絡用にケータイの番号でも交換しとくかにゃー?」

 窓のないビルから出て車へと戻るときに土御門さんがケータイを出してきた。

「あ……そう言えば持ってません」

 土御門さんに言われて気が付いたのだが、俺ってこの世界のケータイを持っていない。アパートには固定電話もなかったはずなので、ケータイでも買わなければ連絡手段がパソコンでのメールぐらいしかなくなってしまう。

「そうだったぜい。身分証明書がないとケータイは買えないからにゃー、よし、今から買いに行くぜよ」

「今からですか?」

「そうだにゃー、善は急げだぜい」

 そう言って土御門さんは車に乗り込む。

「暗部って時点で善とは程遠い気がするけど……」

「それを言っちゃおしまいだぜい。それから暗部での連絡用と、普通に使うケータイは分けたほうが良いぞ」

 俺は土御門さんに聞こえないようにつぶやいたつもりだったが、どうやらしっかり聞こえていたようだ。

「そうですねー。あっ、そう言えばお金持ってきてなかった」

 前日のセブンスミストに行った時の残りが2万円ほどあるので、厳密に言えば持って来てないわけではないのだが、ケータイを買うには……2台も買うにはちょっと心もとない金額である。

「それなら一度寮に戻ってから行くか」

「はい」

 そのまま車に乗り込むと、運転手に俺のことを紹介された。運転手の人は俺が暗部に入ったことを驚いているようだ。

 アパートに戻ると封筒から残りのお金を全て取り出し財布に入れる。これだけあればケータイを2台買っても大丈夫だろう。それから、ケータイの契約で引き落とし口座になる通帳と印鑑も持っていく。

 買いに来たケータイの販売店は、上条さんと御坂さんが大覇星祭の罰ゲームでペア契約をしていた場所じゃないかと思う。しかし、ゲコ太ストラップがもらえるキャンペーンはまだ始まっていないようだ。ってか、よく考えたらほぼ半年後の話だった。

 店内にはケータイが並べられているコーナーがあり、パンフレットやカタログなどもかなりの数が積んである。パンフレットやカタログを読むためだと思われるスペースにはテーブルや椅子が置いてあり、紙コップ式の自動販売機まで置いてあった。上条さんたちがペア契約をしていた(これからする)と思われるカウンターもあるし、ケータイの修理やメンテナンスをしてくれるカウンターもある。

 俺はまずパンフレットをいくつか手に取る。誰も居ないテーブルに置いてから自動販売機に向かうと、無難に(無難か?)マンゴー茶ソーダを選んで席に戻った。

「どんなのがいいのかにゃー?」

 土御門さんが隣の席で自分のケータイをいじりながら聞いてきた。

「そうですねー、自分用のは多機能と使いやすさと見た目重視。連絡用のやつはセキュリティ機能と堅牢性重視ですかねー」

 パンフレットを見ながら答える。そう言えば、パンフレットで見る限りスマホ系の情報端末が見当たらない代わりに、白井さんが使っていたような変り種のケータイがたくさん載っている。

「まー、連絡用のほうはそんなに気にしなくていいぜい。ケータイのほうでどうこうしてるわけじゃないからな」

「あー、なるほどね」

 暗部という言葉を避けたのを正しく受け取った土御門さんが普段の調子で返してくれる。暗部用のケータイは学園都市の上層部で通信局のほうを直接管理できるのだろう。

「それなら使いやすくて頑丈って感じでいいかな」

 暗部で使用するならやはり頑丈なほうがいいだろう。

「頑丈ってのは確かにいいかもな。それで、自分用はどうするつもりなんだ?」

「一番は見た目ですかねー、その後に多機能と使いやすさですね」

「見た目っていうのはどんなのがいいのかにゃー?」

「角ばった感じの曲面が無いデザインがいいですねー。色は青から黒までとかグレーから黒までぐらいの色合いで、あとはサイドにボタンとかの凹凸が無いデザインがいいですね」

