| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

対決!!天本博士対クラウン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四話


第四話  兄弟
「どうしたのよ」
 華奈子と美奈子は二匹の言葉に顔を向けてきた。見れば二匹も写真を覗き込んでいる。
「いや、写真のここ」
「ここを見て」
「そこ?」
「うん。ほら」
 二匹に言われて写真のある部分を見る。するとそこにはタロとライゾウがいた。
「あれっ、何であんた達がそこにいるの?」
「それ僕の弟だよ」
「おいらの兄貴なんだ」
 二匹はそれぞれ述べてきた。
「嘘っ」
「嘘じゃないよ」
 タロが華奈子に答える。
「実際に会ってもいいし」
「そうなんだ」
「うん」
 二匹は華奈子に対して頷く。
「わかってくれたみたいだね」
「世の中って本当に狭いわね」
「けれど」
 美奈子はそれを聞いて何かを閃いたようであった。目が輝いていた。
「これ使えるわね」
「あっ、そうね」
 勘のいい華奈子もそれに頷く。
「上手くやればね。情報聞き出せるかも」
「ねえタロ、ライゾウ」
 美奈子が彼等に声をかけてきた。
「ああ、美奈子ちゃんは僕達の御主人じゃないから」
「命令はできないよ」
 タロとライゾウはこう述べてきた。美奈子もそれをうっかり忘れてしまっていた。
「そうだったわね」
「じゃああたしが。情報聞き出せる?」
「どうかな」
「難しいんじゃないかな」
 しかし二匹は華奈子の言葉にもどうにも頼りない返事を返してきた。首を傾げてさえいた。
「そうなの」
「まあやってみるよ」
「けれど弟も近くにいるなら言えばいいのに」
「兄貴も。何やってたんだよ」
 二匹は写真を見て言っていた。
「そういえば」
 美奈子は彼等の話を聞いてふと思い出した。
「タロってもらわれた甲斐犬の雑種だったわよね」
「そうよ。ライゾウはペットショップで売れ残っていたスコティッシュ=ホールド」
「本当に世の中狭いわね」
「全く」
 近くにいた二匹の兄弟に宿敵となる博士。二人はそのことにあらためて思いを馳せる。だが博士のとんでもなさはこの時はどれだけのものであるか考えてはいなかったのであった。
「どんなのでもやっつけてやるわよ」
 華奈子の言葉がそれを何よりも雄弁に物語っていた。


第四話   完



                    2007・1・24
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