 土御門さんに答えながらパンフレットを眺める。デザインのみでいいなと思ったものをいくつかピックアップして、型番を記憶してからそのカタログを取りに行った。

「頑丈っていうので探してみたら、こんなの見つけたぜい」

 4冊ほどカタログを取って席に戻ると、土御門さんが別の2冊のカタログを持ってきた。

「おぉー、こんなのあるんですねー」

 土御門さんが持ってきた2冊のカタログには、カーボンボディとチタンボディのケータイが載っていた。

「あ、そうそう。言い忘れてたんだが、連絡用のケータイはグループで面倒見るから、購入費や維持費は気にしなくていいぜい」

「あ、そうなんですか」

 土御門さんに言われて一気に気が楽になる。軍資金の全額を自分のケータイに回せるので、オプションや周辺機器なども充実させられるだろう。

「ああ、それで連絡用のケータイを先に選んでもらえるかにゃー?」

「はい、了解です」

 自分の取ってきた4冊のカタログをテーブルの端にまとめておき、土御門さんの持ってきた2冊のカタログを開く。カーボン製のケータイとチタン製のケータイ、どちらも頑丈で軽いという特徴がある。

 まずカーボン製のほうを見る。基本的な機能はほぼ揃っていて、処理速度の速さを前面に押し出すように紹介している。液晶画面の表面はポリカーボネート製で画面の強度も充分だし、傷が付きにくいように学園都市の技術で表面をコーティングしてあるようだ。

 そしてチタン製のほうは、カーボン製と比べて角ばった俺好みのデザインに近く、カタログ前面に押し出しては居ないものの、カーボン製と同じ処理速度を実現していた。液晶画面の傷防止性能もカーボン製のものと同じ仕様のようだ。

 ボタンに関して見やすいのはカーボン製のほうだが、暗い場所での扱いやすさはチタン製のほうに分がありそうに見える。そんな感じで色々と見比べて、更に展示されている現物でボタンの押し具合などを確認、最終的に連絡用のケータイをチタン製のものに決めたのである。

「それじゃ、俺が契約してくるからお前さんは自分のケータイをじっくり選ぶといいぜい」

 そういい残して土御門さんは契約カウンターへと向かっていった。

 俺は2冊のカタログをテーブルの隅に置くと、自分の持ってきた4冊のカタログを並べる。性能や機能面にそれほど特色があるわけでもなく、暗部用に選んだ機種と比べてもそれほど高性能で多機能といった感じは受けない。カタログだけでは4機種の中から絞り込むことが出来なかったので、実際に操作して見ようと思い現物が並べてあるコーナーへと向かった。

 実際に触ってみるとボタンの押し具合やメニュー画面の構成など、4機種それぞれに個性があり、その中で一つだけ俺の好みに合うものを見つけた。ボタンがカチッカチッと入った感覚の分かるもので、なおかつメニューの構成も感覚的に掴みやすいものだった。

 席に戻ってカタログでカラーバリエーションの確認をしていると、土御門さんが戻ってきて紙袋をテーブルに置いた。

「これがお前さんの連絡用ケータイだにゃー。一つ言っておくと、こいつの通話は全て聞かれてると思ってたほうがいいぜい」

 後半部分は小声で土御門さんが教えてくれた。まぁ、その辺のところは俺も当然知っている。

「ありがとうございます。やっぱりそうなんですね」

 俺も後半部分は小声で答えた。それを聞いた土御門さんは少しだけニヤリと表情を変えた。恐らく土御門さんは、俺が裏の世界というものをある程度経験したことがある、ということを察してくれたのだろう。

「それで、お前さんのケータイは決まったのかにゃー?」

「ええ、さっき決めて今どの色にしようか考えてたところです」

 俺が決めた機種のカラーバリエーションは、白、シルバー、黒、赤、黄色と5色しかなく、俺の考えてた色からすると黒しか選択肢が残っていない。しかしその黒は、漆塗りの色というかピアノの色というか鏡面処理してあるというか、指紋とかが目立ちそうな色なのである。しかし、それ以外の色は特に鏡面処理されたような感じがなく、特に赤や黄色などはカタログで見る限り安っぽいプラスチックの色みたいに見える。展示されていたケータイは白だったので実際に見ているのだが、安っぽくはないけどプラスチックっぽい白だった。

「鏡面処理されてない黒とかないのかなぁ」

「それなら塗装してもらうといいぜい」

 思わずつぶやいた言葉にすぐさま返事が返ってきた。どうやらケータイの塗装とかも出来るようだ。

「そんなのもあるんですか?」

「ああ、しかしちょっとばかり金がかかるんだぜい。ケータイ自体はそれほど高額にならないんだが、塗装は趣味の範囲に入っちまうからな」

「そうですか」

 確か学園都市では生活必需品や日用品は安いけど、漫画などの趣味的な品は高くなっているという設定があったような気もする。

「まー、塗装する色にもよるが、だいたい20万ぐらいでどの色もいけるはずだにゃー」

「うげっ……そんなに金もってねー」

「それなら銀行か郵便局で下ろしてくるといいぜい。お前さんに渡した通帳にはどっちも200万入ってるはずだからな」

「は? そんなにっ!?」

 思わず声を上げてしまい慌てて周囲を確認するが、特に誰も気にした様子は無かったので胸をなでおろす。

「まぁ、そうだな、お前さんの実力を考えれば、その程度は全然痛くない出費だろう」

「そうかもしれませんがって自分で言うのも変ですが、通帳を用意したのって俺の実力を見せる前だったでしょ?」

「確かにそうなんだが……アレイスターの野郎、お前さんの実力をある程度知ってた可能性がある。というか、ある程度『認識してた』可能性がある」

 急に土御門さんが小声になる。まぁ、俺も多分そうなんだろうと思っているし、あのアレイスターのことだから、俺がこの世界に現れた時点ですでにある程度の俺の能力を把握していた可能性だって否定できない。

「あー、それは確かにあるかもしれませんねー、俺がこの世界に来て目が覚める前にもうあの人のところへ運ばれてましたしねー」

 俺はちょっと脱力した感じで答える。

「まー、そんなわけで、通帳の中身は遠慮なく使うといいぜい」

「それじゃー、お言葉に甘えて使わせてもらいますー」

 多分アレイスターさんはアンダーラインでこの会話を聞いて、「土御門、お前の金ではあるまい」なんて言っているのではないだろうか。

「まずは元となるケータイを買っておかないとだにゃー」

「あ、そうだった」

「塗装することを前提にするんだから、白を買ったほうがいいぜい」

「はい、ありがとうございます」

 俺はカタログを持って契約カウンターに向かった。

「ご契約有難う御座いました」

 ケータイを手に入れた俺は紙袋を持って土御門さんと一緒に外へ出た。暗部用のケータイは土御門さんが持ってくれている。

 地下街から地上に出るとちょうどいつもの車がやってきて目の前に止まる。多分他の場所で待っていて、土御門さんの連絡で地下街の出口に車を回したのだろうと、あまりのタイミングの良さに暗部の実力を垣間見た気がした。

「それで、通帳はどっちとも持ってきてるのかにゃー?」

「いえ、郵便局だけです」

 車に乗り込むと土御門さんに聞かれたので答える。次元転移をする前の俺は、基本的に公共料金やその他月々の引き落としを郵便局にしていた。特に意味はなかったのだが俺の意識の中では、銀行にお金を貯めて郵便局で月々の支払いという方程式が出来上がっていたのである。当然ながら、引き落としに必要充分な金額は振り込まれるようにしていた。

「了解だぜい、ってことで、郵便局へたのむ」

「はい」

 運転手が短い返事をすると、車はスムーズに動き始めた。
 
 

 
後書き
なんだか普通に流せば数行で事足りるような気がしなくもないんですけどねー^^;

次でようやく原作のっていうか、超電磁砲アニメの場面が出てきます。
基本的には禁書目録も超電磁砲もアニメ版をベースにしていくつもりです。 
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